ビビリなセイレーンさんの悲鳴配信   作:とぅりりりり

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失敗は成功のもとって言うけど失敗続きは精神にクる

 

 

「あぎゃああああああああ!!」

 

 虫のような魔物の群れに追いかけ回され、霊術を使おうにもそんな余裕がなくて防御で精一杯。

 

「水琴さん落ち着いて――」

「いやああああキモイキモイキモイ! これGじゃん! 絶対Gじゃん!!」

 

 

威厳zero

放送事故

¥ 1,000            

 ミコトは絶叫した。

 必ずや邪智暴虐の主任をを

 除かなければならぬと決意した  

前回の活躍どこ?

走れミコト

激怒して魔物を全裸で倒すくらいしろ

助手ヌンティウス……

 

 

「誰がメロスよ! リスナーティウス処刑されろ!」

「水琴さん、レスバしてる暇あればあっちを……」

「もおおおおおお!」

 

 

――今日の成果――

魔草 ×2

魔虫の触覚 ×2

霊銅の欠片 ×1

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 ――別の日。

 

 

「もうやだあああああああ! こっち来る! こっち来るんだってばああああああああ!」

「水琴さんちょっとせめて逃げるなら誘導を――」

 

 

めっちゃモテるじゃん、魔物に

魔物サーの姫

魔物くんも音出す玩具が気になってしゃあないんやろなぁ

よく考えなくても後衛しかいないから崩れて当然定期

 

 

 

 

 

――今日の成果――

狂肉獣の皮 ×1

狂肉獣の牙 ×2

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 ――更に別の日。

 

 

「ああああああああああああもう帰る! 帰るぅぁぁああ!」

 

水琴(みこと)さん、まだノルマ終わってないです」

 

「いいじゃんもう! リスナー! キモい魔物より私が平和に採取とかしてる絵面の方がいいいでしょ!?」

 

 

悲鳴たすかる

待ってた

みこっちゃんのかっこいいとこはよ

¥ 3,000       

  治療費         

 

 

「バーカ! 治療費送るなら10倍は出せ!」

「水琴さん。中型魔物来ますよー」

 

 

「いやああああああああああああああ!」

 

 

 

 

――今日の成果――

 魔物の爪×2

 その他魔草数種類

 

 

 

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 

 

 

「あああああああああっ」

 

 初日探索以降の成果がしょぼい!

 

 霊草の苗木が大当たりだった分、見劣りしてしまう。

 不本意だが注目を集めているうちに、2回目の探索から実装された投げ銭で追加予算をかき集めておきたいのに成果がしぶすぎる!

 

「見事に撮れ高なし、成果イマイチが続きますね……」

「さすがにヤバくない……?」

 

 研究室で助手とここ最近の結果について相談していると、主任が扉を足で蹴破ってはいってきた。

 

「ぎゃあぎゃあ騒いでりゃいいってもんじゃねぇんだよ、わかってんのか榧杜」

「げぇーっ!」

 

 この人嫌いだけど一応分類上師匠だし、今の上司だから追い出しづらい。

 

「とりあえずだな……榧杜が狙われると崩れるのはわかりきってたし、一人はメンバーを増やしたいところだが……」

 

 一応真面目に人員について考えていてくれたようで、候補をまとめた書類を机に放ってくる。それを私はぱらぱらと目を通すが……。

 

「見事に前衛できそうなのがいない……」

「んまあ、前衛で活躍できるようなやつは大半は防人衆(さきもりしゅう)に行くし」

 

 防人衆。異能者が所属する政府の組織であり、異能者の就職先の大半がそこだ。

 というかそこくらいしか行くところがない。異能者は自由に仕事を選べないので、うちみたいな表向きは大企業とか、あとは異能者向けの武具を作る職人とか、とにかく異能者は異能者にしかできない仕事につく義務がある。

 私が防人衆に入らなかった理由? 前線での戦闘がほぼほぼ必須か、それができない場合、飼い殺し過労が不可避だからだよ!

 

「最終手段でoss(オーエスエス)のやつらを秘密裏に雇うっていうのはあるが……ま、事情が事情だけになかなかいい候補がな」

 

 ossとはOutsiders(アウトサイダーズ)という政府の管理に反発した異能者たちのことだ。東京のある町を占拠し、ほぼスラムみたいな治安をした場所で好き勝手しているらしい。特に、反社と関わりがあるとか、なんなら直球で反社や犯罪者だとかいうこともあり、できれば関わりたくない手合いだ。

 

「新しいメンバーを入れるにしろ、すぐには無理そうだし……うーん……しばらくは隠密スタイルで敵に遭遇しないようにしてみます?」

「配信映え最悪な絵面ですよね、それ」

 

 助手の言うことにも一理あるけどしょうがないじゃない。

 私も助手も、ゲームで言うところの魔法使いとかの後衛職なんだから。

 本当なら前線を守ってくれる人間が一人は欲しい。

 

「よし……明後日ちょっと隠密配信してみよ。でも配信するにあたってカオちゃんにいい感じの装備ないか聞いてみる」

「…………お前ら……本題見失うなよ?」

 

 配信映えよりも探索成果でしょ。わかってるわかってる。

 

 

 

――――――――――

 

 

 

 配信5回目。だいぶ慣れてはきたものの、やっぱりまだ魔物を相手にするのは嫌だし、何より思ったよりバリエーションが豊富なので素材面では興味深いけど毎回未知の怪物と戦うのが怖すぎる。

 成果も渋いし、魔物を相手にし続けるのも辛いしネタにされるし、今日はカオちゃんに頼んで隠密スタイルの装備を用意してもらった。

 

『こっち! こっちのほうがかわいいから!』

『あ、これかわいい』

『ああああああああああなんで色物選ぶのおおおおお!!』

『作ってんのがわりーんだよ』

 

 主任にバッサリ切り捨てられたカオちゃんがちょっとかわいそうだったけど実際作って置いてるから気になるんだもん。

 というわけで今日はメンダコモチーフのポンチョ。こんな見た目でも気配を隠してくれる効果がついている。人間相手には微妙だけど、魔物相手なら結構効果が高いみたいで、人を相手にするわけではないからこれにしたのだ。

 自慢しようと助手に見せたときはすごく曖昧な笑みでごまかされたけど。

 

 

ダッッッッサ

みこちゃんかわいいねぇ、なんちゃい?

エロ衣装にしろ

アリよりのアリ

 

 

 リスナーからは賛否の否寄りだった。解せぬ。

 フードを被りながら、五度目の侵蝕地突入をして……違和感。

 というか実は3回目あたりから違和感はあった。でもそのときは魔物とか他のことに気を取られていたので触れずにいたけど……。

 

「一応消してるみたいだけど、私達以外、出入りしてるよねこれ……」

 

 消された靴跡を観察するためにしゃがみ込む。靴のサイズからして……うーん、女の人?いや、少なくとも2つはあるっぽい。

 

「……私たち以外にも複数の人間が入り込んでる?」

「どうします? バレると厄介ですし、今日は引き返します?」

 

 この探索は政府にバレたら間違いなくヤバい。だから目撃されると非常にまずいのだが……。

 

「もしかしたら迷い込んだ要救助者だったら後味悪いし……ちょっと確認はしたほうがいいんじゃない? 防人がここに入ってきてるとは考えづらいし、口止めはできるんじゃないかな」

 

 防人はここを完全に立ち入り禁止にしている側だし、なんなら侵蝕地に対してかなり強い忌避感があるはずだ。わざわざ入るとは考えづらい。

 ということは無謀な学生か、ossあたりのどちらか。あるいは怖いもの知らずの一般人か。

 まあいずれにせよ、こちらとしては触りたくはないけど、無視するのもちょっと怖い。今後にも響きかねないし。

 

「じゃあ隠れながら今日は採取とかメインに――」

 

戦え

精神的ざぁこ♡ざぁこ♡絶叫しろ

日和るな

もっと命乞いしろ

 

 

 カスども!

 

「探索と調査が目的だっつってんの! 私を玩具にするわけじゃ――」

 

 リスナーの不平不満にレスしようとして、魔物の気配がしてサッと物陰に身を潜める。

 狼人間のような魔物が歩いて周囲を警戒している。二足歩行だが足元を見て……靴跡を観察している。ていうかあれ私の足跡じゃん。

 斥候の役割だったのか、遠吠えのような声をあげて、こちらへと足音が近づいてくる。

 そして、最初の一匹は足跡かニオイか、何にせよ隠密があんまり意味がなく即バレてこちらに飛びかかってきた。

 

「あびゃーーーーーっ!?」

 

 慌てて霊術で結界ガード。そのまま攻撃態勢に入ろうとして、襲いかかってきた狼人間が真っ二つになる。

 

 更に遠くから二足歩行をしているが体毛と、爪と牙。狼人間のような姿をした魔物が5匹。最初のも含めて中型サイズだが知性が高そうだ。

 

 それはほんの一瞬のできごとだった。

 

 近づいてくる二足歩行する獣の前足、腕に該当する部分が瞬きする間に切り落とされる。

 雄叫びを上げる魔物の頭を蹴って、一人宙を舞う姿。

 

 謎の人物が飛ばした剣が回転しながら魔物を切った際についた体液を振り落とし、持ち主の手元へと戻る。

 

「いよーーーーっし! スリーコンボ!」

 

 朱色の短い髪が跳び回るたびに揺らめいて、駆ける。

 鮮烈に戦場を蹂躙するのは自分とそう変わらない年頃の女性だった。

 

 そのまま狼人間たちの手足を一対の剣を自在に操って切り落とし、反撃の余地もなく最初の斥候一匹と追加で増えた5匹の計6匹を一人で狩り獲った。

 

「自己ベストこうしーん!」

 

 余裕そうに剣を納めてそのままどこかへ行こうとする、前に足跡を消しているがずっと彼女を見ていた私の視線に気づいたのか急に振り向いた。

 

「あれ?」

 

 不思議そうに私と助手を交互に見て、腕を組む。考え込むようにするが頬を掻いて困ったように言う。

 

「なんで君たち、立ち入り禁止区域(こんなところ)にいるの?」

 

 しかし、その困ったような表情もすぐに軟化して、敵意がなさそうな呑気な笑顔で私達を見る。

 

「ま、いいか。あーしは戦葉雛美(せんばひなみ)。ヒナって気安く呼んでね~」

 

 

 

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