ウィズのストーカー現る。
そんな人の心を弄ぶストーカーに対して主人公ちゃんは怒り心頭。
一先ず保護者ポジションで合ってはみるが、いつちゃぶ台返しするのか。
<カズマ>
翌日、俺たちは事の行く末を見守るために潜伏スキルで隠れつつ、ウィズとナナシを見ていた。
二人が向かう先には一人の陰、ストーカー野郎だ。
ちなみに隠れている場所というのは肉眼で二人が点に見えるくらいの場所だ。
そこから俺が読唇術スキルと千里眼スキルを用いて会話を読み取り、何かあったら後ろで待機してる三人娘が暴れてストーカー野郎を追い払う手はずだ。
というわけで早速スキルを並列起動させる。
『長かった……。おまえのことを探し続け、この街で魔道具店などをやってると聞いたときには耳を疑ったよ。だが、こうして会えたのだ。遙かな遠方の地より長い時間をかけてきたかいがあったというものだ』
『そ、そんなに遠くから私のところに会いに来てくださったのですか……』
よし、問題なく使えてる。
一応ナナシに認識阻害の魔法とかその辺の魔法をかけないように頼んでおいてよかったぜ。
もし頼んでなかったらスキル使ってる気でいるだけで実は使えていないアホな集団になるとこだった。
そう思いつつ会話を聞いていると、横からアクアが。
「ねえカズマカズマ」
「カズマだよ?」
「一人で聞いてるなんてズルいじゃない、私たちに通訳してくれる手はずだったのに、これじゃ詰まらないわ!」
「ああ、そうだったな。一応俺の意訳になるが大丈夫か?」
「もちろん! なんならドラマチックちょうだい! 昼ドラ風でもいいわよ」
「な、なあアクア、そのひるどらというのは何だ? なんだか私の琴線に凄くくるんだが」
「……えっとだな、あのストーカー、ウィズに告るために遠くから来たって」
「まあ!」
「「!?!?」」
アクアが嬉しそうな声で次の展開に期待してる一方、めぐみんとダクネスは驚きのあまり顔面の筋肉を硬直させている。
そんな三人をよそに俺は意識をもう一度スキルに向け、展開を観察する。
『ここに呼び出した理由はわかっているだろう? 俺はお前のことだけを考えて体を鍛え続けてきた』
『い、いきなりそんなこと言われても……』
『落ち着けウィズ。我を保つんだ』
「なあカズマ」
「カズマです」
「ウィズの顔が赤くなってナナシに宥められているが一体何を言われたんだ?」
「お前のために強くなったって」
「「!?!?」」
「きゃーっ!! それでそれで! 一体どうなっちゃうのかしら!?」
アクアがめっちゃくちゃ他人事のテンションで三人の行く末を楽しんでいる一方、めぐみんとダクネスは顔を赤く染めて頭から煙をポッポさせていた。
確かに情熱的だが、まさかあのダクネスが色恋でここまで興奮するだなんて……
興奮するのはド変態な願望丸出しの時だけかと思ってた。
『それで、そこのガキはなんだ』
『……名を尋ねるならまずは己が名乗るのが道理だろう。道理を欠いたものに私の店長はくれてやるに値しないぞ』
『な、ナナシさん……』
「カズマカズマ!」
「はいカズマでs」
「一体、一体師匠は何を言ってるんですか! ウィズの顔が余計赤くなりましたよ!」
「ウィズは私のモノだ。渡せない……って」
「さ、三角関係だったの! あの向こう側の三人の間で泥沼が生じてるっていうの!? 最高じゃない!」
「「!?!?!?!」」
嘘は言っていない。
ナナシさんのキリリと引き締まってる凜々しいロリ顔をウィズが涙目で見ている。
アクアだけが相変わらず騒がしいが、残り2名は口をパクパクさせて鯉のマネをしているおかげでそこまで五月蠅さはない。
『失礼、確かに礼を欠いた。謝罪させてくれ』
『そ、そんな頭を上げてください! 私はほとんど同い年のナナシさんがガキ呼ばわりされたこと以外何も思ってませんから謝罪するならナナシさんに……』
『同い年?』
『なんじゃ、申したいことがあるなら遠慮なく申せ』
『……いや、ガキなどと言って悪かった。貴様からは膨大な魔力を感じる。見た目と中身は相応ではないのだろう。謝罪の意を』
「ねえカズマさん今度はなんて! あの男は今度はなんて言ったの!」
「子供扱いして悪かったな。お前は魔力を抱擁する立派な大人の女性だって」
「さいっこう!! カズマさん最高ーよ! まさかこの世界に来て本物の昼ドラを見られるなんて!!」
「う、嘘ですよね! 流石に嘘言ってませんか!? あんなにウィズのことをストーカーしておいて私の師匠が放つ魔性の力にはあらがえなかったとでも!?」
「そ、そうだぞ。大体あの手のものはカズマとは違って一筋と相場が決まっているのだ。ナナシに魅力がないとはいわないが……流石に嘘だろう?」
「大体あってる」
「「なあ……っ!?!?!?」」
何だかアクアまでもが頬を赤く染めはじめ、目を指で覆い、その指の隙間からチラチラと向こう側の二人を見ていた。
……なんか結構離れてるはずなのにこっちが騒がしくしすぎたせいでばれそうなの怖い。
『俺の名はデューク。得意とする魔法は炎だ。人間だった頃氷の魔女と恐れられたお前との相性とは、正反対だな』
『わ、私のことをそこまで調べたんですか!? わ、忘れてください、それは私が若かったときの一時の気の迷いといいますか黒歴史といいますか……! というか私が人間じゃないことをどうして知って!?』
『ふふふ、お前の事は何だって知っている。いわば、俺はこの世で最もお前のことを理解しているものだと言っても過言ではない!』
『ええ~~っ!?』
俺は思わず口をあんぐり開ける。
まさかとは思っていたがそこまで調査済みとは……
自信過剰に見えるが、逆に頼りがいのある男だということをアピールしたいのだろうか。
そう思っているとナナシが。
『……何を言うのだろうと思うておれば、馬鹿が』
『馬鹿とは失礼な。こちらは本気だ』
『私は心の準備ができていないのですがっ!?』
『それに俺は名を名乗り、自己紹介をした。次は貴様の番だろう!』
『……それもそうか。某はナナシと呼ばれておるが……何を以て自分という存在を説明すればよいか。ウィズ魔道具店店長代理人……いや、敢えてこう言おう魔王側近が一人、ナナーシャとな』
……正直驚かないぞ。
ナナシがいつの間に魔王軍の中枢に潜り込んで荒らしまくってたとしてもそれは普通のことだ。
この前ウォルバクさんとの戦いの時だって魔王軍の幹部だったお姉さんの使徒になって、実質的な幹部直属の部下になってたし、俺はいつかナナシはやらかすって知ってた。
まあ、俺たちに害がないから放っておこう。
『ほう、貴様が噂の……。しかしそのような者であっても俺を馬鹿呼ばわりするのは違うのではないか』
『いいや、何も違わぬ。馬鹿を馬鹿と呼んで何が悪い』
『俺が……馬鹿だと?』
『ああ、愚かな間違いを訂正させてもらおう……ウィズのことを一番よく知っているのはお前じゃあない。私の方が本気でウィズのことを考えて日々を過ごしている!』
『ええっ!?』
「カズマカズマ、さっきから黙ってちゃ昼ドラの展開がわからないじゃない! しっかりしっかり!」
「ああ、えっと……デュークって言うらしいんだが、俺はウィズのことをこの世界の誰よりも知ってるって」
「それでそれで! 今さっきはのじゃロリちゃんがなんて言ったの! ウィズ顔を赤くしてるんですけど!」
「……ウィズのことを世界一知ってるのは自分だ。もうすでにウィズと私とでできてるから邪魔しないでくれって」
「な、なんて大胆な! 本当に、本当にそういう展開になってるの!?」
「大体あってる」
強いていえば、ナナシがウィズの保護者ポジみたいな振る舞いしてるってことか。
ウィズは真っ赤に顔を染めているが。
そんな中騒がしく聞こえてくるのはアクアの声だけで二人の声はほとんど聞こえてこない。
もうめぐみんとダクネスは息をしていないのではないか。
そんな嫌な静かさがあって向こうを見てると、しっかり息はあった。
代わりに「師匠は私の……今のはウィズをストーカーから守るだけの言葉だから大丈夫……!」とか「熱烈な愛の告白合戦……! 甘酸っぱすぎて見てられないっ!」とか言ってもだえ苦しんでいた。
『体温の状態や食事の好み、朝が弱いこと、お風呂の時間、お気に入りのポーションの仕入れ先……そう言う家庭を築く上での重要な情報をお前は知っておるのか!』
『うっ……た、確かにそれは知らないが…………私の敗北って訳か』
『知らなくていいんですよそんな情報! 私の完全なプライバシーじゃないですか! そこまで知ってたら逆に怖いです! 敗北も何もありませんから!』
『だが俺だってまだ負けていない。ウィズ、貴様に勝負を申し込む!』
『ええっ! 唐突な敵意!? いきなりどうしちゃったんですか!』
『どうしただって? 決まっている! ナナシに勝てずとも、お前に俺の力を示し、今の仕事を辞めてもらうためだ!』
『ええ~~~っっ!?!?!?』
『ウィズを困らすでない、殺されたいのか。ウィズを堕としたいというのならまずは私が相手になってやろう』
『別にお前を倒してしまって、それでお前に仕事を辞めてもらってもいいんだ。だが俺は今の今までウィズのことだけを考えて行動してきた! 悪いが今のところお前とことを構える気はない。が、どうしても退かないと言うのであれば相手になろう』
『ふ、二人とも私のために争わないでくださいぃ~!』
正直に言おう、ナナシはウィズのためっていうか、多分お店の存続を賭けて戦ってるだけで、自分のモノにしたい的な意味は一切ないと思う。
店長がいなくなったら店長代理を名乗ってたナナシが代わりになるだろうが、あの店を別に続けようとかは思ってないはずだし、決して今のところラブコメ的展開「魅力的な二人が自分を巡って取り合う」になってるわけじゃない。
合っているのは二人が自分を巡って取り合うって部分だけだ。
「カズマさん!」
「はいはい、翻訳機カズマだよ。……えっとだな。ナナシが俺の方が愛してるって。でもデュークはまだ負けてはいない! ウィズを口説き落として駆け落ちする気だ。しかも仕事を辞めて家庭に入れって……」
「ま、まさかこれが修羅場って言うやつね!」
「そんで、デュークはナナシにも仕事を辞めてもらう覚悟があるって」
「ま、まさかの二人一気に娶る気なのかしら!? 日本じゃあり得ない解決手段ね!?」
「いや、でもウィズ一筋だから諦めろって言ってるわ」
「すごい精神力ね……愛情をくれる人が2人もいて、ウィズはどっちを選ぶのかしら!?」
アクアがめちゃくちゃ興奮している。
後で聞いた話だが、天界で暇してるときには大体おやつのポテチを貪りながら昼ドラを眺めることがあったらしく、日本の面白い作品の一つをリアルに見れて満足……ということらしい。
いくらウィズがアンデッドだからって、流石にどう転んでも最終的に浄化すれば万事解決みたいな精神でいるのはどうかと思うぞ?
そんなこと思っていると、静かだった二人の方が騒がしくなり、それで何かめぐみんがブツブツ喋っているのをダクネスが止めようとしていた。
「黒より黒く闇より暗き漆黒に我が真紅の混淆を望みたもう覚醒の時来たれり無謬の境界に落ちし理無業の歪みとなりて現出せ……」
「お、おい落ち着けめぐみん! 別にナナシはフラれたわけじゃないだろう?」
「紅魔族たるもの、侮辱されればそれを晴らさねばいけないのです! それとリア充など爆発すればいいのです! 滅びよ、顕現せよ! 『エクスプロージョン』ッッ!!」
「め、めぐみん、三人とも巻き込まれるからやめろー!」
ダクネスがなぜか必死になって止めようとしてたが、それはむなしく失敗に終わった。
きたねぇ花火だ……
俺は止めようとも思わなかったが、めぐみんの爆裂魔法が発動する瞬間、「こ、心の準備をさせてください~~っ!」と叫ぶウィズを引き連れてナナシがテレポートしてるのを見たくらいか。
煙が晴れるとそこには誰もいなかった。
あのストーカーがどうなったのかは誰も知らない。
次回
魔王側近の畑仕事Part2
デュークを見定めに行ったカズマたちが家に帰ってきた。
そこにいたのは不法侵入していた魔王側近。
めぐみんに「人格ある植物の育て方は専門外なので頼みたいのですが」と言われてやってきたそうな。