皆がそれぞれに別れてかのんの事を考えていた時、当のかのんはというと……
「いらっしゃいませ!」
かのん「たこ焼き1パック下さい……」
そしてかのんがたこ焼きを買って家に戻ろうとすると、自然と足は可可の家の方に向いていた。
かのん「っ!」
かのんがとっさに壁の影に隠れる。可可の家のベランダには、2人でたそがれる可可とすみれの姿があった。
かのん(っ………)
かのんが路地を通って反対側に出ようとすると、ランニング中の俺たち1年生に出くわしかけた。残念ながら、1年生たちは誰も気付かずにそのまま通り過ぎて行った。だが、かのんにとっては助かっただろう。
かのん「ただいま」
かのん母「お帰り〜」
かのん「うん」
かのん母「どうしたの? なんか落ち込んだ顔してるわよ?」
かのん「そ、そんな事無いよ。ほら……うぅ…」
かのんは必死に笑おうとするが、胸の奥から思いが込み上げ涙を流す。
かのん「たこ焼き買ってきた……」グスッ
かのん母「はぁ、かのんちょっと座りなさい?」
そしてお母さんは、ありあを呼んでかのんと2対1の対面で話をする。
かのん母「かのんよく聞いて? あなたが留学を断った事を、お母さんは反対してない。だって心配だし、寂しくなっちゃうしね…。でも、ちぃちゃんの言いたい事が、もう分かってるから悩んでるんでしょ?」
ありあ「世界に歌を響かせる」
かのん母「あなたに来たこの話は、誰にでも来る物じゃない。お母さんだったら喜んで行っちゃうかな」
かのん「それはお母さんが能天気だからでしょ?」
かのん母「ふふっ、そうかも。お母さんは、かのんがどの道を選んでも応援する。だから後悔だけはしないようにね?」
かのん「うん」
ガチャッ
その時喫茶店の扉が開いた。
かのん「? ウィーンちゃん?」
ウィーン「あの………、今お時間良いですか?」
かのん母「……分かったわ。今飲み物出すわね?」
そしてウィーンはカウンターの席に座り、かのんも隣に座る。
・・・・・・・・・・
ウィーン「っ!」
かのん「ごめん、温め過ぎちゃった?」
ウィーン「美味しい…」
かのん「良かった」
ウィーン「でも、喫茶店なのに何でたこ焼き?」
かのん「さっきちぃちゃんがバイトしてるお店の近く通ったから……」
ウィーン「ちぃ…? あぁ……千砂都ね。あの子に留学の詳しい話をしたの、私よ? あなたが留学すれば、私も付いて戻る事ができるの……。家族からは、"かのんの下で歌を学びなさい"って言われていてね」
かのん「そんな事に……」
ウィーン「"それだけ評価されてるんだ…凄いなぁ"って、あの子言ってた」
かのん「……やっぱり、自分の話じゃ無いみたい…「あなたに来た話よ?」っ!」
ウィーン「あなただけに来た話」
かのんの目には戸惑いの色が浮かぶ。なかなか自覚できなかったのだろう。
ウィーン「"自分の力でウィーンに戻ってみせる"私ってば口先ばっかり……。あなたに連れられて戻るのは嫌だけど、自分の夢のためだから…どんな方法でも、条件でも……私は構わない」
かのん「…私にとって、Liella!や学校の事が自分の夢くらい大切な存在なの。私、結ヶ丘に入学していなければ…歌を辞めていたと思う。そんな大切な場所と仲間を失ってしまうのが、正直恐いんだ………」
ウィーン「贅沢な悩みね」
かのん「ゴメン……」
ウィーン「それなら、留学しても恩返しはできる。むしろ留学したほうが、あなたの学校の力になれるわ」
かのん「えっ?」
ウィーン「言ったでしょ?ウィーン国立音楽学校は、世界的に有名なの。あなたが留学すれば、必ず学校も注目される。世界中から結ヶ丘に入学を希望する生徒が集まるかもしれない」
かのん「っ!!」
ウィーン「って、勘違いしないでね? 私はウィーンに戻れたらそれで良いの。でも、飛び込んでみたら? とても大切な事よ?」
話を終えたかのんは、自身の部屋でウィーン国立音楽学校のパンフレットを見ていた。
かのん「歌を目指す人の憧れの場所……夢………」
ブーッブーッ
かのんのスマホのバイブが鳴り、スマホを手に取るかのん。千砂都からの着信があった。
千砂都『かのんちゃん今から学校来れる?』
LINEにはそう表示されていた。
かのん(どうしたんだろう……)
かのんが家を出ようとするとお母さんが呼び止めた。
かのん母「かのん?」
かのん「ちょっとだけ。すぐ戻る」
かのん母「すぐじゃなくて良いわよ。ちゃんと考えて答えを出しなさい?」
かのん「っ、うん!! マンマル、行ってくるね?」
その頃――
俺たちは研究所に戻り、慈のドライバーの最終調整をしていた。
そして――
戦兎「完成だ!!」
慈「本当に?」
戦兎「ああ。《ライジングドライバー》と《ライジングプラグ》、そしてこれがお前が以前スマッシュにした人たちから回収したネビュラガスを浄化して使えるようにした、《トールフルボトル》だ」
慈「ッ!」
戦兎「できれば違う成分が良かったけど、これが限界だった。すまん」
慈「ううん、謝らないで?たまたま成分がそれだっただけだし。私も、過去から逃げてばかりいられないから!」
戦兎「……そっか。でも、辛くなったら言うんだぞ?」
慈「うん!ありがとっ!!」
万丈「飯できたぞーっ!」
戦兎・慈「「分かった!」」
すると、
ブーッブーッ!
戦兎「?千砂都?」
内容を確認した俺はコートを来て玄関へ…
万丈「おい、どこ行くんだよ?」
戦兎「千砂都に呼ばれた。すぐに戻るよ」
万丈「……そっか。しっかりとやってこいよ?」
戦兎「おう!」
俺と万丈はコツンと拳を合わせ、俺は結ヶ丘に向かった。
そしてかのんが結ヶ丘に到着すると、千砂都が中から門を開けた。
千砂都「うぃっす〜」
ー 続く ー
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