俺の物欲センサーがぶっ壊れているらしいので、トップ配信者の幼馴染と一緒にダンジョンにもぐってみる   作:奥州寛

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つよいちくわ

「っ……!!」

 

 身を屈めて何とか鞭をかわしつつ、無言で両腕を振り回すボスを見る。モビの懸命な攻撃で、何とか傷を負わせていくことは出来ていた。だが、木で出来ているだけあってなかなかに「硬い」のが問題だった。

 

 生木を切るにはのこぎりが必要で、ナイフやカッターなど軽い刃物では限界がある。力を込めて急所を刺すことができれば、何とかなりそうではあるものの、現状モビとちくわに任せるしかなかった。

 

 ちくわも、リスナーの言葉に反して熟達した動きでドライアドを攻めているが、彼女自身も植物を切断するという事に慣れていないようだった。

 

 どうにか出来ないか、仮面の中でいくつかの情報を探しつつ、効果のある事を探す。何か使えないか……!

 

「くっ……がはっ」

 

 鞭に足元を叩かれて、地面に倒れ込む。ボス部屋はドライアド仕様なのか、草が生い茂っており痛みはそこまでなかった。

 

 何か……打開策を探していると、モビのステータス画面に見覚えのないボタンが表示されていた。それと同時に魔石のストックが点滅する。どうやら魔石を消費して何かを発動するらしい。

 

「……モビっ!」

 

 何とか立ち上がり、モビの名前を呼ぶ。そして、仮面の下でその何かを作動させた。

 

「キュッ――」

 

 それと同時に、モビの身体にくっついている機械が強い光を放ち、形状が変化していく。なんというか、攻撃的に。

 

『おっ?』

『ASAブラストきたああああああ!!』

『めっちゃ配信切り抜かれそう』

 

 光が収まると、モビの身体はそのままに、身体についている機械が甲冑のように展開していた。

 

「モ、モビ……?」

「キュイ」

 

 俺の呼びかけに、モビは振り向いて走り寄ってくる。俺が反射的に身構えると、その身体はナイフと一体化した。

 

「な、なんだ!?」

 

 仮面の下にあるARデバイスに「Ain Soph Aur」と大きく表示され、それと同時に視界の隅でタイマーがカウントダウンを開始する。

 

 そして、手元を見ると、ナイフが形状を変え、光の奔流になっている。俺はその状況から、効果を推察する。

 

 魔石とテイムモンスターの能力を使って、武器の威力を時間制限付きで超強化する。そんなところだろうか。

 

「っ!!」

 

 だとすれば、タイマーがゼロになる前に力を使わなければ。俺は地面を蹴ってドライアドに突進する。

 

 左右から迫る鞭は、刀身を当てるだけで燃え尽きる。そして俺は、ボスの胴体を一刀両断するようにして振り抜いた。

 

 焼けこげるような音と共にドライアドの上半身が地面に落ちる。それと同時にタイマーがゼロになり、モビが元に戻った。

 

「勝った……」

 

 モビだよりというちょっと恥ずかしい勝ち方だが、勝ちは勝ちである。俺は安堵の息を漏らしてちくわに向き直る。

 

『モブ油断すんな!』

『まだ終わってないよ!』

『逃げて!』

「は? ――」

 

 コメントの反応を見た瞬間、俺の足元が大きく膨らんで、バランスを崩す。

 

「アアアアアアアアアアアアアアァッ!!!!」

 

 耳を覆いたくなるような叫び声と共に現れたのは、女性型本体の下に隠れていた部分、植物で言えば根っこというべきところだった。それは大きな球状の根っこにジャック・オー・ランタンのような顔が付いている物で、球場の根っこから伸びている太い地下茎が、手足のように振り回されている。

 

「くっ……」

 

 俺は奥歯を噛みしめる。植物型の魔物で移動をしていないなら、当然それは警戒しておくべきだったんだ。俺はナイフで戦おうとするが、ナイフはいとも簡単に弾き飛ばされてしまう。

 

「っ!!」

 

 モビも俺も、万策尽きた状態だ。何とか逃げ切れればいいのだが――

 

「ギシャアアアアアアアアアアアア!!?!?」

 

 そう思って身構えた瞬間、ドライアドが顔を残して全ての根を地面に落とした。切り口はするどく滑らかで、刃物で斬り落としたもののようだった。

 

 俺が呆然としていると、次の瞬間にはドライアドの顔も半分に切断されている。そしてそこには、そんな事をやってのけた人が立っていた。

 

「モブ君大丈夫!?」

「あ、ああ……」

 

 両手に赤い刀身の双剣を持って、ちくわは俺に気遣う言葉をかける。

 

『え』

『ちくわ?』

『なに、どうなってんの?』

 

 困惑しているのは、俺だけじゃないようだった。流れるコメントの全てが現在の状況が分かっていないようで、混乱がさらに広がっていく。

 

「あっ……ごめーん! ちょっと今日は疲れちゃったから配信おわりっ! ご視聴ありがとうございました! また見てねっ!!」

 

 ちくわが我に返ったようにそう言うと、少し乱暴にドローンのスイッチを切った。

 

 

――

 

 

 インターネットを利用したチャットアプリは複数あり、その中にある一つ、犬飼ちくわのファンサーバーでは、先程の配信で起きたことが話題になっていた。

 

「ちくわって強いの!?」

 

 そうチャットに打ったのは、新参の住人である

 

「いや、それより一緒にいるテイムモンスター連れた男の方が問題だろ。男の影が無いから安心して見て居られたのに……」

「あーあのモブって奴ね、まあちくわの新たな犠牲者って感じだったけど……っていうかそっちの方がどうでもよくない? 今まで弱いふりしてたって言うなら炎上案件だけど」

 

 モブというテイムモンスターを連れた新しいゲストと、今までの言動から想像もつかない強さを発揮したちくわ。大きな話題になるには十分だった。

 

「うわ、もう切り抜き上がってんじゃん『日本初テイムモンスター』と『実は強かったちくわ』だってさ」

「ツイッタートレンドにも上がってんな、しかしモブってw」

「あーあ、これからどうなるんかね?」

 

 サーバー内の大騒ぎは、明け方まで続いた。

 

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