もしもアルちゃんが本当にアウトローだったら   作:野口さん

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第Ⅷ話 過去

 

「いらっしゃ・・・おお嬢ちゃん!!よかった無事だったか!!」

「そんなに私たちは信用なかったかしら?店主さん」

「あぁ悪かったよ探偵の嬢ちゃん!一段と美味く作るから許してくれ!!」

 

にぎやかな店主に言葉を返しながら、広い席に座る。

もちろん少女も一緒の机だ。

膝の上ではなく、ちゃんとした椅子に座っている。

 

「カレーを5人分お願いできる?」

「お、嬢ちゃんが勧めたのかい?任せとけ!!」

 

そう言って厨房に入っていく店主。

 

アルはそれを見届けてから机の上にあるものを広げた。

市長から借りた犯罪ファイルである。

 

「まずは6か月前の事件ね」

 

ペラペラと5人はファイルを見る。

カヨコは気づいたことをいう。

 

「なんか、多くない?」

 

カヨコの言う通り、起きた事件が多かった。しかも多種多様である。

器物破損、窃盗だけでなく、謎の人物による住居侵入、傷害など。

ほかにもいくつもの犯罪が乗せられていた。

 

「ブラックマーケットがある町でもここまで多くない」

「しかもほとんど未解決事件じゃん!謎の人物だって!」

 

さらに奇妙だったのは、その事件のほとんどが未解決のまま終わっていたことだ。

こういった事件が、6か月前から3か月前までの3か月間続いていた。

 

「思ったよりこの町も治安が悪いね」

 

アルはファイルを見ながら口を開いた。

 

「一応聞いておくけど、あなたがやったことではないわよね?」

「ちがい、ます」

 

少女は真剣な顔で首を振った。

少女もこんなに事件がおこっていたのかと、驚いた顔をしていたが、同時に何かに納得したのか、あぁと声を出した。

アルがそれに気づく。

 

「どうかしたの?何かわかった?」

「あ、いえ、その、事件には関係なくって」

「いいえ、なんでも言ってほしいの。今はどんなに小さなことでも知りたいの」

「で、でも本当に事件とは」 

「関係なくてもいいわ。当時、なにかあったの?」

 

少女は頬をかいて、恥ずかしそうに言った。

 

「その、その時にママとパパがくれたんです、あの、布を。最近怖い事件がたくさんあるから、って」

 

両親を思い出したのか、すこし笑いながら言った。

 

アルたちはその言葉のおかしなところに気が付く。

ムツキが身を乗り出して聞く。

 

「え?でもその布って最近できたものじゃないの?6か月まえからあったの??」

「え、えっと、はい。わたしがつかっているのは、ソレを参考にあたらしくつくったものなので、」

 

今日何度目かもわからない驚きの表情を上げる4人。

市長の言葉では、確かに3か月前にできたと言っていた。

 

アルは結論を出すのはまだ早いかと、ファイルを少女に渡す。

 

「お嬢さん。悪いけれど、あなたが起こした事件はどれか教えてくれる?きっと載っているから」

「は、はい!」

 

ペラペラと少女がファイルをめくっていく。

6か月前から5か月前、4か月前と、ファイルが最近に近づいてくる。

 

そして3か月前の事件に到着したとき、少女の手があるページで止まった。

 

どうしたのかと、アルが声をかける。

 

「その事件かしら?」

「あ、ちがっ、ごめんなさい、めくります」

 

そうは言ったものの、少女はそのページから目が離せないようで、じっとファイルを見つめている。

便利屋の4人がどうしたのかと、ファイルを除く。

 

『耐久試験中の事故により、2名が死亡、1名が重傷』

 

察したアルとカヨコががしまったという顔をして、少女からファイルを手放そうとする。

しかし、それよりも早く、少女の目から涙がこぼれた。

 

ハルカがえ?と突然の涙に驚き、ムツキも悟ったのか、悲しい顔をしていた。

 

「パパ・・・ママ・・・」

 

少女が泣き出してしまいそうになったその時だった。

5人分の料理を器用に持った店主がやってきた。

 

「カレー5人分できたぞ嬢ちゃんた、ち・・・」

 

5人の雰囲気に、店主がどうしたのかと心配そうに見る。

そして、机のうえに広がったファイルを見てしまった。

 

「な!?この事件って・・・」

 

驚愕、といった顔でファイルを食い入るように見る。

店主のその反応に、少女の背中をなでながらアルが聞いた。

 

「何か知っているの?」

「知ってるも何も、俺はその事件の当事者だ!重傷者1名ってのはおれのことだよ!」

 

そう言って右足を上げる。

アルたちは以前の店主の言葉を思い出し、店主の足の事情を察した。

 

3か月前のこの事件で、店主は足を失ったのだろう。

少女が涙を拭きながら、店主に聞いた。

 

「パパと、ママのこと、しって、ますか?」

「パパ?ママ?な、にをいって!?」

「パパとママはこの事件で、しんじゃいました。なにか、しってるんですか?」

「嬢ちゃん、まさか、パパとママっつうのは・・・!!」

 

涙を浮かべながらも、少女の瞳は強く店主を見ていた。

店主は心底驚いたという顔で、5人分のカレーを机に置いた。

 

「嬢ちゃんのパパとママは、俺の先輩にあたる人、だな。学校が同じでよ」

 

そしてゆっくりと語り始めた。

 

「先輩方は学生時代から付き合っててな、そんで二人ともめちゃくちゃ頭がよかったんだ」

 

「学校を卒業してすぐ、研究所とか発明家からスカウトがたくさん来てたんだってな」

 

「でもなぜかそのスカウトを受けはしなかった。そん時はなぜかわかんなかったが、嬢ちゃんのおかげでわかったよ。嬢ちゃんを妊娠してたんだろうなぁ」

 

「そんで卒業してから一年だか二年ぐらいたって、突然帰ってきたかとおもえば、突然研究所を立てた」

 

「ちょうど俺が卒業する時期だったから、俺は同じ学校のよしみで入れてもらったんだ」

 

「ただまぁ、先輩方は頭が良すぎてなぁ、だれも二人についていけねぇ。そんでどんどん研究所やめてっちまって、気づけば研究所にいるのは俺と先輩方ともう一人の奴の4人だけ」

 

「俺はやめなかったのかって?はははっ俺は二人についていけないって開き直って研究器物の運搬とかに集中してたからな。やめるほど心にダメージは食らわなかったよ」

 

「もう一人の奴は、なんでやめなかったんだろうな?わかんねぇ。でも必死に先輩方に追いつこうと努力してたし追いつきたかったのかもな。あいつも頭よかったしよ」

 

「そんで、研究を続けて5年だか10年たってよ、あぁ今から数えればちょうど半年ぐらい前の時期か?」

 

「なんかの布かなんかを作ることに成功したって、先輩が飛び跳ねて喜んでやがった。ははっ、あんなにテンション高い先輩は珍しかったな」

 

「俺は全然研究に関わってなかったからよ、何ができたのかは全然知らねぇけど、先輩がうれしいのを見て、俺もうれしかった」

 

「もう一人の奴は喜ぶよりも先にその製品の構造を理解しようと必死だったみたいだけどな。結局わからなかったらしい」

 

「それで、そう、出来上がった製品を実験しようって話になったんだ」

 

「いろいろ実験してたみたいだぜ?俺は荷物運びとかスイッチを押すとかしかしてなかったけどよ。実験がうまくいくたびに、また二人が笑うんだ。それがうれしかった」

 

「そんで・・・そう、最後の実験でな。爆破衝撃に対する耐久試験、って言ってたっけか」

 

「それで、事故が起きた。爆破が想定より大きかったのか、俺たちが着ていたその製品が悪かったのかわかんねぇ」

 

「でも、その事故が起きて、俺の足は吹き飛んで、先輩方は跡形もなく吹き飛んだ」

 

「そっからしばらくは、覚えてねぇな」

 

「研究所はつぶれたよ」

 

「もう一人の奴もいつの間にかいなくなってた」

 

「俺はあの先輩方の手伝いをすることが本当に好きだったからよ・・・急にいなくなって、自分の存在意義を失っちまったんだ」

 

「そんで逃げるようにこの店を始めた。これが三か月前の話だ」

 

少女は黙って聞いていた。

アルたちも聞いていた。

 

「嬢ちゃんのことが放っとけなかったことも、今ならわかるぜ。似てるんだ、先輩方と。

 そうか。子供いたのか、先輩。なのにあんな事故で・・・」

 

そう言って、悔しそうにうなった。

 

少女は目元をぬぐってから言った。

 

「パパとママ、言ってました。

 いつも、後輩をつき合わせてしまって申し訳ないって。

 いつか飲みにでもいってちゃんと言わなきゃなって」

 

 

いつもありがとう

 

 

店主はその言葉に、目元を抑えた。

 

「何言ってんだよ、先輩。お礼を言いたいのは、俺の方だってのに」

 

声を震わせながら、店主は笑った。

 

「ほら、嬢ちゃんたち、カレーが冷めちまうよ、早く食いな!

 俺は、ちょっと厨房で仕事があるからよ。続きは嬢ちゃんが食べ終わってからな!」

 

そう言って厨房に戻っていく店主。

 

そこからの誰かの泣き声に聞こえないふりをして、少女たちはいただきますと手を合わせた。




ダイラタンシーの布は、少女の両親が作ったものでした。
店主さんと行方不明の誰かも、それにかかわっていたようです。

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