ハンターが、1000体、放出されたァ
逃げ惑う逃走者(税金の徴収を免れようとしていた貴族)たちの視界の先に、ハンター
なんとか、凌いだその先に、別の、ハンター
角をうまく利用し、ハンターの視界から逃れられた、ようだ
しかし、逃げた先に、別の、ハンター
……捕まったァ
(カズマはなんとか、逃げ切った、ようだァ)
<カズマ>
俺とアクアは、最近こそこそと俺らに黙って何かしているダクネスを怪しんで、その後をつけていた。
別に税金徴収者を世に解き放ったことに恨みを感じているわけじゃあない。
無事徴収された冒険者、並びに貴族の豚たちはともかくとして、俺は逃げ切ったから他人事ですんでいる。
というわけで、俺らの後ろをついてきている街の冒険者たちとは何の関わりもない、と、何となく弁明しておく。
んで、辿り着いた先は孤児院。
どうやら街の領主代理として、そしてシルフィーナの遊び相手を頼むため孤児院へ訪れていたようだ。
そんな様子を見て俺たちは邪魔しては悪いと思い、撤退しようとしてたんだが。
大変なことに子供たちが高熱を発して倒れ始めたのだ。
そんな矢先に。
「――フハハハハハ! わんぱくなガキどもよ、今日も健やかに励んでいたか? 我が輩と……」
「某が迎えに参った」
「さあ、我が輩の仮面に触りたいものはきちんと並び……おや、これは?」
「こんな大変なときに限って……また面倒くさいやつが来たな」
「またとはまた大層な歓迎の仕方であるな」
ちょうど今さっき、シルフィーナ含めた子供たちが高熱を発してぐったりとした様子で倒れてしまったって時に限って悪魔と邪神の邪悪セットが来たらこうも言いたくなる。
俺がそう思っていると、バニルが子供のおでこに手を当て呟いた。
「ふむ、これは厄介な……」
「な、何かわかるのか!」
「そう興奮するでない性騎士の娘。これはコロリン病であるな」
「なんだそのかわいらしい名前の病は?」
コロリン……入れ替えたらロリコンであるがそんなことはどうでもいい。
今は少しでも多くの情報が欲しい、子供たちを救うために。
俺の質問に対してナナシさんがこう続けた。
「侮るな。かつてオーエドにて猛威を振い、一月で街一つを滅ぼすに至ることもあった。死に至るまでの早さを
「どうすれば子供たちは助かるのだ!? 発症してすぐってことはもうやばい状態なのだろう!? 薬はあるのか! あるのなら我が家の権力を振るうことも厭いはしない!」
ダクネスが怒鳴りあげる。
理不尽な病魔に怒り、でも苦しくて泣きそうで、藻掻いてでも何とかしたいと必死な様子がいやに俺の心にくる。
「……特効薬はある」
「あるのか! あるのなら話は早いすぐに取り寄せ……」
「落ち着け、切羽詰まって慌ただしい娘よ、そう簡単な話ではないのだ。特効薬の製法は紅魔族や一部の薬師にしか伝わっていない。取り寄せられたとしても圧倒的に数が足りん」
「で、では……」
「ダスティネスの、落ち着け。功を焦るな。解決の糸口なら既にあるだろう、ここに未来をも見通す悪魔がいることを忘れていないか」
「そして先輩店員は、突然変異したとしか考えられないが、遺伝レベルで紅魔族であるからして、作成可能である」
「つ、つまり特効薬のレシピも制作できる腕もあるんだな! 教えてくれ、どうすれば私はこの子たちを……シルフィーナを助けられるんだ!」
よかった、ということはこの子たちはちゃんとよくなるんだな!
俺、そしてアクアはすでに安心してしまったが、ダクネスは相変わらずの剣幕でバニルの仮面に顔を近づける。
「ふむ、まずはカモネギのネギであるな」
「そ、そうかカモネギ……希少モンスターだが確かエルロードにはカモネギの養殖場があったはずだ! そこと交渉して……」
「でも確かめぐみんが丸ごと更地にしてなかったかしら? 我が力の糧となれとか言って爆裂してた記憶があるんですけど」
「そう言えばアクアの言うとおりだったな……な、ならばギルドに依頼を張りだそう! 値段を倍にして……」
そこまでダクネスが言って、ナナシさんがちょいちょいとダクネスの裾を引っ張り話を遮る。
一体何なんだと苛立ちを隠しきれないでいるダクネスだったが、どうして止めたのかはナナシの手にしてるカモを見ればわかる。
「その、こちらに今日の晩にと思って絞めてきたカモネギが」
「た、助かるが、それだけでは足りないのではないか?」
「この店の大黒柱はカモネギ奉行がナワバリ争いをしてたところを漁夫って、10羽は冷蔵してる。故に足りるであろうな」
「そ、そうか」
確かカモネギって成長すると奉行になっておいしく調理済みになるんだっけか?
昔めぐみんの実家で振る舞ってもらったが、あれは汁が絶品だった記憶がある。
鳥の旨みが凝縮されてたな。
「というわけでカモネギのネギは大丈夫であるからして、次に必要なのはマンドラゴラの根だが……」
「マンドラゴラか、地面から抜き取ると死の呪い振りまく植物モンスターだな! 比較的高価だがポーションの原料としてはポピュラーだと聞くし、なんとかなr」
「あー、それもあるのぅ。品種改良してナスが採れるようにしたが、含有成分は同じだ。家庭菜園でベラドンナと一緒に飼育しておる故、足りることだろう?」
「ふむ、一度もらったマンドラ坊やをアクシズ教会へ投げ入れるのは痛快の極みであったし、成分が同一であることは確かだろう」
「そ、そうか……い、いや待て! その叫ぶから同じ成分だって言うだけで同一成分を含んでいるのは確かなのか!?」
なんかダクネスが突っ込んでるが今はそれどころじゃない。
何がそれどころじゃないかって言うと、アクアがすごい形相でバニルを襲おうとしているのを何とか押さえ込んでいる状況だからだ。
それはそれとして、俺的にはアクシズ教会にマンドラゴラを投げ入れて、その悲鳴でガラスを悉く割ってやったのはナイスだと思う。
「それからゴーストの涙である」
「そ、それはなかなか難しそうだ……」
「安心してダクネス! 私が家にいるアンナちゃんにお涙頂戴のお話聞かせて採取するわ! それよりも今はこの悪魔をぶん殴りたい衝動に駆られてるからカズマを私から引き剥がしてくれない?」
「あー……アクア殿? 実はもうルーシー殿の笑いのツボを突いて小瓶に保存しておる故、アンナの涙を頂戴する必要はなしよ」
うん、もうこいつだけでいいんじゃないかな?
せっかく努力しようとしてたダクネスがテンション下がりまくってるぞ。
助かるならいいことなんだろうけど、なんか努力しようとした意思を踏みにじられた感じが否めない。
「フハハハハハ! なかなかの悪感情大変美味であるな! やはり持つべきものはよき理解者であるな!」
「……最後に必要な、高位の悪魔族の爪は、こちらに」
「!?」
最後は高位の悪魔の爪がほしいらしい。
ナナシが商品を紹介するが如く、流れるようにバニルの方に手を向ける。
バニルは悪魔だ。
しかも7大悪魔の一人、公爵という地位、どこからどう見ても立派なアークデーモン。
バニルはよき理解者だと思っていた同僚に裏切られ、売り飛ばされたようで、たいそう驚いていた。
「ゴッドブローーッ!!」
「何をするか! 華麗に脱皮っ!」
「こんの悪魔! 子供たちのために爪を捧げようって思わないの!」
「爪どころか命まで捧げるところだったわ、このたわけ女神め!」
「いいじゃないいいじゃない! どうせ残機とかいう仮初めの命の集合体なんだから命の一つや二つ三つ四つ安いもんじゃない!」
「どんどこ捧げる命の数を増やしていくな! 人の命を何だと思っているのだこの邪神!」
「でも私の知っているわ。ある男が片腕を食いちぎられても笑って『安いもんだ、腕の一本くらい……無事でよかった』って言ってたわよ! 悪魔でも何でも公爵を自称するなら、私が例の店に行って生爪剥がせてもらう前に、それくらいして見せなさいな!」
「はん、そんな脅し何でもないわ! そもそも下級悪魔たちのためにどうして我が輩があれこれしないと……って発光プリースト、何を意気揚々と殴り込み行こうとしてるのだ! 下級悪魔の爪では意味なかろうて!」
「あら、なんの役にも立たない土塊さん、私の前に立ちはだかる気?」
アクアはフシャーーッと猫のように姿勢を低くして威嚇し、バニルはこれ以上前に進ませないと言わんばかりに大蟻食の威嚇ポーズで対峙していて、今にも宿敵同士の頂上決戦が始まるのではないかと思っていた、そのとき。
何故かちょうどよいタイミングでめぐみん帰還。
そのめぐみんが真打ち登場と言わんばかりに間に割って入り、ちょむすけを突き出す。
「仕方ありませんね、ここは一つ、我が使い魔を生け贄として捧げ、紅魔族に伝わる秘伝の悪魔召喚の儀を行いましょう」
「なーんっ!?」
「我が半身とか言ってたくせにそれはどうなんだ!? ちょむすけを見てみろ、本能で察して、手の中でジタバタして、怯えてるではないか! ……どうしてかかわいいな」
「自己犠牲の精神こそ高潔で美しい消滅の美学でしょう?」
「そのような考えは物語のなかだけにしておけ! こんな可愛らしい猫をどうして貴様というヤツは平気な顔で贄にするという考えが出てくるのか……」
「では仕方ありませんね。代案としてぼっち気質の我がライバルに。あの子なら喜んで悪魔召喚の手伝いをしてくれるでしょう」
ゆんゆんのことか?
そうに違いないだろうが、今の言い方だとちょむすけの代わりにゆんゆんを生け贄にって聞こえるぞ?
ゆんゆんの方が召喚術とかそっちの方にも精通してるプロだから頼むって話だよな?
俺は「もう……友達になってくれるんなら悪魔でも、いいよね……?」って闇落ちしかけてるぼっちを思い浮かべる。
……なんか想像通りで泣けてきた。
ゆんゆんには今度あったら優しくしてやろう。
「却下も却下! ド却下だ! 何かを犠牲にしてものを得ようとは私は思わないからな!」
「つまらないですね。紅魔の里ならやりたい人を募った瞬間に挙手の嵐ですよ?」
「あの里の奴等はどうしてそんなに狂ってるんだ!?」
「ではこめっこに手伝ってもらおう」
「それは名案ですね師匠、我が妹の魔性っぷりなら……」
「シスコンめ! 自分の妹のことを色眼鏡かけてみすぎだ! 流石に悪魔という悪をたらし込めるほどの能力は……能力は!?」
「ね? ありそうでしょう?」
「この世界中を探しても類を見ないほど希有な悪魔使いの才覚をもっている者なら代償なしにあるいは」
「あるいはなら駄目だろう!? 危ない危ない、思わず納得しかけたぞ……どうして幼子にそんな危険なことをさせないと!」
ダクネスはそんなことを言ってるが、こいつはサキュバスのお姉さんたちの反応を知らないからそんなこと言えるんだ。
あの無自覚なたらしはマジで魔性だ。
お姉さんたちがこめっこに契約を迫ってくるあの様子はアクシズ教の勧誘並だった。
バニルだって「見所がある娘だ……」みたいなこと言ってたし、いい案なんじゃないか?
そんなことを思っていると。
「ナナs…ゴホン…先輩店員よ、汝も正確無慈悲な占いは十八番だろうに……珍しく用意不足か?」
「あれは占いではないよ。可能性世界の記録を参考にして紐の捻れ歪みを解く、そんなものだ。しかし言わんとしていることはわかるぞ?」
「なら最初からヤツのもとにこやつらを嗾ければよい、そうであろう?」
「それじゃあ残虐公殿が可哀想であろうに……血も涙もないとは、貴様は悪魔だな」
「それほどでも」
「褒めてない」
めぐみんとアクアは子供たちの看病をし、その間に俺とダクネス、そしてナナシとで悪魔狩りに赴くことになった。
……正直、ナナシに任せておけばいいんじゃないかな、なんて思うが、そうもいかない。
というのもナナシ曰く、これから対峙する悪魔はこの国の貴族らしく、平和的に生爪を剥がさせてもらうにはこの国の貴族であるダクネスと付き添い人である俺。
それから何かあったとき(特にエリスが暴走したとき)の対処役が必須らしい。
……平和的に生爪剥ぐってナニ!?
次回
旅の道中、サムライやニンジャの話で盛り上がりを見せるだけの話の予定かもしれない。