私の中二心を『エクスプロージョン』ッッ!!   作:桃玉

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前回のあらすじ

特効薬作成の最後の材料を入手するために悪魔公爵の元へ。
その道中でカズマはパーティー随一の高レベルに。
スキルポイントだけでステータスはあまり上がらないようだったが、それを知るのはアクセルに戻ってからのお話。


爪がほしかったので爪切りの訪問販売してみた

<カズマ>

 

「おかしい。なんでペンギンの着ぐるみ着て誰も突っ込まないんだ……」

「こら、カズマ。今はゼーレシルト伯爵とナナs……アイリス様がお話しなさっている。静かにするんだ」

 

 

俺らがいるのは目的地、大悪魔貴族の屋敷。

そして目の前にいるのはペンギンと幼女。

なんと微笑ましいことか……何も知らなければの話だが。

そう、ペンギンの正体は残虐公と悪名高い大悪魔、ロリの正体は魔王より強いと噂のバニルとタメな邪神である。

真実を知る俺の顔は恐怖か……と思いきや、茶番を見せられて呆れたときの顔だ。

いやだって、あの着ぐるみが「弾力性や保湿、保温優れている優秀な防具だ」というのがこの国共通の認識なのは聞いて呆れるほかないだろ。

せめて悪魔とか変なやつが国の中枢付近に来れないように着ぐるみの中身を改めるくらいのことはしろよ!

 

 

「お初にお目にかかります、残虐公ゼーレシルト殿」

「これはこれは王女様、このような辺境の地に如何なるご用で」

「実はですね、ここにあります爪切りを使ってもらいたく……」

 

 

なんでこんなことになったか、それは簡単で、ナナシにはアイリスぽく振る舞ってもらうことで「バックには王家の懐刀であるダスティネス家だけじゃなく、国家がいるんだぞ」という圧をかけ……

もとい、穏便に話を進めるための措置だ。

俺が提案した案なのだが、なかなかどうして、この絵面を見ると自分がアホに思えてくる。

 

 

「このアクセルの街をお忍びで訪れたとき、とある魔道具店にて二千万エリスで購入したのですが、職人の腕が凄くてですね」

「そ、それはぼったくりでは?」

「何をおっしゃいますか、この魔道具は素晴らしいものですって可愛らしい薄幸店主さんがおすすめしてくれたんですよ? お嬢さんはかわいらしいから五千万エリスのところを二千万までまけてくれて……おまけにこのバニル仮面も頂いちゃって」

 

 

うん、流石王女の影武者、箱入り娘感がすごいアイリスっぽいな。

ただどさくさに紛れて自分の店の店主が仕入れた使い道ない商品を売りさばこうとするのはやめてほしい。

ダクネスも「高級なものだとそれくらいはするに違いない」と呟いてる。

後でぼったくりに遭わないようにちゃんと一般的な金銭感覚ってのを教えてやらないとなんて思ってると。

 

 

「巷で聞いた話ですが、なんちゃら万エリスというのはなんちゃらエリスの意味だと……。それはそれとして今バニル仮面とおっしゃいました?」

「これは二千万エリスの価値ありですよ? 何故ならその店に勤めているカラススレイヤーバニルさんが言うには『切れ味だけを極端に鋭く強化させた一品! 触れた感触もなく、空間次元などなどありとあらゆるものことごとくを切断する職人技! ドラゴンを飼育していてもご安心である!』と」

「私はドラゴンなどという物騒なものは飼育しておりませんよ、ええ、しておりませんとも。というわけでドラゴンなど飼っていない私には過ぎたものですな。そもそもドラゴンナイトなどの職業でない限り違法では? それと今カラススレイヤーバニル様って言いましたか!?」

 

 

商品自体には目もくれないゼーレシルト伯爵だが、何故か過剰にバニルについて興味を示している。

あれか、もしかして地獄のトップアイドル的存在なのか公爵って?

こっちでは「アイリス様ー! ララティーナー!」みたいなところを地獄では「バニル様ー! マクスウェルー!」に置き換わるのか!?

そんなこと思ってる間にも二人の話は続く。

 

 

「そしてそのバニルさんもご愛用なさってるみたいですよ、この爪切り。何でも痛みなく切れるので手入れに重宝しているのだとか」

「もし私がこれを購入すれば、ば、バニル様とお揃い……ということになる……お、恐れ多い! が、しかし。しかしだ、せっかく一国の姫君に勧められた品を受け取らないわけにもいくまい……。ありがたく頂戴しましょう。それとできればこれと同じものをあと3つほどありませんか? 言い値で買い取らせていただいます」

「はい、お会計が1億エリスです」

「安い、買った!」

「まいど!」

 

 

金銭感覚バグった貴族の会話に俺はアホを見る視線を捧げていた。

何がともあれ、あとは爪を切ってもらい、それを持ち帰ればミッション成功となる……んだが、問題発生だ。

 

 

「なあカズマ」

「何も言うなダクネス、言いたいことはわかる。どうやってその爪を入手するかだよな」

「ああ。馬鹿正直にその爪を薬の原料にするので頂戴したいとでも言ってみるか?」

「その時はお前が爪を採取する特殊性癖の持ち主だって言っといてやるから安心しろよ。ドMにバツイチにシックスパックを持つ貴族のお嬢様って属性モリモリすぎなお前だ、今更一つや二つ特殊な性癖が加わったところで……」

「問題ないわけないだろ! ただでさえ貴族同士の茶会で変な噂が流れているのにこれ以上変な噂が流れたら顔を出せなくなってしまうぞ!」

 

 

だよなぁ。

街でそんな噂が流れるくらいだったら許容範囲なのかもだが、流石に貴族の社交界の場ではご無体な仕打ちだ。

しかし参ったぞ、このままじゃあ俺が貴族の屋敷のゴミ箱に捨てられた爪を漁りに人生をかけないといけなくなる。

困って唸っている俺をよそに、ペンギンとロリは仲よさげにバニル談義に花を咲かせていた。

ナナシが「実はこの前、私がチリメンドンヤの娘として街を訪れて、案内役のハチベエの職に就いてもらった際にはですね……」とか「今その防具を模して改造した皇帝ペンペンマークツーなるものを開発したらしくて、いつか量産予定などあって……」と時間を稼いるが、そのわずかな時間じゃいい案は思いつけなかった。

 

 

 

 

 

<主人公ちゃん>

 

私が思い描くプランその1「爪を切らせて譲ってもらおう!」作戦は失敗してしまった。

だってアイリスちゃんは「その爪、いただけないでしょうか?」なんて言わない!

いや、言わせたくない!

なんとかカズマ君がしてくれるんじゃないかなと淡い期待があったのですが駄目でした。

というわけで途中まではうまくいってたんですがね、仕方ないので失敗のフォローアップをしていきたいと思います。

 

作戦としては「無理矢理強行突破」か「毎度恒例犯行予告」の二パターンを用意してます。

「無理矢理強行突破」だと私が賊に扮して屋敷に潜入し、途中わざと見つかることでゼーレシルト伯爵の足止めをする。その間にカズマ君たちが切り立てほやほやの悪魔の爪を回収する作戦。

「毎度恒例犯行予告」だと銀髪仮面盗賊団の予告状に「宝物庫の中身をいただきに参る」とか書いて、私がうまーく宝箱を華麗に盗んでる間に、ダクネスちゃんたちにゴミ箱の中身を清掃業者の如く華麗に回収してもらう作戦。

 

どちらも悪い悪魔じゃないゼーレシルトさんを保護するべく打ち立てたんですが…ここで最大の難関、魔絶対殺すウーマン現る。

 

 

「というわけで助けに来たよ!」

「クリス!? どうしてここに……というか助けてくれるのはありがたいが、一体どういうわけで!?」

「うーん……なんとなく、かな!」

「と言いつつ、実はこっそり教会でお祈りしてたダクネスのことを盗み見して、面白そうな予感がしてついてきただけだろうに」

「そ、そんなことないよ! そもそもそうだとしても面白そうって理由じゃないから!」

 

 

嘘が下手ですねぇ。

照れ隠しで声を荒らげるクリスちゃんを見てるだけで心がオアシス化します。

私は知っていますよ、最近恋を煩ってるダクネスの行く末を見守ろうと心に決めながらも、やっぱり心配になってちょくちょく天界からチラ見してることは。

私たちと出会って早々にやる気満々なクリスとは相反してカズマは。

 

 

「なんでそんなやる気に満ちあふれてんの? 俺、屋敷中に設置してあるゴミ箱を漁るなんて面倒くさそうなことはやりたくないんだが」

「それで、結局プランはどうするか決めてるの? というか宝物の位置はわかってるのかい? ってゴミ箱?」

「おう、これから俺らがやらなきゃいけないのは貴族様の屋敷に侵入して、高値で売れる貴族様の爪の欠片をゴミ箱ひっくり返して入手することだ。せっかくここまで来てくれたんだ、この重要な役目はクリスに任せよう」

「ええっ、何それ聞いてないんだけど!? もしかして今から私たち、何かとんでもなくとんでもないことしようとしてるの!? ……もしかしてダクネスの趣味だったり?」

「おい、私の趣味だと思った理由について細かく話してくれないか? いや、怒ってなどいないが、返答次第では生きて返さないかもしれないが、そこのところは夜露死苦」

「いやいや冗談だから本気にしないで!? 結構強固な友情という名の絆で結ばれてると思うんだけど、そういう仲なら冗談言い合うもんでしょ!? だからそのアイアンクローで封殺しようとしないで!」

 

 

ダクネスが軽く赤子の手を捻るようにクリスの頭を鷲掴み、すんごい笑顔で怒気を放っていた。

「私だって半分冗談だ。まったく、冗談がすぎるぞ」なんてため息をつくダクネスですが。

私は思うのです、半分は冗談じゃなかったんですね、と。

つまり半殺しくらいの目には遭わせるかもしれなかったのが恐ろしすぎます。

あんまりからかいすぎて、ダクネスをガチギレさせないようにしようと心に誓った。

きっとカズマくんも同じ心境でしょう。

 

 

「うう……っ。昔は純粋なお嬢様だったのにどうしてこんなめぐみんみたいな暴力常習者になっちゃったんだろう」

「お、おい、私は正当な時と場合にしか力で訴えな……」

「めぐみんが『ダクネスが薄着で俺の部屋の前をうろうろして』って言ったあと、俺なんも悪くないのに記憶消失させるとかいって襲いかかってきただろ……」

「……なんでもないですごめんなさい」

「た、大変! ダクネスがエチネスに……もしかしてキミのせい? そうだよキミのせいじゃない! めぐみんのこと制御しないし、乙女なダクネスにあることないこと吹き込んで惚れさせて、悪不良ヤンキーになるように誘ったんでしょ! 返してよ! 教会で熱心にお友達がほしいって願ってた頃のはかなげなダクネスを返してよ!」

「俺のせいにしないでくださいよ副団長、元々こんなんでしたよコイツは」

 

 

でしょうね。

だってパーティーに加入したいと思った理由が「ジャイアントトードの粘液まみれの少女ををつれた男がいる」って私が噂を流したせいですから。

最初からダクネスはダクネスでした。

 

しかし、これから悪魔が住まう屋敷に向かうというのにも関わらず緊張感の欠片も見当たらない。

まあ、悪魔は基本的に人間のことを本気で殺しにかかっては来ませんからそのくらいの気持ちで大丈夫だと思いますが……逆に悪魔貴族さんの方が心配ですねこれは。

 

 

「とりあえず、盗賊団の犯行予告でよいか? 某が一人で盗みに入る」

「お、おい! それは大丈夫なのか? ナナシはかなりの手練れだが、銀髪仮面盗賊団に籍を置いている助手のカズマや副団長のクリスの方が……」

「団長は某故、大船に乗った気持ちでよいぞ」

「あ、あれ!? 団長って言うのは確かエリス様では……」

「それは副dムグっ」

「副……なんだって?」

「わー、わー! ああ、あれだよ副業! そう、副業だって言おうとしてたんでしょ! エリス様は某水の女神様がやらかした後処理で忙しいからナナシさんがエリス様の代理で頑張ってるんだよ! きっとそう! そうだよねナナシさん!」

「……アア、ソウダナ」

 

 

ダクネスにさらっと暴露話して驚かせたかったのに、エリス様ったら私の口を塞いできて……なんて大胆なのでしょう。

盗賊団やってるって聞いたときも結局いつも通りの態度だし、エリス様ってバラしてもきっと親友のままだから安心して正直になればいいのに。

そんなクリスが。

 

 

「でもあくまで副業、私が一緒について行った方がいいよね!」

「いや、今回の目当てはこっちじゃない故、必要最低限でいいと思うのだが」

「まあまあいいじゃない! その残虐公ってのは悪いヤツなんでしょ? なら盗みの対象になると思うんだよね」

「悪魔の貴族だと言われてるが……まあ、ヤツは割と善政を敷いておる。だから……何故奇妙な顔をしておる」

「いや、爪なんて意味わからないものより、子供のために金銀財宝を手に入れる方が私的にはヤル気出るかなって」

 

 

……どうしましょう。

この女神様、私が何を言おうと爪の切れ端を探してくれそうにないですよ?

このままじゃゼーレシルト伯爵と対面した瞬間、絶対悪魔だって気づいて殺戮マシーンへ変貌しますね。

くっ、やはり運命からは逃れられないのか……!!

私に、私のもっと力があれば!!




続きは何も書いてないけど次回予告

カズマとダクネスが爪を探すためにお屋敷中のゴミを漁る中、主人公ちゃんとクリスは宝物庫の中身を狙うという名目で時間稼ぎを行っていた。
もちろんそこに立ちはだかるのはゼーレシルト公爵。
果たして目的は達成できるのか?

次回の見所(たぶん)
かわいさのあまり悶絶するクリス、狂気に駆られ目のハイライトを失ったクリス。
そしてそれに怯えるペンギン、何とか食い止めようとするナナシ。
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