黒い刺客なんですけどなんで♀︎……あとサイボーグさんや、その5本目の脚をしまいたまえ(汗)   作:何でもいいでしょ?

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俺氏ドナドナの恐ろしさを知る

夢を偉大なる母に語ってから約二週間ほど経った今日。俺は今―――死にかけています。主に船の揺れが原因で。

 

『ゥゥヴェ…確かに馬は、船苦手ってゥェッブェ……言うけど、ここまで…なのか……ゥェ』

 

俺の今世の生まれ故郷であるユートピア牧場は北海道にあり、恐らくこれから俺が連れて行かれるであろう養成牧場は本州にあるとは前に聞いていた。

 

その時に船乗るけど大丈夫かー?とも聞かれ、中身人間としての矜恃その他諸々で自信満々に大丈夫と答えたのだが……ご覧の有様。白状しよう、俺は馬の船移動というものを舐めていた。ペロペロキャンディを舐めるレベルで舐めていたのだ。

 

生まれ故郷を離れるにあたり、馬運車に乗せられた時はネットの画像でしか知らなかったとはいえ、馬運車の内装が記憶にあるそれと全く違うことに驚愕したりとまだ余裕があったし、実際船が出る港に着くまでの間は車窓からの景色を楽しんだりもしていた。

 

この調子なら長時間の移動で神経質になりやすい馬とはいえ船も行けるかもな。

そんな冗談半分本気半分といった感じの調子で話す人間達の会話を耳から耳へと流しながら出港を待つこと暫く。遂に出港した時には既に、馬となって初めて船に乗ることへのワクワクとした興奮や期待といった感情はなくなっていたのだが……

 

「ゥブ」

 

十数分も経つ頃にはすっかりグロッキーになってしまいご覧の有様という訳なのである……

 

「お、おいおい、大丈夫か……?」

 

『だい、じょばない……』

 

「…聞くまでもなかったか」

 

もうなんというかホントしんどい……てっきり前世で船乗った時と同じ感覚で過ごせると思ってたけどそんなことはなく、前世以上に敏感かつ優秀な三半規管によって船の揺れがダイレクトにそのまま酔いに直行変化しているのだ。

 

今の気持ちを三行以内で表せとか言われたら迷わずこう答えるわ。めっちゃ揺れる車で乗り物酔いした状態でさらに本読んで吐き気強化した状態を常に維持してる感覚ってね。

 

『ゥゥプ、体にちかエボッ…ら入らんし、グブゥ……頭は痛いしグワ……グワンするウッ……』

 

ぐぅぅぅぅ……無理なのは分かってるけど揺れなくしてくれぇぇぇぇぇ……吐きたくても吐けないから余計辛いんだよぉぉぉぉ……ウッ、人間だったらとっととゲロってスッキリできるのに……

 

「あー、とりあえず水飲むか?まあ飲んだからなんだって話なんだが

 

それな、いっちゃん楽なのはこういう時寝てくれることなんだが

 

なんか聞き捨てならん言葉聞こえた気がするんだが……いやそんなことはどうでもいいか、とにかく今は水だ。

……確かに前世で吐き気に襲われた時は水を飲んで飲み下していたような記憶がある。ならこの船酔いもちょっとは改善するかもしれん…!!

 

一抹の望みに賭けて、お水をお口にin!からのゴクリッ!……ダメだまだ気持ち悪い……オエ

 

「……船とこんな相性悪いやつ久しぶりなんだが……」

 

「だよな、こいつぁ筋金入りだね」

 

「…まぁバンサイのやつに比べたらマシか」

 

「あー、バンライカッサイな。それしょっちゅう言ってるけどそんな酷かったのか?」

 

「酷いなんてもんじゃない。ありゃあ別の生き物(馬ならぬUMA)だって悟るレベルだ」

 

「あっ…(察し)」

 

あ"あ"あ"あ"あ"あ"一瞬だけでも収まる時間があるから余計に気持ち悪ぃぃぃぃ……いやでもほんのちょっとだけマシになったかも……

思わず思考を放棄してしまいたくなるほどの精神攻撃を受けながら、必死にそこのおっちゃん達の会話に耳を傾ける。

 

「車の方は特に苦でもなさそうだったし行けるかって思ったんだけどなー」

 

「車はまだいいが船は結構揺れるからな。コイツ見るからに揺れに弱そうだろうし割と致命的なダメージ入ってるかもな」

 

「ダメじゃねえか。いやはやこんなんで海外遠征とかできんのかね……」

 

ちょ、そこ…海外遠征とか以前にまず勝てるかもわかんないんだからそういうのは後に―――あ、いや勝たないと肉だし勝つしかないか……でもできれば海外遠征は無しにして頂きたく……

 

「流石にそりゃ気が早いだろうが……」

 

同じ気持ちの人いたわ。

 

「わかんないぞ?俺はこいつなら行けると思う」

 

いやこの人の無駄に高い自信はどっから来る訳?思わず一瞬吐き気が消えるくらい清々しい笑顔浮かべてるけどさ。

 

「本当かよ……」

 

『……』

 

「お前もちょっとは信じてやれよ」

 

「……生憎、俺はこの仕事始めてからあのUMA(ウマ)以外の重賞勝てる馬には縁がないもんでね。関わったことは愚か会ったことすらないんだよ。お前と違ってな」

 

『……』

 

「俺だって両手行かないぐらいしか会ったことねえよ……けどよ、そんな愚痴吐く癖にこの仕事続けてるってことは、そうなんだろ?」

 

「……」

 

『……』

 

……さっきからガブガブとまでは行かないけど、馬が飲むスピードって考えたらそこそこのペースでバケツの水飲みまくっては入れて貰ってを繰り返してんだけど、なんなのこの人達?プロかなにか?

 

会話しながらもこっちをしっかり見てくるのは当たり前なのかもしれないけどさ、普通バケツに水補充したりとかする時ってちょっとくらい目離すよな?なんでずっとこっち見てるんですかね?

 

「……」

 

「……」

 

『……ォェ』

 

……いや伝わらんのは分かるけどちょっとは反応してくれませんかね?バケツ一切見ずに毎回同じ量の水入れるってマジで意味わからんから、なんで一瞬たりとも目線逸らさずに同じラインでピタッと止められるのかとか気になってしょうがないんですけど……!

 

「……ま、お前の言う通りなのもあるが、一番はこの仕事が性に合ってるからだな」

 

『そして当然の如く伝わ、らないという……』

 

「…性に合ってる、ねえ……」

 

『ブルータス、お前もか……』

 

「お前もじゃねえのか?」

 

「…確かにな、他の仕事と考えたことないわ」

 

「『え』」

 

「いやなんだよその顔……」

 

他の仕事考えたことないって、それヤバいのでは?いくら天職でもちょっとくらい他の職種のこと考えたりするもんだと思うんだけど……それを考えないってことは……

 

「仕事中毒か?」

 

『社畜?』

 

「ちっげーし!あとお前らその顔本当にやめてくれ!人はともかく馬にまで仕事中毒者呼ばわりされたらなんか悲しくなるから!」

 

あ、言い方違うけど社畜って自覚はあったんですね。可哀想に……というか見た感じこの人達割と仲良さげだし、もしかしてこっちの人も社畜だったり……

 

「……というか仕事中毒っつったらお前の方が上だろうが。なんでわざわざ休日出勤しまくるんだよ、この前休んでくれないって泣きつかれたんだぞ」

 

『ゑ?』

 

「うっせーな。ただ家いるだけじゃ暇なんだよ」

 

「だからってなんで働くんだよ休めや。何の為の休日なんだよ」

 

「休日なにしようが俺の勝手だろうが」

 

「一回過労死寸前まで行ってんだからちょっとくらい学べよ……」

 

『ええ……』

 

悲報、上には上がいた。それも雲上どころか天上レベルの上が。あと金欲しいから働くのはわかるけど暇だから働くってどういうことだよ……

 

「つか、コイツいつの間にか落ち着いてるな」

 

『あ、ほんとだ』

 

「……なんでだ、なんでほんとだって感じの表情に見えるんだ。あの人語理解してるって話だった皇帝でもないポニーなのに……」

 

「コイツめっちゃ賢いから案外思ってたりするかもよ」

 

「え、マジで?」

 

「『マジだ(です)』」

 

「……」

 

――この後少ししたらまた吐き気が襲いかかって来た。




今回少し短くなってしまいましたが、次回は元の文字数に戻せればと思います!

yelmさん誤字報告ありがとうございました!

戸山さん(ミホノブルボンの調教師)モデルの登場人物を生存させるか、させないか

  • させる
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