"にわか"は言う「だから『推しの子』だって言ってんだろ!」 作:あるミカンの上にアルミ缶
また、また、遅くなってしもうた……!
カズヤ君達を家まで送り届けた帰り道。
すっかりと夜が更けた景色の中を、車で走り抜ける。
運転の傍ら、思考するのは過去と未来。
情報整理を行うのが、一人になった際の俺の常だった。
思い浮かべるのは、カズヤ君に対する事。
気が付けば随分と長く居着いてしまっているが、突如、彼の家に住人が増えた。
星野ルビー。
新人アイドルグループ"B小町"のメンバー。
いつも通り仕事終わりにカズヤ君を送り届けた際。
いつもとは違い、カズヤ君から呼び止められて、彼の家にお邪魔する事となった。
彼の後に続いてリビング入れば。
「おかえりっ、カズヤ君っ!」
そう言って彼に抱きつく人物に、驚愕した。
驚愕せざるを、得なかった。
真っ先に抱いた思考。
何故……アイさんが、ここに。
その言葉だけが、頭に浮かんだ。
だが、少ししてその言葉に違和感を持つ。
確かに現在のアイさんも、容姿で言えば二十歳と言われても信じられるかもしれない外見。
しかし目の前の女性は――それよりも幾分か幼く思えた。
カズヤ君に抱きついた少女が、俺に気付いて彼から離れる。
そしてこちらへと正対し、頭を下げた。
「星野ルビーですっ! カズヤ君のお嫁さんになる為に来ましたっ!」
その言葉と同時に、カズヤ君へと目線を向ければ、彼は恐る恐るとこちらを向いてどこか乾いた笑いを上げる。
漸くと、理解出来た。
同時に、久しく感じてなかった頭痛が現れ、思わず片手で押さえる。
溜息を吐かざるを得なかった。
残る一人へと静かに顔を向ければ、こちらへと微笑んでいる姿。
漸くと、把握出来た。
再びの溜息が零れる。
やがて俺も挨拶を返しカズヤ君のマネージャーだと告げれば、彼と一緒に出来る仕事は無いかと元気良く訊ねてきた。
目を輝かせる彼女にそんな案件は無いと告げれば、両頬を膨らませてこちらを睨んでくるのだった。
……全く、デビューしたてのアイドルがいきなり割り込める様な仕事を、カズヤ君に受けさせる訳が無いというのに。
暫くと俺を睨んでいたが、カズヤ君が宥めれば笑顔に戻り再び彼へと抱きついたのだった。
それを見て、何度目かの溜息。
カズヤ君はルビーさんを紹介する為に俺を家まで上げた様で、その後は少し雑談をした所で、残りの仕事があるからと彼の家を後にした。
その過去を、思い出す。
星野ルビー。
彼女は、俺が錯覚する程に、昔のアイさんに酷似していると言えた。
だが髪の色、瞳の色の違いは大きく、恐らくは並ばなければ瓜二つだとは思われないだろう。
しかし俺が初邂逅時に錯覚した理由。
それは俺が、アイさんを注視していたからだった。
彼女の初めてのドームライブ以降から数年間は、特に。
アイさんの一挙手一投足を、観察し続けた。
何故なら彼女は俺の中で、救世主でありながらも要注意人物だったから。
どちらも、カズヤ君に対して。
一時はカズヤ君の行動原理が彼女の為に究極なまでに傾いており、それを受け止めようとしていた彼女であれば、カズヤ君が俺達の前から消えるのを阻止してくれる救世主になるんじゃないかと思った。
だが、刺された彼を救出する際に見せたあの、まるで万物を吸い込むかの様な奈落の瞳が、俺に警戒心を残させたんだ。
その懸念は見事に的中。
こちらで別途動き、予防線を張っていたのが功を奏した。
病院から態々引き抜いたあの子が、良くやってくれた。
アイさんとは正反対の性質を持った彼女が、あの時のカズヤ君には必要だったから。
アイさんと別れたと言った時のカズヤ君が俺達の前から消えずに済んだのは、彼女の功績が大きい。
何も求めず、ただそこに居るだけで良い。
そんな性質の彼女だからこそ、カズヤ君は無意識に、その存在を自分の中に引き入れたんだ。
だが、アイさんを守るために護衛を雇い続けていた件が警察にバレて、逮捕されそうになった時は俺達の静止を振り切ってカズヤ君は一人、警察署に向かった。
その頃のカズヤ君は俺達から見ればどこか様子がおかしく、警察からの任意出頭で一気に最悪の方向へと舵を切ったのだ。
カズヤ君が受け入れた彼女の言葉も、俺の言葉も通じず……"これがきっと、正しい終わり方だからさ"と告げられれば、以降の俺達はカズヤ君を引き留める言葉すら、言えなくなった。
けれど、カズヤ君は無事に帰ってきてくれた。
彼を直接止める事は出来なくとも、何か出来る事はないか。
そう考えた俺達がカズヤ君の家を出て暫くしてから、彼から連絡が入る。
逮捕はされなかったと。そして続く謝罪の言葉。
慌てて彼の家に向かえば、いつも通りテーブルの前で座っているカズヤ君の姿。
カズヤ君が天使ちゃんと呼ぶ彼女が、涙を拭う事もせずに、彼へと抱きついたのだった。
そして語られた顛末。
逮捕されようとしていたカズヤ君だったが、そこにアイさんが乱入し、無罪放免となった。
だからやはりアイさんは、俺にとっての救世主でありながらも要注意人物。
その後は三人で話を詰める。
というよりも、こちら側の意見を無理やり彼に呑ませた。
カズヤ君が少しでも渋れば、僅かに横へと目線を送り、彼女が涙目を浮かべて彼の反論を潰す。
この件で、俺は漸くと理解したんだ。
カズヤ君が俺達の前から消えない様にするには、周りを埋めるだけじゃ駄目だと。
彼自身にも何らかの楔を打ち込まなければ、彼はただ流されるままに、消えてしまうかもしれない。
故にここでも、彼女が役に立った。
一方的にこちらから言い放つのではなく、彼女を使って罪悪感を抱かせる事により、そういった行動を一人で勝手に決める事を、自発的に抑止させる。
よって、カズヤ君との間に結んだ条約。
何かあれば、必ず手伝う。だから絶対に、相談も無しに自分が不利になる事をしてはいけない。
その一文を呑ませたのも、彼女からカズヤ君へと罪悪感という精神攻撃が行えたから。
そこからはより一層、彼女はカズヤ君の事を察する能力に磨きがかかってきた。
だから安心して俺も、プライベートの事は彼女に任せて、外堀だけに集中出来る様になった。
事務所へと車を走らせながら、考える。
突如、カズヤ君の同居人となった、星野ルビー。
彼女の存在はやはり、どこかアイさんを彷彿とさせるものがあった。
容姿だけではない、その瞳の奥に秘められたカズヤ君への過度な執着心。
ルビーさんの奥に、あの時のアイさんの姿が重なって見えた。
だから当初は警戒を強めつつ、彼女に関する情報を集めた。
いつからカズヤ君との関りを持っていたのかは、定かではない。
けれど、アイさんに匹敵する執着心は、俺の中である種の恐怖を呼び起こさせていた。
どこか無知。けれども過度な執着。
それが、大分と落ち着いている現状の拮抗を崩す引き金にならないかを、心配した。
だが、それも今の所は杞憂で済んでいる。
偶に様子を伺いにカズヤ君の家に行けば、想像よりも遥かに、和気藹々とした雰囲気。
ルビーさんが所々で嫉妬や、威嚇を放ったりする事はあれども、初邂逅時に抱いた不安は限りなく小さくなっていった。
それもこれも全て、天使ちゃんと呼ばれる彼女が、上手く手懐けているから。
カズヤ君から聞けば、どうやら二人は初対面の時に、対峙したらしい。
詳しく聞いた中身を鑑みれば、どうやらルビーさんは彼女に完全に気圧された様だ。
よって無意識に上下関係の構造が出来上がり、自分を目標にさせる事で彼女はルビーさんを制御下に置いた。
だからこそ時折、嫉妬や執着を出させて発散させながら、三人での生活を円滑に回しているのが分かった。
本当に、良い拾い物をした。
愛玩として可愛がられる可能性はあると思って手に入れたアヒルが実は、白鳥だったとは。
元々彼女への信頼を置いていたが、これで更に強まった。
だからこそ外堀を埋める作業に、改めて戻れたのだ。
そこに舞い込んできた、一通の連絡。
カズヤ君の公式アカウントに届いた、ダイレクトメッセージ。
そのアカウントは普段、カズヤ君が使う時に不要な情報を見せない為に俺が管理している。
彼はプライベートでも知人との連絡以外でスマホを使わない。
強いて言えば何かを探す時に、ネットで検索をするくらいだ。
だからこそ、カズヤ君が見る事の無いダイレクトメッセージ。
送り主のアカウントは、まさかの人物。
人気漫画"東京ブレイド"の作者、鮫島アビ子。
彼女から相談があるという旨のメッセージが届いていた。
即座に返信を返し、俺がカズヤ君のマネージャーである事。
カズヤ君へと取り次いで問題が無い内容なのかを確認する為に、電話番号を教えかかってくるのを待つ。
だが一向に、掛かって来ない。
痺れを切らして彼女へと再びメッセージを送る。
忙しいのならば、いつならアポイントが取れるのか。
メッセージはすぐに返信されてきた。
今でも大丈夫だと。
思わず、頭痛が再発した。
電話番号宛に、メッセージでも良いから送ってくれればこちらからかけ直す旨を送れば、また暫くと時間が経ってから漸く、一通のメッセージが届く。
その本文には一言、自分の名前だけが書かれていた。
その内容で、凡そを把握。
彼女の性格を、何となく理解出来た。
届いた番号へと、こちらから電話をかければ、鳴りやまないコール音。
痺れを切らしそうになったその時、漸くとその音が消えた。
「……………………アビ子…………です……」
その声を聞いて、頭の中で計算する。
間の長い会話を何とか繰り返し、やがて本題を入手出来た。
"東京ブレイド"の舞台を無くすのを、手伝って欲しい。
それをカズヤ君に頼む理由は、"今日は甘口で"のドラマを消した実績があるから。
やがて、計算の結果が出た。
彼女は、使えると。
過度な人見知り、けれども自分の中で絶対に譲れないプライドがある。
繊細だが大胆。
しかし、頼るべくはカズヤ君しかいない。
そんな彼女の性格、状況が、実にカズヤ君好みだ。
何とか話を続ければ、どうやら吉祥寺先生とも旧知の仲らしい。
これは、僥倖。
新たな外堀だけでなく、一度は手放した大きな外堀が、再び手に入るかもしれない。
イヤホンを付けてアビ子先生との通話をしながら、スマホの画面で吉祥寺先生へとメッセージを送る。
大事な用件があり、カズヤ君の家へと来ていただく事は出来ないか、と。
返信はすぐにあった。
それは一体、どんな用件か。
時間があまり無いのでお送りする際の道中で話すと送れば。
やがて了承の返事が来た。
この内容で彼女が断らないだろうと思っていたから、その結果に驚きはない。
カズヤの乱で、彼にどこか惹かれている彼女は、食いつくだろうと考えていたから。
唯一の不確定要素は、漫画家としての本業。
作品の納期間近かどうかという事だけが定かでは無かったが、問題は無かった様だ。
アビ子先生には迎えにあがる際の住所を聞く時に、心配であれば一度事務所に俺の存在と電話番号が間違いなくカズヤ君のマネージャーなのかを確認してから答えるか、指定した場所に向かうでもいいと告げたが、然程間を置かずに住所を口頭で教えてくれた。
その事から、彼女が如何にカズヤ君の手を借りたいのかが理解出来る。
だからこそ何としてでも、彼との接点を作りたいと思えた。
それぞれの住所を入手し、迎えに上がる時間を伝え電話を切った。
続いてその旨をカズヤ君に連絡したが、想定通り問題無かった。
そして迎えに行くまでの残り時間で、"東京ブレイド"という作品について調べ上げる。
漫画よりは、舞台の内容を中心に。
カズヤ君がこの舞台に興味を持った時の為に、はたまたアビ子へと使っても良い様に、同じ脚本家や総合演出が関わっている舞台のチケットを手配。
カズヤがもしかしたら観に行くかもしれない、と伝えれば一発だ。
お二人を迎えに行く前にチケットを取りに行く。
その道中で、電話をかけた。
出た相手に、もしかしたら"東京ブレイド"の舞台で、"仕事"があるかもしれないとだけ伝えれば、溜息を吐きながら了承。
こうしてお二人を連れて、カズヤ君の家に向かったのだった。
車内で二人が鉢合った際、状況を理解した吉祥寺先生がアビ子先生を叱っていたが、俺の知った事ではない。
その結果は、上々。
アビ子先生もまた、無事にカズヤ君の外堀となってくれた。
吉祥寺先生は言わずもがな。
いや、今まで以上に厚い堀へとなってくれただろう。
何せ彼女はカズヤ君に対して、真っ向から叱れる人物だった。
それでいながら彼の卑屈さを許さず、絶対に認めない。
それが彼の愛した作品の為というのだから、カズヤ君も自分の考えを改めるしかなかった。
ここにきてカズヤ君に対する包囲網が、より一層強固なものになったのだ。
故に最近はアビ子先生からの電話や、偶に吉祥寺先生からの電話を受ける姿を見かける。
そうやって、どんどんカズヤ君が逃げられない壁を作り続けてくれ。
事務所は間もなく。
そこで思い出した。
そういえば、その"東京ブレイド"の舞台がそろそろ千秋楽を迎えると。
スケジュールを空ける事が出来ず、結局カズヤ君が観に行く事は無かった。
その事で電話越しのアビ子先生から色々言われていたみたいだが、致し方ない。
ともかく、まだしっかりと礼を述べてなかったか。
そう思い出し、対象へと電話をかける。
『はいはい? また何か、"仕事"の話かな?』
電話から聴こえてくる、男性の声。
「いえ、遅くなってしまいましたが、お礼をと思いまして」
俺の言葉に、安堵の溜息が聴こえた。
『なら一安心。それで? ほんとにお礼ってだけ?』
どこか信じられていない態度に、こちらも言葉を返す。
「ええ、今回はお礼だけで、他意はありませんよ?」
『……まあ、それを信じるしかないって事ね、俺は』
無事に納得してくれた様で何より。
「それで、その後は何か問題はありませんでしたか?」
こちらの問い掛けに、暫し悩む様な声。
『んー、そうだなぁ。強いて言えば……久しぶりに雷田くんと会った時に"もう二度とあんな事言わないでくださいよッ? マジで脚本書き直されるまでってか、無事に終わりが見えてきてやっと激しい胃痛から解放されたんですからッ! ダメっす! ほんっとにッ、星の王子様だけは絶対に許してくださいッ! お願いしますッ!"って、泣きつかれたくらいかなあ』
まあ、それは何も問題が無かったという事だ。
『とりあえず、星の王子様はどこからでも見てるだろうからちゃんと原作者と脚本家が納得出来る内容にしてあげるんだよ? って言ったら何か魂が抜けたような顔してたけど……まあ、大丈夫でしょ』
本人もその認識なのだから、尚の事。
『それで、そっちはどんな感じに纏まってるのかな?』
かけられた言葉に、口を開く。
「以前よりも、良い纏まり方をしたかと」
『だったら、手を貸した甲斐があったってもんだよ』
声が続く。
『……それで、今後の動きは?』
問い掛けられた内容に、暫し逡巡。
やがて口を開いた。
「今の所は何も。ですが、何かの終わりは何かの始まりとも言いますので……暫くはカズヤ以外の案件を入れないでいていただけると助かります」
俺の言葉に、苦笑が届いた。
『それじゃ、いつも通りって事だね。とりあえずスポンサーには、カズヤ君最優先で良いですよね? ってだけ、改めて伝えとくよ』
だから、この男と手を組んだのだ。
「お手数をお掛けして申し訳ありません」
『また、思っても無い事を。でもそれは、お互い様かな?』
その言葉に、内心で肯定する。
俺も彼も、どちらもがお互いの為に協力してるんじゃない。
カズヤ君の為に協力しているのだから、自分がすべき事を万全にこなすのは当たり前。
仕事が出来る上に、スタンスも同じなのだから、この男とは非常に相性が良い。
「ではまた、何かありましたら」
『はいはい。"お仕事"のご連絡待ってますよっと』
そう言って電話が切れる。
事務所へと着き、カズヤ君の案件に関して変わった事が無いかを確認。
何も問題無く、そのまま社長室へと向かう。
事務所に向かっていたのは、呼び出しを受けていたから。
扉をノックし、中から声が聴こえ入室する。
「失礼いたします」
室内には、営業部、広報部、経理部、人事部、総務部の長。
そして、その奥に社長が居た。
彼らの前に立つ。
やがて、社長が口を開いた。
「佐山、君に昇進の話が出ているが……受けるか?」
その答えに、悩む事無く答える。
「辞退します」
俺の返答に社長は、暫く俺の顔を見る。
やがて。
「分かった。では、今まで通りで良いんだな?」
笑みを浮かべた社長に頷く。
「はい。変わらず、業務を遂行させていただきたく」
俺の言葉に頷きが返ってきた。
その瞬間、他の面々が溜息を溢す。
営業部の長が、微かな笑みを浮かべながら俺へと口を開く。
「では佐山、現在の業務内容を教えてくれ」
その言葉に、総務部の長が続ける。
「何か"改善点"があれば、早急に正す必要がありますからな」
告げられた言葉に、全員で頷く。
「では、僭越ながら私の口から説明いたします」
そう言って、俺は彼らに話した。
仕事のバランス。
その仕事での負荷率。
カズヤ君の精神状態の推移。
健康状態。
"東京ブレイド"の舞台への間接的な接触。
各仕事に対する姿勢の変化、等々。
「以上です」
ルビーさんやアビ子先生、吉祥寺先生の事は話していない。
それは俺が守りたいカズヤ君のプライベートであり、この場にいる面々も尊重しており詮索する事は無い。
彼のプライベートの管理は、俺に一任されていた。
よって彼らに伝えたのは、"東京ブレイド"の舞台でカズヤ君が関与した内容と事実のみ。経緯に関しては説明を求められない。
けれど彼らも、俺と同じだけカズヤ君に接している人々。
ある程度の経緯は、各々な同じものを浮かべているんだろう。
だから、ここで話している内容は。
広報部の長が口を開く。
「では広報部としては、舞台方面への広報を僅かに減らし、その分CMへの広報を増やす様にメディア向け、一般向け、自社ページの修正を実施します」
総務部。
「総務部としては社員や所属タレントといった社内向けに、舞台への案件増加を図る様な知らせを出します。それで、営業部も構いませんね?」
営業部。
「問題ありません。こちらも他のタレントが舞台への露出を増やせる様に、使うつもりです。微かに火は残ってるでしょうから、こちらから向かいやすいですし、合わせて消す様に促します」
経理部。
「もし忙しい場合は領収書だけでも頂ければこちらでサポート出来る様に、人員を整理しておきます」
人事部。
「例え案件を取れずとも、消す。それも人事考課に含める様、こちらでも体制を整えておきます」
各部署の報告を聞いた社長が、頷く。
「何かあれば私が責任を取る。遠慮せずやってくれ」
その言葉に、全員が頷きを返した。
まるで何かを隠した様な話し合い。
これは極秘の業務であり、限られた者にしか知らされていない。
それは上司部下の関係でもありながら、他部署同士の関係でありながら、誰かを想う家族の様でもある。
だから、絶大な業務だ。
だから……。
カズヤ君。俺達は君を、絶対に消えさせはしない。