四人は、とある路地裏に来ていた。
高い建物たちに囲まれている細い道では、草の1本も生えていない。
そしてボロボロになって箱型になった段ボールがいくつか置かれてた。
「ここが、数ある犯行現場の中で一番報告が多い場所、だね」
「ザ・路地裏って感じ!この町にもこういうところあるんだね!」
「う、うーんと・・・なんでしょう・・・?」
今の時間は午前の10時。
太陽がちょうど建物に隠れて、この路地裏は薄暗い。
そしてなぜか建物は黒色に塗られていて、通常よりも暗い印象を受けた。
「確かに、事件が起こりそうな雰囲気だね。確かここの建物一帯もほとんど人が住んでないみたいだし」
それに、とカヨコが言葉をつづける。
「この環境ならなにかを仕掛けることもできそうだね。ムツキ、ハルカ。ここに罠を仕掛けるとしたらどうする?」
2人は路地裏に入って周囲を見渡して言った。
ムツキは周囲を見渡しながら答えた。
「うーんと、この建物の屋上に隠れていれば上からいつでもバーン!ってできるし、それに地面もやわらかいし、爆弾を仕掛けやすそう!!くふふ~やってみる?」
後ろ手に持っていたカバンをこれみよがしに振り回す。
「ダメだからね、ムツキ。それで、ハルカはどう?思いつく?」
ムツキをなだめながら、カヨコが言葉をかけるも、ハルカは首を傾げながら、あたりを見渡している。
うーんうーんと首をひねっている。
これにはアルを含めた3人も不思議に思ってそろってハルカに声をかけた。
するとようやく気付いたのか慌てて反応するハルカ。
「あっ、すいませんすいません無視してすいません死んだほうがいいですかいいですよね死にます」
「死ななくていいわ、ハルカ。今あなたが感じている違和感を言ってみなさい」
アルが言うと、ハルカは難しそうな顔で言う。
「えっとその、何と言いますか、何かが、足りないような、無い、といいますか、いや、何かある?、あ、いえ所詮は私なんかの意見ですから切り捨てていただいて構いません」
アルはふぅんとうなずいて、ポケットから財布を取り出す。
そしてガサゴソとなにかを取り出したかと思ったら、銃をその場において路地裏のさらに奥まで進んでいく。
3人は慌てて追いかけようとするも、アルに止められる。
「すこし気になることがあるの。5分でもどるわ」
そう言って返事もせずにゆっくりと先に進んでいく。
ほかの三人が止める間もなく先に進んでいき、
そして路地裏の最も暗い所に進んでいき、アルの姿が見えなくなった。
「す、捨てられた、わたし、とうとう捨てられてしまいましたか?」
「多分違うよ、5分で戻ってくるって言ってたし、たぶん大丈夫・・・」
ハルカの言葉にカヨコは落ち着いて返す。
しかし不安であることに変わりはないのだ。
ムツキはむむむとうなった。
「もしかして、アルちゃんまた楽しそうなことしてる?私もやりたーい!」
「ちょ、待ってムツキ!」
そういって走り出しそうなムツキを止めようと、カヨコが手を伸ばして止めようとする。
しかし、その必要はなかった。
ムツキが突然、何かにぶつかって止まったのだ。
おでこを抑えて後ろに下がるムツキ。
「いったぁーい!」
注意深くそこを見ていると、暗闇かと思われたそこには、黒い何かがあった。
「なに、これ?壁?そんなのさっきまで」
「アル様が通った時には壁なんてありませんでしたよ!?」
驚愕してムツキに駆け寄る2人。
目の前には真っ黒な何か。
いつの間にこんなものがあったのだろうか。注意深く見ないと気が付けない。
「どういうこと・・・?」
カヨコは目を閉じ、頭を回す。
なにか仕掛けられそうな路地裏
アルが五分で戻ると言ったこと
暗闇に消えていったこと
突然分断された自分たち
そして、一連の窃盗事件
カヨコは一つの予想を立てた。
「わかった」
カヨコの言葉に、壁を叩いていた二人が振り向く。
「社長は今、犯人と出会ってる」
二人が眼を見開く。
カヨコの推理はこうだった。
アルはおそらく、自分が事件の被害者になることで犯人と接触しようとしたのだ。
銃を置いたのは、自分は無防備だということのアピール。
さらにわざわざグループから離れて孤立していると思わせる。
そうしてそのアピールにつられた犯人は、私たちをこの壁で分断し、アルから財布を盗み出そうとしているのだ。
答えにたどり着き、この状況の打開策を考えようと再び目を閉じる。
しかし、突然ドカァン!と爆音。
突然の爆音に驚き、思考を中断し目を開くカヨコ。
そこには先ほどとは違う意味で焦げて黒くなった壁と銃を持ったムツキとハルカ。
「この壁、爆弾でも吹き飛ばないの?なんて素材?アルちゃーん!だいじょうぶー?」
「アル様!!今助けます!!!!」
2人が爆弾を使っていた。
そして次々と壁に向かって爆破していく。
「ちょ、ちょっと2人とも」
「アル様ぁぁ!!!」
まずい、ここまできたらハルカはそう簡単には止まらない。
一人では止められないと判断して、ムツキに目を向けると・・・
「アルちゃん、今助けるからねー」
普段と同じ口調で、普段からは想像できない冷えた目をしていた。
この目は、まずい。
このままでは犯人を撃ち殺しかねない。
二人ともアルのことを心配しすぎているのだ。
あの社長がそう無防備に向かっていくはずはないのだから、そこまで取り乱す必要はない。
そんな二人とは違う方向でアルを信頼しているカヨコはどうすれば二人が止まるかを考える。
これ以上やられると、いくら人通りがないとはいえ、誰かに通報されかねない。
力づくでも止めたほうがいいかと、カヨコが迷っていると、ポンと肩に手を置かれた。
カヨコが銃を持ちながら振り向くと、
「今戻ったわ」
いつも通りの社長がそこにいた。
「この道の先、出口があったの。そこからぐるりと一周して戻ってきたわ」
ムツキとハルカがバッ振り向き、アルにとびかかる。
それをアルは倒れそうになりながら優しく抱きとめた。
「そんなに心配させたかしら?悪かったわね、でも五分で戻るといったはずよ」
「アル様ぁ!」
「アルちゃーん!犯人と会うんだったら私も誘ってよぉ!」
「あら、よくわかったわね。あぁ、カヨコね。素晴らしい推理よ」
二人を抱えてアルが体制を戻す。
そして銃を下ろすカヨコに視線を向けた。
「えっと、本当に犯人に出会ってきたの?銃を置いて?」
「えぇ、一度犯人と出会ってみたかったのよ」
「なら、最初にそう言ってほしかった」
そういって安心と呆れが混ざった溜息を吐くカヨコ。
アルはムツキとハルカの頭をなでながら微笑をもって返した。
なんとかなったでしょ?と言っているのがわかる。
今度は呆れが多分に含まれたため息を吐きながら、カヨコは言った。
「それで、犯人とはちゃんと出会えたの?」
「えぇもちろん」
アルはポンッとポケットを叩いた。
「ちゃんと盗まれてきたわ」
3人はぽかんと口を開けた。