"にわか"は言う「だから『推しの子』だって言ってんだろ!」   作:あるミカンの上にアルミ缶

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第15話

 晴れて中学に上がった。

 俺は、おばちゃんたちに黙って、中一で受けられそうなオーディションを探していた。

 スマホもなければパソコンも無いので、探すのでもかなり労力がいる。

 

 あいは事務所に所属のタイミングで社長が里親となり、そのタイミングで施設を出る事となった。

 学校も違く、接する機会がめっきり減った。

 だが、稀に施設に帰ってきて会った時は、やれレッスンが大変だのなんだの愚痴を聞かされる。

 変わらず無表情も多いが、それでもたまに笑っている顔を見ると、やはりやりがいはあるんだろう。

 

 そんなある日、俺はオーディション会場に来ていた。

 自分なりに探しまくって、ようやく見つけた。

 作品のオーディションではなく、事務所のオーディション。

 以前映画の公募オーディションに参加してみたら、年齢的に事務所に所属していないと起用が出来ないと門前払いをくらった為だ。

 調べた感じ大手では決してないが、自分の通える範囲だとここしか無かった。

 会場に入ると、参加者と思しき少年少女が親と一緒にずらっと並んでいた。

 大手でもないのにこんだけ集まんのか、なんて呑気に考えながら最後尾に並び、受付を済ませ指定された席で順番を待つ。

 電話で応募した際に聞いていた内容は、面接プラス演技が行われるっぽい。

 演技は前世で昔声優の養成所に通っていた事はあるが、そんな経験しかないので、やはり緊張してくる。

 面接に関しては特に緊張はしないが、演技で落とされる可能性もあるので、どうなるか分からないがインパクト重視で行こうと考えていた。

 

 俺の前に座っていた親子が面接を行っている部屋から出てくる。

 小学校中学年くらいだろうか「ちゃんと出来て偉いわよー」なんて母親に頭を撫でられてて非常に微笑ましい。

 それを見送り、俺の番なので立ち上がり、ドアを二回ノック。

 はい、という中からの返事でドアノブを回して「失礼します」と一礼。他の方法が分からんから就活スタイルでいくしかない。

 両手でドアを閉めて、部屋の中央にある、面接官二人がいる前の椅子の横に立つ。

 

「どうぞ、座ってください」

 

 公平を期す為なんだろうか、大人に話す口調でそう言われ改めて「失礼します」と声を掛けて座った。

 

「それでは自己紹介をお願いします」

 

「本日はお時間を頂き、誠にありがとうございます。木村カズヤと申します。先月小学校を卒業し、現在中学一年生となりました。生まれた時から両親はおらず、児童養護施設にお世話になっています。施設では主に小さい子供たちの相手をする事が多く、弟というよりは兄という感覚が自分自身では強いと分析しています。演技に対して興味がありそれを生業としたい気持ちは勿論の事、御社の社風に共感を抱き、微力ながら益々の発展に寄与出来ればと至り、オーディションに参加致しました」

 

 長くなってしまい申し訳ありませんが以上です、背筋を伸ばしたままそう伝えれば、面接官二人の表情は如何にも呆気に取られていた。

 何故に?

 同時に冷や汗が出てくる。

 やばい、自己紹介なのに自己紹介だけでなく、自己PRとか全部やってしまった……!

 まずいぞ、この後自己PRとかきたら、アドリブで誤魔化さにゃいけないけど、思い付かんぞ……。

 内心焦る俺を他所に、面接官の一人がやがて咳払いをした。

 

「丁寧な自己紹介でした。ありがとうございます」

 

 そう言うと、隣の面接官もまた頷いた。

 こ、これはまだ挽回出来る系なのか……?

 

「ではこれからいくつか質問をしていきます」

 

 とりあえず流れに乗り続けるしかねえ、そう考え「はい!」と元気に回答。

 

「それではまず、何故演技の道に進もうと思ったんですか?」

 

 おー、ここら辺は事前に考えてたやつでいける。

 

「友達の女の子がスカウトされて、アイドルになりました。彼女はあまり人を好きではないんですが、人を好きになりたい、愛したいという気持ちがあり、最初は嘘でもいいから愛してると言い続けていればいつか本当に愛せる様になると信じ、その世界に飛び込みました。そんな彼女を見て、例え演技という本当じゃなくとも、見ている人を幸せにさせ、感動させる事がしたいと思い、役者になりたいと思いました」

 

 俺の言葉に「なるほど」という声。

 

「その思いはとても素晴らしい。だが、全員が全員芝居を嘘でやっている訳じゃない。役者という自分を消して、本心で演じる人だっている。その事は忘れないで欲しい」

 

 面接官の言葉に「はい!」と返す。

 彼の言い分は最もだ、色んなやり方で芝居をしている役者がいるんだから、それを否定する訳もない。

 そして、俺の言葉だが、あいの想いを否定しないでいてくれたこの面接官に、心の中で感謝を述べる。

 

「では次の質問です」

 

 若干しんみりとした空間を消す様に、もう一人の面接官が声を上げた。

 

「どんな役をやってみたいと思いますか?」

 

 どんな役かあ。

 正直、特に無いか何でもいいが答えだ。

 だが就活面接でも、これらの回答はあまり望まれなかったりする。

 ならば言い方を変えよう。

 強いて言うならという役を挙げる。

 

「他の人があまり目指さない役を出来る様になりたいです」

 

 質問をした面接官の眉が動く。

 

 

「例えばドラマや映画にいる通行人や、背景として映る人たち。もしくは死体役でもいいです。彼らは絵としてみればエキストラですが、中に入ればそれぞれの人生があり考え方があり価値観がある。通行人、村人Aといった、単語しか台本に記載されない人物の人生を、完璧に演じられる様になりたいです」

 

 

 結果、エキストラをやらせてくれという事。

 面接官たちは、やはりというか驚いていた。

 大人でこれを言えば、ある意味額面的に訳されて物は言いようと捉えられる。

 しかしそれが子供であれば? 更には孤児だ。

 この言葉の裏を勝手に曲解して、拡大解釈してくれる。

 

「そ、そっか、正義のヒーローとかそういうのはやりたくないの?」

 

「やりたくない訳ではないんですが、他にやりたい人も多いので。なら僕は誰もが拾わず零れ落ちてしまう人を助けられる役者になりたいです」

 

 完全に物は言いようである。

 ん? どうした面接官の人、めっちゃ汗かいてるけど……。

 慌てた様にポケットからハンカチを取り出し、顔の汗を拭きだした。

 

「じゃ、じゃあ、このまま実技にいきましょうかっ」

 

 二人とも若干様子がおかしい。

 妙にそわそわしまくってる。

 首を傾げたいが、面接中なので背筋ぴんで維持する。

 

 

 その後、面接官の前で言われた通りの芝居をした。

 一人芝居で結構恥ずかしかったのが一番の思い出だ。

 そんでどう頑張っても、泣く芝居だけは出来なかった。だって涙でないんだもん。

 

 

 結果はどうなるか分からんが、とりあえずオーディションを受け終わったという謎の達成感に包まれながら、帰路についた。

 

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