第三次試練中のダクネスとゆんゆん。
しかし、めぐみんの魔力が一時的に高まり、爆裂魔法発射欲を抑えられなくなり、酔っ払いカズマとともに森の中へ。
なんやかんや強敵と遭遇しながらも勇者カズマ、魔王めぐみんの最強コンビは天災にして最凶の邪神であるナナシの前に。
その後、正気に戻ったカズマは「調子に乗りすぎて想像してしまった黒歴史忘れろ忘れろ忘れろ」と狂乱に陥っていたのだった。
<主人公ちゃん>
夜明けとともに疲れ切った表情で朝帰りをしてきたゆんゆんとダクネス。
満場一致でゆんゆんの試練は幕を閉じ、ひろぽんさんが若干涙ぐみながら森から出てきたゆんゆんに駆け寄り抱きしめた。
「我が娘ゆんゆん、頑張った……本当によく頑張った……ッ!」
「ちょ、お父さんむさ苦しい! 私も汗かいてるから抱きしめないでぇっ!」
「こんなめでたい日に抱きしめられずにいられようか……否ない!」
「もー、お父さんってば……」
本人以上に嬉しいのか感情を爆発させる父親に、困り顔ながらも若干顔をほころばせるゆんゆん。
正直このまま空気を読んでクールに去りたい気分ですが、この試練の審査委員長として伝達事項があるのでどうしたものかと思いつつ、微笑ましく思っていたら、しばらくしてようやく涙が落ち着いた様子のひろぽんさん。
なんとなく二人の気持ちが落ち着いたのを察した私はコホンと咳払いをして。
「ではまずはダスティネス・フォード・ララティーナ殿」
「はっ」
「貴殿の鍛えられた鋼のような折れず曲がらずの不屈の精神、その甲斐がありこうして試練を終えられた。前衛としての役割を全うしたことを認め、神器『聖鎧アイギス』を授けよう」
「ンーーッ! ムンーーーッ!!」
「何かこの鎧から声がするが……」
……流石腐っても神器、封をしようとも自ら破ってきますね。
って、あっ!
鎧にしっかり彫り込んだ魔法陣が消えかけて……自己修復機能阻害の術式も入れたはずなのに!?
耐性でもつきましたか!?
……仕方がありません、ここはまた別の術式を編み出して、それを直接彫り込んで黙らせるしかないでしょう!
「一応これでもエリスさんが着用したこともある。後々調整して渡す故」
「あ、ありがたき幸せ……といっていいのだろうか? なにかとてつもない悪寒がするのだが」
「鎧がボロボロなのでな。いらなくばアクアさんに封印術を再度かけてもらい、クリスに人目に触れないダンジョンの奥底に持っていくよう頼むといい」
「は、はあ」
カズマくんがラスダン攻略したときに漆黒のクルセイダー専用の鎧をもらってくるだろうからいらないかもしれないけど、せっかくだしあげちゃう!
いらなかったら捨てちゃってもいいですからね!
……よし、ダクネスちゃんには終わりました!
そしたら本日のメインイベント!
「では、遅くなった、族長の娘ゆんゆんよ」
「ひゃ、ひゃい!」
「……暗闇に惑わされず暁まで、よくぞ過酷な試練を乗り越えた。東雲から覗く黎明の光を目の当たりにした汝こそ次世代を導く真紅の頂点に相応しい。よって、ここに新たなる族長の顕現を宣言する。次からの名乗りはやがて紅魔族の長となる者ではなく、紅魔族を率いる長を名乗るといい」
「え? ナナシさん、まだ私が族長ですよね?」
「あ、ありがとうございます! これからは族長として紅の宿命を背負いながらも皆を引っ張っていけるように精進します!」
「えっ!? 後は新族長に任せていろいろやりたいことできるぞーって思える一方一末の悲しさを感じるぞ……」
ああ、かわいそうな族長さん。
自分の名乗りを奪われてしまったせいで最初とは別の意味で涙だばーじゃないですか。
でも安心してください!
ゆんゆんちゃんのことは私が1から10まで万全なサポート体制で支えてあげますから!
それに……
「娘の祝いで泣くものではない。それにゆんゆんは紅魔族の長といってもまだまだ新米、ひろぽんには私の座を譲ろう」
「そ、それは裏生徒会……またの名を裏番長! その座を私に!?」
「実質的な権力が集まっているしのう」
「そ、それはそうですが……面倒くさいことしたくないです?」
「多少仕事の内容は増えるやもしれんが、褒美にバ○ターコールでも滅びの呪文バ○スでも何でも好きに使える権限付きだ」
「そっっそそれは、バ○ターコールでも滅びの呪文バ○スでもサードイ○パクトでも何でも好きにしていいってことですか!?」
「ああ。好きにしろ」
「神! これからは紅魔族で祭り上げます!」
「我は神だがやめてくれ?」
信仰心が集まりすぎて戦いがつまらなくなってしまいますよ……
最近楽しかった戦闘といえば昨日のごっこ遊びくらいで、本気で楽しく戦うなんてことそうそうなくてなかなか心苦しい日々が続いているのです。
ああ、本当に私より強い人を探す旅に出かけたい……
なんなら戦いの中で自爆とかして潔く散りたい……そう思う今日この頃何です。
どうせアクアちゃんのリザレクションで生き返りますし、なんなら死んでも天界にリスポーンするだけなので。
****
「よーし! 今日は我が娘の就任決定祝いだ! 紅魔族が族長……いや、裏生徒会会長顧問であるひろぽんが命ず! 祝砲をあげろーっ!」
「「イェス・ユア・ハイネス!」」
どっかで見たことがある中二チックなポーズ、それから器用に片眼だけを輝かせる技術を会得したおっさんが命令を下し、打ち上がった花火とともに宴が始まった。
本日の主役はというと……
「おめでとー!! いやぁ、私は昔からやるときはやる子だって知ってたよ、同じクラスのお友達だったから!」
「ふにふらさん……っ!」
「そうそう、雷鳴轟くゆんゆんはいつかやってくれるんじゃないかって思ってた! だから一緒にこれからねりまきの家で祝砲を打ち上げない? 主催者はゆんゆんでさ、さきべりーとかかいかいにも声かけるから!」
「ど、どどんこさん……っ!」
「『紅き瞳を爛々と赫かせこの世のすべてを蹂躙し尽くす魔王となった彼女は……』……うん。いいできじゃあないか! この調子で私の小説のモデルを頼むよ」
「あるえ……! ちょっと何言ってるかわかんない」
「!?」
散々「紅魔族の危機」とか「この手紙を読んでいるということは私たちはもういないだろう」的な奇なる小説を送りつけてきたあるえには辛辣なゆんゆんだったみたいだけど思いのほか楽しめているみたいでよかったです!
先生、教え子のコミュニケーション能力の成長に涙を禁じ得ませんよ。
そんなことを思いつつ私はここにいないカズマパーティーを呼びに行くために牢という名の詰め所へ赴く。
なんか爆裂魔法連続発砲事件の主犯と助長犯としてぶち込まれたようです。
そこに近づいていくにつれ、ぶっころりーの声が聞こえてきました。
「本当に残念だよ。君はパーティーの中でも常識人で、気が合うと思っていたのに」
「奇遇だな、俺もお前とはどこか波長が合っていた。時と場合が違えば親友になっていたに違いない、そうだろう? だから出してくれないか?」
「それは無理な話だよ。無事ゆんゆんの試練は終わったとはいえ、流石に爆裂魔法を試練中に森に放つなんて擁護できない」
まあ正直一緒にいた私が捕まらなかったのは即撤退したのと、証拠を残さなかったのと、審査員だったのが効いてるでしょう。
カズめぐはめぐみんが魔力を使い切り動きが鈍っていたのと爆裂魔法の魔力と森に立ち寄る不審者という三点セットが重なり投獄されてしまったのです。
「さっきから言っているのですが私が爆裂したという証拠はどこにあるというのですか! 証拠を持ってこないというのならこっちは冤罪として訴訟も辞さないですよ! 果たして示談金を払えますかね!」
「証拠なら今まさにだよ! 倒れてるってことは魔力全消費したってことなんだろ白状しろ! それに、あのすごい威力の爆裂魔法はめぐみん以外出せないって知ってるぞ!」
「な、何でしょう、私の爆裂魔法が唯一無二のものとして褒められているようで嬉しいのですがやめていただきたい!!」
「ツンデレめ! これが証拠不足っていうなら言ってみろよ」
流石紅魔族ニート代表ぶっころりー、ニートネットワークを侮ってはいけないものですね。
というかあの威力の爆裂魔法を見たらめぐみん以外の犯人は思い当たりませんよね。
我が弟子ながら末恐ろしいですよ……
私の魔改造マッサージの効果があったとはいえ、私に追いつきやがりました、というか魔力でゴリ押さないと負けますよこれ。
昨日は魔法攻撃力上昇バフ、魔量上昇バフ、魔力操作精度上昇バフが素のステータスを死ぬほど押し上げてましたね。
「あ、あの夜はもぐにんにんが出てカズマのことを爆殺しようとしてきたのですよ! そのときの爆発です! 私が倒れているのは夜な夜なカズマと森にデートに行って、高まった気持ちを発散したからです! あまりの快楽の絶頂と激しい運動で体力がすっからかんになってしまいまして……」
「えっ!? ででででーと!? デート!? 発散!? 快楽!? 激しい運動!? 一体何があったっていうんだよ!」
「……言わせないでくださいよ恥ずかしい」
「本当に何なにナニ!?」
デート(爆裂散歩と中二病ごっこ)
高まった気持ち(爆裂魔法を放ちたい欲求と中二病)
快楽の絶頂(爆裂魔法による爽快感とレベルアップの感覚)
激しい運動(中二病による無駄なかっこつけの動きと走り回ったせい)
ってことですね。
「カズマもいつもはへたれて……でも昨夜はその、私をリードしてくれて。激しくて気持ちが高ぶってしました」
「嘘だ! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!! そうだよなカズマ!」
「お、おう、さっきから思ってたんだが流石に誤解を生みそうな言い方だったしな」
「だ、だよなぁ! マイシスターなめぐみんが俺より先に大人の階段を上ったって知ったらショックで1週間どころじゃないくらいには引きこもれるんだが」
「何を、真実しか言ってないでしょう」
「まあそうだけど」
「あ、ああっ、うわああぁああぁぁあああぁぁっっ!! 黒より黒く闇より暗き漆黒に我が深紅の……」
「ちょ、このニート爆裂魔法の詠唱始めましたよ!? しかもビリビリしてます! まさか覚えたのですか!? いい心がけですが自爆はみっともないですよ! カッカカズマ! 流石にやばいです! このニート、レベルが上がりまくったせいで調子乗って爆裂魔法を覚えて、でも魔力足りずに枯渇して死ぬかもです!」
「早まるな! まずは握手しようとみせかけて『ドレインタッチ』――ッッ!!」
「馬鹿め! それはナナシさんから聞いてる! それに俺にはこのマナタイトがある! リア充爆発しろ!」
……なんでしょう。
とっても楽しんでるようで。
お邪魔みたいだったのでダクネスちゃんとアクアちゃんのところに行って一緒に釈放の手続きをしましょうか。
次回
ようやくアクセルの街に帰った勇者ご一行。
しかしそこには主人公ちゃんの姿はない。
代わりに遣わされた人とは?
その人が主人公ちゃんの代わりというのならウィズ魔道具店という名の魔境に放り込まれることになるが胃は死なないのだろうか……