もしもアルちゃんが本当にアウトローだったら   作:野口さん

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プロローグ

 

依頼達成率100%

 

この社会において絶大な信頼を生むその実績を、彼女たちは持っていた。

 

あらゆる仕事を彼女たちはやり遂げる。

 

しかしだからといって、簡単にあの会社に仕事を頼んではならない。

 

彼女に気に入られなければ、次の標的は自分自身になってしまうからだ。

 

ーーーーー

 

「依頼料はこの額だ!どうだ!満足だろう!」

 

スーツを着た恰幅のいいロボットが、偉そうにスーツケースを机にたたきつける。

叩きつけられた衝撃で勝手に開いたそのケースの中には、目を回すほどの大金が入っていた。

 

「貴様ら小娘には十分すぎる額だろう!!何が不満だというのだ!!」

 

怒りを隠しもせずに、机にバン!と手を叩くロボット。

その対岸に座る桃髪の少女、アルは無表情を貫いていた。

 

「依頼はシンプル!A社の大臣の暗殺だ!やつは市民のためだなんだと言いながら製品を安く売りだしている!おかげで我らB社の商品が売れん!!」

 

理不尽とも言えるような恨みを、あたかも正義を語るかのように言い放つ。

 

「貴様らが殺しの依頼もするというのは知っているぞ!」

 

思わず委縮してしまいそうな叫び声を上げ続ける相手に対し、アルは冷えた目で言葉を返した。

 

「・・・殺しの依頼を受けたことはないわ」

「嘘をつくな!以前もC社の財務理事を暗殺したと聞いたぞ!今朝の新聞にも載っているではないか!」

 

そういって懐から取り出された新聞には、確かに彼が言った通りの内容が書かれていた。

 

『C社の財務大臣 耳が爆発し重傷』

『犯人は便利屋68か』

 

アルは新聞の見出しをチラリとみて、はぁとため息をついた。

 

「殺してはいないわ。すこし傷を負わせただけ。明日には起きるわよ」

「ただの結果論だろう!!依頼は受けてもらうからな!」

 

そう言って彼は契約書を突き出し、アルを睨む。

そしてチラリとアルの隣でノートと教科書を見つめている二人の少女を見た。

 

「カヨコちゃ~ん、ここってどう解くの?」

「公式を代入すればいいだけ。教科書の・・・ほら、ここの式」

 

少女二人が、まるでこちらの声が聞こえていないかのように過ごしていた。

まるで女子高生の日常のように。

 

ロボットがこぶしを握り、再び怒鳴り上げようとした時、アルが彼女らに声をかけた。

 

「ムツキ、ライターを」

「は~い」

 

渡されたライターを受け取ったアルは、そのまま契約書に火をつけた。

みるみるうちに契約書はチリになっていく。

ロボットが眼(?)を見開く。

 

「な!?き、貴様!!!」

 

立ち上がり抗議を上げようとするロボットより先に、アルはいつのまにか銃を構えていた。

大きなスナイパーライフル。この距離で浴びれば、無事では済まない。

 

ロボットが動きを止め、冷や汗を流す。

静かになった部屋に、社長(・・)の声が響く。

 

「なぜ、C社の人間が私達にやられたか知りたい?」

 

カチャリと銃の引き金に指がかかる。

恐ろしく軽い金属音。この軽い音がもう一度なるだけで、自分は打たれる。

それを理解し、ロボットが震え始めた。

 

「ウチに殺しの依頼を頼んだからよ」

 

すると、先ほどまで勉強していた二人の少女も、いつのまにか銃を持っていた。

どちらも静かに社長の声を聴いている。

 

「なんどもなんどもやらないと言ったのだけれど、聞こえなかったようだから耳元で大きく聞かせてあげたわ。私たちの声を、ね」

 

ロボットがガタガタ震えて、ここから逃げ出そうとするが、腰を抜かしたのか立ち上がることもできていない。

 

「そしたら気絶しちゃったのよ。ロボットでも気絶するのね。いい勉強になったわ」

 

なんでもない会話をするかのように、彼女は平坦にそう語った。

 

「それで、あなたも私の声が聞こえないのなら」

 

銃がロボットの胸元に当てられる。

 

「その体に響かせてあげるわよ?」

 

社長の目が、キラリと光った。

 

「ヒィィィィィ!!!」

 

 殺される!

 

 

恐怖から逃げ出すロボット。

しかし腰が抜けているので這いずったまま部屋の扉に向かっていく。

なんとも情けない姿だろうか。

 

「くふふ~なっさけない格好!」

「・・・ちょっとやりすぎなんじゃない?」

 

そんな会話を気にする余裕もなく、ロボットは這いずっていた。

恐怖で腕も震えているのか、そのスピードはひどく遅い。

 

それでもようやく扉にたどり着く。

なんとか扉を開けようと、ドアノブに手をかけようとするも、それより早く扉が開いた。

 

外側から開けられたのだ。

誰が扉を開けたのか見る余裕もなく、ロボットはバランスを崩し、床に顔面をぶつける。

 

「ぐあぁ!」

 

顔面を抑え、うずくまる。

再び後ろから笑い声が聞こえたが、気にする余裕もない。

 

しかし、次の言葉はよく聞こえた。

 

「ハルカ、いいわよ」

 

その言葉の意味を考える前に、ロボットは床から来た大きな衝撃で気を失った。

 

ーーー

 

 

『B社のCEO 爆破される』

『犯人はまたもや便利屋68』

 

次の日の朝刊の見出しはそう書かれていた。

 

「くふふ~また新聞に載っちゃったね~」

「笑い事じゃないよ。ウチの仕事がそれメインだって思われる」

 

カヨコは呆れたようにため息をつく。

ただでさえ、最近そういった依頼が増えてきているのだ。

これ以上増えると、さすがにヴァルキューレが黙っていないだろう。

ゲヘナの風紀委員会も、本腰を入れてつぶしに来るかもしれない。

 

カヨコは続けてテレビをつけた。

 

『B社の社長が便利屋68に重傷を〜〜』

 

「あは〜テレビでも話題になってるね♡」

「ア、アル様、もしかして、私はとんでもない粗相を・・・し、死んでおわびを」

 

ハルカは自分のせいで社長に迷惑をかけたのではかと、震えて銃を頭に向ける。

そう、B社の社長を爆破し、C社の耳元で爆音を鳴らしたのはハルカであった。

 

アルは慌てず、やさしくハルカの頭に手をのせた。

 

「大丈夫よ、ハルカ。私がいいといったのだから。素晴らしい爆破だったわ。次も頼むわね」

「アル様・・・えへへ・・・」

 

アルはゆっくり社長椅子から立ち上がった。

 

『続いて次のニュースです』

 

ニュースキャスターはニュースを続けている。

アルはそれを聴きながらカヨコに声をかけた。

 

「カヨコ、安心してちょうだい。次の依頼はシンプルな依頼よ。血を見ることはないわ」

「へぇ・・・ってコレ、ヴァルキューレからの?」

 

眼をわずかに見開いて驚くカヨコに対して、アルは笑って契約書を見せる。

すでにハンコが押されている。つまり便利屋は正式にこの依頼をうけたことがわかる。

 

『R市の市長が自身で制作した新技術により、賞を取りました』

 

「あら、ちょうどこれから行く市の話題ね」

 

アルが契約書を見やる。

 

『R市連続窃盗事件の犯人の捜索』

 

カヨコはため息をつき、

ムツキは笑って、

ハルカは震えた。

 

それは今、最もキヴォトスでトレンドとなっている事件であった。

 

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