"にわか"は言う「だから『推しの子』だって言ってんだろ!」 作:あるミカンの上にアルミ缶
うだうだと悩み続けていたら気付けば二週間が経っていた。
その間にもあいちゃんとは交流を続け、休み時間には隣の席からモジモジ君の放送を眺めるという日々が続いていた。
そんなある日。
今日は若干楽しみな日であった。
何故なら我が学校でイベントがあるからだ。
担任が再確認の様に教室で言っていたのが初耳で、昨日は若干の興奮で少し寝るのが遅くなってしまった。
俺が楽しみにしているイベントはそう。
授業参観日だ。
俺自身の事は全く関係ない。
関係あるのはもちろん。
横目でちらりと対象を視線に捉える。
我がクラスのアイドル――あいちゃんだ。
そして授業参観が終ると、何と三者面談まであるらしいのだ。
あいちゃんの家庭環境を鑑みると、授業参観だけなら来ない可能性も考えられた。
けれども、三者面談まであるのならば、確率は跳ね上がる。
何故なら親が先生と話さなきゃいけないから。
授業参観での親は言ってしまえば野次馬なのだから、一人くらいいなくともその人の子供以外は何のダメージもない。
だが三者面談までいないのは話が変わってくる。
家での話をしなきゃなく、それを断り続けていれば不審に思われるのは容易に想像がつく。
だから来なくてはいけない。
まあ大人で働いていればスケジュールの都合で後日個別にってのも普通にあるんだろうが。
まあそんな訳で星野ママがもしかしたら今日、俺の視界に君臨するかもしれない。
いやあ、テンション上がるね。
俺に関しては施設のおばちゃんが、授業参観は来ないが三者面談に来ることになっている。
精神年齢がおじさんの身からすれば、別段三者面談すら来なくとも何の問題もなかった。
寧ろ時間を割いてしまった分の申し訳なさの方がただただ募る。
授業参観が始まった。
教室の後ろにはぞろぞろと大人たちの姿。
今のところあいちゃんっぽい風貌の人は皆無。
……ま、まあ授業参観には来ない可能性が高いかもとは思っていたさ。
いつもよりもやる気を出しながら教鞭を振るう担任の姿を見切り、僅かに視線を横に流す。
そこにはいつも通り完璧なアイドル様がいる。
母親がここに来ていない事に対して気にしている素振りは一切ない。
ふむ、これは事前に授業参観は来ないと言われているのか?
とりあえず俺の本命は三者面談だから、ここで見れなくても別に何ともない。
だがそれにしても、やはりあいちゃんは凄い。
ちらりと背後に目を向ければ我が子ではなくあいちゃんに目を向けている保護者がちらほら。
やはり"愛"ちゃんには目を奪われるだろう。
未来の一番星を先に見れる君らは幸せ者だぞー、なんて呑気な感想を思い浮かべながらも、思考は別の方へ。
果たしてあいちゃんは実際、いつからあの完璧で究極のアイドルになったんだろうか。
正直な話、母親には愛されなかったかもしれないが、アイドル然としたこの子が母親以外の、例えば近所の人や地域の人からは愛されない訳が無い。
だって、アイドルになって多数の初対面の相手の目を奪えるのだから。
だからこそ考えないといけない。
本編のあいちゃんは幼少期、今の様ではなかったのか?
彼女があの星野アイとなったのは、実はアイドルになってからなのか?
それならば幼少期に愛を与えられていないというのは納得出来る。
……いや、もしかしたらそもそも前提が違うのかもしれない。
彼女は愛を知りたい。
彼女にとって愛とは、家族に限定されているとすれば。
それだけでなく、血の繋がりという中で漸く愛が認識出来るだとしたら。
そうなれば近所の人、地域の人から愛されていたとしても、ファンから向けられる愛と同じ様にしか感じない。
完璧な嘘で塗り固められた表面しか見えていない相手から愛してると言われても心に響く事は無い。
家庭環境に加えて、彼女が生まれ持った
果たして彼女の才能は祝福なのか、呪いなのか。答えは分からない。
突如鳴り響いたチャイムで、意識が現実に戻される。
これで授業は全部終わり。
ここから本命の三者面談だ。