謎の研究施設へ突入だ!
そう思って足を踏み入れるとその奥にガチャガチャが。
激しい音とともに改造手術(マッサージ)を施されためぐみんはバストサイズが心なしかあがった。
「ふはははは! 魔力上昇血行促進お肌艶艶に加えバストサイズアップ! さてゆんゆん、昔はどちらが環境に優しい慎ましやかなスマートボディか競い合いましたが、今日こそ、は……」
マッサージのような何かを終えてきて、妙に気が高ぶっているめぐみんがゆんゆんに突っかかろうとして……
ふにょんと揺れる二つの圧倒的質量を持つ山を見て、口をつぐんだ。
流石に神の手による施術を受けたとしても秒で大きくなるはずもなく、俺から見たら依然としてめぐみんのめぐみんはめぐみんのままだった。
<カズマ>
「ただいまカズマ!」
「おかりー、二次試練どうだった?」
「はっきり言って最高だった……! やはり一撃熊の亜種、一撃必殺熊の一撃はなかなか気持ちよかった。防御を捨てた攻撃の威力、速さ、技、どれをとっても一級品だった」
「なんでそんなやつとふれ合って生きてるんだよ。お前も人間やめてんなぁ」
ナナシは普通に人外になっちまったし、アクアもあれでも一応神だし、めぐみんは魔改造人間になっちまったし。
俺の周りから着々と人間が消えていってる件。
せめて俺だけは人間のままでいたいなって思った。
「このまま第三次試練も、共に突破しようじゃないかゆんゆん!」
「は、はい! 不束者ですがどうぞ末永くよろしくお願いします!」
そんなこんなで始まった第三次試練。
試練は夕暮れから朝方にかけて、魔物が活性化する時間帯で森の中を生き残るというものらしい。
俺は爆裂もぐにんのせいで絶賛めぐみんの家に引きこもり中だが、どうかうまくいってほしいものだ。
そんなことを思っていると……
「欲求不満です」
「な、なんだよ藪から棒に。夜だからってお酒飲んで理性がおかしくなったか? あそこで酒瓶をぬいぐるみ代わりに抱いて寝てるのが末期だ。あんなんにならないように気をつけろよ?」
「ご忠告痛み入りますがお酒飲んでるのはカズマでしょうに。最近試練を実施しているせいで私の爆裂魔法を放ててないのが原因ですかね、これは。体がほてって、ほかの物事に手がつきません……」
「俺知ってるぞ、ただ爆裂したいだけだろ。そういうときに『カズマ、一緒にデート行きませんか?』とかいって惑わすんだろ。ワンチャンあるんじゃないかって男を手のひらで弄んで、用事が済んだら何事もなかったかのように一人ですっきりするんだろ!」
「言い方が何か含みがあるのですが。ただ単にいつもの散歩を紅魔の里でやるだけなのに何を期待してるんですかこの男」
「お前が欲求不満だとかいうせいだわ」
そうだ、からかい上手のめぐみんさんにからかわれてばっかりの俺じゃあない。
もうお前の手の内は知っている。
そして、俺はさらに気づいてしまった。
めぐみんの目的がただ単に爆裂魔法を撃つだけじゃないことに。
「なあ。試練の真っ最中にどうして行こうって話をしたんだよ。族長の座をかすめ取るようなまねをするようなやつだとは思ってなかったんだが……」
「私をなんだと。カズマみたいなことはしませんから」
「人のことをハイエナ呼ばわりするんじゃない! ……でも、結局ゆんゆんの邪魔をしようとか、そういう話じゃないってことは、別の何か目的があるんだろ? 何だ、何かナナシからいわれてたりするのか?」
「そういうわけじゃないのですよ。ただ……フフフ。先ほど師匠の改造術を受けた影響で体中の魔力が暴走しているのです。フフハ、魔力が高まっているせいで妙に体があっついのと、爆裂魔法を撃って発散したい欲求が抑えられないのです!」
魔力が高まると全知全能な感覚に襲われるが、そのバニルみたいな笑い方はやめろよな。
普通にヤバイヤツに見える。
「はぁ……帰りおんぶいるだろ? しょうがねぇからついて行ってやるよ」
「感謝しますよカズマ。我が渾身の一撃をお見舞いしてやりましょう!」
****
ある日、森の中、熊さんに、出会った。
星散る森の道、熊さんに出会った。
「ヘイヘイヘイ熊公ビビってる? このめぐみん様の圧倒的魔力に当てられてバッタービビッちゃってんの?」
「フハハハハ! 一撃熊よ、我が魔力に前にひれ伏すがいい! ……っ! いいっ! 最高の台詞でしたぁ!」
「まだまだこれからだぜ?」
目の前で困惑している一撃熊。
それも仕方ないか、こんな尋常じゃないほどの魔力を漂わせた大魔法使いがいるなんて、この森の新たなる王の誕生かと思って身動きとれないよな!
ああ、実に愉快愉快!
「そう言えばいつも以上にノリノリですね! アクアと一緒に酒飲んでたら酔っ払いました?」
「酔ってない! どれくらい正常か見せてやるよ、ン『狙撃』ッ! よっしたまたま金的的中!」
「ああっ、一撃熊が襲ってきますよ! 我が魔力にあらがうその精神に敬意を表する! だがお前はまだ強くなれる。今はまだ戦いのときではない。強くなったときにもう一度勝負を挑むといい!」
「先生の恩情に感謝するんだな! 『潜伏』」
俺の美声がめぐみんの鼓膜を揺らし、そのまま脳みそまで届いておかしくなりそうとのこと。
潜伏のために握った手から感じる脈はドキドキと速いリズムを刻んでいる。
ふっ、俺ってば罪な男だ。
「はぁ……サイコー、でーす……!」
「夜のデート、楽しんでもらってるみたいだな。心臓の音、ドキドキ聞こえてくるぜ?」
「ドキドキしてます! 未だかつてないくらいにドキドキしてます!」
「よーし、もっとドキドキさせてやる! こっちから強敵の気配がビンビンだ! ついてこい!」
「私より強いやつを探す旅というのも乙ですね!」
俺は潜伏スキルを使ったまま、めぐみんの手をひいて森の奥へ奥へと進む。
夜に駆けるってこういう感じなんだろうな!
しばらくすると森の中では珍しい人影が。
だがあの特徴的な金色の髪、見間違えるわけもない!
「おおっと、強者の気配を追いかけてみたら、まさかアンタ」
「フッ、汝らが姿を現すのを待っていたぞ、勇者サトウカズマ。魔王めぐみん」
「師匠! 私が魔王でカズマが勇者というシチュエーションはなんか非常にアツいです!!」
「おい、魔王! 俺がこいつの足止めをしておく! お前は特大の一撃をぶちかます準備でもしておけ!」
「ほう、向かってくるのか?」
「そっちに行かないと、テメェをぶちのめせないんでな!」
「面白い。最強の素質があるかどうか、見極めてやろう」
「かっこいい! 今のやりとり最高にいいです!」
ナナシがニヤリと口を大きく歪め、背中から、不定形の翼を出す。
多分あれはスライムだろうが、俺はそんな無粋なことはいわない。
ただ、ティンダーを唱え、手の中に揺らめく焔を出現させ、それをウィンドブレスで青い刃に変える。
「ほう、魔力制御も随分様になってきたな、勇者」
「毎日毎日、魔王の隣で魔法の発動を見てきたんだ。炎と風の調整はなれたもんだ。俺の斬鉄魔剣、受けてみ…………ッチ。無粋な奴らめ」
解放された俺たちの魔力によって木々が犇めく闇の中、荒い呼吸が風となって俺たちの方へ迫ってきていることを敵感知スキルが捉える。
その方角を見ると爛々と輝く青い瞳が、俺たちの魔力を見ても物怖じせずに現れた。
そこには獣ながらに王者の風格を纏う巨狼。
「闇に輝く青い瞳! あれは孤高の狼にして森の覇者、フェンリルです! クックック、我が前に現れたのが運の尽き! さあ、今こそ私が紅魔の里の森の覇者として君臨しようではないか!」
「魔王、お前が出る幕ではない。
そう言うとナナシの後ろのモヤッとしたスライムみたいななんかが敵を捕捉し、握りつぶした。
ひゅー、さっすがナナシ、初見殺しえげつない技をお持ちのようで。
「よし、じゃあ俺たちは向こうからやってくる無粋な忍者を倒しにいこうか!」
「えっ?」
「向こうから走って近づいてくるぞ! 準備を怠るなよ!」
「ふ…………フハハハハ! 魔力上昇、血行促進、絶好調も絶好調な我に楯突こうとは! 笑止千万! 我が魔法の錆にしてくれます!」
めぐみんが高笑いしていると、先ほどのフェンリルなんて目じゃない早さで迫る二足歩行。
隠密に特化したような、赤く輝くモノアイが周囲をサーチしているのか、不気味に照らしており、立体機動的な機敏な動きを見せつけながら、そのロボットが迫ってきた。
……のだが。
「『エクスプロージョン』……ッッ!!」
謎施設で発見されたというそのロボは、普段なら爆裂魔法でさえ一撃では仕留めきれず、傷を追えば逃走を図り自己修復。
そんな今まで相手にしてきた魔王軍幹部並みの強敵は、魔王と呼ばれた少女のたった一つの魔法で滅ぼされた。
たぶん次回
爆裂魔人もぐにんにん、マークⅡとして生まれ変わる。
そして試練は成功したのか、その真相が明らかに!