Get Alive   作:

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1話

確かにあの時、俺は自分の腹を刺して死んだはずだった。

 

 

―Get Alive―

 

 

気がつくとガキのころよく行っていたゲーセンに立っていた。

目線の高さが低くなっている気がする。

状況が分からず、きょろきょろと辺りを見回すと、ガラスに映った自分の姿が見えた。

そこにいたのは小学生の自分だった。

死ぬときにはそれまでの思い出がよみがえってくると聞いたことがある。これがソーマトーってやつだろうか。

それにしては、自分の意思をもって自由に動くことができることに気付いた。

……ただの夢なのか?

不思議な感覚になりながらゲーセンの中をうろついていると、懐かしい格闘ゲームを見つけた。

ポケットの中を探れば小銭が数枚。

俺は吸い込まれるようにゲーム機に百円玉を入れていた。

当たり前のようにいつも使っていたキャラクターを選択する。

久しぶりにプレイしたが、腕は鈍っていない。

童心に帰り、ゲームに没頭していた。

すると、急にブチンと画面が真っ暗になった。

「ああぁああ!!俺の苦労の結晶がぁぁ!!」

背中越しに言い争いをしていた奴らに向かって声を荒げる。

「テメェらこらぁぁぁ、せっかくあとちょっとでクリア出来そうだったのに……ぶっ殺す!!」

殴りかかろうと勢いよく立ち上がったが、目に入った人物に唖然とした。

「……かず、とら…?」

「え?」

一虎はただでさえ大きな目を丸くさせていた。

「何で…俺の名前……?」

「…お前、今日誕生日?」

「そうだけど…って何で俺のこと知ってんだよ!?キモチワリィな!」

「そっか…」

これが一虎と出会った日のソーマトーだというのが分かった。

きっと俺と出会ってなければ、お前はあんな風にはならなかっただろう。

「ごめん…ごめんな……一虎……」

自然と出た謝罪の言葉と涙が止まらなかった。

「なんだコイツ…一虎の知り合いか?」

「知らねーよ!こんなヤツ……」

「もうほっといて行こうぜ」

「あっ、待ってよジュンペケ!」

遠ざかっていく鈴の音と二人の後ろ姿に、あのピアスは元々一虎のものではなかったことを思い出した。

本当ならこの後は一虎と一緒に朝まで暴れ回って、気に入らない奴を殴って、車に火をつけて、あのカスからピアスを奪うはずだったのに。

これはソーマトーってやつじゃないのか?

過去が変わったのか……?

これで良いんだ。

俺と友達になんかならなければ、一虎は不良にはならない。

きっとバイクには乗らないし、バイクを盗もうなんて言わない。

真一郎くんを殺してしまうこともない。

そしたら、少年院に入ることもない。

一虎は、母親が選んだ育ちの良さそうな服を着て、言われるまま私立の中学に行って、良い高校、良い大学、良い会社に入る。そういう人生を送るんだろう。その方がアイツのためにも良いに決まってる。

 

これは、死の直前に見る都合の良い夢なのかもしれない。

一虎に真っ当に生きてほしいという、俺の願望がそんな夢をみせているのかも、なんて頭の中でグルグルと考えながらとりあえず家に帰ることにした。

団地に着いて鍵をさしたのに全然開かなくて不思議に思って表札を見ると全然知らない奴の名前が書いてあった。

「あ……」

この時はまだ俺はこの団地ではなく、前の家に住んでいたのを思い出した。

なんとなくモヤモヤしながら階段を降りて二階に着くと〝松野〟と書かれた表札が目に入った。

「ずっとここに住んでんだな……」

俺を見下ろす千冬の顔が頭をよぎった。ボロボロと涙を溢して、俺の名前を叫んでいて、思い出しただけでも胸が張り裂けそうになる。

踏み絵だと言ってボコボコに殴ったのに、千冬は真っ直ぐな目で俺を信じていた。

団地の前の道を歩きながら、千冬と出会った時のことを思い出したりもした。俺に対してタメ口で「おい、ガリ勉」と呼んでいたなんて、今では信じられなくて笑えてくる。この道で暴走族に絡まれていたのも懐かしい。

「ペヤング、食いてぇな……」

さすがにこの時に家にペヤングのストックがあったかなんて覚えていない。

コンビニ寄って買おうとも思ったが、ポケットの中の小銭は減っていて百円玉は姿を消していた。

記憶が曖昧だったが、なんとか家に辿りつくことができた。

外から見て電気が点いていないから、オフクロはきっと仕事だろう。だから当時は朝までフラフラしていても大丈夫だったのか。

テーブルの上には俺のメシが用意してあって、「食ったら食器は自分で洗え」とメモが置いてある。

俺の好きだった肉屋のメンチカツが今日のメイン。

嫌いだと言っているのに、煮物をつくるのは嫌がらせかと思う。今日は里芋の煮物だった。いつもなら、見なかったふりをしてテーブルの上に放置してしまうが、なんとなく今日くらいは食べてみても良いかという気になった。

一口食べてみて、やっぱり苦手だと再認識した。

基本〝良い母親〟だと思う。世間から見たらそうは見えないのかもしれないけど。人使いは荒いし、怒らせたら回し蹴りが飛んでくるし。

十代で俺を産んで、父親がいなくなってからは女手ひとつで俺を育ててくれた。中一で事件を起こしたときも、めちゃくちゃ怒られたけど、俺を見放さないでくれた。留年したときは泣かせてしまった。それでも、何だかんだ言って、ずっと俺の味方でいてくれた。そんなオフクロをひとり遺してきてしまったことを、今になって後悔した。

食べていた里芋の煮物がだんだんとしょっぱくなっていく。

俺は自分で望んで死を選んだつもりだったのに。

あーすれば良かったとか、こーしておけば良かったとか、振り返ればもっとやるべきことがあったと思う。

少しずつ瞼が重くなってきた。

やっぱり、夢だった……?

このまま目を閉じてしまえば、ここはルーベンスの絵の前ではないけど天使が迎えに来る、そんな気がする。いや、俺は天国になんか行けない。きっと迎えに来るのは火の車。車を燃やした俺を、火の車が迎えに来る。インガオーホーってやつか。

 

 

「ケースケ!食器洗えって言っただろ!」

朝から怒鳴り声で起こされた。

メシを食ったままテーブルで寝てしまっていたらしい。

テレビのニュース番組が2002年9月17日を告げていた。

やはり夢ではないのだと自覚する。

ソーマトーというのは、過去を変えることができるのか。

「あれ?ケースケ、煮物食った?全部?絶対残すと思ったのに」

食器を片付けながら、流しの三角コーナーを確認している。さすがに俺だって、嫌いだからってそんなところに捨てたりしない。

「……すげー腹減ってたから」

「ペヤングのストックあるのに?」

家に着くまではあんなにペヤングが食べたかったのに、すっかり忘れていた。

「お前ケンカで殴られ過ぎて頭おかしくなったか?」

不思議そうな顔で俺を見てくる。

「……オフクロ」

「はぁ!?オフクロだと?」

鬼の形相で俺を睨みつけてくる。この頃はまだ「母ちゃん」と呼んでいたのか。

「なぁ母ちゃん、ソーマトーって知ってる?」

「走馬灯?死ぬ時に見る記憶みたいなやつ?それがどうした?」

「俺、今ソーマトーの最中なんだよ」

「はぁ?何、お前死んだの?」

「俺、本当は中学生で、暴走族やってて、抗争があってそんで…」

「ヤンキー漫画とかドラマの見過ぎで変な夢見たんだろ。お前は小六で、ただの悪ガキ」

と、オフクロは俺を笑い飛ばした。

チンッとトースターの音が鳴る。

「お前が皿洗って無いから乗せるもんねーぞ、手ぇ出せ」

直接焼きたてのトーストが手に乗せられる。

「あっつ!」

「男だろ、そんくらい我慢しろ」

朝メシを食って、風呂に入って、支度をして、オフクロに急かされながら家を出た。

ランドセルを背負っている自分にムズムズする。

当時のようにマイキーの家へ行くと、玄関の前で真一郎くんに会った。

「おう、ケースケおはよー。今日早ぇな!いつも俺が出た後に来てんだろ?」

「……真一郎くん」

「万次郎ならまだ寝てるわ」

「真一郎くん……っ!」

「おい、ケースケ?どうした?何泣いてんだよ?腹でも痛えのか?」

「ごめんっ…俺、真一郎くんを……」

「え?俺が、何?」

「俺……真一郎くんを、殺した……」

「は?いや、俺生きてるし……何?怖い夢の話?」

「違くて……っ」

上手く喋れなくなった俺を、真一郎くんは自分の部屋に入れてくれた。

今ではマイキーの部屋になっているガレージで、余計に涙が止まらない。

見兼ねた真一郎くんが学校と家に連絡してくれた。

「落ち着くまで居ていいからな。俺、万次郎起こしてくっから」

俺に気を使ったのか、真一郎くんは部屋を出て行った。

エマがマイキーに怒っている声が聞こえてくる。

バタバタと朝の騒がしい日常の音に、少しずつ自分が冷静になっていく気がした。

「あれ?場地いねぇじゃん」

外に出てきたマイキーの声が聞こえた。

「はー?あいつ遅刻かよ。俺を待たせるなんていい度胸してんじゃん」

「ケースケなら体調悪いって連絡あったぞ。早く行かねぇと遅刻するぞ」

俺に文句を言う声がだんだんと離れていくのが分かった。

マイキーを見送った真一郎くんが部屋に戻ってきた。

「ケースケ、どうだ?少しは落ち着いたか?」

俺が頷くと、真一郎くんは俺の隣に座った。

「で、何があった?赤ん坊みたいに泣くからさすがにビビったぞ」

「……赤ん坊じゃねーし」

何から話したら良いのか分からなくて、とりあえず悪態をつく。

俺が死んだこと?

真一郎くんを殺してしまったこと?

東卍の結成?

九代目黒龍のこと?

そもそも一虎との出会いから?

「……俺を殺した夢、そんなに怖かった?」

「違う……夢なんかじゃない……」

夢なら良かったのにと何度も思った。

「……俺、真一郎くんの店がどこにあるのか知らなかったんだ」

「そうだっけ?」

マイキーがドラケンと連むようになってから、佐野家に出入りすることが前よりも減っていった。人見知りの春千夜は、マイキーの新しい友達に馴染めず少しずつ疎遠になってしまった。この年の夏、ドラケンに三ツ谷を紹介されて、その少し後に俺は一虎と友達になった。

その頃、真一郎くんは前働いていたバイク屋を辞めて自分の店を開店させた。忙しそうに働いていて、ますます真一郎くんと会わなくなっていた。

色々なことを一気に思い出した。

「俺……、友達と、真一郎くんの店だって知らなくて、バイクを盗みに入ったんだ」

「はぁ?俺の店じゃなくても盗みはダメだろ」

「分かってたんだけど……アイツを止められなかった」

何故バイクの盗むことになったのか、その経緯から話し始めた。

俺も一虎もマイキーの喜ぶ顔が見たかっただけだったのに。

バイクを盗むところを見られたからと一虎が番線カッターで真一郎くんを撲殺してしまったこと、マイキーや一虎が庇ってくれたお陰で俺は少年院に入らずに済んだこと、一虎がマイキーを恨んで殺そうと東卍との抗争を仕掛けたこと、その抗争の中で俺が死んだこと。そして、死んだと思ったのに、気付いたら小6に戻っていて、俺はソーマトーだと思っていたのに、少し違う行動をとったことで知らない過去が進んでいること。

「それって、走馬灯じゃなくてタイムリープってやつじゃねぇか?」

「タイムリープ?」

「SF映画で過去に戻ってやり直して未来を変える、みたいなやつがあった気がする」

「つーか、真一郎くんは俺の話信じてくれんの?」

「夢の話にしちゃ具体的だったし、ケースケが物語を創作できるとも思わないし。きっと、神様がケースケに未来を変えるチャンスをくれたんだよ。だから、もう俺のこと殺さないでくれよ」

冗談っぽく笑う真一郎くんの笑顔に救われた気がした。

 

 

こうして俺の二度目の人生がが始まった。

 

 

死ぬ前の記憶があるし、二度目の人生なんて楽勝だと思っていた。

小学生の勉強なんて簡単だろうと思っていたのに、全然分からないし、テストの点数はいつも悪くて、自分でもびっくりする。小学校の算数のテストでさえこんな点数なのだから、中学校の数学のテストが0点でもしょうがないと妙に納得してしまった。かといって家で勉強する気はおきない。同じように勉強なんかしていないはずなのに、マイキーたちの成績が俺ほど悪くないのが不思議でしょうがない。お前らは一度目の人生だろ。

特別変わったこともなく、二度目の小6が終わった。

さすがに、三度目の中1という状況には笑えてきた。

何としても二度目の留年、四度目の中1は避けたい。

前の人生よりもちょっとは勉強を頑張ろう、なんて柄にもなく入学式のその日に目標をたてた。

マイキーとドラケンとは同じ中学で、渋谷ニ中の三ツ谷とパーちん。何かと5人で連むようになった。

アイツがいたはずの場所にポッカリと穴が空いているような気がしてたまに寂しくなる。でも、それは俺だけで、今の4人は一虎の存在さえ知らない。

 

何度かあのカスと一緒にいる一虎を見掛けた。

俺と連まなければ私立の中学に行くだろうと思っていたのに、予想は外れて前と同じく大溝中に通っているようだった。

さすがにパンチにはしてなかったが、アイツらと〝仲間〟でいるためか不良の真似事のような中途半端な格好をしている。全然似合ってねぇ。まだパンチの方が良かった。首にトレードマークの虎がいないのも、なんだか物足りなくて変な感じがする。

相変わらずたかられていて、友達だ仲間だと未だに連んでいる一虎が信じられなかった。

一虎の様子を目で追っていると、あのカスが俺に「テメェ何見てんだよ」と因縁をつけてきた。

「別にテメェのことなんか見てねぇよ」

「ハァ?誰に口答えしてると思ってんだよ」

まるで自分が一番偉いと言わんばかりのいかにも小物っぽい返しが妙にムカついた。

周りの奴らも含め何かゴチャゴチャ言っていたが、もう耳には入ってこない。

一虎と目が合った。

瞳が揺れて、俺に気づいたことが分かる。去年の誕生日に初めて会った、目の前で泣いた変なヤツくらいの認識だろうけど。

「オイ!聞いてんのか!?」

カスに胸ぐらを掴まれて、反射的に殴ってしまった。

見るなと言ったくせに話を聞けなんて、勝手な奴だな。

俺の一発を合図に、周りの群れたちも飛び掛かってきたけど、全員ボコボコにしてやった。

それが良くなかったらしい。

カス共が先輩を連れて土手で俺を待ちぶせしていた。報復にやってきたのだ。

「テメェは群れねぇと何も出来ねぇんだな」

「ハァ!?」

「羊はいくら群れになったって、狼には勝てねーよ」

「んだと!?やっちまえ!」

俺はあのカスに向かって言ったのに殴りかかって来たのはリーダーっぽい奴だった。

人数の多さと体格差に少し手こずったが、たまたま通りがかったマイキーも参戦してきて余裕で勝利することができた。

しかし、それだけでは収まらず向こうのケツモチが出てきた。

「ケツモチ?」

「うん、黒龍(ブラックドラゴン)って暴走族(チーム)でさ、最近ずっとちょっかいかけられてて。まあ、3〜4人ずつとかで人数も多くねぇし全然大したことねーけど、さすがに毎日違う奴が出てきてウゼー」

「いいじゃん。ぶっ潰そうよ黒龍」

この運命は変わらないらしい。

「どうせ黒龍とやりあうなら楽しもうよ。いいアイディアがあるんだよ。みんなを武蔵神社に集めろ」

「場地のくせに俺に命令すんなよ」

なんて文句を言っていたマイキーも俺のアイディアを聞くとすぐにみんなに連絡をした。

「そういえば、新しい中学どぉ?」

「んーヒマ!気合い入った奴いねーし」

入学したばかりの中学を前と同じように2ヶ月足らずで転校した。新しい中学に千冬も龍星もいない。アイツらまだ小学生かよ、と思うとなんだか変な感じがした。

信号待ちをしている間にみんなが集まってくる。

誰のバイクが一番か言い合ったりして、神社まで競争。

後ろに乗せていたマイキーは居眠りを始めて、落ちないように気を使ってやって階段もおぶってやって、俺がビリになった。

「ん?着いた?」

「みんなに話ってなんだよ?マイキー」

さっきまで寝ていたくせに、本題に入るとガラッと表情を変えた。

「黒龍って暴走族(チーム)知ってる?」

「めちゃくちゃヒデー奴らって噂は聞くよ。3個上だっけ?」

「うん。場地がそいつらにちょっかい掛けられててさ」

「え?場地が黒龍に!?なんで!?」

「なんか、絡んできた下の奴らボコボコにしたら上が出てきたカンジ」

「なるほどね。黒龍とやり合う気か?マイキー」

「そっ。黒龍はデケぇ族だ。やるからには大義名分が欲しい!」

「俺に案がある。俺らで暴走族(チーム)を創るんだ」

「へー!!面白そうじゃん!」

ドラケンが真っ先に食いつくと、三ツ谷もパーちんも賛成した。

「チーム名も決めた!東京万次郎會だ!」

「だからそれはダセェって」

俺以外にもダセェダセェと言われてマイキーは不貞腐れた。

「じゃあ何にすんだよ」

「やっぱ東京卍會がカッケーよ」

マイキーはまだ東京万次郎會を諦めてはなさそうだが、多数決で東京卍會に決定した。

「これで決まりだな!俺らの全てをお前に預ける。時代を創れ、マイキー」

「どんなチームにしたい?」

「……一人一人がみんなの為に命を張れる、そんなチームにしたい」

その信念は変わらない。

「記念にみんなでお守り買おーぜ!」

とは、言ったものの、あの時は一虎の金を入れて500円のお守りがやっと買えた。誰がいくら持っていたかなんて覚えてないけど、ギリギリだったのは確かだ。まぁ、お守りに拘らなくても。どうせ一虎もいないし。

「お前らマジ?誰も買えねーじゃん」

さすがのパーちんは313円、マイキーが50円、ドラケンは100円、三ツ谷が32円で俺が25円。

「あ、でもよ出し合えば1個買えるくらいになるじゃん」

「おおー」

んだよ、買えんのかよ。本当に一虎は必要ないと言われているような気がして悲しくなった。

あの時と同じように創設記念のお守りは俺に託された。

1週間くらいで三ツ谷が特攻服を作ってくれて、それを着てスクランブル交差点で記念写真を撮った。

俺と肩を組む一虎はいない。妙に空いている左端の空間。そこばかり目についてしまう。なるべく見ないようにしながら小さく折り畳んでお守りの中に入れた。

 

 

そして、いよいよ黒龍との決戦。

この間と同じ土手に黒の特攻服が2チーム。

俺たちのことを中坊だガキだとバカにしている。そんなガキにこれからチームが潰されるとも知らないで。勝敗の分かっているケンカは少し気が楽だった。

敵陣に黒龍の特攻服を着た一虎を見つけた。

結局、一虎も別の不良の道を進んでいる。だったら東卍でも良かったじゃねーか。

「東卍の初陣だああ!!いくぞおお!!」

マイキーの声と共に、俺たちは一斉に飛び出した。

人数が違い過ぎて、目の前の敵で精一杯で、一虎のことを考えている余裕なんてなかった。

それぞれが10人ずつくらい相手にしていて、マイキーは白い特攻服の総長と一騎討ち。

マイキーの蹴りが決まる瞬間は最高にカッコよくて、敵も味方も関係なく、そこにいた全員が目を奪われた。

黒龍の総長が落ちて、東卍の勝利を確信した時だった。

一虎の目の色が変わった。

あの時のようにブツブツと何か言っている。きっと、一虎は自分達が負けたことが受け入れられなかったのだろう。辛うじて聞き取れた「殺さないと」という言葉に嫌な予感がした。

次の瞬間には手にナイフを持った一虎がマイキーに向かって走ってきた。

「死ね!!」

俺は咄嗟にマイキーを庇った。

何の因果か、あの時と同じ位置に一虎のナイフが刺さる。

「場地ぃ!!」

俺の名前を叫ぶマイキーの何とも言えない表情を見ながら俺は意識を失った。

二度目の人生は、一度目よりも短く、儚いものだった。

 

 

気付けばまた一虎と出会ったゲーセンに立っていた。

 

 

続く





ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

実は、2年前に『To be, or not to be…』を連載していた頃から書きたかった話でした。
捏ねくりまわしているうちに、原作の連載も終了し、だいぶ時間が経ってしまっていました。
そして、出るわ出るわの新情報(笑)正直、この後の展開はスピンオフが完結しないと書けないのでは…と思ったり。

ずっと書きたかった話をwebオンリーに合わせて書けたので満足しています。
続くので、最後までお付き合いいただければ幸いです。




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