"にわか"は言う「だから『推しの子』だって言ってんだろ!」   作:あるミカンの上にアルミ缶

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第43話

 あいとはその後少し会話をしたが、事務所の社長から呼び出しを受けて帰っていった。

 双子たちについては、俺を含めDNA検査とかをしたが、血液型も含め一致しなかったとの事。え、いつの間にそんな事されてたの? てかどゆこと?

 ますます父親であるという現実味が無くなったが、頑なな「カズマが父親」という彼女の意思を尊重し、一旦認知するという事で、やはり話が纏まった。

 彼女の言葉が嘘なのか本当なのかは分からない、だが俺には肯定しか出来ないんだから。

 そして双子には、俺が父親という事は伏せるらしい。

 俺はCMとかで良く見るし、双子経由で社長とかにバレるのを防ぐ為、子どもたちが父親に会いたいと言うまで、黙っておくとの事。

 まあそこら辺は、そちらの都合でどうぞお好きにという感じだが、先程まであいがいた部屋で一人、呆然と椅子に座り続けていた。

 

 あいに対しては認知する旨で話したが、心境としては実感が皆無なので、全く認識出来ていない。

 それに双子に対しても、物語として前もって知っているので、やはりどうしても他人に感じてしまう。

 正直未だに赤の他人と思ってしまうのは、果たして俺がクズだからだろうか。

 認知をした所で、別段これまでと生活が何も変わらないというのもある。

 事務所の社宅で一人暮らし。

 事務所で社員の人たちとくっちゃべる。

 俺単品のCM撮影。

 双子に関しても、前世の存在を知っており、彼らの明るい行く末を遠くから見ていたいので、気にする。

 ほら、何も変わらない。

 

 唯一変わるのは、あいに対しての気持ちのみ。

 今まで、ただの都合がいいお気に入りと思われているんだと認識していた人が、実は異性として俺に好意を持っている可能性がある。

 可能性がある、としているのは彼女から直接「好き」や「愛してる」といった大当たり濃厚な演出を見ていないから。

 もしかしたら彼女の中では、まだはっきりと感情の確信が行えていない可能性だってあるから。

 愛を知らない彼女故に。

 単純に俺が、彼女の執着心を前提知識として持ち過ぎているだけなのかもしれないが、それでも現段階で、あいから異性として確実に好意を抱かれていると断言出来る程、自意識過剰にはなれなかった。

 

 一人となった空間にため息が響く。

 俺はあいと、これからどう接していけばいいのか、分からなくなった。

 これまでも彼女は、俺の事を気に入ってくれているとは思ってた。

 先程あいから出た去年の話だってそうだ。

 ……ああ、分かっていたさ。

 あいが他の人に比べて、ある一定以上の好意や執着を俺に示してくれているのは。

 だがそれは、やがて彼女が子どもに対して本当の愛を知る事で次第に薄れ、俺の存在なんて忘れるだろうと思っていた。

 けれど、そうはならなそうだ。

 彼女が、嘘か本当か分からないが、それでも俺に父親である事を認知させてきたという事は、少なからず今後の彼女の、彼女たちの人生に俺を関わらせるという事。

 けれど俺には、そんな勇気はなかった。

 我が物顔であいの隣に並び立ち、双子の父親として接する。

 そんな事をすれば、元々存在しない人間である俺は、もしかしたら原作の修正力によって死ぬかもしれない。

 そうなれば、彼女たちに無用な悲しみを与える事となり、本来は存在しなかったはずの影響を受けさせる事になってしまう。

 それを俺は許せない。

 だからこそ、俺がもし死ぬとしても、彼女たちに一切影響させずに死にたい。

 故に、一緒にはいられない。

 少なくとも、あいの運命の日までは絶対に。

 

 そしてもし、それを乗り越えて俺が生きている事が出来れば、そこからは彼女たちに関わらずに俺の人生を謳歌する。

 あいの死がなくなったとしても、原作からそこが逸れたとしても、双子たちを主役とした、本編は進んでいく。

 そこに俺という異物の影響を与えて、また原作の修正力で彼らを悲しませる様な出来事は絶対に起こさせたくない。

 なので、結果的に俺は彼らから離れた方が、彼らが幸せになれる。

 そして俺は、彼らに関係なく人生を歩む。

 その時は、俺が関われる中で間違いなく一番の美人であろう、星野ママと一緒に歩みたいという気持ちは変わらない。

 決して星野ママをあいの代替として見ているんではなく、せっかく狙えるなら可能な範囲で一番の美人と結ばれたいという、当然の欲望からである。

 恐らく二〇代前半頃までに会えれば全然ストライクゾーンだろうし、それ以降でも、美少女物の作品の母親は若いままである事が多いから、全然問題ない可能性が高い。

 やはり俺には、星野ママしかいないのだ。

 そこまで考えて、ふと思う。

 ……あれ、自分に好意を抱いてくれてるっぽい女の子をキープして、別の女性を狙う。クズってか外道じゃね?

 すっげー落ち込んだ。

 俺の考えは傍から見りゃ、正に畜生そのものである。

 だが、だが俺はクズだから仕方ない事なんだ。

 ――俺は悪くねぇ!

 まるで誰かから言葉を借りた様にそう心の中で叫び、自分を納得させる。

 そして、あいとはこれからも変わらぬ接し方で対応しよう。そう心に決めた。

 一件落着。

 もうこの事を考えるのはやめようと、スマホを点けて明日のスケジュールをチェックする。

 意識を仕事に割けば、悩む事もない。

 明日のスケジュールは、っと。

 一件だけ。

 けれど拘束時間が長い。

 気付けば額から汗が滴り落ちてきた。

 

 

 ――私以外に、本当に笑っちゃヤダ。

 

 ――好きになるのも、好きになられるのも禁止。

 

 

 …………やっばい。

 寒い訳でもないのに、身体が自然に震えてきた。

 思考が纏まらず、ただただテーブルに突っ伏して頭を抱える。

 ……すっかり忘れてた。

 

 

 

 

 ――二度目はないからね?

 

 

 

 

 俺が出演する恋愛リアリティショーの最終回収録が、そこには書かれていた。

 

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