もしもアルちゃんが本当にアウトローだったら   作:野口さん

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第Ⅳ話 襲撃後

 

「そういえば名乗っていなかったわね」

 

煙が晴れ、光が差す校舎を背に、悪魔の角を持った少女は笑った。

 

「私たちは便利屋68、依頼を受けてあなたたちをしばらくの間拘束させてもらうわ。全員、動かないで」

 

そう名乗りをあげて、きれいに礼をした。

 

「べ、便利屋68!?」

「あの、便利屋!?ウソでしょ!?」

 

ノノミとセリカは紫関ラーメンで話した彼女たちがあの指名手配犯だったことに驚き、たじろぐ。

 

「やられた・・・」

 

捕らえられたアヤネと先生を見ながら、ホシノは唇をかんだ。

 

「・・・作戦通りってところ?便利屋」

「えぇ。あなたたちは強いから、こちらも頭を使ったわ」

 

まず煙幕に紛れ、アビドスの生徒達全員をその場にとどまらせる。

校舎入り口に立っていたノノミを狙撃によって移動させる。

そうして時間を使わせている間に、煙を嫌った後衛のアヤネの位置を、カヨコが特定。場所がわかったらその位置のガラスを割る。

それを合図に各々がガラ空きの入り口からその教室に向かう。

 

「戦闘経験豊富なアビドスなら冷静にその場から動かないでくれると思った。アヤネ(この子)が顔を見せてくれるかは半分賭けだったけどね」

「もし見せなかったら、わたし達全員が学校に入って校内かくれんぼ!そっちもたのしそう!」

 

人質を間に銃を向けあっているという状況のなか、本当に楽しそうに語るその口調に、ホシノは苛立ちを隠せない。

 

「さて・・・」

 

アルは視線を下ろし、ずっと気になっていた存在へと目を向けた。

 

「初めまして、先生」

 

 

ーーーーー

 

 

”初めまして、陸八魔アル”

 

 

見事な手際だった、というのが先生の感想だった。

 

油断はあった。

しかしそれを含めても先手は取られていた。

 

自分はアヤネとおなじ部屋に待機していたが、指示を出そうと思ったその瞬間に窓ガラスを割られ、便利屋たちが教室に入ってきた。

いつの間に校舎に来たのか、どうしてここがばれたのか考えるより先に閃光爆弾が投げ込まれ、思わず目を閉じた。

そして目を開けると、拘束されていた。

 

先ほど聞いた作戦がもし本当に計画されていたのであれば、彼女たち便利屋はかなり()()

 

「手荒な挨拶になってしまったわね」

 

”構わないよ。私も君たちのことが知りたかった”

 

便利屋68

ゲヘナ学園の生徒四名から成るれっきとした犯罪組織。

あらゆる依頼を爆音とともに達成してきた問題児集団。

 

一言でいえば悪い生徒達だ。

 

 

”便利屋をやっているんだって?”

 

「えぇ。色々と依頼を受けてきたわ」

 

”今回も、その依頼?”

 

「そうね。アビドス高等学校を襲撃すること」

 

”そっか・・・”

 

 

先生は少し間を開けてから聞いた。

 

 

”今まで、人を殺したことはある?”

 

 

アルはしっかりと目を合わせて答えた。

 

 

「無いわ」

 

”そっか”

 

先生は安心したのか、笑った。

 

「・・・あなたも私たちが人殺しだというの?」

 

”ごめんね、そういう噂があったから、確認したかったんだ”

 

「殺しはしないのが私達便利屋なのだけど・・・」

「必要以上に警戒されるのは動きづらい」

「あははっ、噂になっちゃってるんだ!前の町ではこんなことなかったのに!」

「わ、わたしはいつでも準備できてますぅ!!」

 

張りつめていた空気が緩んでいく。

しかしそれでも便利屋は、誰一人として銃口を動かさない。

 

”危ないことは、やりすぎないようにね”

 

「それは依頼によるとしか・・・なるべく手荒なことはしないようにしているわよ」

 

”そうなんだね。なら、大丈夫かな”

 

「止めたりしないのね。私たちが犯罪組織というのは正しいのよ?」

 

”私は、生徒の味方だからね”

 

先生がそう言うと、アルたちはポカンと口を開けた。

そう言った返事は想定していなかったようだ。

 

”少し調べたけど、悪い評判だけではないみたいだから”

”君たちが思う正しいことを、すればいいと思うよ”

 

「先生!騙されないで!」

 

セリカが叫んだ。

 

「便利屋68は危ない組織だって、言ったでしょ!!キヴォトス一番の犯罪組織!!殺人でも強盗でも依頼が来たのなら絶対こなす人でなしの集団!!!新聞にもそう書いてあったでしょ!?」

 

絆されているのではないかと、先生を指摘する。

 

「ん、今たすける」

 

シロコもセリカに続くように銃を構える。

 

ホシノとノノミも、動く準備はできているようだ。

何かのきっかけがあれば、再び戦闘が始まるだろう。

 

そんな空気の中、アルはあごに手を当てていた。

 

「・・・妙ね」

「うん、すごい警戒されてる」

「まだそんなひどいことしてないんだけどな~」

「や、やりますか?」

 

少し目を閉じてから、銃を下ろす。

 

「『新聞に書いてあった』・・・ふぅん?」

 

そしてなにか手がかりを得たのか、息を吐いた。

 

「みんな、気になることができたわ。一度戻りましょう。ハルカ、準備を」

「あ、は、はい!もうできてます!!!」

 

アルが指示を出すと、便利屋の全員が動いた。

 

懐から何かを二つ取り出したムツキは、それをアヤネと先生に掛ける

 

「はい!メガネっ娘ちゃん、これかけて!」

「へ?わわ、メガネが、」

「先生も!!」

”これは・・・サングラス?”

 

カヨコはあたりを見渡してから、ハンドガンを下向きに構え、撃つ。

すると先ほどよりは薄いが、煙がもくもくと生まれてきた。

 

アルは銃を肩にかけてから今も臨戦態勢のホシノたちの方に向き直る。

 

「悪いけど、少し用事ができたわ。また今度あいましょうね、アビドスさん」

 

その物言いに、セリカがシロコが前に出る。

 

「馬鹿にして!!逃がすわけないじゃん!」

「ん、絶対逃がさない。その程度の煙幕なら、集中すれば全部見える」

 

ノノミはもうミニガンを回転させている。

ホシノは今にもとびかかりそうだ。

 

これを見ても、やはりアルは冷静だった。

ハルカの肩をポンと叩いて優しく微笑む。

 

「ハルカ、頼んだわよ」

「は、はい!!お任せを!!!」

 

そう言って、ハルカが銃を構えると同時に、便利屋がなにかメガネのようなものをつけた。

次の瞬間、

 

「それとあなた達」

 

 

 

「動くなって言ったわよね?」

 

 

 

あたりを閃光が貫いた。

 

 

ーーーーー

 

逃げられた。

 

またしてもやられた。

 

先ほどよりも薄い煙幕で、目を集中させてから、その集中した目に閃光弾。

多分ただの閃光弾じゃない。煙越しでも効く、かなり高威力の物。

 

「先生!アヤネちゃん!」

 

ホシノは目をやられながらも、前に進んだ。

 

一番距離が離れていた自分でもここまでやられる閃光。

あんな至近距離で浴びた二人は・・・

 

「ホシノ先輩!皆さん!」

 

無事だった。

いつの間にか拘束も解除されている。

 

閃光弾を放つ直前、便利屋は二人にサングラスをかけていた。

アヤネの分はご丁寧にメガネの上からかけられるタイプのものである。

 

「まぶしいい!!」

「・・・ん、でも少しづつ治ってきた。みんな大丈夫?」

「まだチカチカします~」

 

みんな無事なようだ。

ホシノは安心して、肩を撫でおろすも、想像する。

 

もしも、便利屋68が本気で私たちのことを殺そうとしてきたら。

 

この戦闘と同じ流れで、まずはアヤネと先生が殺される。

指揮官とサポーターがいなくなった私たちは、煙の外から順番に狙撃されるか爆撃されるだろう。

 

仮に煙が晴れるまで攻撃を防ぎ切ったとしても、待っているのは便利屋に支配された校舎を奪還するための攻城戦。

トラップを仕掛け放題の屋内なんて、たとえ私たちのよく知るアビドス校舎だとしても便利屋68には勝てないだろう。

 

「ホシノせんぱーい!だいじょうぶですか?!」

 

遠くからサングラスをかけたアヤネが手を振っている。

そのサングラスは、便利屋によってアヤネが守られたことの何よりの証明。

 

「・・・」

 

ホシノは拳を強く握り締めた。

 

自分は、彼女たちを守りきることができなかった。

 

その事実が、深く胸に刺さっていた。

 

 




サングラスアヤネちゃん
多分めちゃくちゃかわいい
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