OCU日本国召喚   作:Bu3og

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第76話

中央暦1641年 8月2日

-ロウリア王国 南西諸侯領-

 

「ーーおい。例の手配書のやつらは見つかったか!?」

「こっちに行ったのは確かなようだが、足跡一つ見つからない」

 

 南洋特有の透き通った海を望める街道に武装した一団が活動していた。彼らは堅気から外れた存在だが野盗ではなく、賞金稼ぎの一団だ。

 賞金稼ぎ集団は日本やロウリア王国の政府から発布された情報を元に捕り物に勤しんでいるのだ。

 

 すぐ近くの街道から少し離れた森の中では、賞金稼ぎを眺める目が複数あった。

 

「ちっ。奴らここから離れませんよ?」

「バトラー。南西に逃げてきたのは間違いじゃないのか?」

「……」

 

 賞金稼ぎから逃げているのはクワ・トイネ内乱を扇動したパストル・バトラーの一団だ。

 彼らはクワ・トイネから脱出した後、上位組織の『国家戦略局』に国外脱出の支援を要請した。しかし、パーパルディア皇国政府はバトラー達を日本に対する贖罪の山羊にするため、血眼になって探していることを内部協力者から伝えられた。

 バトラー達は母国からの支援を諦め、独力でロデニウス大陸から脱出するべく1年近くの時間をかけ、ロウリア王国の南西諸侯領に到達したのだ。

 

 ただ、捕まえる側(日本とクワ・トイネ)もただ黙って逃げられるような真似はしなかった。

 『シンジケートF』の主要メンバー全員に懸賞金を懸けたのだ。さらに、各諸侯に対する魔導通信とは別に、航空機やワイバーンを投入して空から懸賞金ビラをバラ撒くという徹底っぷりだ。

 

 これは終戦の後から加速度的にバトラーたちを追う賞金稼ぎが多くなり、数日に一回は確実に賞金稼ぎに追われる状況になっていた。

 

「……仕方ありません。また追手を誘い込んで切り伏せましょう」

「そうですね。とりあえず、森の中にーー」

 

 バトラーが静かに剣を静かに抜くと、近くの木の陰から百足蛇が賞金稼ぎに襲い掛かった。

 

「ぐぇ……」

「なんでこんな辺鄙なところに魔獣が出てくるんだっ!!」

「百足蛇っ!? 矢が通らないっ!!」

「斧は槌持ちは構えろっ!! 他は足止めにっーーガッ!!」

「くそっ!! 相手はただの人族じゃなかったのかよっ!?」

 

 賞金稼ぎはいきなり現れた百足蛇と対峙するが、手元の武器では歯が立たず。一人。また一人とその巨大な横顎で掴まれたところが嫌な音共に砕かれていった。

 

 最後の賞金稼ぎも結局倒され、辺りに鮮血の水たまりができていた。

 カキカキと百足蛇は手足を唸らせながら佇むと、フードを被った血色の悪い人間が百足蛇に近づいた。しかし、百足蛇はそのフード人間を賞金稼ぎ達のように襲う様子はなかった。

 

「いやぁ……私を追ってきたと思いましたが、違うようですねぇ……」

「……」

 

 惨状を静かに眺めていたバトラーは両手を上げながらフード男に近づいた。

 フード男の方もバトラーの存在に気付いているが、顔を見ると手ではなく口の方が先に動いた。

 

「おやおや? 貴方はこの地で一番懸賞金が掛けられているパストル・バトラーさんではないですか?」

「ーーこちらを知っていながら、なぜ私ではなくそっちの賞金稼ぎを襲ったのですか?」

「それはもちろん。私も賞金稼ぎに追われている立場だからです」

 

 フード男は徐に頭のフードを捲り、自らの名を明かした。

 

「わたしはアデム。フリーケンス・アデムと申します。あぁ名乗らなくても構いません。あなた方の名は空から降ってくるので」

 

 アデムは賞金稼ぎの懐から手配書を見せびらかした。

 

「……なぜ我々を助けたのです?」

「助ける気はありませんでしたよ? 何分彼らが私の遣い(百足蛇)に気付いてしまったのでね。下手に仲間を呼ばれたくありませんし……」

 

 バトラーは軽く思案すると、アデムに提案した。

 

「ミスター・アデム。貴方が良ければ我々と共にロデニウス大陸から脱出しませんか?」

 

 バトラーの提案にアデムは鳩が豆鉄砲を撃たれたような顔を曝してしまった。だが、特に深く考えることなくアデムは質問に応じた。

 

「……いいですよ? このまま大陸の中をずっと動き回るのも大変ですし……協力しましょう」

 

 アデムとバトラーはお互い握手した。そして、彼らの逃亡生活は次の段階へと移り変わっていく。

 

 

中央暦1641年 8月17日

-クワ・トイネ公国 マイハーク野戦演習場-

 

「だんちゃーく……今っ!!」

 

 黒い土が剥き出しになった丘のあちこちで、何かが落下して穴を作っている。

 

 港湾都市『マイハーク』から北西に20kmの位置に軍用地が広がっている。そして、今そこではクワ・トイネ初の機械化部隊である『第1機兵隊』が訓練を行っていた。だが、そこには今まで使っていた車両の姿とは別の車両も縦横無尽に動き回っていた。

 『第1機兵隊』は幾つかの戦いを経験した結果から、最初に配備した車両や運用では多くの弱点が確認された。そこで、クワ・トイネと日本はロウリア戦が終戦したのち、抜本的に『第1機兵隊』の見直しに入った。

 

 従来の『LT-9』はあまりに急場しのぎの装備ということもあり、実際の運用に不具合が多く生じた。よって、すでに製造された『LT-9』は順次改良型である『LT-9B』として改修されることとなった。また、標準的な『LT-9』をベースにある程度用途に応じて器材(※武装は含まない)を脱着して対応する運用を想定していたが、初陣である『公都奪還戦』では限界があったため抜本的に用途別の車両を設計することにした。

 

 

『LT-9』(Sprocketより)

 

【挿絵表示】

 

 

『LT-9B』(Sprocketより)

 

【挿絵表示】

 

 

 まず1丁しかなかった機銃を3丁搭載できるようにしたモデル。

 もともと搭乗状態で全周警戒ができるよう増設アームを装着すれば3丁運用できるのだが、車両配備が優先され終ぞ3丁同時運用の機会はなかった。終戦を機に正式な派生モデルとなったが、乗車可能人数は6人から5人に減じた。ただし、部隊最前列で機銃3丁分の火力が投射される状況は、敵軍にとって悲劇しかないだろう。

 

『LT-9MH』(Sprocketより)

 

【挿絵表示】

 

 

 次いでバージョン違いとして、より装甲車らしくIFV(歩兵戦闘車)に搭載されている35mmチェーンガンを手動装填式に改修し、車体上部に搭載した正しく軽戦車に相応しいモデルも用意された。

 投石器を超える有効射程は、戦場における見えざる死神となるだろう。

 

『LT-9F』(Sprocketより)

 

【挿絵表示】

 

 

 そして次に用意されたのは、低空防御用に12.7mm機銃を連装銃架で搭載したモデルだ。乗員は4名。後部は重心を下げるため低く作られており、銃架の重量もあるため装甲板はない。ただし、有力な防空能力が地上部隊に存在することによって、ワイバーンは安易に地上への攻撃ができないと目されている。

 

『LT-9SPAAG』(Sprocketより)

 

【挿絵表示】

 

 

 最後に、戦闘力を完全に取っ払い輸送用の大型カーゴに切り替えたモデルを用意した。

 

『LT-9T』(Sprocketより)

 

【挿絵表示】

 

 

 新型モデルが順次用意されたということもあり、編成された機兵隊は早速再編されることとなった。

 

『クワ・トイネ軍 旧機兵隊編成表

機兵隊

 ↓→本部機兵隊

 ↓ ↓→兵団指揮小隊

 ↓ ↓→長距離通信小隊

 ↓ ↓→救護/衛生小隊

 ↓ ↓→野戦整備小隊

 ↓

 ↓→第1機兵隊

 ↓ ↓→第1機兵小隊/指揮小隊

 ↓ ↓→第2機兵小隊

 ↓ ↓→第3機兵小隊

 ↓ ↓→第4機兵小隊

 ↓ ↓→補給/整備小隊

 ↓

 ↓→第2機兵隊※編成は第1機兵隊と同じ

 ↓→第3機兵隊※編成は第1機兵隊と同じ

 ↓→第4機兵隊※編成は第1機兵隊と同じ

 ↓→支援隊

   ↓→機兵小隊

   ↓→重整備小隊

   ↓→補給小隊

 

兵団指揮小隊:構成

人員・16名

装備・LT-9(戦闘指揮用)×1台

  ・LT-9×2台

 

長距離通信小隊:構成

人員・12名

装備・LT-9(長距離通信用)×1台

  ・LT-9(通信処理用)×1台

  ・LT-9×1台

 

救護/衛生小隊:構成

人員・11名

装備・LT-9×3台

 

野戦整備小隊:構成

人員・20名

装備・LT-9(整備器材運搬用)×2台

  ・LT-9×2台

 

指揮小隊:構成

人員・22名

装備・LT-9(戦闘指揮用)×1台

  ・LT-9×3台 

 

各機兵小隊:構成

人員・24名

装備・LT-9×4台

 

補給/整備小隊:構成

人員・12名

装備・LT-9(簡易整備用)×1台

  ・LT-9×4台

 

重整備小隊:構成

人員・16名

装備・LT-9(重整備用)×2台

  ・LT-9×2台

 

補給小隊:構成

人員・12名

  ・LT-9×6台

 

人員総数:557人

車両総数:111台』

 

『クワ・トイネ軍 新第1機兵隊編成表

機兵隊

 ↓→本部中隊

 ↓ ↓→兵団指揮小隊

 ↓ ↓→救護/衛生小隊

 ↓ ↓→重整備小隊

 ↓

 ↓→第1中隊

 ↓ ↓→第1機兵小隊/指揮小隊

 ↓ ↓→第2機兵小隊

 ↓ ↓→第3機兵小隊

 ↓ ↓→補給/整備小隊

 ↓

 ↓→第2中隊※編成は第1中隊と同じ

 ↓→第3中隊※編成は第1中隊と同じ

 ↓

 ↓→砲兵中隊

 ↓ ↓→指揮小隊

 ↓ ↓→第1砲兵小隊

 ↓ ↓→第2砲兵小隊

 ↓ ↓→第3砲兵小隊

 ↓ ↓→補給小隊

 ↓

 ↓→支援隊

   ↓→機兵小隊

   ↓→重整備小隊

   ↓→補給小隊

 

兵団指揮小隊:構成

人員・48名

装備・LT-9(戦闘指揮用)×1台

  ・LT-9(長距離通信用)×1台

  ・LT-9(通信処理用)×1台

  ・LT-9B×3台

  ・LT-9MH×2台

  ・LT-9SPAAG×2台

 

救護/衛生小隊:構成

人員・10名

装備・LT-9B×1台

  ・LT-9T×2台

 

野戦整備小隊:構成

人員・20名

装備・LT-9(整備器材運搬用)×2台

  ・LT-9B×2台

 

指揮小隊:構成

人員・22名

装備・LT-9(戦闘指揮用)×1台

  ・LT-9B×2台

  ・LT-9MH×1台

  ・LT-9SPAAG×1台 

 

各機兵小隊:構成

人員・32名

装備・LT-9B×3台

  ・LT-9MH×3台

  ・LT-9SPAAG×1台

 

各砲兵小隊:構成

人員・32名

装備・LT-9B×4台※120mm迫撃砲を牽引

  ・LT-9(長距離通信用)×1台

  ・LT-9(通信処理用)×1台

  ・LT-9T×2台

 

 

補給/整備小隊:構成

人員・12名

装備・LT-9(簡易整備用)×1台

  ・LT-9B×1台

  ・LT-9T×1台

 

重整備小隊:構成

人員・18名

装備・LT-9(重整備用)×2台

  ・LT-9B×1台

  ・LT-9T×2台

 

補給小隊:構成

人員・12名

  ・LT-9T×6台

 

人員総数:562名

車両総数:137台』

 

 全量更新にはかなり時間がかかることとなるが、配備状態にかかわらず稼働車両による訓練は行われていた。

 今行われているのは、120mm迫撃砲による射撃訓練だ。

 

「ーー弾着修正。仰角83°(ど=度)50(ぶ=分)。射角353°30’」

「「「仰角83°50’。射角353°30’了解っ!!」」」

「……」

 

 観測班の近くでは、機兵隊隊長(連隊長相当)であるコーフハルトが着弾予定地点と地図を交互に視線を往復させていた。

 

 発車される迫撃砲の音を聞きながら、着弾地点に目を凝らした。残念なことに、半数以上が風に流されて着弾予定地点からずれていた。

 

「はぁ……難しいなぁ……」

「やっとるなぁ。コーフハルト隊長」

 

 やるせなさを感じるコーフハルトに声をかけてきたのは、戦車教官である大橋だった。

 

「お疲れ様です。教官。機動訓練の方は終わったのですか?」

「カリキュラムもう少し詰めて訓練したかったが、使用できる燃料が多くないから今日の分はこれで終わりだ。及第点を上げれる程度には育ってる」

こちら(砲兵中隊)とは大違いですね」

「こっちと比べたら彼らは実戦も経験したし、なにより訓練量が違う。それに、砲兵とは言いつつ君らが使う迫撃砲は的に当てる物じゃない。敵を加害範囲で包むように使うものだ」

「弓やバリスタで戦ってきた我々には難しいですな。その考え方は……」

「戦争になれば有効性がわかる。まっ、そんな状況は来てほしくないがね」

「ハハハッ。同感です大橋教官」

 

 実戦を経験したクワ・トイネ機械化部隊は、未来の軍隊(日防軍)という師匠の教えを受けながら、第3文明圏でも有力な軍隊へと少しづつ進化していくのだった。




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