中央暦1693年 X月X日
-OCU日本-
BGM:チャラララァ~(略
:司会者
皆様こんにちは。本日はクワ・トイネの転換点となったとある出来事についてです。
『英雄の反乱』。愛国者だった彼らは、いったいなぜ母国に刃を向けるような事をしたのか?
本日は、機密指定が解除された資料から見えてくる。新たな事実と、そこから見えてくる新たな側面について解説していきます。
1640年前半のロデニウス大陸。
……マイハーク港の映像
映像には係留されている多くの帆船と、それより遠くにありながら、明らかに大きいとわかるコンテナ船が航行している。
マイハーク市民は中世を思い起こすような生活風景に対して、近現代的な車両や鉄道が市内を往来している。
:ナレーション
中央歴1640年。この時。クワ・トイネ公国はロウリア王国と戦争中だった。
だが、港町マイハークに戦争中特有の暗い影はない。それどころか、まるで別世界のように時間が流れている。
……公都クワ・トイネ市内の映像
戦争中でありながら、市民の生活は活気に溢れている。
当時の政治部会が行われていた政府庁舎が映し出される。
クワ・トイネがロウリアの侵攻を受けた時、抗いきれず国境付近の防衛線は突破された。そして、侵略された村や町では略奪や虐殺が横行した。だが、日本国防衛軍の到着により、戦況は一気に変わった。
防衛都市『エジェイ』での決戦に勝利した日ク連合軍は国境線へと歩を進め、占領された町や村の奪還している。さらに、日本は戦争終結のためロウリア王国『北の港』を占拠。そのあと1年間停戦し、参戦国は戦争の着地点を模索した。だが、この期間が仇となった。
当時『エジェイの英雄』と言われたエリオット・ノウ。彼の元にとある人物が接触する。
当時『ファンブルトン商会』の頭取を務めていたヨナサン・ファンブルトンだった。
『ファンブルトン商会』はノウを中心に反日勢力を結成させ、武器や資金援助を始めていた。
そして、運命の日は訪れた。
……字幕・次の音声は公開された機密資料をAIによる補正を行って流しています。
エリオット・ノウ
‐まさか、この程度で失敗と申されても……我々『憂国騎士団』の意思はその程度で折れることは断じてないっ!!
ブツンッという音と共に音声が切れる。
:司会者
ロウリア戦争が停戦して1年。この時、政府庁舎には政治部会に参加していたカナタ首相をはじめ、クワ・トイネの大臣や官僚。さらには反乱を察知して待機していた日防軍特殊部隊も待機していました。しかし、エリオット・ノウの自爆により、政府庁舎にいたほとんどが亡くなりました。
:日本の某商社に残されていた監視カメラ映像
‐ーー今の音はなんだ?
‐どこかで車が横転したのかな?
‐そんな音じゃなかったぞ?
どかどかと音を立てながら、商社の扉が開けられる。
‐我々は『憂国騎士団』だっ!! 日本人共、大人しくしろっ!!さもなくば有無を言わさず叩き切るっ!!
‐えっえっ!? 何々っ!? 映画の撮影か何か!?
‐静かにしろっ!! こっちに集まるんだっ!!
:ナレーション
この時、エリオット・ノウは自爆していたが、『憂国騎士団』が決起し、市内各所の主要施設制圧に動きだした。
駐留していた公国軍も応戦するが、数の差を覆すことはできずほとんどが戦死した。
『憂国騎士団』が公都を掌握すると、主要の街道という街道は封鎖され、市民の間に不安が広まった。
:公都市民(女性)※音声にフィルターをかけています
‐最初は本当に何が起きたのかわかりませんでした。いきなり中央官庁街で大きな音がして……みんなで話し合っていると、衛兵がすごい剣幕で走ってきて、大きな声で伝えたんです。
『政府庁舎が賊に襲撃された。戦いになるゆえ、市民は家に戻り、固く戸を閉じよっ!!』って
最初はみんな。『何の冗談だ?』って言いう感じで、みんなしぶしぶ衛兵の言葉に従って家に帰りました。
ただ、お昼頃になると、何故かあっちこっちから剣と剣がぶつかる音がしてきて……窓から見ると、たくさんの傭兵と衛兵が戦っていました。
……衛兵の方は一人。また一人と倒れても、踏みとどまって戦っていました……すみません。少し気分が……。
:公都市民(男性)※音声にフィルターをかけています
‐政府庁舎ででかい音が響いた時、俺は丁度贔屓してもらってる貴族邸宅の庭の剪定をしていたんだが、公国旗に×を描いた旗を持つ騎馬の集団が現れて、邸宅に押し入ってきたんだ。『〇〇〇はどこだっ!?』って叫びながら、貴族の侍従を片っ端から切ったんだ。
俺も死にたく無かったから、急いで邸宅の裏口から逃げたよ。
そのあと、あの貴族邸宅の執事やメイドがどうなったかは知らないが……。
:公都市民(男性)※音声にフィルターをかけています
‐最初。公都からすぐ逃げたやつらを臆病者と笑っちまったが、二、三日経ったら経ったら考えが変わったよ。
公都防衛騎士団が負けて、『憂国騎士団』の奴らが店にやってくると、(偉大なる公国のため、店にある食料を提供せよっ!!)なんて言って、商品を略奪同然に持っていくんだ。まるで山賊だった。そいつらに文句を言うと(貴様ら公国に愛国心はないのか!?)なんて言って剣を向けてくるんだ。
それなら前線で頑張ってる騎士団に行けってんだ。
しぶしぶ商品を渡したが奴ら、でかい商会を仕切る貴族が『憂国騎士団』に反発すると、その貴族の首を切って市内に見せびらかすように行進したんだ。(我ら『憂国騎士団』に逆らうと、こうなるぞっ!!)ってな。
あれは山賊同然じゃなくて山賊だったな。
映像は『英雄の反乱』前の公都市内が映し出される。
中世でよくみられる木と石レンガで組み上げられた建物が多く。要所要所にはしっかりしたレンガ造りの建物と無骨な鉄筋コンクリート製の建物が佇んでいた。
:司会者
『英雄の反乱』が起きてから、公都市民は名ばかりの騎士団の行いに平穏を奪われました。
10月末。公都奪還作戦後のクワ・トイネ市内を写した写真が映し出される。
町の所々では戦闘の傷跡や血の跡が残っており、戦いの激しさを物語っている。
建てられた当初は立派な風格を示していた政府庁舎は、エリオット・ノウの自爆により窓はほとんど割れており、政治部会が行われていた蓮の庭園はまるでクレーターのようになっていた。
:クイラ王国公使館員※音声にフィルターをかけています
‐『英雄の反乱』と言われた出来事ですが、『憂国騎士団』のほとんどは傭兵かぶれの山賊みたいなやつらばかりでした。
昼は昼で哨戒と称して金がありそうな貴族や商会から金や食料を奪い。それを手土産に夜な夜な娼館で浪費する……そういう奴らばかりでした。
当時『憂国騎士団』の陣頭指揮を執っていたのは、クワ・トイネ軍の参謀であるヴェン・シュタグロフです。我が国でもこの手の将校の評価は難しい存在でした。
我が国では……いえ、たぶんどこの国でも戦場で勇姿を示す者に比べ、剣の代わりに筆で戦う後方担当の参謀というのは必要ですが不人気です。
そのような人がエリオット・ノウの遺志を継いだというのは、正直驚きでした。
ただ……ロウリア戦争から数年たった後、私は戦争当時のクワ・トイネ軍務局から開示された資料に目を通したことがあります。
エリオット・ノウと同じように、ヴェン・シュタグロフにも苦悩があったということを知りました。
:モデスト・ハンキ国防長官※反乱当時。公都防衛騎士団将軍
エリオット・ノウの郷土愛や実力を疑う者はいない。いつだってクワ・トイネ公国を守ることに尽力していた。ただ、ロウリア戦争は我が国の国防を日本依存に加速させてしまったのも事実。ただ、現実として我が国単独ではロウリアの侵攻に立ち向かうことは不可能だったし、日本は我が国に被害を最小限にするため迅速に戦力を派遣してくれたのだ。日本に白い目を向けること自体、母国の敗北を誘導するに等しかった。
……あの反乱の時。私は軍務局にいたんだが、結果的に反乱軍に敗北して虜囚の身になった。その時、シュタグロフと話す機会が何度かあった。奴もノウと同じように悩んでいたとは思わなかったが……。
ロウリア戦争後数年たった後に開示された。ヴェン・シュタグロフが作成した報告書の一部。
ヴェン・シュタグロフは後方参謀として、主に補給兵站を担当していた。ただ、後方参謀に任じられる前は
『公国軍防諜部定期報告 39C315号
作成者 ヴェン・シュタグロフ
要点
・公国内において、ロウリア王国の諜報員を間接支援する諜報組織が存在する。
・その諜報組織はパーパルディア皇国と推測される。
』
中央歴1939年。当時クワ・トイネ公国とパーパルディア皇国には国交はなかった。しかし、民間の経済活動におけては相互で入国が確認されている。
では、なぜパーパルディア公国の諜報組織が活動していたのか?
そして、シュタグロフはこの報告を書き記すほど職務に忠実な軍人だったのに、なぜ反乱に加わったのか?
当時のクワ・トイネ公国とパーパルディア皇国の国力差は人口において10倍。経済力は20倍以上の開きがあった。
軍事力においても差が激しく。常設戦力において40倍もの差があった。
すべての面で格上な国家相手に、クワ・トイネは有効な対抗策はなく。シュタグロフの報告を黙殺するしか選択肢がなかったのだ。
シュタグロフはその後、ノウが秘密裏に結成した『憂国騎士団』に参加し、10月28日の戦いで落命した。
:司会者
『英雄の反乱』とそれに続く戦いはクワ・トイネに大きな跡を残しました。しかし、そのパトロンとなった『シンジケートF』は、なぜそこまで充当な支援を行えたのか? そもそも、『シンジケートF』とは一体何なのか? 解説していきましよう。
……字幕・次の音声は公開された機密資料をAIによる補正を行って流しています。
:元皇国国家戦略局職員※音声にフィルターをかけています
『ファンブルトン商会』……懐かしい響きです。設立したのは確か、皇国拡張期と言われたルディアス皇帝時代です。
当時の皇国の政策は単純です。領域を広げ、住民を安く労働させ、得た利益を皇国国内の軍備に注ぎ、また領域を広げる……日本の歴史書に書かれている『帝国主義』そのものですね。
話を戻しますが、『ファンブルトン商会』は『国家戦略局』のロデニウス大陸東側諸国担当支局の表向きの看板です。
主な活動は情報収集が中心で、要人の強請りネタを集めるのが精々でした。その活動が大きく変わったのは、ロウリア王国の『大陸統一』の支援です。
『ファンブルトン商会』はロウリア王国の『大陸統一』を成功させるため、クワ・トイネ軍の情報を多数収集して提供しました。
ロウリアが開戦を決意した時期。丁度日本が転移し、クワ・トイネと国交を結びました。
この時、日本の国力を知っても、開戦は決定事項だったのでロウリアの敗北と『国家戦略局』の支援が無意味になるのは避けられませんでした。
そのあとの流れは歴史の通りです。ギムで勝利した後、エジェイで敗北し、そのままギムは奪還され、北の港も占拠されました。
そのまま降伏すれば日本と皇国は拗れなかったでしょう。しかし、何を思ったのか『国家監察軍』を投入し、日本が占領する北の港奪取に動く……。勿論失敗しました。
日本と皇国の力関係が確定したと私は思っています。
『ファンブルトン商会』代表であり、工作監督官でもあるパストル・バトラーはこのことを知っていたと思います。
ただ、『英雄の反乱』に動いたのはその後くらいらしいです。
バトラーも何故このような危ない橋を渡ったのか……。
:公国鍛冶師※音声にフィルターをかけています
『ファンブルトン商会』……? そいつは確か、例の反乱が起きる何か月か前にでかい仕事をくれたところだったな。
あの時期、うちの売り上げは減っててな。日本の農業機械が公国内に入ってきて、人力の農具を買う客が減ってたんだ。だから俺も二つ返事で仕事をもらったんだ。
内容? 古い剣や槍。鏃を打ち直すことさ。鍛冶屋らしい仕事だろ? まぁ後から知ったことだが、俺が打ち直した武器や防具は隊商護衛じゃなくて反乱軍が使っていたなんてびっくりしたがな。
牢獄行きじゃないかって? 確かに取り調べを念入りにされたが、結局『反乱前にファンブルトン商会から個別で仕事を請けたことを罪に問えない』ってんで、今もこうして鍛冶職人をやれてるわけだ。
:元反乱軍兵士※音声にフィルターをかけています
『反乱軍』に参加した理由? 単純さ。金だよ。
『ファンブルトン商会』ってところが最後の依頼ってんで、『公都の憂国騎士団に合流して、仕事を手伝うこと』っていうよくわからない内容だったんだ。まぁ、蓋を開けたら大層な名前に反してやってることは山賊同然だったが……? えっ? 俺は何か盗ったりしたかって? 山賊上がりなら兎も角。俺は元から隊商護衛で食ってたから、もらった依頼金の分は仕事をしたさ。公都内の巡回程度だが……ただ、反乱軍の中に敵を切るより味方を切る奴がいたから、戦いの最中に降伏したけどな。
そのあと反乱に参加したっていう罪で牢獄に入ったが、まだ罪が軽い方だったから刑期を終えた後、畑仕事で静かに暮らしているのさ。もう俺が剣を取ることはないからな……。
反乱軍に参加したシュタグロフの部下の手記を要約したもの。
『シュタグロフ将軍が反乱に加わった理由。
私は閣下の下で職務にあたり、この反乱に参加した真意を聞いている。
『憂国騎士団』のパトロンである『ファンブルトン商会』はパーパルディア皇国の諜報機関だ。それが現在の問題を複雑にしている。
元々。シュタグロフ将軍はかなり早い段階で『ファンブルトン商会』が皇国の諜報機関であることを疑っていたが、皇国は我が国に比べ強大だ。下手に商会を壊滅させてしまうのは、虎の尾を踏みかねない危険な行為だったからだ。もちろん、彼らの活動がロウリアに利することだというのは重々承知している。しかし、皇国に立ち向かう力がない我々では、遠からず皇国の野望の前に膝を屈する日が来ることは予想に難しくない。
ノウ将軍が『憂国騎士団』を結成し、加わったことを知ると、私は将軍が自棄になったのではないかと疑った。だが、この一癖も二癖も飲み込む机上の将軍は計算高かった。
『憂国騎士団』はパトロンが皇国の諜報機関であることを把握し、敢えて反乱計画を逆利用し、皇国の諜報機関を壊滅させる計画を考えたのだ。
『ファンブルトン商会』は反乱において、資金や物資もさることながら、多くの組織人員を投入する必要があり、将軍はそれを狙った。そして、公国内で反乱を起こし、日本軍は反乱軍撃滅と同時に背後関係の洗い出しを始めるだろう。そして、その組織が皇国の息が掛かっていたとしても、躊躇しないと将軍は考えている。
そして、反乱の火に油を注いだ将軍自身は『反逆者』としての汚名を一身に引き受けるついでに、皇国の諜報員諸共斃れることを決断された。
今この時も公都では銃火の音が響いている。私も公国の一員として務めを果たそうと思う。
』
今の公都クワ・トイネの映像が流される。
:司会者
『日本』。『ロウリア戦争』。『英雄の反乱』……。クワ・トイネはそれらの存在で大きく国の在り方が変わりました。
我々の今ある生活は、昔を生きた人たちによる結果なのかもしれません。
それでは皆さん。お時間となりましたので、本日はここまでにしましょう。それでは、次回の放送でお会いしましょう。
解説はありません