"にわか"は言う「だから『推しの子』だって言ってんだろ!」   作:あるミカンの上にアルミ缶

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第9話

 授業参観日が終わり、早一〇日が経つ。

 結局、三者面談でも彼女の母親は来なかった。

 もしかしたら見れるかもと期待していた分、おばちゃんと一緒に帰った後、自室でちょっとだけ落ち込んだ。

 

 授業参観以降もあいちゃんとの関係は相変わらずといった感じ。

 放課後は一緒に帰り、雑談しながらいつもの場所で別れる。

 そんな生活を繰り返していたある日。

 

 

 登校し教室に入れば、そこにはいつもの如くもうあいちゃんの姿が。

 まあ俺が結構ギリギリに登校してるから、殆どの生徒は既にいる事が多い。

 今日みたいに月曜ならば、自堕落である俺にとっては尚の事。

 いつも通りクラスメートから挨拶されては挨拶してを繰り返し、やがて自分の席に辿り着く。

 

「おはよう、あいちゃん」

 

 そこでいつもの挨拶。

 

「おはようっ、カズマくん!」

 

 いつもの完璧な笑顔で、もちろん彼女は返してくる。

 そういや、これまでの間で俺が名前呼びしているから、彼女からも下の名前で呼ばれる様になった。相変わらず間違ってるけど。

 最早、俺が今まで一度も名前を間違っている事を訂正していないから、本気で俺の名前が木山カズマだと認識している可能性だってある。

 まあ名前が間違われたって、特にイラつく事もないし困んないから訂正してないってだけである。

 それはさておき。

 

 そんな彼女にふと違和感を覚える。

 ……ふむ、これは放課後になったら聞いてみるか。

 ない筈の違和感を感じるなんてまるでニューなタイプになったみたいだわー、なんて下らない事を考えつつ、担任が来る前にランドセルから必要な物を取り出そうと中身を漁った。

 

 

 

 

 

 

 

 授業が全て終わり、掃除も終わらせれば残るは帰宅というイベントのみ。

 帰宅時は同行者がおり、それはいつもの如く瞳に星を宿した少女。

 天才的なアイドル様、星野アイ。

 

 並んで歩き、校門を出る。

 そこからようやく雑談になるのが、何故かいつものルーティーンと化していた。

 横目で彼女を捉える。

 相変わらず対外的に完璧な表情で、楽しそうに俺の横を歩いていた。

 

 けれど俺の目にはどうしても楽しそうに"している"様にしか見えなかった。

 

 

「あいちゃん、何か変わった事でもあった?」

 

 何気無しにそう訊ねれば、

 

「んー、いつも通りだよ?」

 

 予想通りの返事。

 まあそう来るなら仕方ない。

 

「そっかー」

 

「カズマくんからは今日の私って、なにか違って見えたの?」

 

 相槌を返せば、首を傾げながら質問が飛んでくる。

 

「ちょっとだけね」

 

「へー、どんなところが違うって思ったの?」

 

「内緒ー」

 

「えー、おしえてよー!」

 

 俺の言葉に頬を膨らませては抗議の声を返してくる。

 もう、こういう表情も出来る様になったのか。

 とりあえず、通行人が多いここでは話せそうもない。

 

「教えなーい!」

 

 そういって軽く走り出せば。

 

「おしえてよー!」

 

 そう言って、慌てて彼女も走り出す。

 傍から見れば、子供たちの微笑ましい青春の一ページ。

 あいちゃんには俺から見てまだ完璧じゃない箇所は伝えない。

 俺からすれば、彼女に対する精神力を維持する期間を少しでも伸ばす延命措置……!

 

 

 

 

 

 

 

 子供の体力は無い様で意外とある。

 追いかけっこをしながら、気付けばいつもの分岐点に到着。

 軽く息を切らしながら立ち止まれば、続けて彼女も立ち止まった。

 

「もー、いつになったらおしえてくれるのー?」

 

 言葉に見合った完璧な表情で、声がかかる。

 

「あいちゃん」

 

「なにー?」

 

 クズな俺が望んだイベントなのか、それを今から確かめる。

 

「――今日さ、俺んち来てみない?」

 

「えっ……?」

 

 久々に見た僅かな困惑顔。

 けれどそれは。

 

 

「うんっ、行ってみたい!」

 

 

 すぐに塗りつぶされる。

 とりあえず彼女から言質は取れた。

 

「じゃあ行こっか」

 

「うん!」

 

 歩き始めれば彼女もまた、楽しそうに歩き始めた。

 まあ俺んちに行っても対してやる事はないんだけどね。

 悪いな、あいちゃん。

 これはクズな俺が考えた――。

 

 

 

 ――星野アイ(推しの子)その母(推し)との関係を、両方維持する為の生存戦略。

 

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