"にわか"は言う「だから『推しの子』だって言ってんだろ!」   作:あるミカンの上にアルミ缶

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第3話

 待ちに待った放課後である。

 ちなみに今日の給食は鯖の味噌煮でめちゃくちゃテンションが上がった。

 クラスの男どもは「このあと公園でサッカーな!」なんて叫びながら瞬く間に廊下へと走り去っていく。

 意味は違えど花より団子。

 そら男の子だから、短い休み時間とは違い、長く遊べる放課後になったら色恋よりも遊びが優先になるか。

 

 どちらにしろ青春してるなあ、なんて思ってみたり。

 

 女子も女子で、数人で固まりキャッキャしながら廊下へと小走りをしていく。

 しかし男子との違いは明確で。

 

「木村くんっ、星野ちゃんじゃあねー!」

 

 なんて殊勝にも挨拶をして帰る子が多い。

 前世の小学生の時は当然ながら一切気にしていなかったが、やはりこうしてみると女子は早熟と呼ばれる理由が明確に分かる。

 

 しかし、早熟も良い事ばかりではない様で。

 多くの女子の挨拶は少しだが、俺と星野アイに対して声のトーンが違っていた。

 恐らく彼女たちは自覚はしていないだろう。

 無自覚に、だが確実に俺に対して愛想を振りまいた。

 そしてそれは俺に対してではなく彼女(一番星のアイドル)に見せつける為に。

 だがこれしきの差は子供には分からない程度のニュアンス。

 大人の目線から見れば明確ではあるが。

 

 けれども子供でありながら、いや子供である以前に完璧で究極のアイドル(嘘吐き)である彼女には通じない。

 女の子達は無自覚だっただろうが微かに、しかし自我を持って俺と彼女への声を使い分けた。

 僅かではあるけども、それでも女の子たちは彼女に対して行ってしまった。

 ――じゃあね。その言葉を紡いでいるが、彼女に届ける気が無いという嘘を。

 そんな幼稚な嘘すらも、彼女は自らに吸収し彼女ら以上へと瞬く間に昇華してしまう。

 その証拠に。

 

 

 

 

「……ふーん、こうするんだ。ま、これは使わないかな」

 

 

 

 

 大人には聴こえているぞ、と言わないのが大人。

 こうして星野アイ(一番星)はまた一歩、最強で無敵のアイドル(嘘吐き)へと近づいた。

 

 

 とりあえずは先ほどの呟きを聴かなかった事にして。

 

「星野ちゃん、一緒に帰る?」

 

 ランドセルへ無造作に教科書類をぶち込みながらそう訊ねれば――。

 

「――うん! 木山くんと一緒に帰るの楽しみっ!」

 

 一抹のノイズさえない、この場においてこれ以上の無い模範解答となる声色、表情、仕草、角度。

 彼女の持ちうるパーツ、着ている服やランドセル、机でさえも全てが完璧だった。

 ……ああ、やっぱり君は。

 

 

 

 

 ――――来たる運命の日に刺されるんだろう(何とか助けてあげたい)なあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人揃って仲良く校門を通り過ぎる。

 隣を歩く彼女はどの角度から見ても、相変わらず完璧だった。

 まあまだ所詮は美幼女である彼女に対しては、そんな完璧な姿すら微笑ましく見える。

 そんでもって、そろそろ大人の時間(星野ママ攻略計画)といこうか。

 空はまだ綺麗な青空で、ちびっ子たちのシンデレラタイムである夕方はすぐにはこない。

 そんな訳で、悪いがお嬢ちゃん、少しアダルトタイムへとしゃれこもうぜえ……!

 

 とまあ意気込んだ所で、所詮は話を聞くだけなんだが。

 

「そういえば星野ちゃん」

 

 歩きながら、ふと思いついた様に話しかければ。

 

「ん? なーに?」

 

 とびきりの完璧が俺の視界を独占する。

 互いに足は前へと進みながら、俺は軽く空を見上げている。

 視線だけを彼女に向ければ。

 両手を後ろ手に組み、上半身は少し前のめりとなって俺のやや斜め前から上目遣いにこちらを見つめてくる。

 こ、こいつッ……。

 

 

 ――何てあざといポーズをしてきやがるッ!

 

 

 全く、俺じゃなかったら脳が焼かれちゃうね。

 あくまで奴はまだまだ美幼女に過ぎん。

 前世では酸いも甘いも経験したおじさんにそんな事したって、ライブの為に金を貯める事しか出来んぞ……。

 はッ、俺は今なにを……!

 ぐぬぬ、流石は最強のアイドル……こんなちみっ子時代から脳を壊しにくるとはやりおるっ。

 

「んー? 黙っちゃってどうしたのかなぁ? きーやーまーくーん?」

 

 まるで吸い込まれる様な完璧な笑顔は徐々に変化し、微かな嘲りが含まれる。

 笑みを更に深め、まるで猫の様な印象を俺に与えてきた。

 こ、こやつ……俺をからかっている……!

 これはまるで、あれだ。

 そう!

 

 

 メスガキと呼ばれる存在……!

 

 

 だがただのメスガキと呼ばれる存在じゃねえ、完璧で究極のメスガキだ……!

 その表情を向けられると怒りなんざ無く、あるのは羞恥心のみッ。

 対象となった者は総じて恥も外聞もなく照れ隠しをするしかなくなる――。

 

 

 

 なんてね、美幼女でいる内は微笑ましく可愛いだけ。

 ほっほー、何か反応を期待している顔をしてるけど、おじさんからすれば幼稚な照れ隠しの真似をするのが恥ずかしくて出来ねーわ。

 それにそんな事したってすぐ、この子にはバレるだろうし。

 とりあえず、まだ君には負けないぞという意思表示として大人な対応でもしますかな。

 ポンポンと軽く頭を撫でようと腕を上げると。

 

 

 

 

「――ッ」

 

 

 

 

 一人の完璧なアイドルがそこから姿を消した。

 

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