私の中二心を『エクスプロージョン』ッッ!!   作:桃玉

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前回のあらすじ

主人公ちゃんが一時帰宅からのテレワーク。
そんな中温かく出迎えてくれたアットホームな仲間たち。
お母さん店主のウィズ、お姉さんのウォルバク、頑張り屋さんのバニル、ペットのゼーレシルト、新人社畜セレスディナ。
そんな魔境で唯一の人間であるセレスちゃんは生き残れるのだろうか……


かわいそうな社畜がいたので自分も頑張った

<カズマ>

 

「……大丈夫か?」

「ダイジョウブニミエルカ」

「うん、見えない」

 

 

セレスディナとかいう魔王軍幹部(?)と出会ってから数日。

先日まで見慣れない美人プリーストがギルドの一角で治癒魔法を無償で行ってくれていたとか言う噂を耳にするが、最近はその噂もからっきし。

代わりにいつも貧乏なのに従業員だけ謎に多いし、しかもそのメンバー一人一人が高レベルの冒険者でもかなわないような化け物揃いという魔道具店にて、新たな従業員が働き始めたとの噂が。

あんな悪魔貴族と邪なる神と不死の王しかいない魔境で、いくら魔王軍幹部を自称するかわいそうな子でも生きていけるのか心配になり訪ねてみたら案の定この有様だった。

 

 

「疲れてるのはわかるが、その、女性が床に寝そべるのははたしないと思うんだ」

「……体が動かないのでお構いなく」

「魔力でも使い果たしたのかよ……ほら、ドレインタッチして体力と魔力少し分けてやるから」

「やっ……やめ……ああっ!」

 

 

……どういうことだろうか。

俺が善意でドレインタッチを使ってあげたのに拒絶するとは。

もしかしてドレインタッチアレルギーとか、それに対してトラウマがあるとかか?

まあそんなこといっても使ってしまったものはしょうがない、俺は一先ず服の中に入れて背中に触れていた手を抜き取る。

……決してセクハラなどではなく、ドレインタッチは心臓に近く、皮膚の薄い場所であるほど効率的に行えるからだ。

そんな言い訳をしているとセレスディナは立ち上がり、元気になったのがよほどうれしかったのか涙を流しながら仕事を始めた。

いいことしたなぁ……なんて思っていると奥の部屋からバニルが顔を出して。

 

 

「おお! 仕事中にわざと怪我をしてその度に回復魔法をかけ、体力と魔力をスリ減らし、最終的に念願の休憩を取れていた新人よ、もう仕事を始めてもよいとは素晴らしい根気であるな!」

「あああああ働きたくない働きたくない働きたくない働きたくない働きたくない!!」

「おやおや、まるで目の前にいるどこぞの引きニートのように駄々をこねおって」

「……どうして俺の方を見ていってくるんだよ。出るときは出るのがカズマさんだからな?」

 

 

この悪魔、いつもニヤニヤとして、本当に人の悪感情が大好きなご様子。

最近は偏食しないようにと強制されているとか聞くが、そのあたりはどうなんだろうか。

そんなどうでもいいことを思っているとバニルがニタリと悪魔的な笑いを浮かべセレスディナに。

 

 

「どうしたのだ、ナナシとの契約は『自分の出しうる力をすべて引き出し、ナナシお姉様の代わりを頑張らせていただきます!』であったな? ナナシの立場を乗っ取るか、それができなくば陥れるかしたかったようであるが……いやぁー残念、誠に残念であるな!」

「ああっ! 体がいうことを聞いてくれない! もうヘトヘトなのにどうしてやめると仕事したくてたまらなくなるんだよぉ! 頭の中ではやりたくないのに体が欲してるのーっ!」

 

 

バニルが口から垂れた液のよう何かを拭き取っているということは悪感情の搾取がうまく行ってるってことなのだろうか?

しっかしこのセレスディナ、ナナシに楯突こうだなんて大層な根性があるもんだ。

まあ一体何をされたかは知らないが死ぬほど仕事させられてるようだが。

 

 

「魔法的な契約は自らの意思とは関係なく目的が達成されるように動かされる、まさに傀儡の操り人形。そのような契約をしてしまったが故に自らの首を絞める羽目になるとは思いもしなかったであろう」

「なあバニル、結局こいつは何でこんなに働きづめなんだ? ちょっとくらい休憩した方が仕事効率がよくなるんじゃないか?」

「ああ、せっかくの休憩タイムを邪魔してそこの狂犬プリースト第二号に『殺す殺す殺す殺す』と心の中で連呼させた鬼畜ニート」

「ニートちゃうわ! じゃなくてそんなに俺怒らせるようなことしたか!?」

「いやですわカズマさん。私は品行方正なプリースト、そのような聖職者にあるまじきことを思ってなどいません。慈悲なる女神は言いました『汝、相手にされたことと同じことをするべし。愛には愛を、憎悪には憎悪を』と」

「つまり代弁すると、ぶっ殺したいとのことだ」

 

 

なるほど、じゃあ俺は今すぐこの店から出て行った方が良さそうだな。

お邪魔だったみたいなので今日のところは失礼します!

今にも殺されそうな事実を重く受け止めて逃走しようとした俺だったがバニルに引き留められ。

 

 

「問題ない、このダークプリーストは本当に動けないとき以外は契約の力によって労働を強制されている。無論コヤツがサインした契約書にそう記されているのでな。故に逃げずとも襲われないことを約束しよう」

「ふふふ、その契約書に今すぐサインしてくれると嬉しいのですがカズマさん。ここには巨乳の美女が二人住んでますよ」

 

 

くっ、なんて魅力的な提案なんだ!

しかも目の前にいる多分性格が終わっているコイツも結構な美人、胸もたわわ、今すぐにでも働きたいがここまで働きたくない。

念のためセレナから渡された契約書に目を通してみるが、ぱっと目を通した感じ普通の雇用契約書……なのだが。

 

 

「下の方に小さく書くとか……。こんな初歩的なアクシズトラップに引っかかるなんてかわいそうに……」

「違うのです。私に拒否権はなかったといいますか、今までナナシお姉様に近づくために命令に従順だったといいますか、YESマンだったといいますか……」

「つまり、我が輩の書いた契約書にサインしてしまってこうなった哀れな幹部なのだ。拒否権はないこともないがナナシとコヤツの傀儡の力のせいに加えて過労のせいで思考がまともにできていないのでな。そして考えるのをやめた、というやつだ」

「原因の8割以上がナナシな気がするぞ。というか健康面的には大丈夫なのかソレ」

「昨日帰ってきたナナシの改造手術(マッサージ)を受けたおかげか魔力体力肌のつや腸内環境免疫力などなど多岐にわたるステータスアップにより一日36時間労働できる体を手に入れたので150%の本気で頑張っていただいてる」

 

 

Oh……

神様は聖女様を見捨てたのだろうか。

いや、神様が二人もいるこの店だし、そんなこと言っても意味なさそうだ。

 

 

「大変そうだなぁ、それでも終わってないんだろ?」

「何というか業務が増えやがるんですよね。毎日毎日毎日毎日…………どうしてこの店の店長の返品依頼ばかりを押しつけられクレーム対応に追われなければ……」

「常人の2倍の速さで働こうとも終わらぬ仕事量に押しつぶされそうな元幹部よ。あれだ、脳を魔改造して最短ルートを駆け抜けられるようにすれば睡眠時間くらいは確保できるだろうか。その上で常人離れした肉体操作によってもんのすごい速度で並行処理すればこそ世界各地での全ての仕事をできるというもの。流石に最近は人に任せることを覚えたようだが……」

 

 

何それ怖い!

人力TAS×チート能力しないと掛け持ちできない仕事を毎日休みなくこなしてたのかよ!?

俺は思わずその化け物の方を見る。

向こうの方で日向ぼっこしてるのじゃロリ。

今でこそゆっくりとくつろいでいるように見えるがドン引きだよ!

そんな俺の視線に気づいたのかナナシが。

 

 

「……うん? カズマも脳を弄りたいか? 改造に手術はつきものだが、頭蓋骨をひっぺがし、剥き出しとなった脳に物理的刺激を与え活性化させるだけの簡単なものであるぞ?」

「き、聞いてたのかよ……ってか、んなおっかねぇ手術受けるか! 遠慮しておきます!」

「大丈夫大丈夫、安全性は某の幸運値が『大丈夫だ、問題ない』と言っておる。それに自分でも試したが結構頭がすっきりしていいと思うのだが」

「……一応言っておくが、めぐみんとか喜んでやりそうな気がするけどやるなよ?」

「幸運値が低いと脳みそ弄くったせいで流石に人格変わりかねんからやらんぞ。脳みそはな。汝の彼女を傷物にするはずなかろうて」

「かっかかっ彼女じゃねーし!」

 

 

というか幸運値依存の手術とか受けたくねー!

俺もポックル逝ってしまいそうなので辞めさせてもらいます!

というか自分の脳みそを弄ったんかこの人外……マジでドン引きなんだが。

躊躇なくそういうことできるのは尊敬を通り越して恐怖でしかないんだが?

きっとあの改造大好きすぎて自分の体にいろんな生物の特徴を取り入れていたグロウキメラのシルビアですらそんな改造したことないぞ?

 

 

「そういうわけであるからして、後一週間ほどの契約期間中は店主たちのモーイングコール、プロ料理人並みの調理、フレグランスな洗濯、店主が持ってきた危険なゴミの掃除、返品のご連絡及びクレーム対応などなど、頑張っていただく」

「ああ……実質2週間かかる……ぁぁ……」

「ゾンビが死にそうな声だしてるけど本当に大丈夫そうか?」

「ま、まあ、某が今日中に魔王城に戻りいろいろな管理を機械化すれば従順な下部たちに指示を飛ばし遠隔操作、オート機能使える。仕事の大幅改革が終わった暁にはきっともっと仕事が楽になる」

「そうなのか?」

「ああ、魔王軍のみならず大体の者は力を感覚のみで使うのでな。紅魔族くらいのレベルがあれば某が指示を出すだけで機械化はいらぬのだが、知能があっても如何せん指示通り動いてくれないのでな」

 

 

紅魔族って、あいつらまさかナナシの技術を吸収していって、かつ自分自身で作り上げ利用してるってことか!?

大分紅魔の里が改造されてるなって前訪れたときに思ったけど、まさか一部は自分たちの手でやってたとは……

それはそれとして制御できないのは違いない。

まあ感性が同じな分したいことはおんなじだろうが。

 

 

「まあそういうわけだ。早めに帰ってこれるように尽力する故、その、なんだ。大変申し訳なく思うがよろしくたのんだ」

「お姉様! 本当に早くかえってっきてください、マジで!」

 

 

そんな切実な願いが聞き入れられることはなく、解放されてギルドでたばこを吹かしているのを見たのは3週間後にさしかかる少し前のことだった。

セレスディナ曰く「クソぉっ……私が何を悪いことしたってんだよぉ……生お代わり! これがなきゃやってられっか! ング、ング……ぶあ……このいっぱいのために私は生きている!!」

ナナシ曰く「仕方なかったんだ、目の前にやりがいがあったら取り組まねば。一度作ってみたはいいが造形に納得できずに爆裂してしまった。芸術は爆裂なんじゃ、仕事が長引いたことについて反省はしているが全力を尽くせたと思っている。DO IT MY BEST、後悔はしていない」

 

……レジーナ教徒は社畜気質なのだろうか。

俺は社畜教(仮名)に入信しないことを固く心に決めた。




次回

魔道具店から解雇
魔王軍幹部職撤廃
路頭に迷う聖女様
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