私の中二心を『エクスプロージョン』ッッ!!   作:桃玉

111 / 162
前回のあらすじ

宝島が来た!
カズマは儲けた。それはもう、ウハウハだそうだ。
ウィズ魔道具店は赤字を埋めることに成功した。が、将来を見据えるとプラマイゼロ。
アクアは珍しい形の石を探すのに夢中になり、後ろから忍び寄る怪しい一級解体士の匠に気づかなかった。富を失い大敗北した。


家庭菜園をしてたので肥料を分けに行ってみた

<カズマ>

 

「カズマさん出番よ! ちょー凄い力を振るってほしいの!」

 

 

そう言ってアクアは、家でぐーたらするのに忙しかった俺の腕を引っ張ってきた。

俺、今ものすんごい頼りにされてる!

悪くない、悪くないぞこの扱い!

何だかよくわからんが日頃眠っている俺が力を振るってやるぜ!

 

そう思ってアクアに引っ張られていく先は屋敷の庭。

そこには成長期で体がすくすくと大きくなっていくちょむすけ、対照的にちっとも大きくならないゼル帝、この二匹が仲よさそうに日向ぼっこしていた。

以前はひよこの神聖な魔力にビビってた黒毛玉だが、最近では警戒心を解き仲良くなったようだ、微笑ましい。

 

しっかし、保有する魔力が多いと成長がゆっくりだとかいっていたが、それにしてもこのひよこはゆっくりだ。

いつまでたっても食べ時にならない。

 

魔力が多いといえばウチのアークウィザードとその師匠も。

めぐみんに関してはしらないが、ナナシはアイリスと同じくらいの見た目しておいて三十路だって誰かが言ってた気がする。

ワンチャンあの二人の発育についても魔力が多いせいなのかもしれない。

庭先で土いじりをしているめぐみんを発見して、そう思ってた方が夢があるし、そう思うことにした。

 

 

「む、なんですかカズマ。今とてつもなく邪なオーラを感じ取ったのですが」

「いや、その年になって土遊びするなんて子供っぽい面もあるんだなーって思っただけだ」

「はぁ、これだからド素人は。見えないのですか、この匠の手によって完成された良質な畑が。おいしくて元気で新鮮な野菜が食べ放題なのに……」

 

 

おおっと、なぜかため息をつかれたんだが?

俺の力がほしいってアクアに頼まれてきたのに何という仕打ちなだろう。

後でクリエイト・ウォーターとクリレイト・アースのドロドロコンボをお見舞いしてやろうか。

そんなことを思っていると。

 

 

「駄目よめぐみん! ここにいるのは栄養たっぷりの土を出してくれる大先生、カズマよ! おだてて土を恵んでもらうの!」

「おい、もしかして俺を呼んだのって、クリエイト・ウォーターとクリエイト・アースさせて畑作ろうって、そう言ってるのか」

「カズマさんは土だけでいいわ! 水なら水の女神であるこの私に任せて!」

「いえ、そんな必要はありません。アクアがやると土が抉れそうなほどの勢いでジェット噴射する未来しか見えないので。それに二人の力を借りずとも、私は農業のプロです。加えてサムイドーの名産品である野菜を大量生産することに尽力した功労者をお呼びしてるので。というわけで大・大・大せんせーっ! お願いします」

「まったく、神使いが荒い信者だ」

「お、おじゃまします……」

 

 

めぐみんのかけ声に応じて転移してきたのはもちろんナナシさん。

何故か後ろの方にゆんゆんが隠れているのは気になる。

 

それはそれとして我が家はめっちゃくちゃサムイドーのお野菜にお世話になってます。

今後とも安いうまい農産物の生産、よろしくお願いします農業の神様。

 

 

「それではよろしくお願いします」

「うむ、では手始めにサーチアンドデストロイだ……ゆんゆん、泥沼魔法を」

「は、はい!  ボトムレス・スワンプ!」

「うむ、上出来だ。では始めていこうとしようか……バギクロスッ!」

 

 

二人が呪文を唱えると土が泥のように軟化し、その中で激しい渦が形成される。

……いろいろ突っ込みたいところがあるな。

まず、農業で上級魔法使うのかよ!

それと、他作品の真空刃魔法使えるんなら俺も使いたい!

教えてほしいんですが!

 

 

「クハハハ! 破壊の限りを尽くすのは高ぶるのう!」

「……農業なんだよな? いきなり物騒な言葉と上級魔法が飛び出したぞおい」

「何が物騒かはわかりませんが、これは土の中に潜む余計な石や害虫を完膚なきまでに粉砕しつつ、土に魔力を送ることで縄張りと、野菜のほどよい成長を促す作用を狙ってるんですよ。まあ私の場合はエクスプロージョンで終わりますが、流石にこの畑の小ささでは無用の長物です」

 

 

……ほんとこの世界嫌い。

大規模農業で畑に爆裂魔法を叩き込むなんて魔法を無駄遣いしてる気がしてならない。

焼き畑とかそんな次元じゃないだろ。

 

 

「クリエイト・アース・フヨード」

「おおっ! 農業に適した土がドババって出てくる!」

「これはクリエイト・アースをより農業特化させるべく開発してた魔法ですか!? まさか微生物を含む土を完全に再現する魔法を完成させていたとは……」

 

 

単純に腐葉土を出してるのかと思ったんだが、めぐみんの解説を聞くと考えが一変するな。

無から生物を生成するみたいな、神のみに許された創造魔法って感じに聞こえる。

が、この魔法を習得するより森に行って天然の腐葉土を採取してきた方が早い気がする。

 

 

「最後にコントロール・ウェザー」

「……こんな畑の範囲だけにピンポイントで雨が降ることある?」

「あるわよ? 水の精霊と仲良くなるとお願いしただけで勝手に水まきしてくれるし」

 

 

ナナシが土を真空刃で耕していると土全体がしっとりとして、微生物好みそうな土壌が完成した。

ふっかふかで均一な土壌だ。

魔法ってすげー。

 

そんなこと思っていたら、一つ。

……なんかうちのパーティーって農業に向いてる気がしてきた。

農地開発担当のめぐみん。

土壌改善担当の俺。

天候操作担当のアクア。

肉体労働担当のダクネス。

役割が被るところはあるかもしれんが、魔王が何とかなって人が使える土地が広がったら大規模農園を経営してもいいかもしれないな。

そんなこと思っているとアクアが気になることを言い出した。

 

 

「あと、たまにだけど内職で「爆裂特攻てるてるめぐみん」と「逆さ吊りてるてるあくあ」作ってるのよ?」

「なんだそのてるてる」

「てるてるあくあを逆さ吊して、てるてるめぐみんをつけて持ち歩くと自分のところだけ晴れるのだ。毎度ウィズ魔道具店に下ろして頂き、助かっております」

「いいのよいいのよ! 詳細まで完璧に再現された私とめぐみんの偉功の宣伝にってことでこれからもよろしくね?」

「なんだそのてるてる、後で買いに行くわ」

 

 

雨を降らせて、自分の周りだけが降らないって……

迷惑極まりない魔道具だが、晴れ男っていうのを一回体験してみたいって思った。

それから詳細まで完璧っていうからにはどの程度再現されているかが気になっただけで、パンツを脱がせられる可能性があるとかに惹かれたわけじゃない。

 

 

「では店に置いてある在庫のうち二つは取り置きしておこう」

「よろしくお願いしますナナシさん」

「では役目を終えた某は帰ろう……と言いたいところなのだが」

「何だよ、ゆっくりしていけばいいのに……と言いたかったけど何か嫌な予感がするからお帰りくださいどうぞ?」

「いや何、大した用ではない。それに用があるのはこっちだ」

 

 

そう言ってナナシが視線をやる方にいたのはゆんゆん。

珍しくナナシと一緒に登場したのはそう言う訳だったのか。

というか、用があるのなら普通に来てくれればいいのに。

そう思ってゆんゆんの話を聞くと、族長試練が紅魔の里で行われるらしい。

その試練では相方と二人で一緒に受けなければ……あっ。

 

 

「ゆんゆん……」

「ど、どうしたんですかカズマさん、私の肩に手を置いたりして……」

「辛かったよな、苦しかったよな。大丈夫だ、俺たちはゆんゆんの味方だ」

「な、なんでいきなりそんなこと言うんですか!? そ、それだと私、味方が誰もいない悲しい人扱いされてるみたいじゃないですか!」

「事実、アナタにはサボテンという植物友達一体しかいないじゃないですか」

「流石に植物の友達はもっといるわよ! この前はナナシ先生の紹介でロックなお花ちゃんとお友達になってね、私が歌うとくねくね動いて褒めてくれるの」

 

 

どうやら植物の友達がいるらしい。

きっと友人が少なすぎて心が荒んでいた時期が長かったことによる弊害だろう。

後でこの昨日おとといら余ったドラゴン肉のステーキでもてなしてあげよう。

 

 

「そんな与太話はどうだっていいんですよ。人間の……いえ、せめて意思疎通できる動物の友達はいないんですか!」

「こ、この前学園で飼育することになった黒いドラゴン……ドラちゃんってお名前なんだけど、一緒に戦ったり、私のことをおんぶしてくれる、そんな仲よ」

 

 

よし、ドラゴンの肉はやめておこう。

それと真っ先に意思疎通できる友達って聞かれて人外……それも人の形をしてないヤツが例に挙がってきたぼっちちゃんには人間の友達を紹介してやらないと。

それがドラゴン肉のステーキに代わればいいんだが。

 

 

「つまり、私とカズマのような仲というわけですか。ではそのドラちゃんとかいう安直な名前のお友達と一緒に参加してくださいよ」

「そう言われるとちょっと違うのよ! 面白そうだけど、流石に人間じゃないと駄目だって言われて……」

「では人間の友人は? 友人でなくても意思疎通はできるでしょう?」

「い、意思疎通できない人間なら勝手につきまとってくるというか、行きつけのお店に大体いるっていうか……」

「ではその人と一緒に行けばいいではないですか」

「『バインバインの紅魔族チャンネーを紹介するってなら受けてやるが……』だなんて最低なこと言われて……」

「それでも頼れる人がおらず、唸っておる所を某が見つけてのう。流石にあの真の通った外道と某の生徒を共にさせるわけにはいかぬ。思わず手が出てしまったのはご愛敬だ」

 

 

ナナシを怒らせるなんて、ソイツは相当な碌でなしだ。

そいつを除いてゆんゆんの知り合いとなれば……声をかけやすい冒険者は誰かって言ったらうちらになるって訳か。

……いやまて、まだ残ってるじゃないか。

 

 

「どうして俺たちのところに来たんだよ? そのまんまナナシとゆんゆんとで試練を受ければ……」

「いやはや、それはできかねる。某、試練の最終審査担当故に」

「と、という訳なので、その、カズマさん! 私と一緒に紅魔の里の試練を……痛い痛い!」

「何ですか! そこは私に頼むところでしょうにアナタという人は! 紅魔の試練は紅魔族二人がいれば事足りるのでしょう、となれば最弱職であるカズマより私が優先されるべきです!」

「ぶっちゃけるとめぐみんについてこられても迷惑なんだけど」

「なにおう! 爆裂魔法という最高火力が不要というのですか!」

「不要よ! 何より撃ったら動かない的になるじゃない! ただの足手まといになるじゃない!」

「そんなこと言って、私はレベル40台のアークウィザードですよ! 魔力を纏うことで岩をも粉砕する我が戦闘力を見るがいい! モンスターごときこの愛杖で撲殺です! という訳で留守番は頼みましたよ?」

「ね、ねえ。どうしてめぐみんが一緒に来るの? 私、ところ構わず爆裂してるあなたを常日頃見てるからわかるの。絶対我慢できないで漏らすって。だからカズマさんかダクネスさんに来てほ……ちょっといくら何でも力強すぎじゃな」

 

 

ゆんゆんが何か言いかけていたが、そんなことお構いなしにナナシが背後に禍々しい転移門を開き、そこにめぐみんがゆんゆんを担ぎ上げ、放り込む。

最後まで言葉を言い切る前に門の中に吸い込まれていった。

 

 

「では、留守番は頼みました」

「お、おう」

「邪魔したの。では」

 

 

そう言って二人も門の中に入っていく。

せっかく俺の出番かと思いきや、全然そんなことなくて、いろいろ残念に思いながら、俺は畑の管理をアクアとダクネスに押しつける算段を練るのであった。




次回

ストーカーとリッチーと主人公ちゃん

※お気づきかと思いますが、恋愛イチャイチャシーンは全カットするのが本作です。
 単純に主人公ちゃんの出番がなくて何一つ原作と話が変わらないせい。
 主人公ちゃんが絡んでも原作と流れが似ているのは……世界の強制力が働いてるせいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。