ふたりきり惑星再生   作:小沼高希

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015: 斯くして二人は澪標を見る

「たぶん、ここ」

 

エッフィは目を開けて、手から灰黄色の砂を落とす。

 

「どれほどの深さに水があるかはわかりますか?」

 

「見てもらったほうが早いかな、ちょっと調節する」

 

こめかみを押さえるようにしてしばらくエッフィが唸った後、逆さまのピオと額を合わせる。

 

「目を閉じたまま下……いやピオにとっての上?を見るってできる?」

 

「仮想的に入力を三次元に再構築すれば可能です」

 

「すごいよね、普通の人ならその感覚を掴むだけでそれなりに才能と時間が必要なのに」

 

エッフィが自分が感じた流れを視覚に変え、ピオと繋げていく。

 

「エッフィはそのような訓練をしたのですか?」

 

「ううん、私は最初からそういうふうにできてたから。あ、繋がった?」

 

「見えました。かなり深いですね」

 

「そうなんだよね、干渉できなくはないけどここまで導くのは大変だし」

 

「掘りますか?」

 

「できるの?」

 

「この程度であれば、しばらく時間はかかりますが可能です」

 

距離にしておよそ2000メートル。地上のあらゆる資源を掘り尽くし、ついには星々にまで手を伸ばしていたかつてのピオの世界の技術からすれば十分採掘可能な深さである。

 

「うーん、どこかに海とかないかな。かなり深いでしょ?」

 

「この圧力とこの気温で液体で水は存在しません。極地であれば氷として存在する可能性はありますが、確認しに向かいますか?」

 

「うーん……」

 

エッフィはピオと離れて、仰向けに寝っ転がる。

 

「もしなかったら、ここでやるしかないよね」

 

「採掘に必要なものについて、製作は十分可能だと考えます」

 

「問題はピオなんだよ」

 

「本官ですか?」

 

「私の力を全力で発揮すれば、そのピオを動かす穴ってやつを長持ちさせるぐらいの祝福を与えられると思うの」

 

「……もしそれが可能であれば、できればお願いしたいところではありますが」

 

「そのためには私がお腹いっぱいじゃなくっちゃいけないの。流れで今命をむりやりに繋いでいるわけで、そうするとうまくできない」

 

「酸素だけでは不足ですか」

 

「そ。息はできても喉は渇くしお腹はすくし、あとできたらふわふわの寝床も欲しいな……」

 

「……単純な精神的な状態の維持以上に重要なことなのですか?」

 

「まあね、ピオが自分の身体を綺麗にするみたいなもの、って言えばいい?」

 

「それは重要ですね」

 

「でしょ?」

 

少し自慢げなエッフィ。その理由がよくわからなくてピオは解析を途中で切り上げる。

 

「それで、ここで掘削を行いますか?それとも他の場所で氷などを探しますか?」

 

「流れって事を考えるとここで掘るといいんだけど……ピオのほうは大丈夫?」

 

「専用の拠点が必要でしょうが、問題ありません」

 

「それじゃあ私の方はちょっと氷あるかどうか見てくるね」

 

「……それは、()()()()なのですか?」

 

「ピオにお守りでも作ってもらえば問題ないよ」

 

「かしこまりました。では帰還しますか?」

 

「それだとピオが場所わからなくならない?」

 

「周辺の地形から特定はできますが、厳密にやるならば目印があったほうが良いと考えます」

 

「なら、ちょっと手を繋いでもらえる?」

 

「……わかりました」

 

エッフィがピオの手を取ると、ピオは自身の内部電力が一気に吸い取られるのを検知することができた。

 

「できれば事前に何をするのか説明をお願いします」

 

「……ごめん」

 

「既に発電量を上げたので問題ありませんが」

 

「できるだけ強くして」

 

「本当にいいのですか?」

 

「帰りの分は残しておいてほしいけど」

 

そういしてエッフィはピオから数十メガジュールというプランクエネルギーの数パーセントに相当する量のエネルギーを受け取る。こう言うと多いように見えるが、TNT換算であればたかだか数十キログラムである。

 

「これだけのものをどうするのですか?」

 

「地面に流し込んで、それの反発を利用する」

 

「……離れたほうが良いのではないでしょうか」

 

「それもそだね」

 

そう言ってエッフィはピオにしがみつく。

 

「時間的余裕は?」

 

ピオはしっかりとエッフィを抱きしめながら、少し無茶な軌道で脚を起こして飛び跳ねるように移動し始める。

 

「あんましない」

 

揺られながら言うエッフィ。

 

「今後は事前説明をお願いします」

 

「ピオがわからないってことをついつい忘れちゃうから……」

 

「言葉にしないと本官は理解することができません」

 

「接続層が限られるのが問題なんだよね。もっと基本的な部分の理解を繋ぐことができればいいんだけれども」

 

そういう会話をしながら、かなりの速度でピオは脚を動かして先程までいた地点から離れていく。なお本来であればエッフィに対して衝撃が加わらないように制御リソースを割くべきであったが、ピオの演算系は原因不明の理由でその優先度を下げていた。

 

「そろそろかな」

 

衝撃波が二人を襲い、エッフィの髪が圧力を無視して揺れる。

 

「……ああいったことができるのであれば、もう少し早く言ってもらいたかったですね」

 

「ピオが求めるような細かい形にはできないからさ」

 

エッフィとピオが見つめる先には、流れの場所を示すための澪標でもある高さ100メートルほどの塔が周辺の表土を組み込んで建てられていた。

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