俺の物欲センサーがぶっ壊れているらしいので、トップ配信者の幼馴染と一緒にダンジョンにもぐってみる   作:奥州寛

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ボス討伐をしよう

 俺の素材集めがめちゃくちゃ早いって事でひとしきり話した後、ちくわが口を開いた。

 

「よし、じゃあ製造していこっか!」

 

 ちくわが昼間の配信で拾った茶色い土の塊にしか見えない何かは、遺物系装備と言って、ダンジョンにそのまま生成される武器なのだが、ただでさえ見つかりにくいのに、希望の武器種を引き当てるまで、かなりの試行が必要となっている武器だった。

 

 これで希望の武器種がでたところで、必要になるのは研磨石200個をはじめとするありふれた素材を冗談みたいな量を必要とするらしい。

 

「それじゃー遺物装備ガチャいくよー! 爪か双剣が出たら拍手おねがーい!」

『両手剣と予想』

『これは斧』

『戦鎚定期』

 

 誰一人としてちくわが希望する武器が出ない予想をしていたが、彼女はそれを気にすることなく「製造」ボタンをタップする。識別票タブレットからキャプチャーした画面が、派手な演出をして、茶色い塊が総勢200個の研磨石に磨かれていく。

 

「お、これは……」

 

 二つの細長い形に成形されていく。もしかしたらこれはちくわの希望通りになるんじゃないか、そう思っていると、茶色い二本の棒になったところで研磨石が消失して、製造の演出が終わった。

 

「やったあああーー! 双剣だあっ!」

 

 え、双剣……? このボロボロに錆びた金属棒みたいなのが?

 

『めでてえ』

『よかった』

『撮れ高×』

 

 コメントの反応を見ると、どうにも目当ての物が手に入った。という反応だった。一体どういう事なんだろうか。

 

 俺がそんな事を疑問に思っていると、あるコメントが流れてきて納得した。

 

『さあ次は300個だ』

 

 つまり、ここまででようやくスタートラインに立ったという事だ。ここから恐らく研磨石を300個とか、そういうものすごい数を要求されていくのだろう。

 

「いやー良かった良かった。あ、スパコメありがとうございまーす! みんなも高評価おしてねー!」

 

 将来的に延々とこの何倍も作業をするのかと思うと気が滅入るのだが、どうやらちくわにとっては「嬉しい事」のようだ。だから俺は黙っておくことにした。

 

「よーし、じゃあ気分もいいしボス行っちゃおう!」

「は?」

 

 黙っておこうと思ったが、想像の範囲外の言葉が飛び出して、俺は思わず聞き返していた。

 

『おいチワワ』

『ちょっといい事があるとすぐこれである』

『我慢できませんでしたか』

 

 リスナーも似たような反応である。そもそも初心者の俺がいきなりボスなんて無理だし、あの錆びた棒きれみたいな双剣があるからと言って、何も有利にはならないのだ。間違いなく正気の沙汰ではない。

 

「お、おい、ちょっと、聞いてないんだけど」

「大丈夫大丈夫! 初期ステと初期装備で倒してる動画見たことあるし!」

 

 それ動画の人がめちゃくちゃ強かっただけじゃないのか?

 

「そういう訳で、今日はここのダンジョンボス『エルダードライアド』に挑みまーす!」

『おい誰か首輪持ってこい』

『モブ君かわいそう』

『首輪持ってこいは草』

 

 ちくわ以外のほぼ全員が呆気に取られている中、俺たちはいきなりボスに挑む羽目になった。

 

 

――

 

 

 ダンジョンにはボスがいる。ゲームで言えば当然なのだが、現実でも居るのだ。それはダンジョンの仕組みが影響している。

 

 新エネルギーにより出現したこのダンジョンは、量子力学がどうとかいうので、ネットゲームで言うインスタンスダンジョンのような形に展開されているのだ。つまり、簡単に言うと入ったパーティの数だけアイテムや素材が落ちてるし、魔物もいるというわけだ。

 

 これだけ訳な分からない存在と化しているダンジョンなわけなので、当然消滅なんて事は出来ない。今は何とか外に出ないように封じ込めて、定期的なダンジョン探索によって拡大しないようにしているという形である。

 

「さあ、ダンジョンボスの部屋に到着しました! まあ初心者用ダンジョンだし? 猛犬であるボクもいるし? モブ君でも楽勝でしょー!」

 

 大きな扉の前、ちくわが騒がしくドローンに向かって騒いでいる。流れるコメントは半ばあきらめのような感情が混じっており、どうやら痛い目を見て帰るのが規定次項になってしまったようだ。

 

「じゃあモブ君! 扉を開けてね!」

「……ああ」

『さらばモブ……』

『救護班の人いつもお疲れ様です』

『ちょっとさすがに初心者相手に無理させ過ぎじゃない?』

 

 ちくわがここまでイケイケな状態なのを考えれば、恐らく十分な勝算があるのだろう。なんだかんだ大きな炎上もなくトップストリーマーを続けてきただけあって、そのあたりのバランス感覚はあるはずだ。

 

 ちくわに促されるまま、俺は扉を押しあける。すると、視線の先では緑色をした植物の蔓が二本揺らめいていた。

 

「キューッ」

 

 モビが毛を逆立てて、威嚇をする。俺もストレージからナイフを取り出して、戦闘態勢に入った。

 

「さー頑張っていこうね、モブ君っ!」

 

 ちくわがそう言っているのを頷くだけで返して、俺はエルダードライアドの姿を観察する。

 

 見た印象をそのまま話すなら、木が偶然女性に見える形で育ったようだった。両手はそのまま蔦と一体化しており、その見た目からあれで叩かれれば無事では済まない。という実感があった。

 

「あの……ちくわさん」

「ん? どうかした?」

「あれって本当に初心者用ボスなんですかね?」

 

 思わず敬語になってしまった俺に、ちくわは親指を立てて満面の笑みを返す。

 

「大丈夫大丈夫! 実質初心者用ボスだよ!」

 

 その「実質」って言うのがなんとも不安になるが、これ以上騒いでいたら、エルダードライアドの蔓の鞭で身体の骨を砕かれかねない。俺は半ばあきらめと共に歯を食いしばった

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