私の中二心を『エクスプロージョン』ッッ!!   作:桃玉

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前回のあらすじ

ストーカー、愛の告白。
ウィズだけじゃなく自分も攻略対象範囲にいると知り固まる主人公ちゃん。
そんなときに打ち込まれる爆裂魔法。
はたしてストーカーの運命は……!?


成長促進させたので畑の野菜を収穫してみた

<主人公ちゃん>

 

「おかりー。帰ってきて早々悪いんだが水やりの手伝いを頼めるか? そこにあるスクスクジョイロで向こうの方から」

「ただまー……じゃねぇんだよ。なんで俺の家に何食わぬ顔で農作業してんだよナナシさん」

 

 

デュークを見定めに行ったカズマさんが家に帰ってきました。

私がここにいるのがとても不思議がっている様子ですが、別に何というわけではありません。

毎日コツコツとお邪魔させてもらって早1週間。

畑のメンテナンスやら植物の正しいマッサージ方法をめぐみんとともに行っていただけなのです。

そう、これが愛を育むってやつなのでしょう。

 

私はデュークとかいう勘違いさせ男のことを頭からなくしてストレス解消するために畑仕事と何です。

普段は世界の最果てにある最も深いダンジョンでウィズと一緒にお茶会とかするのが癒やしなんですが、店の中はすでに惚気なオーラで満たされて、ダンジョンに誘う相手がそんな状態なので、仕方なくなんです。

 

 

「ねえねえのじゃロリちゃん。このデッドスクリーム・ブラッディーマリー4世にはどのくらいお水をやればいいのかしら」

「アクア様、水やりよりこちらの土いじりしないか? 蚯蚓と土竜の戦闘でも観察するといい」

「いやちょっと待って? なんだか私の目にはこのミミズとモグラって呼称した二体がジャイアントサンドワームとアースドラゴンに見えるんですけど」

「それが成長促進剤配合水、スクスクジョイロの効果じゃ。与えすぎるとでっかくなりすぎる。こんな感じで」

「ちょおおおおっと待って! 本当に待って! この二体が普通にいるってことはもしかして屋敷の庭の下にこんな巨大生物がめっちゃいるっとことか!? ジャイアントの宝庫になってるのか!?」

 

 

カズマくんが何かワーワー言ってますけど私の耳には残念ながら何も届きません。

なぜなら都合が悪いから!

 

 

「ししょー、我が使い魔にもその成長促進剤をかけてみてくれませんか? きっと猛々しい漆黒の魔獣になるので是非お願いしたいのですが……」

「いや、魔獣の代わりに巨乳のお姉さんが出てくるから却下だ」

「どういうことですか!?」

「そうだよどういうことだよ! やっぱり俺の予想が当たってたってことか! いつもかいがいしく世話してたら猫耳のメイドになってばけて出てきてくれるのか! そんで俺のことを太ももの上にうつ伏せで寝転ばせて褒めて甘やかしてくれるそんなお姉さんが出てくるとでも言うのか!?」

「カズマは何を馬鹿なこと言ってるのですか! カズマがそう言うことをしたいんだった私がいくらでも甘やかしてあげますから余計なこといって私が聞きたい本題から気をそらさせるのはやめてください!」

「えっ、いいの?」

「いいわけないだろ! めぐみんは最近このダメ男のことを甘やかしすぎだ! おかげで昨日なんか私のことをどれだけかったか……思い出しただけで腹が立ってきたぞ! ぶっころ!」

 

 

いやぁ、賑やかですねー。

ダクネスちゃんから逃走スキルを使って全力で逃げるカズマの悲鳴をBGMにしてキャッキャと喜んでいるデッドスクリーム・ブラッディーマリー4世にアクアちゃんがせっせと水をまく。

……おかげで成長促進作用成分は浄化されちゃいましたが、まあ別にこのかわいい期間を長く楽しむっていうのも時間感覚が狂っているエルフやら神様にはちょうどいいのかもしれません。

 

そんなこと考えてるうちにカズマさんが花壇の石につまずいて泥まみれになったところに一発ぶちこまれて撃沈しました。

南無。

 

すっとした様子のダクネスちゃんでしたが、その冷静な目でこちらをみやるとギョッとしてこんなことを言い出した。

 

 

「な、なあナナシ」

「なんじゃ」

「そこでアクアが水やりをしてる植物は……」

「ああ、デッドスクリーム・ブラッディーマリー4世のことか。うちのマリーちゃんの株を分けた姉妹だ」

「そ、そのマリーちゃんというのは……マンドラゴラだが?」

「いや、でもこの植物はどう見ても少女の形をしてるし……」

「うちの子は顔立ちも整ってる。そういう品種だ」

「だ、だがしかし……私にはこの子が安楽少女にしか見えないというか……」

 

 

確かに、安楽少女の遺伝子を僅かに取り入れた気もしなくもないが、さすがにまだこの子はマンドラゴラです。

だって叫びますし、収穫時期になったら叫び散らしながら逃げ回りますし。

最近は私の追跡能力に観念したのか自ら球根を分けてくれたり、悲しそうな目で見てきたりしますが、私はそんなの関係なく採取しております。

人のことを養分にしないし、お喋りはできない。

ほら、安楽少女とかいう根腐れモンスターじゃないですよね?

 

 

「まあ何にせよ、某に任せておけ。植物でも何でも知ってることは知ってるのでの。被害者ゼロで立派に育ててみせる」

「そ、そうか……野菜は台風の日とかに興奮して人を攻撃するからな、そこの管理も任せて……ってそうじゃない! 私は領主代行として仲間の家にモンスターがいることを見過ごせないという話であって……!」

「ダクネス何言ってるの!? ねえ本当に貴女って人は人間の心があるのかしら! 見なさいなこの純真無垢な笑顔を! こんな笑顔、安楽少女にできると思うかしら! それに私思うの。人が道を踏み外すのは環境のせいだって。生きてるものはみんな元は善性を持ち合わせてるのよ! たとえこの子がマンドラちゃんでも安楽少女ちゃんだとしても、私は親として責任もって育てるわ!」

「そ、そうは言っても安楽少女はモンスターで、毎年数多くの者が犠牲となってるとても危険な……」

 

 

このダクネスちゃんは頭も腹筋もかっちかちですね。

50%くらいの安楽少女遺伝子が紛れ込んでたってこの子はマンドラゴラですよ。

モンスターの定義は人に害意を持って殺す種族かどうかですから。

その定義でいくとウィズだってモンスターじゃありませんとも。

そしてこの子にも同じことがいえるのです。

 

 

「いや、まてダクネス」

「ど、どうしたんだカズマ……まさかお前までこの安楽少女を育てようと言うのではあるまいな!?」

「いや、正直俺は飼育してもしなくてもどっちでもいいんだけど」

「どっちでもいいのか!?」

「問題はそこじゃない。俺は閃いてしまったんだ。いいかよく聞けよ。まずコイツをこの庭で育てる。んで、大きくなって子供ができたときくらいにコイツを殺してみる。それで俺のレベルの上がり方を見て安楽少女だったかを判断すればいい。もし安楽少女だったら危害を加えられない俺のレベリングツールになるし、マンドラゴラだったらおいしく召し上がればいいだけで……」

「うわあああああ!! カズマのド畜生! 人の心と魔物の心をとっかえっこしてきたんじゃないかってくらいに清々しい鬼畜ッぷりよ! 悪魔に対しては他の追随を許さない容赦のなさだって自覚してる私でもドン引きよ!」

「おい待てよ! 流石に酷いぞ、紅魔族だって養殖とかいってモンスターを取り囲んで集団リンチして、フルぼっこ終わったと思わせたところで最後の一撃を弱いやつにやらせてレベルを上げる方法があるだろ! これもそれと似たようなもんだろ!」

「ちょ、我が紅魔族に伝わるレベルの挙げ方を非道徳的な方法みたいに言わないでください! こっちはあくまで生死をかけた戦いをして、それで勝者がより強くなる自然の摂理なんです! カズマの弱者から搾取するみたいな外道じゃないです!」

「そ、そうだな。散々安楽少女を処分しようと言ってきた私だが、流石にそれはあまりに非人道的すぎて、その、賛成できかねるな」

 

 

カズマの素晴らしい案に三人娘はドン引きのようですね。

ちなみに私はその案自体は否定的ではありませんよ?

ただ、やはり人間成長するにはそれなりの苦労がないと中身が成長しない。

戦いの中でこそ、戦い方を学べ、技を磨き上げられる。

力に振り回されるだけの存在はいずれ痛い目を見る。

武器に頼らず、防具に頼らず、魔法に頼らず、手段に拘らず、最終的に己の身のみで全てを掻い潜るだけの実力が備わってこそ、だ。

さて、そうこうしてるうちに畑仕事は終了。

また明日、しっかりマッサージしに来よう。

 

 

「よし、それでは某は帰るでの」

「あらそうなの? 今日はウィズの惚気話に付き合う日かしら?」

「……勘弁してくれ。そんなことになったら某は家出するぞ」

「冗談よじょうだん。明日もよろしくね! 私とめぐみんじゃこの子たち全員のお世話は行き届かないくらい広くしちゃったから……」

「いや、それは勝手に某がかみつき白菜とズッキーニャの苗を植えてしもうた故、某がそこの管理をせねばならない。収穫が終わったら鍋でもしようか」

「やったわ!」

 

 

無邪気に喜ぶアクアちゃんと、ハイタッチを求められて驚きながらもそれに応えるめぐみんとダクネスちゃん。

それを見て現金な奴らめと呆れるカズマくんを尻目に、私はこれからに備えるためテレポートでこの場を去ったのでした。




次回、堕天使、死す、多分
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