OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第73話

中央暦1641年 3月17日

-パーパルディア皇国属領アルタラス ル・ブリアス-

 

 

 ロデニウス大陸から西に1000km離れた位置にアルタラス島が存在する。

 この土地は元々『アルタラス王国』というパーパルディア皇国の保護国家だったが、1639年12月に併呑された。

 

 かつて首都であったル・ブリアスは『臣民統治機構』による過激な圧政下に置かれ、元アルタラス国民の多くは昔の王国だった日々といつか来る独立の時を想い、日々を過ごしていた。

 

 街の通りではパーパルディアの統治機構職員が辺りを舐め回すように視線を送っており、誰も彼も視線を合わせないようにしている。

 

 とある街角の飲み屋街では多くの統治機構の職員が集まっていた。

 

 

「ーー班長。この酒場の棚の裏手に隠し部屋がありました。地下勢力がいたのは確かなようです。しかし、我々の動きを察知して逃走したようです。手掛かりになりそうな書類や機材は残っていません」

「周辺の住民からどんな人間が出入りしていたか情報を集めろ。知らない奴はいつも通り庁舎に招待(・・)したまえ」

「わかりました」

 

 指示を受けた職員はすぐに動き出した。

 

 アルタラスに展開した統治機構はパーパルディア皇国の負の部分をいかんなく発揮し、職権乱用同然の行為を繰り返しながら反乱を芽を刈り取っていった。

 アルタラス担当の長官も例に漏れず、職権を用いて私欲を埋めるような輩だった。だが、数少ない仕事ができる中間管理職によって確実に抵抗勢力の力が削がれ、とうとうル・ブリアスにおける抵抗組織の中心的存在に行き着いたのである。

 

 

 ル・ブリアスから南に延びる街道では、数人の集団が気配を隠すように移動していた。

 

「どうしたんですか? 軍長」

「いや。来る日(再独立)がまた遠くなったなと思ってな……」

「来る日ですか……。我々に情けをくれるお人好しがいればいいですね」

「そんな者があるなら、最初から侵略になんてならんさ」

 

 彼らは統治機構に追われる抵抗組織の主要メンバーだ。

 軍長と言われる中年男性は、元々アルタラス王国で騎士団長を務めており、アルタラスがパーパルディアに敗北した直後。汚名を覚悟で脱走した。

 今まではル・ブリアスで統治機構に対する情報収集に努め、時には町の外れでゲリラ活動も行った。

 悲しきかな、彼らは統治機構に見つかってしまい。ル・ブリアスから逃げ出すことになったのだ。

 

(必ず……必ず祖国を奪い返してやるっ!! 覚悟していろっ!! パーパルディアっ!!)

 

 軍長“ハノーバー・ライアル”は、亡国となった祖国のため、ル・ブリアスから背を向け遠ざかるのだった。

 

 

中央暦1641年 4月6日

-ロウリア王国 南西諸侯領-

 

 

 ロデニウス大陸から戦乱が消えてから3ヵ月。とある諸侯領主が大衆を前に演説を繰り広げていた。

 

「ーーもはやロウリア王国に残り続けることは衰退を意味している 我々は決起し、『デンカール公国』としてロウリア王国より独立するっ!!」

「「「おおぉぉ~~!!」」」

 

 ロウリア王国の南西諸侯領では、まさにパタジンやマオスが予想した分離独立闘争の火が、今まさに燃え上がらんとしていた。

 

「勇敢なるデンカール公国兵士諸君っ!! 我々の最初の戦いは未だに敗者であるハーク王に忠誠を示している北西諸侯領へ進軍するっ!! これはロウリア王国の圧政に対する解放の戦であるっ!!」

「「「おお~~!!」」」

「「「デンカール公バンザァ~イ」」」

 

 兵士達が気炎を上げる中、キーンという音が通り過ぎ、大量の紙が空から降ってきた。

 

「何だ? 紙?」

「空から降ってきてるぞ」

「何か書いてある……」

 

 紙が舞い散る中。一人の士官がデンカール公に届けた。そして、デンカール公は紙の内容を一瞥した。

 

 

『 分離独立勢力に告げる

 

 ロウリア王国の全権は『日本国防衛軍進駐軍総監(以下:進駐軍総監)』に下にある。

 『進駐軍総監』の指示から逸脱した軍の行動は全面的にこれを禁止している。

 『進駐軍総監』の指示なき軍事行動を継続する場合。ロウリア王国のみならず日本国及びクワ・トイネ公国に対する敵対行動と判断する。

 

 ビラ配布から48時間の猶予時間を設ける。時間内に軍事行動を停止し、ロウリア王国に帰属する意思を示すべし。

 

 帰属の拒否、若しくは軍事行動を48時間継続したならば、実力を以て闘争の意志を打ち砕くものとする。

 

 ビラ配布者 日本国防衛軍 ロウリア王国進駐軍総監より

 

 デンカール公は顔色を変えず、横にいた士官に命令を出した。

 

「フンッ……ソーヤ将軍。我々の敵は48時間後にやってくるようだ。直ちに迎撃準備を進めたまえ」

「わかりました。閣下」

 

 将軍は配下の部隊に防御態勢を整えるよう指示を出した。

 

 分離独立勢力の動きは日防軍の無人偵察機と市内で活動するロウリア王国のお目付け役士官によって事細かに記録。報告されていた。

 

 

 47時間後、市内では防衛体制が敷かれていた。

 都市の主要街道に歩兵が陣形を整えていた。

 

 甲冑を身に着けたデンカール公は邸宅のテラスから敵が来るのを待ち望んだ。

 

「ソーヤ将軍。敵がやってくるまであと半刻(約一時間)となったが、敵軍の位置は把握できたかね?」

「ハッ! 我が諸侯領の街道各所から特に敵軍が迫ったという報告はありません。ですので、ワイバーンを用いて奇襲を仕掛けてくるやもしれません。しかし、我が方にも10騎ではありますがワイバーンがあります。既に索敵任務に就いております」

「ふ~む……。威勢のいいことを言う割に、やる気が見えんな」

「閣下の武威にニホンとやらも怖気ずいたのかもしれませんな」

「ほほぅ。そうなると、ハーク陛下はあれだけの戦力を整えて日本に敗北するほどの実力だったわけだな。私の目も相当節穴のようだなっ!」

「となれば、この戦いで閣下の実力がニホンに知れ渡ることになりますなっ!!」

 

 デンカール公は自らを自虐したように言い放ったが、実際はハーク34世の無能さを揶揄したのだ。直属の士官達は主人の言葉に同調した。

 ガハハッと笑いあう中、魔導通信士がデンカール公に報告に忙しなく現れた。

 

「閣下。警戒中の飛竜隊から報告が入りましたっ!!」

「うむ。敵を見つけたのだな? して、何処に現れた?」

「そ、それが……遥か蒼空を複数のワイバーンが北東から南西に向けて通過したとのことです」

「何っ!? 迎撃は?」

「残念ながら、飛んでいる高さもさることながら、早さにおいてもワイバーンで追うことは不可能とのことです」

「ワイバーンを突破する飛竜だとっ!? そうなってはーー」

 

 デンカール公が布陣する兵隊に視線を移すと、丁度頭上から落とされた500kgレーザー誘導爆弾が炸裂した。

 

 猛烈な爆風と砂塵が邸宅に吹き付け、あまりの破壊力にデンカール公たちは茫然としている。そんな彼らから1万mもの空から薄い灰色の翼がじっとカメラを向けていた。

 

「ライアー09からジルコン2。ターゲット1に着弾を確認」

≪ジルコン2からライアー09。着弾了解。第2弾の投下準備に入る≫

「ライアー09からジルコン1。ターゲット2へ攻撃せよ」

≪ジルコン1からライアー09。ターゲット2を攻撃する≫

 

 少し低い高度(約高度9,000m)を2機の攻撃機(A-3B)と護衛である戦闘機(F-4C)4機が飛んでいた。

 警告を無視した愚か者に、鉄槌を下すためだ。

 

 攻撃は速やかに終了し、街道に展開していた貴族軍はほとんど消滅。街に少なくない被害が発生していた。

 

 邸宅のテラスで気の抜けた顔を向け続けるデンカールの後ろに、一人の男が佇んでいた。

 

「ーーデンカール閣下。お判りいただいたでしょう? 王国がどのような敵に屈したのか……」

「クリード……王都からのこのこ戻ってきて、こそこそ動いていたと思ったら奴ら(日防軍)を引き入れるためかっ!?」

「引き入れるなんてとんでもない。2日前の警告を無視するか受け入れるか確認するためにただ連絡していただけです」

「ーーまさか内憂が紛れ込んでいるとは……貴様。その国章は飾りかっ!? 騎士であるなら祖国のため戦場へ赴かぬかっ!!」

「……騎士として名誉ある殉死が国家の未来になるならこのクリード・バンフルメン。すぐにでも命を差し出しましょう。しかし、彼らとの戦いで名誉ある死などありません。肥しのように土塊と共に撹拌され、終ぞ忘れられる未来だけです」

「フンッ!! 足を失って魂も敵中に置いてきたか……」

「閣下。領民を守るための最終警告です。降伏なさい。最低でも今なら領民は守れます」

「……私は守られないわけだ」

「警告を2度無視しています。名誉ある死をお望みなら、自ら刃を首にお立てください。私のこの身では剣を振るのは難しいですから」

 

 デンカール公は腰の刃に手を伸ばすと、一歩踏み込んでクリードの首を切り落とした。

 

「かっ。閣下っ!?」

「所詮こいつは敗残兵だ。聞き入れる意味もない……」

「しかし。展開していた我が軍は壊滅しています。とても戦える状態ではありません」

「何を言うとるのだっ!! 敵は何処にもおらず、ただ爆発したのはこやつが事前に爆破魔法を仕込んだにすぎん。領民から兵士を仕立てーー」

 

 振り向き様にテラスから外を眺めようとしたデンカール公の視界に緑色の細長いツボ状の物体が存在した。そして、誰かが何か言う前に邸宅が跡形もなく吹き飛ばされた。

 

 

「ライアー09からジルコン2。ターゲット5に着弾を確認」

≪ジルコン2からライアー09。着弾了解≫

 

 分離独立を企てた貴族の邸宅は持ち主事灰塵と化した。

 

HQM(進駐軍司令部)からライアー09。ジルコン。ロビン。目標の消失を確認した。帰投せよ≫

 

 進駐軍司令部では常時ライアー09からの映像が届けられており、野戦軍や邸宅を攻撃したことにより、脅威は排除されたと判断された。

 

 

 戦乱が去って約半年。多くの諸侯はハーク王の意思に従い、敗戦の結果を受け入れた。しかし、一部の面従腹背な貴族はこれを好機と捉え、残された資材と領民をつぎ込んで独立の準備を整えた。しかし、所詮私利私欲で始めた一部諸侯の分離独立運動は察知されたところからデンカートと同じように吹き飛ばされ、その後3ヵ国(日本。クワ・トイネ。ロウリア)統合治安部隊による占領下へと入っていった。

 

 ロデニウス大陸に平和は訪れた。しかし、膨大な負債を抱え込んだロウリア。勝利したものの失われたモノも多いクワ・トイネの存在により、ロデニウス大陸は見えないところで少しずつ平穏が失われていくのだった。




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