私の中二心を『エクスプロージョン』ッッ!!   作:桃玉

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前回のあらすじ

めぐみんとカズマが牢屋で騒いでいる中始まったゆんゆんの任命式とその祝賀会。
というわけでゆんゆんは族長になったものの、仕事は徐々にやるとのことで結局カズマパーティーと一緒にアクセルの街へ帰還。
忍者型のゴーレムが族長代理をしているとか、壁に張り付いたりしているとかいないとか。


家で続行中につき自分の代わりを派遣してみた

<カズマ>

 

俺はとりあえずアクセルの街に帰還してすぐ、ウィズとバニルのところへ。

バニルに託したペットを取りに行くのと、「あの騒動以来先輩店員は通勤拒否してるのでな。我が輩が獣どもを預かる代わりに商売繁盛の招き猫を家に連れてきてはもらえないだろうか」って言われた件について話に。

 

 

「『フッ、まだ代理ちゃんの調整が終わっておらぬので帰るわけにはいかぬのだ。某の仕事のすべてをインストールし、引き継がせなくばひろぽん殿は1日72時間労働しなければならなくなる。多分これが一番早いと思いますを実現すべくAI化を……』となかんとか言ってた。てな訳で、ナナシさんはもうしばらくかかりそうですわ」

 

 

そう、ナナシと一緒に帰る算段だったのだが、疲れた目を輝かせながらあーでもないこーでもないと機械をいじくり回していた彼女を見てテコでも動かないことを察した俺は連れて帰るのを諦めたのだ。

それを聞いたバニルは拳を握りしめながら俺の方ににじり寄り。

 

 

「わ、我が輩との約束を違えたとでもいうのか! あのおっちょこちょいなんて軽い言葉では済まさない極悪店主をここまで制御していたというのに希望は潰えたのか!」

「見通す悪魔のバニルさんでも想定外だったのか?」

「我が輩の力を強く使おうとすると反発があってな。見通そうとするとそこに砂糖水漬けされている過労店主が負債をこさえてくるのであまり本気を出せぬのだ。かくなる上は一日24時間労働を1週間強制させて半日ほど療養する生活を……」

「あ、悪魔だ! ここに悪魔がいる!」

「悪魔であるが? それとも何か、小僧が何か補填してくれるのであるか? 大悪魔との約束を違えた代償は高くつくぞ? リッチー以上に働かせるからな」

「ちょ、待った! 落ち着いてくだせぇバニルの旦那、何の手土産もなしに尻尾巻いて帰ってきたわけじゃないんですよ俺は」

「……ふむ。どうやら見るにそのようであるな」

 

 

バニルが顎に手をやり見定めるように俺のことをまじまじと顔を近づける。

そう、俺はただ単にナナシさんをおいてきたわけじゃない。

流石にこのままじゃウィズ魔道具店が潰れるって訴えかけたんだ。

 

 

「『帰れないが、早急に店の補強が必要であろう。某の代わりを見つけたので派遣する。どうぞこき使ってあげてほしい』って言ってたんだ」

「なるほど、経営状況はお見通し、ということであるか。流石長年住み込みで働いていただけある。して、その派遣社員は何処へ?」

「何でもギルドにいるらしいぞ? 顔見知りだから会えばわかるっていってた」

「ふむ。なるほど、あやつか。ではその者を迎えに行ってくるとしよう。猫とヒヨコは当店の看板娘とマスコットに懐いているので頑張って連れ戻すといい」

 

 

バニルが指さす先にはウォルバクさんが猫を膝の上にのせてなでなでしており、ペンギンの着ぐるみはヒヨコをつれて店前を徘徊していた。

そのかわいさに魅了された人が店から買ったパンをちぎってひよこの前に差し出していたり、男どもが遠目で二つの丘を見て膝に座っている猫を羨ましがっていたりしていた。

売り上げが微妙に上がっているらしいが一番の売れ筋がパンの耳(リッチーの主食)というのは魔道具店として如何なものなのだろうか。

 

 

「それで汝も冒険者ギルドへ向かうのだろう? ギルドには汝に会いたいと言っているのだが行かないというのなら我が輩から伝えておくが……」

「行きます。めちゃくちゃ行きます」

「ちなみに旅に出発する前に言っていた避妊具についても完成しているのだが」

「買います」

「なぜそんなに食い気味なのか。行く先々で仲間に色仕掛けされ、うっかり流されそうになり決意を固めるたびに邪魔が入る呪われた男よ、期待しているところ誠に申し訳ないが……その、すまない」

「おい、なんで謝った!? というか呪われてるって言ったか!?」

「いや、何でもない。ただその類いの呪いは所謂運命などと揶揄されるもので、それこそ家出店員のようなことをしないと逃れられないからして……なんだ、その、人間よ、強く生きろ」

「えっ? えっ!?」

 

 

バニルさんどういうことですか!?

もしかして俺、幸運値高いって表記になってるはずなのに実は一周回って不幸なんですか!?

ねえ目をそらすなよ!

 

 

 

 

****

 

 

 

 

「あの……。あなたが、サトウカズマ様ですか……? 噂はかねがね、貴方様のご高名は伺っております。わたくしはセレナと申します。その、どうか貴方様のパーティーに入れて頂くわけには参りませ……」

 

 

大人の雰囲気を醸し出しながらも清楚っぽい、黒髪でプリーストっぽい服装の女性が俺に声をかけてきた。

これが転生したてだった頃の俺ならひょいっとハニトラに引っかかっていたのだろう。

残念なことにバニルの言うとおり、俺にかかっている呪いは強烈だったらしい。

アクアでも解呪できないっていうんだから、俺の頬をつーっと涙が伝っていくのも、俺が弱いんじゃなくて仕方がないことだと思うんだ。

俺は深くため息をつき。

 

 

「あんた、魔王軍の手先かなんかだろ。突拍子もなく仲間になりたいだなんて、俺たちの噂を知ってるっていうんだったらおかしな話だろ。それこそ相当の変人か俺のことをした魔王軍が送り込んできたスパイに違いない。パーティーを内部崩壊させて…………っておーい、聞いてるか?」

 

 

急に顔を俯かせて……腹でも壊したのか?

それとも俺の素晴らしい推理にぐうの音も出ずに降参したのか?

そんなことを思っているとニヤニヤしたバニルが俺の方からニュッと顔を出す。

それに対してセレナと名乗った推定魔王の手先は俺の陰を利用してバニルと顔を合わせたがらない。

 

 

「おや、おやおやおやおや。そこにいるのは! 最近ちょっと力が強くなったからといって調子に乗ってナナシに挑み口撃でボロボロになり、お姉様とお慕い申しあげますと言いつつお腹真っ黒なダークプリーストの! 名を確か……ミセスディナーとか言ったな」

「せ、セレスディナだ! じゃなくてセレスと申しましてよ、初めて会うタキシードのお方」

「初めましてぶりであるな、何ら怪しいところなどない、清く正しい幹部よ。我が輩、本日より汝が働くウィズ魔道具店の指導官となるバニルである」

 

 

セレスディナさんが「き、聞いてないぞ! まさかウィズ以外にも厄介なヤツがいるなんて!」と誰にも聞こえないような小さな声で言ったが、俺の読唇術スキルは読み取ってしまった。

どうやらこのセレスディナさん、ウィズ魔道具店で働くことになっている人らしい。

あんな魔境で働くなんて……多分悪い人だけど同情するわ。

 

 

「もしかしなくても私の就職先の方ですよね! 面接をしてくれるのですかありがとうございます! お店の方でして、くれるんですねありがとうございます一生懸命頑張りますので……」

「面接はナナシ副店長からの言伝をもらっている。というわけで今日から1日25時間労働の幕開け、副業禁止! 冒険をしてる暇などないのでこの小僧と魔王の側近には我が輩の方から仕事をやめると断りを入れておく」

「あ、あれ? 一日は24時間ではないのですか? 今25時間労働と……。そ、それからナナシお姉様にお仕事を辞めるという伝達をするというのはどういうことで……」

「流石にちゃらんぽらんパーティーご一行と財政破綻寸前の赤字魔道具店の副店長代理、それから魔王軍幹部とを兼業しようとするのは無謀である。それこそ頭のおかしい紅魔族とアクシズ教を足して2でかけたようなやつでないと」

 

 

どうやらナナシは紅魔族とアクシズ教を足して2でかけたようなやつらしい。

つまり紅魔族2人とアクシズ教2人を一人の肉体の中宿すという……そんなヤツ世に出しちゃいけないだろ。

 

 

「というわけで他の仕事の一切をやめて働いていただくので覚悟しておくといい」

「ま、ままま待ってくれませんか? 流石に私が、その、幹部を辞めると言うのは上司が認めてくれないと言いますか、これでも幹部なので引き継ぎが必要といいますか言いますか」

「安心して頂こう。あのナナシ、すべてを機械化するために動いているようでな、貧弱幹部もうちの店主も結界の管理のお役は御免となること間違いなしだろう」

 

 

なんか俺の予想通りこのセレスディナとか言うヤツは魔王軍幹部だった。

が、ウィズ魔道具店を手伝うために辞めさせられるらしい。




次回かも

もぐにんにん討伐の時に主人公ちゃんに遭ったが最後、ほとんど上司ポジの主人公ちゃんに仕事を任せられてしまったセレナさん……
しかしというか幹部のポジを奪われてしまいかけてる彼女が辿る運命とは!
負けるなセレスディナちゃん、頑張れセレスディナちゃん!
社畜主人公ちゃんの仕事の代わり程度で弱音を吐いてては立派な人外になれないぞ!
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