ゼル帝とちょむすけが日向ぼっこしてる傍らで、めぐみんたちの紅魔族流農業が始動。
そのついでにゆんゆんとめぐみんが紅魔の里の試練を受けに行った。
<カズマ>
めぐみんがゆんゆんと一緒に紅魔の里の試練を受けている間、俺たち三人は趣味と実益を兼ねてジャイアントトードを相手取っていた。
別に俺のことが新聞に載ってて「最強の最弱職」とか書かれてたことでニンマリして機嫌がよかったからとかではない。
そう、調子に乗ってるわけじゃなかったはずなんだ。
なのにどうして俺とアクアは粘液まみれで帰宅する羽目になったんだろう。
「ううっ……うっ……グズっ……もうカエルはこりごりだわ。……痛い! このドアまでも女神である私に楯突くというの!? 今ここで女神の天敵と認定しようかしら」
「静電気か。不幸に不幸が重なるってのはあるし、こりごりなのは俺も同意だが、神の天敵って……カエルとドアに負けを認めて、お前のプライドはそれでいいのかよ」
「わ、私は二人が羨まし可哀想なので、今度は金属鎧を脱いで薄手で次からは対峙しよう! そ、それと仲間というのは痛みを分かち合うものらしい。その静電気とやらの代わりにライトニングのような魔法を是非私に……」
「今羨ましいって言いかけたろ。ドMはダマットレ!」
「い、言ってにゃい……///」
顔を紅潮させ息を荒げているアホに、疲れたのならヒールでもかけてあげましょうかと心配するバカ。
俺は一先ず浴槽を洗い、お湯を貯め始める。
大体10分くらいだったのだが、居間に戻ってくるとまだ二人が似たようなやりとりをしていた。
「何やってんだよアクア。こんな変態は置いといて、お湯沸かしてやるからとっとと入れよ。俺はその後でいいからさ」
「……カズマさんがダイナマイトでジャイアントトードを呼び寄せたせいでこうなったのに優しくされると許せちゃうのが悔しいの……」
「くぅ……アクアと対照的に厳しい扱い……ハァハァ……もっと、もっとだ!」
そんなこんなで一番湯はアクア、次に俺の順で、ジャイアントトードに捕食され、荒んだ心をシャワーの水で洗い流す。
俺がひとっ風呂終わり、髪をわしゃわしゃ拭きながら居間に戻ると……
そこにはめぐみんが気だるげながらも慌てた様子でいた。
何か知らんがいつの間に紅魔の里の試練から帰還したらしい。
「試練はうまくいったのか」と聞いたんだが、話を濁して「取りあえず終わりました」の一点張りだった。
……絶対爆裂魔法ぶっ放して途中でリタイアしたろコイツ。
「そんな話はどうでもいいのです! 緊急事態発生です!」
「あれか、お前のせいでゆんゆんが族長の座に座る資格が剥奪されたとか……」
「そんなどうでもいいことじゃありません! それに試練は3回は挑戦のチャンスがありますから今回はだめでも次回がありますので大丈夫ですとも!」
「今回は駄目だったんだな」
「おい、その話は私の中では終わったことになっているので余計な口を挟まないでもらおうか!」
「じゃあ何が緊急事態だって言うんだよ」
「師匠がストーカー被害に遭っていると……!」
「はい、かいさーん」
「勝手に解散しないでください! 一大事ですよこれは!」
んなこと言ったて……あのナナシだぞ?
ストーカがナナシに害をなそうとしたその瞬間に手加減という名のお遊び……
ゲフンゲフン、おちょくりつつぼこす……
もう何でもいいけど、とにかく逆に喜びそうなもんだ。
ダクネスも然り。
何も問題ないじゃないか。
「何耳を塞いで聞くまいという態度に徹してるんですか! あの師匠が『ストーカー』と言ったのですよ! 『這い寄る陰』とか『不埒なやつ』と言うのならまだわかりますが、はっきりと『ストーカー』と言うのは天変地異の前ぶれですよ!」
「いや、単にそういう気分だっただけじゃないのか?」
「いいえ、私の直感ではまた裏の人格が精神を汚染してきているのではと……」
やっぱ解散していいかな。
その話が本当だとして、俺はそんな厄介ごとに関わりたくなんかない。
それに、今思えばだが、たぶん裏の人格って演技の類いだろ。
ワンチャンナナシのことだから意図的に人格を増殖させてるとかあり得そうだが、俺は演技説を推していきたい。
カエル騒動が終わった後だから怠いし聞かなかったことにしようと思っているとアクアが何か気になることを言い始めた。
「あー、だから精霊がいつもより多いのね」
「うん? 一体どういうことだ?」
「あのねカズマ。精霊っていうのは人が想像したことで生まれた存在なの。ほら、雪の大精霊の冬将軍とか、土の大精霊のナイラトテップとか、風の精霊の台風とか春一番とか。聞いたことくらいあるでしょ?」
「うん、初耳」
「そんな精霊は私たち女神と似ているの。天界と地上、住まう場所こそ違うけれど、権現的なところは同じなの。憎たらしいことに地獄の連中もね。そして精霊の一部は八百万の神々として民間信仰の対象になって神格を得たり……」
「つまり?」
「神様の感情が精霊に伝わったりすると、その影響を受けた子たちが活性化していろんなことが起きやすくなるの。今周りにいるのは雷の精霊で、そうすると静電気とか起きやすくなるの」
そいつは何というか、地味に嫌だな。
そのストーカーが捕まるまではアクアにドアの開閉を頼まなくちゃならないってことか。
実にめんどくさい。
どうせナナシのことだし、勝手にドンパチして勝手に終了するんだろうが、やるなら手短にお願いしたいところだ。
「はぁ……しょうがねぇなぁ。魔道具店に行って相談くらいは乗ってやるか。相談の必要もなさそうだけどな」
****
「と言うわけでだ。ウィズがストーカー被害に遭っている。精霊に式を憑依させて監視中だが…………どうしよう。滅ぼそうか」
「いきなり物騒!?」
魔道具店の玄関を開けて、普段通りにしているナナシと恐怖で身を縮ませているウィズを見て、おやっと違和感を覚えつつ現在の状態を聞いていみたらなんか聞いてた話と大分違ってた。
めぐみんの方をジーっと見ようとすると目を泳がせ、終いには完全に俺の顔を見ないようにふいっと横を向いた。
確かに一大事といえば一大事だった。
が、さすがに早とちりしすぎだ。
どうして「ナナシが、ウィズがストーカー被害に遭っていると知って物騒なことを言っている」が「ナナシがストーカー被害に遭っている」に変換されるんだよ。
あれか、省略しすぎたってか?
「い、いいじゃないですか、本当に緊急事態だと思ったんですから!」
「でもウィズ魔道具店にはそうそうたるメンバーがいるだろ。神様と悪魔が二体ずつ。俺たちが余計な口挟んだ方がめんどくさいことになりそうなんだが?」
「なにおう! カズマは心配ではないのですか!?」
「うん」
「うん!?」
めぐみんが薄情者と言わんばかりに俺の胸を掴んで揺らしにかかる。
それを俺が何とか手で押しとどめようとしたその時。
一通の郵便が届いた。
ナナシが笑顔で郵便屋さんに対応していたが、事情を知った上であの笑顔を見ると背景の方に「ゴゴゴゴ……」とヒール感が漂う効果音が……
「な、ナナシさん? その、お手紙は、その……」
「どれ、読んでみるとするか……フンっ」ビリッ
「ちょーっ!? 今何で破り捨てた!?」
「このような目を通しただけで腐り落ちそうな呪物、見るに値しないと思い、つい」
「つい、じゃねえよ!」
「だが『明日、街の外の荒野で待つ』というクソ野郎の手紙だったし、問題なかろう」
「く、クソ野郎!?」
「ふふ……明日が楽しみだなぁ」
さ、殺気ましましじゃあないですかやだー。
めぐみんの言うとおり、今のナナシは正気じゃない。
つまり裏の人格が露わになってる気がする。
「ウィズ。明日、そいつの元に行くぞ」
「で、ですが……」
「何、恐るるに足らず。私が側についている。思いっきり蹴散らしにいくぞ」
「な、ナナシさん……!」
俺は恐れていた。
この笑顔の裏に隠された憤怒と殺気……人を殺める気だ!
ウィズと長い付き合いだって聞いてるが、普段の駄目っぷりが目立つ店主に対してこんなにも過保護になるなんて……。
次回
ストーカー、愛の告白。
固まる主人公ちゃん。
はたしてストーカーの運命は……!?