もしもアルちゃんが本当にアウトローだったら   作:野口さん

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第Ⅲ話 襲撃

 

 

最初に接近に気が付いたのは、アヤネであった。

正門の方に近づいてきた誰かの反応を、データで確認した。

 

しかし、それでもすぐにみんなに知らせることはなかった。

 

いや、知らせることはしたのだが、緊急事態を知らせるような報告ではなく、ただの客人が来たことを知らせるような、落ち着いた声であった。

 

現に、ギリギリまでアヤネは彼女たちを先生かシャーレ関連の客人だと思っていた。

 

「・・・?アビドス正門のほうに誰かが近づいてきています」

 

ギリギリまで接近を許してしまった理由は、その人数。

 

アビドスまで来た敵は、四人しかいなかった。

 

傭兵も、戦車も何もない。ただ四人の少女が散歩でもするかのように歩いてきた。

 

目視できる距離まで知らない少女四人が近づいているにもかかわらず、アビドスの生徒は即座に武器を取ることすらしなかった。

 

なぜなら、彼女たちを敵と認識することができなかったから。

 

人数もそうだが、何よりその無防備さ。日常を歩むかのような普通の動き。

談笑しながら歩いてくる四人を、まるで敵と認識できなかった。

 

アビドスの生徒たちが固まっている間に、近づいてくる少女たちの中の一人が、一歩前に出た。

 

手にはメガホンを持っている。

 

彼女たちの顔をみて、指名手配書を思い出そうとしたその瞬間。

 

 

『せんせいとアビドスのみなさまー!!』

 

 

『えっと、しんでくださぁい!!!!!』

 

 

ドォン!!!

 

 

 

「!!」

 

 

 

メガホン越しの言葉が届くと同時に、校庭から爆発音。

それはまさしく開戦の合図でだった。

 

ホシノが盾と銃を持って走る。

 

「先生!指示を!」 

 

一番に部屋を飛び出したのはホシノ。その次にセリカ、シロコ、ノノミと続く。 

 

「あれ・・・ラーメン屋さんの・・・?」

「誰かと思えばあなたたちだったのね!」

 

「あはは、ラーメン美味しかったよ、ありがと。でもこっちも仕事でさ」

「残念だけど、公私はハッキリ区別しないと、受けた仕事はきっちりこなす」

 

そう言ってカヨコはハンドガンでドローンを撃ち落としていく。

 

「あぁ!?ドローンが!」

 

アヤネが通信機越しに悲鳴を上げた。

 

「カヨコはそのままドローンを、ムツキは敵の足止め、私も手伝うわ。ハルカは最前線、敵の盾持ちを押さえておいて。全員無理はしないように」

 

「わかった」

「おっけー!」

「りょうかいしましたぁ!」

 

アビドスの生徒たちが校庭にたどり着くころには、便利屋は陣形を完成させていた。

 

「うへ~今回の相手は今までのとは違うね。とりあえずおじさんが先頭に出るからみんなは、っ!?」

 

ホシノが指示を出そうとしたその瞬間、スナイパーライフルによる狙撃。

素早く盾で防ぐも、いつの間にかハルカが距離を詰めていた。

 

ハルカは詰める動きの勢いそのままに、ホシノの盾の上を背中から転がるようにして乗り越え、ホシノの背後にまわりショットガンによる銃撃連打。

 

ホシノはこれも盾で防ぐが、この至近距離では耐えきれないのか、すこし押されている。

 

「ホシノ先輩!わわっ!!」

 

ホシノを孤立させないよう、援護に入ろうとセリカとシロコが前に進むと、カチリと足元から音が鳴った。

 

いつのまにか仕掛けられていた地雷が爆発した。

 

「もう!なによこれ!!」

「コレ、ただの地雷じゃない・・・煙?」

 

ムツキの手作り爆弾の一種。

普通の地雷より威力は大きく下がるが、代わりに爆発と同時に濃い煙があたりを支配する。

 

「何も見えない!」

「セリカ、落ち着いて私と背中合わせに」

「はい!」

 

シロコは冷静に足を止め、近くにいたセリカと背中を合わせる。

煙の中から敵が襲撃してくる可能性を考えての行動だった。

 

「みなさん、今援護を!あぁまた壊されてしまいました!?」

 

アヤネはドローンを用いて援護を送ろうとするも、再び壊されてしまった。

前線への支援が全く送れない。

 

そうこうしている内に、煙はどんどん濃く、広く広がっている。

すでに校庭のほぼすべてを煙が覆っていた。

 

便利屋の少女たちは、一人を除いて全員煙幕の中に入っていて、居場所を特定できない。

 

「みなさん!伏せてください!えーい☆」

 

アビドスの校舎入り口に立っていたノノミが、煙ごと前方を広範囲に銃撃する。

弾数を生かした攻撃であったが、手ごたえは感じなかった。 

 

命中していないのか、命中しているが反応がないだけなのか、それを考える時間はない。

 

今も戦闘が続いているホシノとハルカの方向に銃を構えようとしたその時。 

 

「ひゃっ!?」

 

煙を突き破って一発の銃弾がノノミの頬をかすめて背後の壁に着弾した。

 

こちらの位置を気づかれている。

 

ノノミは冷静に居場所を変えることを選んだ。

音を出さないようにゆっくりと移動する。

 

一方その頃、アヤネは焦っていた。

 

「支援が送れません・・・この煙では皆さんの居場所も・・・」

 

ドローンはことごとく撃ち落とされ支援することができず、戦闘の様子も確認できない。

その焦りから、

 

「皆さんの状況は・・・」

 

窓から顔をだして外の状況を確認しようとした。

それはつまり、自身の居場所をばらしてしまったということである。

 

「そこか」

 

 

パリン!

 

 

唯一煙幕の外に立っていたカヨコがハンドガンでアヤネが覗いていた窓のガラスを撃ち抜いた。

 

アヤネとカヨコの目が合う。

 

「ひっ!?」

 

その目に恐怖を感じたアヤネは、その場にしゃがみ込んだ。

 

「アヤネちゃ、わわっ、君なかなか強いね~」

 

アヤネを心配するホシノ。

しかしホシノによそ見をする余裕はない。

 

ハルカとホシノの戦闘の場所はいつの間にか校舎入り口から正門近くまで動いていた。

 

「はっはっ、あ、合図、です!」

 

このまま戦闘を続けるのかと思いきや、ハルカは銃を何発か撃ってから煙の中に消えていった。

 

盾で銃撃を防いでから、ホシノは考える。

 

「煙の中から攻めてくるつもりかな?それなら盾で防いでからカウンターで・・・」

 

敵の次の攻撃に備え、腰を落とし盾を構える。

 

そして耳に神経を集中させた。

幸いにも、あたりは静かである。こちらに近づいてくる足音はすべて聞こえる。

 

「・・・静か?」 

 

おかしい。

今は戦闘中のはずだ。

 

ほかのみんなの状況は見えないが、銃による戦闘中なのは間違いないはず。

なのになぜまったく音がしない?

 

疑問をもったホシノであったが、その耳がわずかに誰かの足音を拾った。

こちらに近づいてきている。

 

「煙の中から奇襲してくるなら・・・」

逆にこちらから先に攻める!! 

 

足音に向かって襲いかかるホシノだったが、相手の顔が見えるまで距離を縮めてから動きを止めた。

 

「ノノミちゃん・・・?」

「ホシノ先輩・・・?」 

 

こちらに向かってきていると思った足音は、ノノミだったからだ。

 

狙撃手に位置がばれたと考えたノノミは、広場の外周をまわり、正門側から便利屋たちの背後を攻撃しようと考えていた。

 

足音がなくなり、再び静かになった。

だんだんと煙幕も薄くなっていっている。

 

そこでホシノとノノミ、背中合わせになっていたシロコとセリカも気が付く。

 

便利屋68がどこにもいない。

 

逃げた?

なぜ?

どこへ?

目的は?

あっちが優勢だったはず

なぜ消えた?

 

ホシノは頭をフル回転させ、ここに便利屋68がいない理由を考える。

そこで先ほどのハルカの発言を思い出した。

 

『あ、合図、です!』

 

合図とはなんだ?

 

そもそも合図なんてできるのか?

 

あの煙のなかでは音での合図ぐらいしかできないはず。

 

しかし自分は変な音を聞いた覚えはない。

 

せいぜいガラスが割れた音ぐらい・・・

 

「ッ!!」

 

ホシノは血相を変えて叫んだ。

 

「先生!!アヤネちゃん!!!」

 

 

パァン!

 

 

 

「全員、動かないで」

 

ホシノが叫んだと同時に、一発の銃声。

 

全員が銃声の出所に注目する。

それは校舎の入り口に立っていた彼女たちによる、空に向かっての発砲。

 

校舎の入り口に立っていたのは、便利屋の4人と、

 

「動いたら二人の頭消し飛ばしちゃうよ~!!」

 

便利屋68に捕縛されていた、先生とアヤネであった。

 

 




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