家出した主人公ちゃんに戻ってきてもらうために打倒デューク!
しかし優しいウィズは攻撃を加えることができない。
めぐみんは何故か爆殺することに乗り気なのだが、それを止める声が。
ま、まさか、帰ってきたのか主じn……
<カズマ>
俺たちの目の前に現れたのは待ち望んでいたナナシ……でなはく、パリッとしたタキシードを着こなす仮面の悪魔バニルだった。
思わず石を投げるもひょいと躱され、そのニタリとした顔が憎たらしい。
「『ようこそ、この始まりの街へ。汝、某とウィズの力量差を見破れぬ身の程も知らず魔王軍幹部の座を欲する愚か者よ。神のパシリが反逆しおって、堕天したことにより滑稽さに磨きがかかっておるな』 との言づてをくれてやる」
「言づて……一体何のことをいっているのでしょうか、バニル殿」
「いやはや、おいしいおいしい悪感情の前菜の提供を感謝する。一応我が輩、家出先輩の代理を任されておってな。本日の食事会には欠席とのことで我が輩がそれっぽいことを言いに来たのだ」
いや、食事会って何だよ。
いや、わかる、わかるよ?
どうせあれだろ、ウィズが告白されたってのは勘違いで、さっきバニルが言ってた魔王軍幹部の座を狙ってきたとかいうアレだろ?
そしてそれを隠してたから、そのことについて感情を爆発させたウィズから悪感情をいただこうって算段だったんだろ?
「察しがいい小僧よ。その通りである、が、あくまで我が輩は代理である! そのついでにガッツリ頂こうと思っているだけであるからして余計な口は挟まぬように」
「ば、バニルさん……余計な口って一体どういう……」
「察しが悪いニブチン店主よ。全ては勘違いだったというわけである。告白されたというのも、プロポーズされたというのも、全てが勘違いだったのだ――――フハッ! フワーッハッハッハッハッ!!」
「だ、騙してたんですか!?」
「だ、騙す? 俺は別に騙そうとしたつもりは……元から俺の目的は魔王軍幹部の座を明け渡してもらおうというもので……」
「……ッッ!! わ、私! プロ、プロポーズかと思って……ッッ!!」
「フワーッハッハッハッハッハッハッッッ!! フワハハハハハハッハハハッッ!! 極上だ! 久方ぶりの超極上の悪感情! 美味! 美味である!!」
激高してるウィズと困惑しているデュークをよそに、バニルが気が狂ってしまったか、擽りの弱点を死ぬほど攻められているのかと思うほど激しく腹を抱え、地面を転がり回っていた。
そんな中ウィズは顔を真っ赤にして、目には涙をためてプルプルと怒りに震えているようで。
「どうして、どうしてもっと早くそういうことは言ってくれなかったんですか!」
「俺のことを勝手にフッたやつに言われたくないわ!」
「でも勘違いさせたのは貴方です!」
「それを言うならお前が街の中に店を構えるせいで! 魔王城にいればいいものをどうしてこんな辺鄙なところに店を構えて! そもそもお前が幹部の仕事をせずにのほほんとこんな街で暮らしているからこそ、こんな腑抜けには任せてられないと俺は立ち上がったのだ!」
「ふ、腑抜け!? わ、私は元からこんな感じです! 氷の魔女とか言われたのは周りの人が勝手にそう呼んでいただけであって、魔王城の結界の維持も魔王さんに頼み込まれて渋々やっているだけなんです! 私はどちらかというと人類サイドなのに!」
「ではより俺が魔王軍幹部の座に座った方がいいではないか!」
「そこの半端物。ナナシから伝言だ『いや、お前はその器ではない。堕天使というのは格好いいが、魔法を極める向上心だけで実体が伴っていない軟弱ものが。貴様が幹部として座すならば、その席は某が消し飛ばしてやろう』と。いやぁ悪感情美味」
「そのナナシはどこにいるというのだ! 癪に障る言い方して!」
俺も思った。
本当はどこかに潜伏して隠れているのか、ライト・オブ・リフレクションしてるのか、視覚共有してるのか、それとも千里眼の効果範囲がえげつないのか。
何だかよくわからないがこの状況を確認してバニルに伝えているようだ。
が、バニルの抑揚が激しい小馬鹿にする喋り方は絶対バニルのアレンジがかかってる。
ちなみに今の俺は何をしてるかというと、「乙女の心を踏みにじった外道をぶっ殺す!」と魔法が激しい向こう側へ飛び込もうとするダクネスと、「最初から爆裂対象でしたがもう私を止めるものは何もない!」と杖を構えて詠唱を開始するめぐみんにバインドを魔力全力でお見舞いして、すっからかんの魔力をドレインタッチして回復。
そんで堕天使という天界の反逆者に襲いかかろうとしているアクアを羽交い締めにして押さえているところだ。
「今や魔王軍幹部はお前ともう一人しかいない! 人類との最前線にあった砦すら崩落し、水面下で進めていた調略も失敗。いよいよ結界を維持するのも……」
「『結界の維持はすでに某が恭一と交渉して、魔界から魔力を引っ張ってくることで簡易措置はできておる。加えて某のみで維持することも可能な回路の試作を実験的に作動させておるが特に問題は見当たらぬ。故にウィズの幹部の任ももうじき解かれるだろう。倒したところで魔王軍幹部になる運命はないのだ、おわかりかね反逆者君?』と言うことらしい」
「……は? いやいや何の冗談だ? あの強大な結界は今は亡き最強の魔法使いが組み上げや改良に携わったと聞くが、それでも一人で維持することなど不可能に違いあるまい」
「いやー、わざわざ貧乏店主を倒すためだけに年月を費やしたというのにそれでも叶わぬミュルミュル貝の男よ。残念なことにその最強の魔術師を何年か前に倒した存在こそがナナシであるし、『……ん? あ、やば、堕天使巻き込んじゃった……』という台詞とともに一撃即死であったと記憶しているのだが。フハッ! 旨し旨し!」
デュークさん、お気持ちはお察しします。
でもあのナナシとかいうミュータントは平気でそう言うことする天災なんです。
爆裂魔法を圧縮したナニカを100発近く受けても結界を維持しちゃう頭おかしいやつ元祖なんです。
今ならめぐみんを爆裂魔法に狂わせたのはナナシだって断言できると思う。
それはそれとして、だ。
「いや、情報量過多なんだが!? 今何個変なこと言った!? まず恭一って誰だよ! それと魔界って何!? 魔王城の結界張ってるのって実質ナナシだけで足りるって!? そんなの一生誰も魔王城入れないじゃん! あと最強の魔法使い倒した!?」
「あー、懐かしい話ですねー。私が昔魔王城に押し入ったことで、門番の任を自ら買って出たあの方を、まさかナナシさんが倒したと聞いたときには驚きましたが、まあナナシさんなのでそんなものかなーと思って、夕食は爆発茸の和風パスタだったのを覚えています」
「ウィズもかなりやんちゃしてたのね……。それはそれとして爆破茸料理は食べてみたいわ!」
「アクア、お前は話が変な方向に進むから黙っとけ!」
「なんでよぉぉおお!!」
ウィズの懐かしいですねーの辺りから俺は考えるのをやめた。
とりあえずわかったのはナナシが人類サイドなのか魔王サイドなのか、どっちについてるのがわからなくなったってことだ。
まあ、ナナシが魔王の座まで上り詰めたとして、それで世界を統治してくれるってなら逆に平和そうでいいなとは思うが。
そう思っていると、俺の周りの空気が冷たくなるのを感じる。
何かと思いウィズの方を見ると、いつになく冷え切った目つきのアンデッドの王がそこにいた。
何かデュークが逆鱗に触れたようだ。
俯いて顔を暗くしていたウィズが、凍てつくような目つきでにらみ付けると同時に地面の草木はしわがれ、霜が降り、睨まれたデュークが弾き飛ばされた。
幾つもの墓石を貫き、止まったかと思えばその勢いは止まらず墓石にめり込んでいく。
デュークは血を吐き、苦しげに。
「何が……起こった。攻撃された……? これほどの威力、起こりは一切なかった、魔力も感じない……この攻撃を、俺は魔法として認識できていない……!? 馬鹿な、俺は、炎魔術の極みに至ったはずなのに……どうして!」
「一つ、勘違いをなさっていますね」
「何、を……」
「魔法は極みなどありませんよ。飽くなき探究心のその先は、無限大の可能性が開かれています。それを、自分の中で極みなどと見切りをつけ、熱意が冷めてしまったのでしょう」
敵と認定した堕天使から目を離さず、ウィズが魔法の詠唱を始める。
詠唱もなしにあのよくわからない魔法ですでに瀕死のデュークの息の根を確実に止めようとしているのだろうか。
それとも魔法使いとして、最高の魔法で葬ることで冥土の土産にしようとしてるのか。
魔法使いじゃない俺にはわからないが、この魔法だけは見覚えがある。
見覚えのある魔法陣が折り重なり、魔力が圧縮される。
しかし少しだけ魔法陣を構築する模様が異なっている気がした。
「私の熱意はまだ冷めていません。ナナシさんが一人ぼっちになって、世界の理に縛られる魔王にないように、私が隣にいてあげられるように」
「何……だ、その、魔法は……!」
「改良し、修正し、改良し……幾度となく積み重ねてきた魔法です。自分だけの魔法って何だかわくわくしますよね! ……これが中二心と言うものでしょうか」
「ちょっ、ま……」
『エクスプロージョン・オブ・セイバー』
全てを裂く魔法が一閃した。
第13部、完!
次回(未定だけど)予告
いよいよ紅魔の里で試練開始!かもしれないです。
ゆんゆんの試練はうまくいくのか!?
そしてさらに改造された紅魔の里は一体どうなっているのでしょうか!?