「アヤネ、チャーシューもっと食べる?」
「ふぁい(はい)」
柴関ラーメン
アビドス校一年黒見セリカのバイト先。
学校からもそこそこ近いラーメン屋にて、アビドスの生徒と先生が集まっていた。
先ほどまで学園にて定例会議を行っていたのだが、訳あって途中閉幕である。
ガラガラガラ
柴関ラーメンの扉があいた。
バイトの黒見セリカが素早く反応する。
「いらっしゃいませ!何名様ですか?」
その質問に、客は答えず、逆に震える声で質問してきた。
「・・・こ、ここで一番安いメニューって、お、おいくらですか?」
「ここで一番安いのは・・・」
セリカがその質問に答えようとすると、再び柴関ラーメンの扉が開いた。
「ハルカ。無理して安いメニューばかり頼もうとしなくていい」
「ねぇねぇ!ここが例の柴関ラーメンでしょ?おいしいって評判の!」
ダウナーな雰囲気を醸し出す少女と、元気そうな少女、そして
「そうね。楽しみだわ」
彼女たちを束ねる社長が来店した。
偶然、便利屋68とそのターゲットであるアビドスがこの柴関ラーメンに集まった。
当然そんな事情を知らないセリカは、彼女たちを四人席に案内する。
「えっと、な、なにかおすすめは、あ、ありますか?」
「でしたら柴関ラーメンです!看板メニューなんで、美味しいですよ!」
「じゃあそれを!」
「私も」
「私も!!」
「店員さん、柴関ラーメンを四つ」
「かしこまりましたー!」
便利屋の四人が席に着いた。
隣の席にはアビドスの生徒たち。
「どんな味なんだろ~!」
「おいしいのに600円しないラーメン、だっけ?」
「そ、そんなに安いんですか!?今からでも高い物を・・・」
「いや、最近大きな買い物したし、まだ余裕はあるけどあまり無駄遣いしないほうがいい」
「あの時のお金残しておけばよかったのに!B社の・・・CQC?」
「CEOね。いいのよ、あの娘には相応のお礼をしたかったもの」
「あぁ、やっぱりあのお金はあの時の・・・」
「アルちゃんが眼鏡かけてると、なんだか懐かしい!」
「あら?あなたの眼鏡姿も似合ってるわよ、ムツキ」
「み、みなさんとってもお似合いです!!!」
「眼鏡ひとつで変装なんてって思ってたけど、結構雰囲気変わるんだね」
「次はみんなでグルグルの眼鏡にしようよ!ビン底の!!」
「逆に目立っちゃうでしょ」
「今回の依頼が終わったらさっ、またR市行こ!あそこの料理また食べたい!」
「どうだろう。今大丈夫かな。選挙活動で忙しいと思うけど・・・」
「選挙!?店主さん選挙でるの!?」
「そのようね。どうやらあの事件が発覚してから店主さんのこともバレて、周りから新市長として推薦されているみたいよ」
「わ、わたしお手伝い・・・・してきます!」
「ハルカ。落ち着いて」
「はい、お待たせいたしました!お熱いのでお気をつけて!」
そんな会話をしているうちに、料理が届いた。
柴関ラーメン四人分。
「わぁ美味しそう!食べよっ!」
四人は手を合わせてから麺を啜った。
「「「「!!!」」」」
「お、おいしいっ!」
「なかなかイケるじゃん?こんな辺ぴな場所なのに、このクオリティなんて」
あまりの美味しさに頬が緩み自然と笑顔を浮かべる四人。
すると、隣の席に座っていた人物が声をかけてきた。
「でしょうでしょう?美味しいでしょう?」
「あれ、隣の席の・・・」
「ここのラーメンは本当に最高なんです。遠くからわざわざ来るお客さんいるんですよ」
アビドス校の生徒達であった。
制服から彼女たちの素性に気が付いたアルがわずかに目を細める。
「・・・えぇ、このレベルのラーメンはなかなかお目にかかれないわ」
「ほかの学校の皆さんに食べていただけるなんて、嬉しいです!」
(連中の制服・・・)
(あれ、ホントだ)
カヨコとムツキも彼女たちに気が付いたようで、目を合わせる。
(・・・社長は気づいてるの?)
(さすがに気づいてるんじゃない?普通に会話してるけど)
「その制服、ゲヘナ?ずいぶん遠くから来たんだね」
「私、こういう光景を見たことがあります。一杯のラーメン、でしたっけ・・・」
「うへ~。それは一杯のかけそばじゃなかったっけ?」
「ふふっ、いいわね」
(なんか普通に意気投合してるみたいだけど・・・)
(会話で情報もらおうとしてるんじゃない?)
視線で会話していた二人に、アルが目配せした。
合図である。
二人はアルの指示に従うことにした。
「アルちゃーん、わたし達先行ってるね!ちょっとお買い物してくる!いこカヨコっち!」
「・・・わかった、そういうことだから、みんなの分会計しておくね。ハルカはもうすこしゆっくり食べて」
「ふぁいぃぃぃ(はいぃぃぃ)」
そう言って二人は店を出た。
店内にはアビドスの五人と先生、そしてアルとハルカ。
彼女たちは今日出会ったばかりとは思えないほど仲良く会話をしてから、カヨコとムツキよりもだいぶ遅く店を出たのであった。
ーーー
「それじゃぁ、気を付けてね!」
「お仕事、上手くいきますように!」
「えぇ、あなたたちも学校の復興、頑張って。私も応援してるわ」
そう言ってアルは手を振って別れた。
すこし歩いた先にはカヨコとムツキが買い物袋をもって待っていた。
「おっそーい!本当に買い物しちゃったじゃん!」
ムツキが顔を膨らませて抗議する。
するとアルはすこし笑ってから答えた。
「いい人たちだったわ」
「もう!!!」
怒ってアルに背を向けてしまった。
アルは苦笑しながら、ムツキを撫でる。
「ごめんなさい、さすがに待たせすぎたわね」
ムツキは腕を組んでそっぽを向いているが、なでられて頬が緩んでいる。
「それで、社長。あの子たちの制服、気づいた?」
「えぇ。アビドスだったわね。私たちのターゲット」
「えっ!?」
ハルカが驚いた表情で三人をみる。ラーメンに夢中で気が付かなかったらしい。
「情報は聞けたの?」
「えぇ。とっても有益な会話だったわ。こちらのこともすこし話してしまったけど」
「それって大丈夫?指名手配だよ私達」
「うまくごまかしたけれど、気づかれるのは時間の問題かもしれないわね」
アルたち便利屋68は、テレビや新聞を毎日読んでいる人なら当然知っている組織である。
アビドスの生徒たちが気が付けなかったのは、イメチェンのためだろう。
しかし、その誤魔化しも時間の問題だろう。明日にでもなれば、気が付かれる。
「え!?バレちゃうの?警戒されちゃうんじゃない?」
「そうね。だからもう始めてしまいましょう」
「今日中ってこと?」
「いいえ、今よ。この足で行ってしまいましょう。あれも買ってくれたのでしょう?」
「うん!じゃあもう行こっか!」
ムツキがそういうと、アルが歩き出し、その後ろをカヨコが進んだ。
状況がうまく呑み込めていないのか、おろおろとしているハルカの背中を、ムツキが押した。
「ハルカちゃんも、ほら行こっ!」
「は、はい!!ひとり残らず、ぶっ潰しちゃいますっ!」
銃を抱えて前に進むハルカだったが、ふと気がついて後ろを向く。
「ムツキ室長、な、なにか買ったんですか?わたしでよければ、持ちます!」
「大丈夫大丈夫!これはね~」
「メガホン」
セリフをたくさん書くことは楽しいのですが、皆さんにうまく伝わっているかが不安です。
ここをこうしたほうがいい、といった指摘やアドバイスは感想欄の規約に反しない範囲で募集しています。