もしもアルちゃんが本当にアウトローだったら   作:野口さん

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第Ⅴ話 犯人は・・・?

 

「ど、どういうことですかアル様!?」

 

突然の犯人出現に驚くハルカに、アルは余裕をもって答えた。

 

「えぇ、ちゃんと順を追って説明するわ。あなたにも、ね?」

「はい・・・」

 

少女の肩にポンと手を置いて、アルはそこにあったベンチに少女を座らせ、自身もとなりに腰掛ける。

目の前には道路があって、テレビで見るような高級車が走っていた。

 

「そうねぇ・・・まずは路地裏のことから、かしら」

「あ、アル様がお財布を盗まれたっていう・・・」

 

少女がピクリと反応した。

 

「えぇ、あの時に盗まれた財布にすこし細工をしておいたのよ」

「あのガサゴソしていたのは、カードを抜き取るだけじゃなくて、細工をするためだったんだね」

「あら、カヨコはわかっていたのかしら」

「まぁ、すこし。つまりはこういうことでしょ?」

 

犯人と接触をしようと考えていたアルは、事件数が最も多いあの路地裏にむかった。

そして確実に接触できるように、銃を置いてあえて自分から孤立する。

さらに盗まれてもいいように、あらかじめカードを引き抜いておいた。

 

「えぇ。さすがねカヨコ。今のところすべて正解よ」

「・・・そう。でも、あの会計の時のアレはなに?」

 

カヨコが言ったのは少女が会計の時に取り出してしまった68円であった。

 

「財布にあえて偽札を入れていたっていうのはわかった。でも、なんでこの子があのお店にくるってわかったの?」

「それ、私も知りたーい!」

 

ムツキも話に混ざる。

彼女も思うところがあったようだ。

 

「アルちゃんお店でわざとゆっくり食べてたのはこの子が会計をするところをみるためだったんでしょ?」

「えぇ、そうね」

「だったらなおさらー!なんでこの子がご飯食べて、しかもアルちゃんのお財布を使うってわかったの?ほかの人から盗ったお財布だったかもしれないのに」

 

ムツキは食事の際に感じていた違和感から、アルの目的に気づけた。

しかし、そこに至るまでの過程には、まだ疑問が残る。

 

少女もそのあたりは気になるようで、膝に手を置きながら、アルのほうを見つめている。

 

「そうね・・・まず、路地裏で私はたしかに財布を盗まれたわ。

 暗くて周囲の状況がよくわからない。そんな中で目の前に誰かいると気づいたら、人間どうしてもそこに注視してしまう。

 突然それが光ったら、思わず目がくらんでしまって隙ができる。その隙に相手の財布を盗む。これがいままでの犯人の手口よ。

 でも、あらかじめ対処法を知っていればどうにかなるものよ。光ったと思った瞬間、お財布を入れた右ポケットの前に手を構える。それだけ」

 

「そしたら、手がなにかとぶつかったの。ちいさな、ちいさな手だったわ。あれ、あなたよね?」

「はい・・・」

 

少女は震えながらうなずいた。

アルは少女の頭をやさしくなでながら言葉をつづけた。

 

「それでそのまま財布を抜き取られたの。鮮やかな動きだったわよ?お嬢さん。あの俊敏な動きの元は、その素敵な靴かしら?」

 

少女の靴は、普通の靴のように見えたが、よく見ると、金属のような光沢と、何かの配線が何本かつながっているのが見えた。

 

「す、すごい靴ですね。これなら確かに、速く走れそうです」

「うぅ・・・」

 

少女はうつむいたまま動かない。

黙ってアルになでられている。

 

ムツキは手を叩いて言った。

 

「そっか!その小さな手っていう手がかりがあったからこの子が犯人ってわかったんだね!アルちゃんすごーい!」

「・・・それで?犯人の手口と手がかりは分かったけど、なんであの店にくるってわかったの?発信機でもつけてた?」

 

カヨコが聞くとアルはあっけらかんと言い放った。

 

「ただの偶然よ」

 

「「「「え」」」」

 

これには3人だけでなく少女も驚いていた。

 

「といっても、時間帯的にお昼ご飯の時間だし、小さな子供だったらご飯は食べたいだろうから近場でたくさん食べられそうな定食屋さんに向かったというだけよ」

 

つまりは、ただの勘であったのだ。

 

あの小さな手なら、食べ盛りの年であるかもしれない。

近場のご飯屋さんに行くかもしれない。

まだ自分以外の財布を盗んでいないかもしれない。

 

そんなかもしれない運転が、今回偶然うまくいった、ということであった。

 

ハルカが眼を輝かせ、ムツキは腹を抱えた。

 

「ア、アル様!!運すらも味方につけるなんて!!」

「あははははっ!!!アルちゃんやっぱりおもしろーい!」

 

そんな2人とは対照的に静かなカヨコは、しゃがんで少女と視線を合わせていた。

 

「じゃぁ、本当に君が犯人ってこと?」

 

少女は小さくうなずいた。

 

「ごめんなさい」

 

小さな声であった。

今にも泣きそうな声でそう言われると、ついカヨコはこの子を許したくなってしまう。

しかし、心を鬼にして、少女に詰め寄った。

 

「なんで、こんなことしたの?」

 

「ママとパパが、急にいなくなっちゃって、おなかすいて」

 

「おうちも、おいだされちゃって」

 

「ごはんたべたかったけど、おかねがなかったから」

 

「ごめんなさい、ごめんなさい」

 

そういって泣き出してしまった。

ハルカももらい泣きしそうになっている。

 

泣き出してしまう少女に対して、カヨコはどうしようかと考える。

ヴァルキューレに突き出すべきかな・・・と考えていると、アルはまだ頭をなでていたことに気が付く。

 

あまり甘やかさないほうがいいのでは、とアルに視線をむけるが、アルはいいのよ、という視線を返した。

 

その反応に首を傾げながら、カヨコは少女に再び声をかける。

 

「えっと、じゃぁとりあえず、お財布返してくれる?」

「・・・はい、ちゃんと、いままでどおり、かえします」

 

少女の言葉に、カヨコはピクリと反応した。

それはアルも同様である。

 

「いままで、どおりって?」

 

少女はなきながら言葉を返した。

 

 

「とったおさいふは、ぜんぶもとの人に、かえしてます。おかねはつかっちゃったけど。

 人からもらったものは、ちゃんとかえす。ママとのやくそく」

 

カヨコはなるほど、理解した。

 

この少女は、今まで取った財布を、すべて返したと言った。

お金だけ抜き取ってそれ以外をすべて返す。

なるほど、それならば今までの被害者の言動も理解できた。

彼らに焦りの感情がなかったのは、すべて財布が帰ってきていたからだ。

それに、少女はカードというものを知らなかった様子。使い方も当然知らなかったのだろう。

それならば、財布を盗まれたお金持ちたちも、財布に入った現金が多少盗まれただけ、カードは無事。

さらにお財布もしばらくすれば帰ってくる。

 

焦る必要は全くない。

 

そんな少女の言葉にカヨコは言葉をつづけた。

この少女の罪状は、財布の窃盗だけではない。

 

「でも、君は少し前に人の家を壊したり、指輪とかも盗んでたんでしょ?それは、どうするの?」

 

カヨコのそんな言葉に、少女は首を傾げた。

 

「ひとのいえ?こわす?」

「え?ほら、半年前に君は窓を割って侵入したって・・・」

「ママとパパがいなくなったのは、3か月前、ゆびわも、しらない」

 

アルたちは首を傾げた。

確かにあの報告書や、市民への聞き込み調査では、この事件は6か月前から始まっていたはず。

さらに指輪や腕時計の事件も、少女は知らないと言っている。

 

いったいどういうことか。

 

「ねぇ、お嬢さん。少し聞きたいのだけど・・・」

 

アルが質問を投げかけようとした時、目の前に車が止まった。

 

その車はこの町のどの車よりも高そうで、いわゆるリムジンといえるような車であった。

 

彼女たちが固まっていると、車の扉が開き、黒い服を着た屈強な銃を持ったロボット達が出てくる。

すかさず銃を構えると、車の中から声がした。

 

「失礼、銃を下ろしてくれますかな?便利屋68さん」

 

黒服の屈強なロボットたちは、車の扉の横に立ち、隊列を組む。

そして誰かが車の扉を開けると誰かが降りてきた。

 

車から降りてきたのは、ニュースで見たことのあるロボットであった。

 

「・・・どちらさまかしら?」

「この町の市長ですよ、便利屋さん。と言っても、最近就任したばかりですが」

 

頭をかきながら、そんな事を言うロボット。

4人はテレビの内容を思い出す。

 

曰く、新技術を発明した天才科学者

 

「ヴァルキューレから聞いていますよ。どうでしょう、少しお話していきませんか?」

 

そう言って、ロボットは笑った。




事件はまだまだ終わりません。

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