ふたりきり惑星再生   作:小沼高希

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013: 先駆者は拠点に映ずる

日が巡り、夜の星が移り変わり、二人の拠点は掘っ立て小屋からプレハブ小屋ぐらいにまでレベルアップした。

 

「いやぁ空気が美味しい!」

 

そうしてきちんと閉じられた空間の中で0.3気圧と低圧ながらも酸素が満たされるようになったことでエッフィは喜んでいた。

 

「やはり大気があったほうがよろしいのですか?」

 

「すぐには死なないとは言ってもやっぱり苦しいもんは苦しいのよ、ああこんなに息のできる空気というのは甘くて清々しいものだったんだ……」

 

一定の気圧が保たれた空間というのは、ピオにとっても望ましいものであった。空気圧による塵埃の除去が可能となったことによって、可動部に継続的にダメージを与えていた埃を取り除くことができるようになったのである。

 

「あとはお水と食べ物があればいいかな……」

 

「いずれも本官の技術であれば準備には相当な時間がかかります」

 

「ほら、こう、ないの?そこらへんの空気と土と水からなんか作るやつ」

 

「……炭素と酸素は確保できますが、窒素と水素が不足します」

 

「うーん」

 

エッフィはピオから還元的技術のもとになる基本的な知識を学んでいたので、最低限の理解はできた。要素の欠落が致命的な問題に繋がるというのはエッフィを支える記号的技術でもそう変わりはない。

 

「空気と水?」

 

「……概ねは。窒素は大気中から回収することはできますが、適切な冷却系を構築するための資材が不足しています」

 

「私がこう、今までがーってやった分じゃ足りない?」

 

実際、エッフィがピオから受け取った電流を流れとして操作することによってかなり大規模な金属加工はできるようになった。そうでなければこの合金とガラスでできた小屋は作れていない。

 

「必要なのは素材ではなく機構なのです」

 

「そっち系は難しいね……。冷やすのってやっぱり条件揃えないと難しいし」

 

「本官の冷却系を流用してもいいのですが、そうすると今後の活動に支障が発生する可能性が高いかと」

 

「うまく行かないものだね……」

 

そう言ってエッフィは床に倒れ込む。

 

「加工っていうのはどうやるの?」

 

「基本的には塊を削ります。今の私でもそれぐらいは可能ですから」

 

「そうすれば必要なものってどこまで作れる?」

 

エッフィの言葉に、ピオはしばらく黙り込む。

 

「ピオ、大丈夫?」

 

「申し訳ありません。概念定義が困難でした」

 

「ええとね、私は今でもまあなんとかなるよ。ピオがいてくれるし、息もできる。でも、ピオはそうじゃないでしょ?」

 

「……わかるのですか?」

 

「一応はこれでも外なるものの側にいるものとして作られたからね。しばらくはいいけど、なんていうか……根本的にはどんどん削れていくんでしょう?」

 

「貴方はどうなのですか、エッフィ」

 

「私の方はまだピオが見てくれていれば維持できるよ。時間がもっとあれば地面の流れも追えるし」

 

「……本官の特異点維持系は、定期的な異種粒子による位相中和を必要とします」

 

「穴に餌あげないと弱って死んじゃう、ぐらいの認識でいい?」

 

「……非常に語弊のある言い方ですが、概ね問題ありません」

 

「よっし、ピオの言うことがわかるようになってきた」

 

自信ありげにエッフィは言って身体を持ち上げ、床に座りなおす。

 

「で、その餌を作るには何が必要なのさ」

 

「大型の加速器です」

 

「おかしいな、私の理解だと競技場の建設みたいに聞こえるんだけど」

 

「概念的には類似物です。ただ、走らせるものと走らせ方が異なるので、そこは注意してください」

 

「ピオの言っていること、わからなくなってきたな……」

 

コロコロと表情を変えるエッフィを見ながら、ピオは表情検出処理のための学習データの蓄積をしていく。

 

「ええと、話戻さないと。それとは別で水があればいいんだよね」

 

「表土内に微量に含有されていることを確認していますが、抽出は困難かと」

 

「そうじゃなくて、川があればいいんだよね」

 

「……侵食地形らしきものはいくつか確認されていますが、水の存在は確認できていません」

 

「下に流れてるからそこから回収できない?」

 

「……地下水ですか。確かに存在する可能性はあります。確認しますが、そこに存在するのですか?」

 

「するよ!」

 

「具体的にどの場所かわかりますか?」

 

ピオはそう言って、部屋の中心に三次元の地図を投影する。

 

「……これ、どうやってるの?私はピオと繋がってないはずだけど」

 

自分が見ているのが観測できる一番上の層の現実であることをあたりを見渡して確認しながらエッフィが言う。

 

「放射増幅光を用いて空気を電離させています」

 

「だからか、ピオから流されてるときと同じ雰囲気がするのは」

 

そう呟いたエッフィは投影範囲外に出て、光点で作られた地形を観察する。

 

「ええと、この山があるってことは私はこっち方面から来たはずで」

 

凹凸をなぞるエッフィの指先に付き従うように、エッフィはマーカーを追加していく。

 

「範囲としてはここらへんのはず」

 

エッフィが指すのは地図が作られている範囲からしばらく離れた場所。

 

「調査に向かうべきですね」

 

「歩いて行くの?」

 

「それ以外の方法はあまりありませんからそうなるでしょう。ただ、材料が豊富にあるのでかなり速く移動することはできそうです」

 

ピオの言葉の意図は完全には読み取れなかったが、なにか面白そうなことを考えているのだとエッフィは納得した。

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