私の中二心を『エクスプロージョン』ッッ!!   作:桃玉

108 / 162
前回のあらすじ

伯爵の元へ参った主人公ちゃん。
見事「切れ味がよすぎて深爪しすぎてしまう爪切り」を売ることができた。
しかし、問題はその爪の回収手段!

クリスが加わったことで元々ハードモードだった難易度がルナティックモードへ突入。
果たして悪魔はコンテニューできるのか!?


悪魔のような女神がいたので対抗してみた

<主人公ちゃん>

 

「よく来ましたね、巷で話題の勇敢な、そして、今日が最後になるだろう盗賊団の皆さん。改めて名乗らせてもらいましょう。私はゼーレシルト、残虐公です。ところでそのかっこいい仮面はどこで手に入れたので?」

「……多くは語るまい。我らの行為を受け入れぬと言うなら、新たな世界秩序の礎となってもらうとしよう」

 

 

わかってる!

この悪魔はかっこいい展開っていうのをわかっています!

しっかり自分を悪として受け入れるそのスタンス。

それに対しこちらも過激な正義を貫く。

善も何も関係ない、何なら悪と悪のぶつかり合い。

なんと燃えることでしょう!

 

強いていえば、私がしっかり犯行予告出し、屋敷の財産を守るために立ちはだかったのが……ペンギンの着ぐるみ。

バニル仮面に突っ込んだところと合わせて減点要素でしょうが、そんな些細なところは気にしません。

それよりも私と悪魔伯爵のやりとりをぶち壊しにかかっているコメディアンが1柱について。

 

 

「ねえねえどうしよう! 我を見失うってこういう事? ねえ無理だよこんなの、あたしこんな可愛いのに攻撃するだなんて、ちょっと無理!」

「まあ落ち着け副団長、あれはそういう風に見せかけて作った防具だ。中身はおっさんだって思えばなんてことはないだろう」

「いやあああああ! なんてことを言うのこの子! 私の頭の中ではあれは正真正銘かわいいペンギンさんなんだよ! そんな私の夢を壊すようなこといわないで脳が震えるうぅぅうう!」

「気持ち悪くなるからやめ……うぷっ、やばっ……」

「……賊を迎え撃とうとしたのに私を見るなり苦しみだしたぞ。何なのだこの不審者たちは」

 

 

苦しみだしたっていうか、可愛すぎて戦闘行為を放棄したクリスですね。

きゅるんとウルウルしたつぶらなキューティーアイトラップに引っかかったせいで敵と味方を間違えるくらいには混乱しているみたいです。

私はいちおう味方ですよ?

だから肩を掴んで揺らしまくり、脳みそをシェイクするのはやめましょう、ね?

 

そんなとき、ふと揺れが収まる。

ゼーレシルト伯爵の一言のおかげだ。

しかしそれは致命的なミス。

我が身を滅ぼすことを知らないその一言を伯爵が話すことを私は阻止することができなかった。

 

「よくもまあ余裕そうですね? しかし悪魔の前でその隙は致命的でしょうに、それを敢えてすると言うことはこの行動の裏に一体何が…………って背中イタァーッ!?」

 

クリスは悪魔というワードを口にした途端、体の機能を停止させ、ただ耳をピクリと動かす。

次に鼻をヒクリとさせた次の瞬間、目から光が潰え、冷酷な機械へと変貌してしまった。

きっと感覚神経を尖らせ全集中した結果、悪魔臭に感づいてしまったのです。

 

 

 

 

****

 

 

 

 

問おう。

どうして神と悪魔は対立するのか。

 

二つの存在は高次元の存在であり、人類の願いを聞き、叶える。

しかしそれは、一種の契約と言っていい。

 

神は希望と幸福を与え、形而上的貢ぎ物(信仰心)を。

悪魔は絶望と不幸を与え、対価という名の代償(悪感情)を。

それぞれ力、残機、そして存在の確立へと変換する。

存在の確立という、世界の根幹たる掟へ。

 

故に、「人間に寄生しないと生きていけない陰湿ナメクジ」とか「欺瞞と偽善に満ちあふれた詐欺師同然の宗教家」などと日頃魔道具店で言い争ってはいるが、悪意とか善意とかそのような真意はさておき、存在をかけた戦争なのだ。

常に温厚な地母神エリスであろうと、弱肉強食の熾烈な争いを理性で抑えることなどできない。

もはや遺伝子に刻み込まれた本能的闘争なのである。

 

 

「いだああああああ!? ちょ、待っ!」

「あはははははは! よくもまあぬけぬけと私の前に姿を現したね! 悪鬼滅殺天罰鉄槌天誅! ……ってちょっと! 何で私んこと羽交い締めにすんの!?」

 

 

というわけで、出会って早々にこの始末☆

カズマとダクネスが爪を探すためにお屋敷中のゴミを漁る中、私とクリスとで宝物庫の中身を狙う……

という名目で時間稼ぎを行う手はずだったのに、これじゃあ討伐しちゃって、ついでに爪剥げば目標達成できちゃうのでは?

そんな鬼気迫るおっかない顔したクリスさんが悪鬼滅殺の文字が刀身に刻まれているダガーを持って悪魔を滅多刺しにしようとしていたから、思わず止めに入っちゃいました。

そしてそのダガーを軽く奪うと。

 

 

「ああっ返して! 私のデラックス日輪ダガー返してー! 神に徒なす存在の回復力を阻害できる唯一無二の代物なのにー!」

「呼吸法でもしてるのか? というかいつもの愛刀は何処へ」

「マジックダガーはサブウェポンとしてここにしまって……」

「はいボッシュート」

「本当になんで私の武装を解除することに一生懸命なの!? というかあたしのこと放してよ! 早く放してくれないと私、アイツ殺せない!」

「ヒィィイィィッ! 私のそばに近寄るなァァアァア!」

 

 

可哀想なペンペンが悲鳴とともに物陰に隠れて、今にも泣き出しそうな顔をして見てくる。

いや、自分の表情が着ぐるみの表情に反映されるって一体どういう仕組みなんでしょうか……後で中身を放り出して確認しなければ。

でも今はそんなことをしている暇はないんですよ残念ながら。

だってクリスさんってば、何故か今まで筋肉を抑えていたんじゃないかってくらい力が凄くて、強化魔法使ってる私でさえ結構苦労してるんですが!?

 

あれ……

もしかしてここ最近暇さえあれば誰かを誘ってダンジョンへレベリングの付き添いしてもらってるから自然のレベルが私以上になったとか!?

そんなこと考えてる間にもクリスのジタバタは激しさを増す。

 

 

「ここは某に任せて逃げるんだ!」

「し、しかし!」

「いいから行けぇ!」

「クソッ……!」

 

 

ペタペタと走り出し、廊下に到達した頃には十分に加速しきったのか、お腹で床を滑るようにして尻尾を巻いて逃げる悪魔。

何となくその場のノリであんな台詞を使っちゃったけど、よく考えればこの後カズマ君たちに遭遇する可能性があるんじゃ……

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「「いやー、一見解決!」」

「何が解決だよ! お前たちがやらかしたのはよくわかってるんだからな! 反省しろ!」

「あ、あたしは何も反省するところなんかないよ! だって目の前に悪魔がいたんだよ! 敬虔なエリス教徒なら悪魔倒すべしだよ! ね、ダクネス!」

「わ、私はその……」

「コイツを見習えよ? 子供の命を救うためにその衝動を抑えて悪魔と交渉したんだ。おかげで聖属性の魔法が使えなくなってしまったらしいぞ?」

「ええーっ!? ま、まさか嘘だよねダクネス! 私が目を離した隙に悪魔と契約する本物の不良になっちゃうなんて!」

「ちち、ちがー! 私は悪魔と契約までした記憶はないぞ! そもそも私はもともと魔法スキルは一切取得してない!」

「そ、そうだよね! あたしはダクネスがそんな悪い子じゃないって信じてたよ、うん!」

 

 

一瞬、闇落ちダクネスになったって勘違いして全力で焦ってたクリスさんがものすごく安心したようにほっと息をつく。

でもカズマは未だお冠状態です。

それもそのはず、私たちが逃がした悪魔さんが爪捜索中のカズマ君たちと遭遇。

悪魔殺戮兵器を押さえつけるので手一杯だった私は何もすることができず、その後のことは二人に任せっきりだったんですよね。

 

でも何か、死ぬほど恐ろしい体験をしたというペンギン伯爵の護衛をしたそうな。

そのときにどうしてここにいるのかなどは深く突っ込まれなかったらしい。

そんなに怖かったんですかね?

 

そして翌朝、カズマの千里眼スキルで恐怖の対象が屋敷からいなくなったのを感知し、その報酬に爪を頂いたそうな。

……そう、私とクリスの格闘は朝まで続いたんで、めっちゃくちゃ疲れました。

途中女神形態に変身ッして、ガチの補助魔法で対抗されましたし。

一応、人間にいい人と悪い人がいるように悪魔にもって説明はしてみたんですけど、「悪魔は言葉を悪感情を食らうだけの道具としてしか見てない害獣だよ!」と言う持論を曲げてくれず、一切結局諦めてくれそうになかったので地獄旅行に誘いまして。

そしたら「貴女という人は全く、今回だけですからね……」と折れてくれました。

そんな大変な目に遭ったのに、私も反省を促されるなんて解せないので。

 

 

「某から弁明を一つ」

「うん?」

「クリスと言う名の悪魔殺しが登場したせいでこんなことになったのは遺憾だ」

「ちょ、あたしのこと売るつもり!?」

「しかしながら盗賊団としての仕事はした」

 

クリスが何か言ってるけれど私はそれを無視して空間に穴を開けると、金貨やら金銀財宝がジャラジャラというよりザザザザーと、滝のように流れた。

それにカズマくんとダクネスちゃんが。

 

「……それで俺の気を治めたつもりか?」

「ああ」

「えと、私の目にはカズマが一心不乱に落ちた金を拾い集めてるようにしか見えないんだが?」

「ダクネス、お嬢様には分からないと思うが、冠とかそう言う細かい細工が施されているもんは売れないんだ。足がつくからな。だからこうやって足のつかない金貨をだな……」

「そう言うことじゃない! 盗難品を自分の懐に足そうとして恥ずかしいと思わないのか!」

「思わない」

「そうだろう思わないだろう……えっ!?」

「だってこれ悪魔貴族のヤツだもん。衣食住がいらないやつだし、正義の名の下だし、別に思わない」

 

 

流石はゲスマだなんて思っていると隣のクリスが何度もうんうんと頷いていた。

ダクネスがそれを見て信じられないようなものを見ていましたが、正直エリス教ならこれくらい悪魔に対する考え方が雑な気がします(ド偏見)

 




いよいよ13巻に突入か!
もちろんヒロインは主人公ちゃんと同じ屋根を共にするウィズ!
一体どんな生活をしているのか、ウィズ魔道具店の店員ごとに密着していく。

次回、ドラゴンの肉の調理法
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。