バニルが大満足した。
堕天使を討伐したウィズは家に引きこもった。
ウォルバクとアクアそれを慰めてた。
その間に稼げるだけ稼ぐバニル。
自分を連れ戻しに紅魔の里へやってきた
<カズマ>
俺は寝起きのカズマ。
小鳥のさえずり優雅に起床する予定の者だ。
「試験に落ちたのを人のせいにするのにはやめていただきたいのですが!」
「それじゃあ一体誰のせいだっていうのよ! 爆裂魔法を撃つのはやめてって言ってるのにどうして! どうして一番撃っちゃいけないときに爆裂しちゃうの!?」
「囁いていたのですよ、私のゴーストが」
「何よそれ、ふざけてるの!?」
訂正。
紅魔族の喧嘩を仲裁するためにベッドから寝癖頭のまま這い出ることになった者だ。
小鳥のさえずりを優雅に紅茶とともに楽しんでいるのはそこにいるララティーナお嬢様の方だった。
アクアに浄化された茶をおいしそうに飲んでるな……
「私は思うのです。傍若無人に振る舞っている師匠ならあの場面で爆裂していたと」
「アンタは先生のことをなんだと思ってるの!?」
「ふぁあ……朝っぱらからかっかっかっかしてどうしたんだよゆんゆん」
「あ、すみませんカズマ。起こしてしまいましたか。ゆんゆんは元から情緒がおかしい子ですがセロトニンの分泌が不安定な時期でして……」
「何を言ってるのかわからないけど絶対ろくでもないことでしょ! 多分的外れなこと言ってるんでカズマさんは気にしないで私の話を聞いてください!」
「お、おう……だが、流石にめぐみんを試練のペアに選んだのは失敗だったんじゃ?」
「おい、私を失敗呼ばわりとはどういうことか!」
「く、苦肉の策だったんです……」
「オイ!」
今日のゆんゆんはいつになくめぐみんに対してトゲがあるな。
めぐみんの言うとおりセロトニンが不足してるみたいな感じならバナナでも食べさせようか。
そんなことを思いながら俺は言葉を続ける。
「爆裂魔法に人生を投げ捨てた賭博王に爆裂するなっていう方が無理あるだろ。大人しいめぐみんなんて良識のあるアクシズ教徒並みにあり得ない存在だ」
「そ、そう言われると確かに……」
「ねえカズマ、その例えは私たちの子に対して失礼だと思うんですけど。流石にめぐみんと比較しちゃいけないと思うの」
「いいでしょう、三人まとめて掛かってくるといいのですよ! 紅魔族の本気、ここで見せしましょうおっはぁああぁああーーっっ!?!?」
めぐみんの背中に手を突っ込みフリーズとドレインタッチをお見舞いする。
あ、あのゆんゆんさん?
引かないで、セクハラじゃないから!
単純にお仕置きと爆裂魔法を気が触れた瞬間に放たないようにするために魔力を抜いただけだから!
そんなことを慌てて言おうとすると、すぐそこで紅茶をたしなんでいたダクネスがティーカップを皿に戻して。
「つまり一人につき3回まで受けられる試練で、すでに2回も失敗して後がないという訳か」
「珍しくダクネスがインテリジェントだ……」
「珍しくとはなんだ……紅魔族の試練の話は私も耳に挟んでいる。ダスティネス家は紅魔の里と以前から付き合いがあるからな」
「そう言えばダクネスの家が愛用してる鎧は師匠の力作の高級品でしたね」
初耳なんだが。
と言うかナナシはやってること多過ぎだろ。
過労死しないといいんだが。
そう思ってるとゆんゆんが。
「そ、それで何ですが、やっぱりめぐみんを連れて行くのはよくないと思って、それなら別の知り合いにと……」
「それで俺のとこに来たのか? 俺以外は当たってみたのか? ほら、最近一緒のダストとか……は聞くまでもなかったな。ごめんな」
「いえ……私の知り合い関係がおかしいのは自覚してます」
哀愁漂う表情を見たところ、アイツにセクハラまがいの条件を提示されたに違いない。
酷なことを聞いてしまった。
後でドラゴンステーキでもあげよう。
……しっかし、そんな奴にまで助力を頼むなんて。
「そんなに族長になりたいのか? 別に親から強制されてるとかだったら振り切って逃げちゃえばいいと思ったんだが……」
「いいこといったわカズマ! アクシズ教教義には『嫌な事からは逃げればいい。逃げるのは負けじゃない。逃げるが勝ちという言葉があるのだから』っていうのがあって……」
「いや逃げませんから! この目標は自分で設定したもので、その……紅魔族は自由人が多いので束縛や責任が伴う族長は誰もやりたがらなくて。私、他に目立つ特徴とか特技とか目標もないので、紅魔族の名乗りにすごく困ることになるというか……」
「もう族長を目指さなくてもいい。俺たちが新しい名乗りを考えてやるからさ」
「さすがカズマさん! 私は『我が名はゆんゆん! 紅魔族随一のボッチにしてモンスターの楽園を築くもの! やがては人妖共栄を目指す者!』」
「や、やめてください! それは完全に魔王になる気の人のそれじゃないですか!」
……名乗りを否定しても、ボッチなことととかモンスターの楽園については否定しないんだな。
そう言えばウォルバクお姉さんも何か言っていた気がする。
確かひとりぼっちだと魔王になっちゃうよ、とかなんとか。
その点で言えばゆんゆんは着実に魔王への道を歩んでいるな……
さすがに同情を禁じ得ない。
俺でいいなら友達になってやろ。
「よし、ゆんゆん。俺が協力しよう、大船に乗った気分でいていいからな!」
「は、はひ! ありがとうございます!」
「……いや、どうしたんだカズマ? お前が乗り気になるなんて……天変地異の前触れか?」
「おい失礼だぞ。日頃迷惑しかかけられていない俺には大切な、良識のある常識人の友達だからな、困ってたら助けるだろ」
「だ、大事な一番の友達……!」
「待ってくださいそこまで言ってませんよ!? にへらと嬉しそうに照れないでくださいゆんゆん! いつものごとくこの男は適当なこと言ってみただけですから! それと私は最近迷惑をかけてないのですが!?」
まあ、何というか、俺たちが紅魔の里へ行くことが決まった。
出発はゆんゆんのテレポートで明日らしいので、俺はペットを預けにウィズの店に。
そこに待ち受けていたのは……
「へいらっしゃい! ここにありますは飲むと一週間避妊効果が確実な魔道具である!」
「買います。全部買います」
「まいど! お値段全部合わせて10万エリス丁度!」
「安いな……。まあ商売にうるさいお前だから嘘はついてないだろうが……」
「もちのろんである! ちなみにこの魔道具は店長が仕入れてきたものであると」
「何だこんなもん」
「フハハハハ! 悪感情美味である!」
バニルの説明を聞ききる前に俺は地面に叩きつけた。
よく見ると日本語でTS合剤って書いてある。
男が女に性転換して息子を無くすことで物理的に避妊するってか?
んなもん誰も望んじゃいないわ!
「いやぁ、久方ぶりであるな駄女神の保護者。最近傷心店主を慰めるとか言いつつ毎日浄化しかけてるのでな、ここらで清算させてもらった」
「保護者じゃねーよ! ってかウィズは大丈夫なのか?」
「昨日の晩から砂糖水に漬けてるし、そろそろ元気に回復している頃ではなかろうか」
「そ、そうか……。ウィズにうちのペットを預かってもらいたかったんだが……代わりにナナシとかは?」
「残念なことにナナシは現在連休中でな。何でも紅魔族にまつわる何かを何とかと」
「紅魔族以外何も情報がないじゃねぇか」
「とにかく、あの騒動以来先輩店員は通勤拒否してるのでな。我が輩が獣どもを預かる代わりに商売繁盛の招き猫を家に連れてきてはもらえないだろうか」
「マジで!? まさかバニルからOK言ってもらえるなんて……まあナナシが紅魔の里にいるならそんときは一緒に帰ってくるわ」
「うむ、よろしく頼む。今回はオマケに我が輩が量産体制を整えて試作した避妊具をつけるのでな」
正直、そんなものをオマケで渡すなよ。
なんてツッコミたいところだが、このままだと感情を唯々むさぼられそうなんで家に帰ってきた。
玄関から庭を見ると、アクアが一人で水まきをしていた。
「ただまー。しばらく旅に出かけるから野菜に水をやってんのか?」
「おかりー! 本当は一緒に紅魔の里に連れて行きたいのだけど、流石に無理そうだったし、最後の愛情を注いでるの」
「ウィズたちにちょむすけたちの世話を頼んであるからついでに畑の水やりも……」
一緒に面倒見てもらえばよかったのに。
そう口に出そうとして、一つの植物が目にとまる。
「そう言えばバタバタしててうやむやになってたけど安楽少女のような何かが生えてたんだったな。旅に出る前にちょっくら討伐を……」
「ちょっと何言ってるの!? やらせないわよ冷血ニート! 大丈夫よ、女神が神聖な水をあげればきっといい子に育つから!」
「もうウチにペットはいらないんだよ! ちょむすけとゼル帝とおまえの世話だけでも手間がかかるんだぞ、これ以上増やしてどうする!」
「お願いよ! ちゃんとのじゃロリちゃんのいいつけ守って正しい方法で飼育するから! 毎日のお散歩だって欠かさずに行うか……っていま私の名前が入ってなかった?」
「とにかく! ペットはこれ以上増やせないぞ! 討伐するかしないと……」
「せめて安住の地に移させて! 人間じゃなくてモンスターを養分にすればいいでしょ!? そうよ! 紅魔の里の森の奥にひっそりと佇む森の長にすればいいのよ!」
「何言ってんだこいつ。早くなんとかしないと」
とりあえず、このマンドラゴラ(安楽少女の姿)を何とかするために紅魔の里の近くの森に植え替えることにした。
もしくはナナシに返品することにした。
次回
おいでよ! モンスターパーク!