ドラゴン肉をおいしく調理して、ゼーレシルトの鎧(ペンギン)を強化してみた。
そんなときに大きな揺れ、そして宝島が出現したのであった……
<カズマ>
「着たか……宝島」
「……宝島って何だよ。って早っ!? アクアはともかく、ドラゴンステーキの虜になっていた魔道具店の連中が脇目も振らず走って行ったぞ」
「何を馬鹿なことを言ってるんですか、宝島は宝島です! 別名玄武とか言ったりしますがそんなことはどうでもいいのです! 私の後に続くがいい!」
アクアだけならいざ知らず、ウィズにバニル……ついにはめぐみんまでおかしくなっちまった!
ここに残っているのはペンギンとダクネス、それから邪神二人だけだ。
取り残された俺はただ呆然としていた、そのとき、解説役が口を開く。
「宝島……この近辺には地中深くに、宝石や稀少な鉱石を甲羅にたくさん付けた大亀が数十年に一度、日光浴をするために地上へと姿を現す巨大な亀がいるらしいけれど、それのことかしら?」
「巨大な亀? もしかして玄武とか言ったりするやつか?」
「さすが博識だのう。苔やキノコ、害虫などを日干しするために姿を見せる……別名玄武とか言うらしい」
「つーことは……どうせあれだろ、こいつの他にも白い虎だとか青いドラゴンがいて、こいつらは四方の方角を守ってる超大物賞金首モンスターとかそんなとこだろ」
「そうそう。実はこの前のことだけれど、使徒ちゃんが白虎のジーク……あ、ヴォルフガング・ジークヴァルトって名前らしいんだけど、その子の乳母やってたわ」
「それはもう立派に育ちおって……某が自慢の子だ」
いよいよナナシの種族が人間とか神様とか、そんな程度の次元で収まらなくなってきたな。
何だよ乳母って!
人間が人間の赤ん坊にってならわかるが、虎に何やってんだよ!
「ああ、乳母っていってもね、赤ちゃんのうちに自分で作れない神気を分けあたえるだけだから、アナタが想像してるのとは多分違うわよ?」
「へー」
「ちなみにこの前川に放流したリバイアサンの海龍王メルビレイとも友達になりおって……最近二人で一緒に遊びすぎて被害があって、懸賞金が二人で5億らしい」
「飼い主だろ! 何やってんだお前!」
「いや、瑞獣は戦乱のない平穏な時代にのみ現れるというだろう? それなのに、まったく、とんだやんちゃさんに育っちおって……誰に似たのやら」
「あんただろ」
「これでは四神獣をコンプリートし、店の風水を上手いこと調節できないではないか……」
そのうち、ナナシが麒麟とか鳳凰とか、その辺連れてテイムするのも時間の問題な気がしてきた。
しかもその用途はウィズ魔道具店の商売繁盛のため。
風水とかなんとか言ってるが、きっとその愛らしい見た目をしている獣をウィズと戯れさせて、余計な仕事をしないようにする算段だろう。
まあ見た目と裏腹に凶暴そうだが。
****
ナナシが赤字を出すことに定評のある魔道具店店主とその愉快な仲間たちを追いかけだしたので俺も一緒について行く……
何だかんだコイツは俺よりも幸運値が高いし、一緒にいたらいいことが起こるに違いない……という考えでだ。
それにしても悪魔の公爵と不死者の王がツルハシ片手に肉体労働に勤しむとか、この世界は本当に世知辛い。
そんなこと思いつつ街を囲む壁を越えてみたんだが……
「なあナナシさん?」
「どうしたカズマ。某は店の経営を支えるために一切協力はできないぞ?」
「いやそうじゃなくて、よくこんなの見て、みんな平然としてんな」
「この世界じゃそう珍しいことでもない。クーロンズヒュドラのたかが十数倍の体躯で恐れるものは冒険者にあらず。さあ、コロナタイトにオリハルコン、緋緋色金に猩々緋鉱石等々の特大バーゲンセールに勝ちへ行こう!」
冒険者がロッククライミングの感覚で岩肌をよじ登っている中、ナナシは胴体を壺に突っ込み、ツルハシを岩肌に突き立てながらものすごい勢いで一番てっぺんまで登り切った。
ツルハシで打ち付けながら登っていたせいで一部欠片がゴロゴロと地面の方に落ちてくるが、ほかの冒険者はラッキーと言わんばかりに破片をキャッチしてリュックに詰める。
そしてしばらくすると……
「『エクスプロージョン』ッ!!」
「おい頭のおかしい爆裂娘! 何やってんだ!」
「ち、違います私じゃありませんから落ち着いてくださいダスト! 流石にあの巨体に爆裂しようだなんて思いませんし、何よりピンピンしてますから! ほら!」
「『エクスプロージョン』ッ!!」
「オイィィ!! 爆裂魔法に狂った紅魔族!!」
「おい! 爆裂魔法イコール私だという確固たる地位を築けたのはうれしく思いますが、何でもかんでも爆発したら私のせいと決めつけるのはやめてもらおうか!」
「モジモジハァハァ興奮しながら詠唱してても説得力ないぞー」
爆裂魔法にしては少々小規模な気がするが、ダストに爆裂のたびに怒られるめぐみんが詠唱を始めた。
それを発見した俺はすかさずドレインタッチをお見舞いしてやった。
「ホァアアァア!? ちょ、何ですか! 公衆の面前でいきなり魔力抜かれるとか想定外です!」
「馬鹿お前バカ! 今のおまえが爆裂したら亀の甲羅に穴開くことになるだろ!」
「いいじゃないですか! いずれ四神獣スレイヤーの称号はほしかったのです!」
「こんな巨大なんだから一撃で葬れるわけないだろうが! この巨体相手に喧嘩売ろうってか? 死んだら恨んでやる!」
「ふふっ、死ぬときは……一緒ですよ?」
「ロマンチックな台詞に聞こえなくもないが、つまり死なば諸共じゃねえか!」
「いひゃい! いひゃいれすぅ!」
めぐみんのほっぺを抓っている間にもどんどん爆発音が聞こえてくる。
それこそ俺の世界にあったダイナマイトでの採掘事業みたいな……はっ!?
そこで俺は自分の懐にある秘密兵器を見て閃いた。
しかし喧しい声が聞こえてくる。
「ちょっとそこの二人ー! 何イチャついてるのかしらー! 暇してるんだったら私が掘った宝石ちゃんたちを下まで運んでくれなーい?」
「い、いちゃついてねーし! それにこれから俺はダイナマイトもどきででっかいの掘り当てる予定が立ったから手伝えないわー!」
「フハハハハハハ! ほとんど奇妙な形、奇抜な色合いをした無価値鉱石しか採取していない貧乏神よ! 我が輩はその爆発で散らばった高価な金剛石のお零れをもらうからして、さっさとその場から立ち去るがよい!」
「ガルルルルッッ!」
狂犬女神と化したアクアがバニルに噛みつかんばかりの威嚇をしているが、バニルが俺のそばに待機しているってことは、俺が爆破させる場所は当たりの場所ってことだ。
アクアは無視して常備しているダイナマイトに着火。
人がいない、適当な場所に投げ入れると盛大な音とともに爆発。
キラキラと大きな粒状に散らばっていくダイアモンドを採取しようとして……
そこから鉱石に擬態していたモンスターがうようよと出てきた。
「ヒィヤアアアァア!? 何あれ集合体恐怖症になりそうなんだが!?」
「フハハハハ! あれは鉱石モドキであるな! いい種類の鉱石が集まっているところにほど多くいると聞くが、まさかこれほどとは!」
「そういうのは最初にいってくれませんかね!? タコみたいなウネウネしてるのが急に出てくるとSAN値ピンチになるんで!」
「悪感情美味美味! 鉱石だけでなく悪感情まで大盤振る舞いしてくれた小僧にはサービスしてやろう。バニル式破壊光線! バニル式破壊光線! そしてバニル式破壊光線!! フハハハハハ! 爽・快であるっ!」
バニルがいくつレパートリーがあるのかわからないなんちゃら光線を鉱石モドキの方へ照射すると、爆裂四散していくタコども。
無双している大悪魔に恐れをなしたのか、鉱石モドキは周囲にいる冒険者たちに照準を合わせ攻撃をし始めた。
そしてその鉱石モドキに襲われている冒険者を助け……る様子もなく、バニルはダイアモンドの原石をせっせと袋へと詰め込み高笑いしていた。
「フハハハ黒字も黒字! これで我が店の大赤字も帳消しである! ……帳消し、なのかこれでも……」
「かわいそう」
「だがしかし! ナナシが稼いだ分を合算すれば……すれば今月分の利益分が……」
「ああああ安心してくださいバニルさん。私が一肌脱いで身売すればなんとか……なんとか従業員分の給料はまかなえますから……だからまずはあの冒険者たちを助けないと……助け……助けてください……」
高笑いが虚しい空笑いに変化したのはすぐのことだった。
情緒の高低差が激しい悪魔の背中をぽんと優しく叩き、今度お店の商品を何か買ってやろうと思ったが、ナナシが面倒見てくれそうだし俺は何もしないことにした。
それと冒険者を助けようとしていた健気な店主が助けを求めている。
身売りするような事態になりそうならきっとナナシが助け船をいつものようにだしてくれるだろうに、どうしてこの二人はこんなにも必死になってるんだろうか。
罪悪感とか、この悪魔にあるはずもないだろうに。
「経営のケの字も知らない頭晴れやか店主! 今月はここ以外黒字になるポイントがないのだ! リッチーの体を素材として提供するなどというくだらない考えは後にして集中するがいい! バニル式破壊光線!」
「わか、わかりましたから破壊光線を私の方に撃とうとしないでください! ライトオブセイバー!」
手軽に大魔法を放つウィズに当たると爆裂する、当たらなくても爆発する光線を放ちまくるバニルの側にいたら命がいくつあっても足りないな……
俺は狩り場を改めて、頂上付近に行ってみようと思ったのだが、よく考えてみればナナシがダイナマイトか爆発魔法か知らないが、高火力でぶっ放しまくってるし、俺はすでにある程度遊んで暮らせる金は持ってるし……
よし、帰るか。
目の前ではアクアとバニルがウィズを盾にしつつ鉱石の奪い合い戦争が勃発していたが気にしない。
俺は頂上で鳴り響く爆裂音と「コロナタイト獲ったどーっ!!」なんていうナナシっぽい声も気にしない。
ただ、アクアからもらったギューギューになったリュックを下ろしに戻るのであった。
たぶんこんな始まり方する次回
新聞を読んで優雅なコーヒートーストセットで朝を満喫してたカズマだったがどうにも庭先が騒がしい。
めぐみんとアクアがナナシに倣って家庭菜園を始めようというのだが、なぜ最初に植えるのがサンマなんだろう……