黒い刺客なんですけどなんで♀︎……あとサイボーグさんや、その5本目の脚をしまいたまえ(汗)   作:何でもいいでしょ?

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某動画投稿サイトのオススメに量産型ついてく(要約)のシリーズもの動画あったので久々に一気見してみたら見事に吹きました。


俺氏諭される

今日も今日とて放牧場を走り回る日々。毎日続けてると一度に走り続けられる時間が少しずつ伸びて行くのが自分でも分かり、着々と体力が付いてきてるのを自覚する。

 

やはり昨日の自分よりも少しずつとはいえ成長していることを自覚するとついついニヤケてしまう。だがこの先のことを考えると笑ってられるのも今のうちだと思ってしまい、なんとも言えない憂鬱な気持ちになった。

 

『だって俺ら、結果出ないと肉だもんな……』

 

そう、これである。当然だが俺は死にたくない。というか誰だってそうだろう。

もし一度死んだんだし二度目も行けるわというネジが幾つか弾け飛んだお気楽思考になれたのなら、今も文字通り気楽に過ごせたのかもしれない。

 

だがお生憎様、俺に一度目の死の記憶なんてものはない。気が付いたら母さんの中にいた。

……つまりはそういうことだ。

 

だからこそ俺は鍛えねばならないのだ。具体的に今がどの世代なのかは分からないが、これまで見た人間の皆がスマホどころかガラケーすら持ってないと思えば自ずと答えは出るというもの……つまり最低でも1999年前ということだ。

 

『でもそれだけ分かったところでなぁ……』

 

正直なこと言うと、俺自身元々そこまで競馬に興味持ってた訳じゃない以上、どの馬がどの世代で活躍したとかの情報はあんまり知らなかったりする。

 

……強いて言うなら帝王やら名優とかに加えて日本競馬追ってると出てくるSSやら絶対の皇帝その他諸々とかの有名所、あと……同じ母さんから産まれてくるライスシャワーとミホノブルボンを初めとする、俺が競馬の道に足を踏み入れる切っ掛けになったあの世代ぐらいしか知らないレベルである。

 

確かあの世代で有名だったのは、ライスシャワーとか以外だとジャパンカップに勝ったレガシーワールドとか目黒と高松を制したマチカネタンホイザ、阪神に桜花賞で有名なニシノフラワー……―――あれ?そういえばサクラバクシンオーってどの世代だっけ……どこ調べても短距離最強って出てくるからあんまり当たりたくないんだけど……

 

オマケに今だとまだ適正距離も脚質も分からないしこれでバクシンオー世代でスプリンターとか言われたら絶望なんだけど……牝馬でスプリンターズステークス勝った騎手もいるっちゃいるんだけど、そもそもバクシンオー世代相手に生き残れる気がしないし……

 

「おーい、時間だぞー戻ってこーい」

 

「ヒン?」

 

あ、時間か。なら戻るか。

パカパカと蹄を鳴らしながら、口に手を当ててをメガホンみたいにするあれをやっているいつもの世話係とはまた違う、どっちかと言うと彼よりも貫禄を感じる男の元へと向かう。

 

「おーよーしよし」

 

じいちゃんほどではないが、彼もまた撫でるの上手い勢であり、ここら辺撫でて欲しいなという想いを汲み取るのがめっちゃ上手かったりする。汲み取る力に関してはじいちゃんを越える猛者だ。

 

「気持ちいいか?」

 

『おう!』

 

「ははは!やっぱいつ見ても本当に馬か?って思うくらい頭いいよなお前」

 

「ブ」

 

ギクッ……

 

「今お前ギクッてしたな?」

 

『い、いいえ?し、しし、ししししてませんが?』

 

「動揺し過ぎだろ……お前本当に馬か?」

 

馬です。と圧をかけながらじーっと男を見つめると、男も負けじと俺を見据えてくる。

 

「……」

 

「……」

 

そのまま暫く一人と一頭で睨み合いをしていたのだが、男の目があまりにも鋭くつい目を逸らしてしまった。俺の負けだ。

 

「ぷっ、ふははは!やっぱお前と話してると退屈しないな」

 

『そりゃどーも、ケッ』

 

「おいおい拗ねるなよ。こっちは気持ちよく送り出したいんだからよ。少なくともこれから数年は会えないんだし」

 

え?

 

「なんだその顔」

 

『ちょ、ちょちょちょ?数年会えないってどういうこと?ね、教えて?教えて?』

 

「あー、いくら賢くても知らないならわかんねえか」

 

『何がなの?何が分からないんだ一体?』

 

「お前こっから移されんのさ、本州にな」

 

『―――』

 

その時、俺の思考は完全に停止した。

……まあ少し冷静に考えれば分かったことだろう。俺は仮にも競走馬なのだから、このユートピア牧場という生産牧場から大規模な調整施設に移されるのは自明の理なのだから。

 

しかしこの時の俺は冷静ではなかった。ということはつまり……そういうことである。

 

「ひヒィィィィんゥゥゥ!!!!」

 

「お、おおお落ち着けええええ!」

 

『嫌だ!俺は行かねえぞ!!』

 

「どうしたっていうんだ急に……ちっ、俺だけじゃ無理だな」

 

『ちょ待って!行かないで!!』

 

――今思えば、この時男の取った行動はただ暴れ出した俺を止める為に同僚達を呼びに行っただけだったのだろうが、この時の俺は焦りからか男が駆け足で離れて行ったのは見捨てられたからだと勝手に思ってしまったのである。

 

なまじ中途半端に馬と人が混じったような精神をしていた分、様々な最悪の可能性を考えてしまう人の理性と、従来寂しがり屋な気質だと知られるお馬の精神がそれぞれ上手いこと噛み合っちゃった訳で。

それに加えて、人と馬の要素どっちもがマイナスに振り切ってた結果こうなったのである。

 

まあつまり……

 

『……』

 

『……』

 

今こんなことになってる原因も俺自身という訳である。

 

『……寂しい気持ちはよく分かるけど、暴れ過ぎよ』

 

『……はい…』

 

何故今目の前には鬼の如き気を纏った母さんがいるのか。それを語るのならば三十分ほど時を戻さなければならないだろう……という冗談はさて置き、本当になんでこうなったんだろう……

 

いや100パー、俺の自業自得っていうのは分かるんだけど……

なにせ苦虫を噛み潰したってレベルを圧倒的に超越した表情で母さんのとこ連れてかれたんだもの。わざわざ会話聞かなくても何考えてるか分かるわそんなもん。

 

『幸いにも他の仔達も人間達も怪我しなかったからいいけど、もし何かあったら大変だったのよ?』

 

『うん…』

 

確かにあそこで暴れてしまったのは本当にまずかったな…結局めっちゃ押さえつけられても暴れてたし……

 

『嫌だったかもしれないけど、あれはあなたを守る為でもあることを忘れないように』

 

『守る……』

 

『そう』

 

言われてみれば…確かにそうだ。いくら普段大人しくて人懐っこくても、一度でも人に大怪我でもさせてしまえば怪我を負わせた馬だっていうレッテルを貼られてしまう。

たった一回、されど一回。傷つけてしまったという結果は消えないのだから。

……そう考えるとジャーニーとか凄いなマジで。そのジャーニー含めた癖馬を乗りこなしては振り落とされて来た駆け込み寺に関してはもう殿堂入りだろあれ。

 

『…その様子だと、理解できたのね』

 

『うん』

 

『本当、あなたは賢いわ。いい子ね』

 

『ありがとう…』

 

褒めて貰えるのは普通に嬉しいんだけど、前世の記憶+前世知識っていうズルがあるからって思うと素直に喜べないところがあるというか…

 

『それでも私の娘であることに変わりはないわ』

 

『うん――え?』

 

えっ心読まれた?

 

『顔に出やすいだけよ』

 

『あっ、そう……?』

 

顔に出やすい……顔に出やすい?馬の?

確かに馬も人間並じゃないとはいえ表情豊かではあるけど、そんな出やすいもんなのか…?

 

『理由は分からないけどあなたは特に出やすいから気をつけてね』

 

だから特に出やすいってなんなの?あと気をつけてってなにを気を付ければいい訳?年がら年中ポーカーフェイスしとけってことか?

 

『そのぽーかーふぇいす?は分からないけど、多分そうね』

 

『嘘だろ…』

 

『じゃあ本題に移るわ』

 

『本題…?あっ』

 

そういえば移送問題とか全然片付いてなかったわ!急いでなんとかしないとこっから追い出されてしまう……

なんとか手を打たないとと考え込む内に、自然と俯く形になっていた俺だが、母さんに鼻で小突かれ顔を上げた。

 

『それに関しては諦めなさい』

 

『な、なんで!?母さんは悲しくないの!?』

 

『逆に悲しくないと思う?』

 

『……、思わない』

 

『そうね、悲しくない訳ない。でも私達が生き残る為にはそうするしかない』

 

なんだろう、声のトーン自体は離されるまでひたすら甘えてた時と同じなんだけど…物凄い凄みがある……

……あ、そうか。よく考えたら母さん――ライラックポイントって俺以外の色んな仔を産んでは引き離されて来たんだし、そこら辺の事情とかは元人間の俺以上に理解してるのか……

 

『…別にこれが最後の別れって訳でもないし、またこっちに戻ってきた時に存分に甘えさせてあげる。だから、行ってきなさい』

 

『――』

 

『トン?』

 

返事をしなかったからか母さんが俺の顔を覗き込んできた。そんな母さんに対して、俺は決意の炎を燃え滾らせた瞳で見つめ返した。

……そうだ、母さんのおかげでようやく本当の意味で意志が固まったんだし、お礼言わないとな。

 

『母さん、ありがとう。俺決めたよ』

 

『……言ってみなさい』

 

『俺、無敗三冠達成する。母さんの血は凄いんだってこの国に証明してやるんだ!』

 

そして行く行くは凱旋門まで行って、世界を制す!

そんな俺の無謀以外の言葉では言い表せない夢を聞いた母さんは、俺を笑ったりせずにただ一言だけ告げた。

 

『応援してるわ』

 

と。




赤評価嬉しいです!モチベ上がります!
でも更新頻度は上がらないと思います!

Simca Vさん誤字報告ありがとうございました!
reonhaitoさんもありがとうございます!

戸山さん(ミホノブルボンの調教師)モデルの登場人物を生存させるか、させないか

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