漣が10年目の進水日に提督と色々ぶらつくお話。

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エスコンフィールドや佐世保思いっきり楽しんでたらいつの間にかこんな時間に。
漣、10年目おめでとう!次の10年もよろしく!


隣り合わせの梅雨空

 

 

 

――ぽた、ぽた

 

 

 

陽の光のない曇り空。空からポツポツ降ってくる、雨粒。

そんな風景を眺めながら、鎮守府の入り口の軒の下で、佇んでる、漣。

 

……ま、仕方ないネ。季節の変わり目、天候は気まぐれなのです。

 

あ、別に、雨は嫌いじゃあないんです。

まーそりゃ、ドン引きするくらいの大雨はヤですよ?作戦中の視界不良にもなるし。

でも、小雨くらいだったら、窓から眺めてても楽しいもんですよ?

水たまりに、ぽつんぽつんと雨水が落ちてって、小さな波みたいに波紋を起こしてるのを眺めてても飽きないもんです、案外ね?

 

 

「~♪」

 

 

ま、朝っぱらからそんなどんよりした空に似つかわしくなく、鼻歌交じりに上機嫌な漣なのです。

 

 

――なんでかって?そりゃあですねぇ……

 

 

「――あ、おせーですぞ!ご主人様!」

「すまんすまん、ちょっと仕事の引き継ぎが長引いてな」

 

 

まあ、そゆことです。

今からご主人様とお出かけってやつです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

6月6日。

今日は《漣》の進水日です。

ま、《漣》の進水日であって、漣自身が別にどうこうってわけじゃないんだけど。

 

それでも、《漣》にとって、あの海に生まれ落ちた日。

漣にとっても、縁のある日には違いなくて、いろんな人や艦娘に「おめでとう」なんて言われる。

最初は実感があんましなかったんだけど、なんだか、こういう日があると『人』っぽいなーっていうか。

そんな風に考えてると、素直にそう言われるのが嬉しくなった。

 

漣にとって、今日はそういう日なんだけども、梅雨の時期は、艦隊運営が結構忙しい日だったりするんだ。

深海棲艦に対する大規模作戦中の期間だったり、その事前準備、あるいはその事後処理。

だから、なかなかこの時期ふらっとどっか遊びに行こうかー、ってのはなかなか、出来ない。

 

だからね。こうやってご主人様と、今日っていう日に一緒に出かけられるのは、とても久々なんだよね。

――前はいつだったかな、もう3年位前だったかな。

ま、だから漣は今日をとても楽しみにしてたってわけです。

 

 

「ちゃーんと、お仕事が滞りのないようにしてきました?ご主人さま、慌ててるとうっかりさんだからネ」

「ははは、手厳しい……。まあ、前の作戦の影響も大分落ち着いてきたし、問題ないとは思うよ。曙にも『今日くらいはこっちの事は気にしないで、アンタたち二人でゆっくり羽伸ばしてきなさい、クソ提督』って言われたよ」

「あはは、ぼのたんらしい」

 

 

あの子は、ああ見えてほんとーに仲間想いなんですよねーって。素直じゃないんですけど。

 

 

「……じゃ、行くか、漣」

「ん、ほいさっさー♪ ご主人様!」

 

そう言いながら、二人して、バサッ、と傘を広げて、軒下から出掛ける。

二人お揃いの、藍色の傘を並べながら、ね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなでお出かけするわけだけれども、そんな別に遠出するってわけでもない。

車でブイブイ言わせながら、どっか遠くのテーマパークに行くとか、そんなんでもない。

 

 

 

「ここらへんも、昔に比べると人増えたよなぁ。雨降ってるのに結構人いるし」

「漣とご主人様がここに初めて来たときは、実に殺風景でしたからねぇ、まー、すぐ近くまで深海まみれじゃあ海岸近くの街なんて誰も近寄らないでしょけど」

「ま、それだけ、漣たちが頑張ってきたってことだろ。ここらへんでも人がある程度安心して住めるようになったってことだ」

「ふっふーん、もっと褒めてくれてもいいんですぞ?ご褒美に肩でも揉んでもらいましょうか」

「調子に乗らない……」

 

 

ただ、二人揃って、鎮守府から近くの色んなとこ。

近くの街とか、店とか、景色とか見ながらぶらついて。

 

 

「ねっねっ、ご主人様。知ってましたか、ここのバーガー屋さん、新商品だしたんですよ」

「ほー……ってベーコンでっか!?一口じゃあ、かぶりつくの無理じゃないかこれ」

「アイオワさんやフレッチャーさんたちが協力したんですって。いっやー、実にネイビーなバーガーですなぁ、アッハッハッハ」

「いや、別にお前の笑い方はワールドワイドにならなくてもいいだろ」

 

 

 

「しっかし、ご主人様って、ここのタンメンほーんと好きですよネ」

「……ふー、っく。おう、辛麻婆入りでうまいだろ?」

「顔面汗たらったらで、うら若き乙女相手に言うセリフじゃねーですよ」

「ははは、違いない。漣くらいだろな」

「……それは果たして褒め言葉と受け取っていいものなんですかね」

「それだけ気心知れてるってことだよ」

「……ま、いいですけどネ。おいしいですし」

 

 

 

いろんなとこで美味しいもの食べて、いつものようにだべって。

 

 

 

 

「あ、おばあちゃん!元気してましたか~?いつものメンチカツ!くださいな!」

「あら、漣ちゃんいらっしゃい。あ、提督さんも、お久しぶりですねぇ」

「あ、どうも。いつもお世話になってます。……自分もメンチカツで」

「ふっふー、おばあちゃんとこのメンチカツは最高ですからな~」

 

 

 

「ここの系列のコンビニも、ずっと世話になってるよなー」

「そういえば、漣たちが鎮守府に来た頃からありますよね、ここって。うちの上とも縁があるのか、鹿島さんとか、江風ちゃんとか、加賀さんとかも手伝いに来てますし」

「ある意味お得意様だしな……、鹿島さんのときはなんか特にすごかったしな。街中の人が鹿島さん目当てで買いに来てた気がするし。……漣はこういうの興味ないの?」

「やー、漣はほら。ご主人様専属ですし?」

「……お、おう。そうか」

「あ、……照れてる。カワイイデスネ?ご主人様」

「うるさいぞ……」

 

 

 

 

昔なじみのお店に、顔出しに行ったりして。

なんてことのない、平和なひととき。

 

 

 

 

「ここは昔から変わんないですねぇ」

「そうだな。流石に雨降ってると、こっからの景色も、水平線の夕日も、ちょっと雲に霞んで見えるか。」

「んんー、これはこれで、いいもんですよー」

 

 

 

そんでもって、ぶらっと、鎮守府の近く、でもあんまり人が来ない、海が見渡せる場所。

着任してすぐに見つけた、漣とご主人様の二人だけが知ってる岬。

もしかしたら、他の子も知ってるかも知れないケド。

 

 

 

 

「ざーって、緩やかに押し寄せる感じ。そこにぽつ、ぽつって雨の音が小さく刻んでいく感じ。漣、こういうの結構好きですよ?」

「小波(さざなみ)だけに?」

「アハハ。もしかしたら、そういうのもあるんかもしんないっすね。夕立ちゃんとかも雨の日でも大はしゃぎですし」

「ま、意外とそういう穏やかなのが好きなのも、漣らしいんじゃないか?」

「意外とはなんですか、意外とは。ふてくされますよー」

 

 

 

二人並んで、藍色の傘をさして、いつものように、冗談を言いながら。

とりとめもなく、のんびり過ごしてく。

 

 

 

「しっかし……10年、か」

「そ、ですねー……、長かったような、あっという間のような」

 

 

 

深海棲艦との戦いが始まって、10年。

漣たち艦娘が、新しくこの世界に生まれ落ちてから、10年。

 

10年、いろいろとあった。いろいろと、変わった。

 

戦いの方も、近海からは比較的深海棲艦を叩き出して、戦線を押し上げていって、どんどん遠くに繰り出すようになって、平時の制海権では優位に立つようになってきたし。

いつの間にか、深海棲艦から制海権を取り戻すというよりか、どこからともなく、それこそ近海にも突如大量に湧いて出る深海棲艦を、モグラ叩きのようにのしていくようになったし、作戦も昔より大規模化してる。

でも、戦間期も昔より長くなってきた。その間も漣たちがちゃんと海をパトロールしてるし。

鎮守府の近くも、昔は殺風景なくらい、ほとんど人がいなかったのが、また戻ってきてどんどん活気づいてきてる。

漣 もご主人様といろんなとこに行ったり、いろんなことをする機会や時間も増えてきている。

未だに、海の脅威は取り除くことはできていないけれど、少しずつ、着実に、平和へと近づいてはいる、とは思う。

 

 

「漣は……あんま、変わらんよな。いろいろと」

「……ふーんだ。どーせ、漣はちんちくりんですよー」

「はは、まあそういうとことかな」

 

 

そういうご主人様は、やっぱちょっとおっさんっぽくなった。若々しさが減ったっていうか。机仕事でよく腰痛めてるし。

ほっといたら、すぐヒゲ生えるようになってきたし、ぶっちゃけ、似合わないからちゃんと剃ってもらっている。

 

漣は……、まあ、昔からちんちくりんなんだけどさ。

昔に比べたら、背だって伸びたし、ご主人様とより隣り合って歩けるようになったと思う。

それでも、七駆の他の三人と比べたら慎ましいもんなんだけどさ。

潮ちゃんはボン・キュッ・ボンに磨きがかかったっていうか、若奥様感マシマシになってきたし。ずるい。

ぼのも、すっげー健康的な成長というか、おしりからふとももあたりが実にけしからんよなーっていうか。ずるい。

一番の成長株は朧ちゃんだろうか。おっぱいの成長速度だけで言えば随一だ。全体的な雰囲気もどこかボーイッシュだったのに乙女要素が加わって……、まあ、ずるい。

 

でも、ご主人様、いや、人かな。

漣たち艦娘は、人たちと比べてみて、『10年』って時を重ねた感じは、あんましない。

確かに、髪だって伸びるし、成長速度だって個人差はある。それによって艤装の更新とかもあるし。

 

でも……、そうだなあ。10年前の漣 は、もうちょい自分自身が大きくなっているのを想像していた。

実際、今の漣は……女子中学生くらいかな?ギリギリJKではないくらい。ぼのや潮ちゃん、朧ちゃんもそう。

なんてーか、大人の魅力にはまだ程遠いんだよね。

で、逆に金剛さんとか、赤城さんとか、長門さんとか、鳳翔さんとか。昔から大人だった艦娘は、10年で雰囲気の変化くらいはあるけれど、10年を感じさせるほどじゃないんだ。

 

今日巡ってきた街並みだって、10年かけてゆっくり復興してきた。

離れ離れになった人々が、また集まって、立て直してきて。

そうして街が刻んてきた時間と、漣たちの時間は、噛み合わないんだ。

 

 

 

わかってはいたんだけどね。

やっぱ、漣たち艦娘と、ご主人様たちの時間は、きっと違うんだよね。

こうやってさ、隣り合って、のんびり同じ時間を共有出来て、嬉しいけど。

そう思うと、ちょっとだけ、寂しいとこもある。……雨降ってるから、余計にそう思うのかな?

 

 

 

「……どしたー、漣」

 

 

なーんて、もの思いにふけってると。ポン、と漣の頭の上に手のひらを乗せて、ご主人様が語りかけてくる。

 

 

「……んーん、なんでもないです。……ね、ご主人様」

「なんだ?」

「漣たち、ここまで頑張ってきましたね」

「そうだな。こうやってのんびり過ごせるのも、その賜物ってもんだ」

「ですねー。……次の10年も、もっと先も、こうやってのんびり出来ればいいなって、思ったんですよ。

その時も、漣はご主人様の隣で、こうしてられたらいいなー、って」

 

――10年続いたこの戦いがいつまで続くかまだわからない。

急に明日にでも終わるかもしれないし、1年後かもしれないし、5年後かもしれないし、10年後かもしれないし、もしかしたらもっと先でも続いてるかもしれない。

戦いが終わっても、ご主人様と漣 たちはまた同じ道を歩めるかもしれないし、もしかしたら違う道を歩むことになるかも、しれないけれど。

 

 

「……そうだな。俺も、そう思うよ。ま、戦いはとっとと終わるに越したことはないけどな」

「あはは、違いないですね」

「ああ、でも……心配しなくても、多分大丈夫だよ。もう『提督』ってのは、俺にとって生業みたいなもんだし。お前がついてきてくれる限り、俺は多分隣にいると思うよ。なんてったって俺は、漣の『ご主人様』だしな。」 

 

ははは、って笑いながら、ご主人様は漣 にそう言ってくれる。

 

「……あははは、嬉しいこと言ってくれるじゃないですか、もー」

「嬉し泣きしてくれてもいいんだぞ?」

「や~です。乙女の涙はレア物ですぞー。……あ」

 

なんて、いつもみたいに冗談飛ばしあってたら、ぱらぱらと振り続けていた雨が止んでいた。

覆っていた曇り空にも、ちょっと切れ目。沈みかけの夕日がそっから照らされて、キレイ。

 

「ん、いつの間にか止んでたな。……スッキリしたか?」

「ん、ども。……そろそろ帰りますか!あんまし遅くなっても、みんな心配しますしね」

「そうだな。あ、そうそう、大事な事言いそびれるとこだったわ」

 

 

そう言って、一呼吸。

 

 

「……《漣》、進水日おめでとう。お前の、お前達のおかげで、今日も俺たちはこうしていられるよ。ありがとう。

 ……漣、今日も、こうやって隣に居てくれてありがとう。これからもまた1年。よろしく」

「……もー、ご主人様はズルいですぞ。……こちらこそ、よろしくですぞ!」

 

お揃いの藍色の傘を片手に、雨上がりの夕日に照らされながら、手を繋いでいく帰り道。

 

1年後も、10年後も、もっと先の時間も。

こうやって、二人並んで、歩いて進んでいけたらいいですよね、ご主人様♪

 

 

 


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