ふたりきり惑星再生   作:小沼高希

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008: 先駆者は似姿像と問いかけあう

「エッフィ。ふふ。いい名前。ありがとう、ピオ」

 

小躍りするようにステップを踏みながらエッフィはくるりくるりと回り、酔ったようにぱたりと灰黄色に倒れ込む。

 

「……いくつか質問しても宜しいでしょうか、エッフィ」

 

「構わないよ?」

 

「貴方はどうやって、本官の処理系に対して接続できたのでしょうか?」

 

「……どう、って繋いだだけだよ。あまりいいことではないとは思うけど、何もない所から意味の定義をするよりは」

 

「いえ、そもそも本官の頭部には接続端子はありません」

 

「でも流れはあるでしょ?」

 

「確かに冷却材流路は存在しますが……いえ、通信配線でしょうか?」

 

「ちょっと未知概念が多い!もう少し簡単にして……」

 

「申し訳ございません」

 

頭を下げるピオにエッフィは息を吐く。先程から、ピオの行動には人間らしさが出てきていた。ピオからすればそれはコミュニケーション用のプロトコルを確立していっているだけなのであるが、エッフィにとっては関係性が強くなっていることを感じずにはいられなかった。

 

「ゆっくり話ができる場所を作るとしたら、どういうふうにする?」

 

エッフィは時間が必要だと判断した。そして、少なくとも今の状況では時間は二人の味方ではない。

 

「……特異点制御で地盤ごと切り取ることは不可能ではありませんが、簡易的な覆いを持った空間のほうが容易かと」

 

「具体的にはどうするの?」

 

「溶かします。実行してよろしいでしょうか?」

 

「……いいよ」

 

「かしこまりました」

 

そう言ってピオは腰から下をスカートに包む。

 

 

【武装展開】

 

 

低圧ゆえに、音はほとんどしない。組み上がっていくものは、長さ2メートルほどの特異点放射光投射装置。本来であれば、長距離光学兵器として用いられるはずのものだ。

 

「見ないほうがよろしいかと。もし可能であれば、本官の後ろに」

 

放熱板を展開したピオの後ろに隠れながら、エッフィはそれをある種の「見るなのタブー」であると解釈した。とはいえ実際は違う。反射から眼を守るためだ。

 

 

偽真空における物理係数調整完了

特異点への燃料供給開始

 

 

調整された物理係数によって短寿命となった特異点は、その質量と引き換えに強い放射光を放つ。その光は向きを整えられ、途中の空間によって紫外線にまで変調されて灰黄色を撫でるように進んでゆく。そうして表土は融点まで加熱され、ガラス状に変わっていった。

 

線が踊るように揺らされていき、決まった範囲の中を塗りつぶすかのように動く。

 

 

【武装収納】

 

 

「……終わりました。あとは並べるだけになります」

 

放熱板を戻したスカートを外しながらピオは言う。エッフィが目を開いてピオの後ろから出ると、キラキラと輝く長方形状のエリアが目に入った。

 

「ありがとう。ところで、これってあなたの中の力をかなり使ったんじゃないの?」

 

「いえ、本官の想定残量からすれば許容可能な量です」

 

「その流れを使えればいいんだけど、調子が合わない気配がするんだよね……」

 

「申し訳ありませんが、本官も貴方の発言の意図を一部読み取れない時があります」

 

「わかってる。ちゃんと説明しなくちゃいけないとは思うけど、まずはこれを組み立てればいいんでしょう?」

 

彼女はそのヒトとしては小柄な肉体に見合わないような力をひょいと出して板状になったガラス化表土を持ち上げる。

 

「……力学的に不可能な行動であると推察します」

 

「なぁに?ちょっと離れてると聞き取りにくくて」

 

「素晴らしい陣地構築能力を保有していると評価しただけです。場合によっては、本官以上の」

 

「やめてよ、ピオはそういう分野の専門家でしょう?勝てないよ」

 

「私に接続した際に、そのような情報を獲得したのでしょうか?」

 

「ううん。だってピオってそういう名前だし、そういう役目でしょう?」

 

「……ええ。本官はそう呼ばれていて、そういう役目を果たしていました」

 

そうしてしばらく無言で、二人は壁を立て、屋根を置き、静かな空間を作り出した。外見は雨風をしのげる程度の掘っ立て小屋だが、雨がふらないこの惑星であればちょっとした作業をする場所にはなるだろう。

 

「暗くない?」

 

「これでどうでしょう」

 

ピオは小型の投光器を部屋の中心に置いた。外は暗くなってきていて、二人は焚き火を囲むように光を挟んで座る。

 

「あとは普通に息ができればいいんだけれども……」

 

「酸素については、今後精錬時の副産物として得られるはずです」

 

「わかんない」

 

「……基本的な化学知識の共有が必要でしょうか?」

 

言葉の端々の断片を読み取り、エッフィは意味を推察していく。

 

「物質の変換について?」

 

「その通りです。本官に十分な体系的知識があるとは言えませんが、最低限であれば教授できるかと」

 

「一応私も知ってはいるけど、多分やり方が違うんだよね。共有しようか」

 

「具体的にはどのようにしましょう。筆記具等はここにはありませんが」

 

「中にはあるんでしょう?なら私がそちらに行くよ」

 

エッフィは立ち上がってピオの隣に座って視線を向ける。

 

「こっちを見て」

 

首を回したピオの頬に、エッフィは最初に会った時のように触れて、額を合わせた。

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