もしもアルちゃんが本当にアウトローだったら   作:野口さん

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R市連続窃盗事件
第Ⅰ話 R市


「あのコソ泥?許せねぇよ!!ウチの店の金を根こそぎ盗んでいきやがった!」

「あぁ、僕も盗まれたんだよ!!」

「私は指輪も盗まれたわ!大切な指輪だったのよ!!」

「だいたい6か月ぐらい前の話なんだけどよ!うちの店の窓ガラスが全部割られて、レジにおいてあった金全部盗まれてたんだ!見つけたらぶんなぐってやる!」

「夜の8時ぐらいだったな!真っ黒な服を着た誰かいると思って目を細めたら急にピカって光を当てられて!思わず目をつぶってまた開いたら財布がなくなってたんだ!あれはそうとうやり手だよ!」

「私は朝にやられたわ!見たことない学生服っぽいのを着てて、突然消えたと思ったら財布と指輪があっという間にとられていたの!しばらく気がづけなかったわ!」

 

 

便利屋の4人は地道な聞き込みから始めていた。

 

「ひぇぇ・・・話しかけた人全員が被害者ですぅぅ」

「確かに被害数が多いとは聞いていたけど、町の人ほぼ全員とはね」

「そんなにお金がほしいのかな~でもここってキヴォトスでトップクラスのお金持ちが住んでいるR市でしょ?貧乏な人なんているのかなぁ?」

 

3人の感想を聞きながら、アルは契約書とともに渡された報告書を思い出す。

 

 

 

 

---『R市連続窃盗事件』---

 

事件数:9863件

被害者数:9850人

総被害金額推定:3600万円

 

R市のいたるところでこの事件が確認されている。

犯人は財布や金品など窃盗を行っている。

 

犯人の姿は多く確認されているが、いずれも黒い服を着ていた、という報告のみであり、体格などの情報は得られていない。

 

この事件は6か月ほど前から起こっており、当初は誰もいない店、民家などから窃盗を働いており、3か月前から人から直接財布を盗むようになった。そしてここ1か月は財布だけでなく高価な腕時計や指輪も盗まれるようになった。

 

手口は目の前に現れたと思ったら突然消えて、気が付いたら物がなくなっているというのが主な手口であり、犯人は高度な俊敏性を持っている。

 

時間帯は様々。標的、動機は不明。

 

この事件の調査、および解決を頼みたい。

解決出来たら便利屋が起こしてきた今までの事件はある程度目をつぶる。

 

だから、頼む

 

----------

 

 

 

 

これを渡してきたときの苦虫を嚙みつぶしたようなヴァルキューレ職員の顔を見れば、どうしてもこの事件を解決したいことがわかる。なるほど確かに、それほど俊敏な動きをする者がこれ以外の犯罪に手を染めようものなら、手が付けられなくなる。

特に、最近は犯罪のレベルがエスカレートしているのだから、必死になって止めようとするのも当然だろう。

 

犯罪を取り締まるために今まで数々の事件を起こしてきた便利屋68に頼む。

それほどあちら側も追い詰められているようだ。

連邦生徒会に頼ろうにも、なにやらあちらも別件で忙しいらしい。

 

「アルちゃーん?聞いてる?」

「えぇ、聞いているわ。もうすこし聞き込みを続けるわよ」

 

ムツキの声にアルは返事を返し、4人は聞き込みを続けた。

 

 

結果、得られたのはヴァルキューレの報告書とほとんど同じ情報であった。

ふぅ、と誰かが息をつく。

 

「うん。手がかりといえる情報はないね」

「わ、わたしがもっと聞き込みがうまければ・・・し、死にます!」

「落ち着いてよハルカ。それで、どうするの?社長」

 

カヨコに目を向けられたアルは何を言うでもなく、アゴに手を当てていた。

ムツキが頬を膨らませて言った。

 

「ねぇー聞き込みばっかりでつまんないー!せっかくこんなに高層ビルばかりのいろいろ楽しそう町なのになんであるいてばっかりなのー!なんで今回はこんなにたくさん聞き込みしてるの?」

 

不満そうなムツキに、アルは答えた。

 

「報告書だけではわからないことも多いわ。だから直接聞いておきたかったの」

「でも結局そんな重要そうな情報手に入らなかったじゃーん!」

「や、やっぱり死にますぅぅぅ!!」

 

銃を構えるハルカ。今度はご丁寧に口元から頭を打ちぬこうとしている。

 

アルは落ち着いてハルカの銃を抑える。

 

「いいえ。十分な情報を得られたわ。被害者が事件を語るときの顔を見たかしら?」

 

アルの質問に、三人は・・・

 

「怒ってた」

「怒ってたね」

「お、怒ってました」

 

まったく同じ感想を返した。

現に、先ほど聞き込みをしたとき、みんながみんな荒い口調で事件を語っていた。

 

「そう、怒れるだけの余裕がある、ということでもあるわね」

「え、えっと、どういうことですか?」

 

ハルカが恐る恐る質問する。

アルは前を歩きながら言葉をつづけた。

3人もそれに追従する。

 

「窃盗事件で、財布を盗まれた。なんてことになったらしばらく呆然としてしまうものよ。それが大金ならなおさらね」

「そっか!この町の人はお金持ちばっかりだし、お財布にはいっぱいお金が入ってそうだよね!」

 

ムツキが重たい財布を思い浮かべる。

 

「えぇ、確かにお金は入っているでしょうね。それも全財産」

「ぜ、ぜんぶ!?」

 

ムツキが昨日のスーツケースに入った大金を思い出す。

 

「重たい財布どころじゃないよ!?」

「落ち着きなさい、ムツキ。全部が全部現金というわけではないわ」

 

アルは自身の財布からカードを取り出す。

 

「あ、そっか!電子化!」

「そう、このカード1枚にその人の全財産が入っているの。それを盗まれたのに、みんなあまり焦りを感じないのよね。シンプルに怒っているだけなの」

 

そこがよくわからない点ね、とアルは話を終える。

 

アルの話を聞きながら、カヨコはとある一人の被害者を思い出した。

 

「なかには指輪を盗まれたって人もいるけど・・・」

 

カヨコのその発言に、アルは答える。

 

「いえ、あの指輪はそこまで大切なものじゃなかったみたいよ」

「な、なんでそんなことがわかるんですか?」

「あの人の反応をみればわかるわ。きっと値段が高いから買っただけで、結婚指輪でもなんでもなかったのでしょうね」

「それで、呆然とするより先に怒ってたんだ」

 

カヨコは納得がいったようだ。

 

アルは話をつづける。

 

「そう、犯人が盗んでいるのは主に直接的なお金か価値の高い物・・・これだけでわかったことがひとつあるわ」

 

ハルカが眼を輝かせて聞いた。

 

「そ、それは・・・?」

 

アルは笑って答えた。

 

「犯人は、窃盗しかしていない、ということよ」

「報告書と同じじゃん!」

 

ムツキが鋭く突っ込んだ。

 




ムツキの口調がなんだかんだ一番難しいです。
メスガキ口調で書けばいいのかもしれませんが、私が書くとどうしてもただのわがままなガキになってしまう。
なんか会話がギスギスしてるな、と感じてしまったら申し訳ないです。
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