私の中二心を『エクスプロージョン』ッッ!!   作:桃玉

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社畜のあらすじ

機械化により脱ブラック体制した主人公ちゃん。
……だったが、やっぱりワーカーホリックな彼女は毎日休まず何か作業していないと耐えられない体になってしまった。
同様にセレナちゃんも仕事をしないと動悸が激しくなるかわいそうな娘になってしまったのだった。


社畜が退社したらニートになっていた

<カズマ>

 

久しぶりに体を動かすかと思ってやってきた冒険者ギルドの一角。

バニルが相談屋をやっていた場所に腰を下ろして痩せ細っているセレスディナさんがいた。

 

 

「な、なあアンタ、大丈夫か?」

「セレナです。本日付で魔道具店をやめさせていただきました」

「おう」

「セレナです。本職に復帰しようとしたら幹部という地位から下ろされていました」

「お、おう」

「セレナです。というか解雇されてました。技術発展目まぐるしい魔王軍には旧世代の人物は不用とです」

「……リストラされたんか」

「セレナです。ギルドの皆さんから『事情は聞かねぇ。だからこれでも食って元気だしな』と蛙の唐揚げをいただきました」

「い、意外とうまいんだよこれ!」

「セレナです……………………もう、働きたくないです」

「ま、まあ少しくらい休んでも……」

「でも体の震えが止まらないんです。仕事しないと禁断症状です」

 

 

あかんかもしれない。

今まで働いていたことが体に染みつきすぎて無意識で仕事を求めてやがる!

この精神状況の元魔王軍幹部なのかどうかももはや信用ならない社畜は休ませないと!

 

 

「おねーさーん! こっちにシュワシュワ大ジョッキで! あと栄養満点の料理を!」

「ふふっ、心配してくれるのですか? カズマさんは優しいお方なのですね」

「ちょ、お前本性はそんな清楚キャラじゃないだろ!?」

「そうなんですが……なんかクレーム対応が体にしみこみまして勝手にお客様対応の口調に変換されて」

「ああっ、なか、泣くなよ俺が悪いみたいだろ! ちょ、ゆんゆんこっちきてくれ! 積み上げたトランプタワーの隙間からチラチラこっちを見てないで手伝ってくれ!」

「ち、ちち、チラチラ見てませんけどぉ!? で、でもお友達の頼みですしね!」

 

 

ゆんゆんはガタンと立ち上がり崩壊したトランプタワーを見て「ああ、新記録目前だったのに……」と呟いた後、俺の方に来た。

仕事依存症には仕事以外のことをさせて仕事を切り放す必要がある。

 

 

「よし、そうしたらゆんゆん、こいつをニートにするから手伝ってくれ!」

「えっ、嫌ですけど。私、カズマさんとかぶっころりーが増殖した世の中はいやですよ?」

「うん、言いたいことはわかる。わかるが俺を攻撃しないでくれ泣きたくなる」

「で、でもニート増殖計画を実行するのはやめた方がいいと……」

「だから違うって! 働かざる者食うべからずって話は重々承知の上で言ってるんだよ。このセレナさんはな、今まで一日36時間分の仕事を押しつけられ、終わらなかった分は翌日に持ちこすっていう仕事をしてたんだ。わかるか、この人はすでに1ヶ月以上の休暇を引き換えに仕事に打ち込んで、それでもなお仕事しないと精神的に落ち着かないとか言ってるんだ!」

「そ、それは重症ですね……さすがに休まないと体を壊します」

「だろ? だからまずはしっかり休養してもらうために、あと、悪の組織に入らないようにニート化する必要がある。そうだろ?」

「悪の組織とかニート化するっていうのはわかりませんがなんとなくわかりました!」

「よろしい。じゃあ俺はアクア連れてくる……あれでも回復魔法やらの専門家だからな。それまで仕事のこと考えさせないように遊んだりして気をそらせておいてくれ」

「わ、わかりました!」

 

 

 

 

 

 

「というわけで私こと女神アクア様が来てあげたわよ! ……って何々この騒ぎは? もしかしてお祭りかしら? ちょっと私も混ぜなさいな」

「ちょっとアクア、本来の目的を忘れてはいけませんよ? カズマが新しい住人になるかもしれない人がいるからと言ってきたのですから、しっかり見定めないとですよ」

「もしかして女か! 噂に聞くNTRってやつなのだろうか! それも悪くないと思ってしまう自分はもうだめなのだろうか」

「そうですね。ダメネスに改名すべきです」

 

 

アクアを連れて改めてギルドにやってきたらそこは一発芸を披露する会場となっていた。

ご丁寧にも壇上が用意されていてそこに一人ずつ上って酔っ払いが一芸披露をしていた。

そしてその観客席の一番手前にはセレナとゆんゆんの姿が。

 

 

「あっ、カズマさん! しっかりセレナさんの気をそらせてますよ~!」

「うん、ここまでしろとは言ってない」

「わ、私だってここまでやろうとは思ってなかったんです! ただ、私がセレナさんにトランプ芸を披露してたらほかの冒険者さんも集まってきまして……いつの間にか一番すごい技を持っているのは誰だ選手権が……。あっ、ちなみにセレナさんの独断と偏見で優勝者が決まって、優勝者にはセレナさんからおめでとうの言葉が贈られるそうです」

「へぇー。思った以上に健全すぎてびっくりなんだが? ここらの連中なら普通もっとがめつく賞金とかねだるだろ」

「なんか今まで魔道具店で死んだような顔をして働いていたセレナさんを見ていた人たちらしくてですね、最近魔道具店で見かけなくなったから死んだんじゃないかって噂が飛んでたらしいですが、生存確認できたその祝いらしいですよ?」

 

 

セレナは意外にも街の冒険者から心配されていたらしい。

まあ今まで死んだ顔をして働いていたのなら、今日のあの明るくクスリと笑うはかなげな表情に思わずいろいろな感情が出ちまうのもわからなくもない。

アクアが誇張したダクネスのモノマネで「はぁ、最近腹筋がパックリ……はぁ」と言ってダクネスにしばかれていたが、それを見るセレナの顔は憑きものがとれたように明るかった。

 

 

 

 

「あの、それで、私はここでお世話になってよいのでしょうか?」

「いいのですいいのです! 今日から一緒に暮らす仲間として歓迎しようではないか! 幸いにもこの家には治療の専門家も仕事をしない専門家もいることです。彼らを頼って、心身の休養が思う存分できるまで爆裂散歩とか爆裂散歩とか一緒にしようではないか!」

「ちょうど猫とヒヨコもいるしな、世の中には動物に心を癒やしてもらうあにまるせらぴーとやらがあるらしい。掃除はアクア、食事もカズマに任せればいい」

「ちょっとダクネス、私たちに任せて全部何もかもを押しつけようとしないでよね。それじゃあただのニートができあがるだけなんですから」

「だ、だって私より浄化魔法と料理スキル持っている二人がやった方が……少しくらい仲間に頼ってもいいだろう?」

「まあ、こいつは筋肉以外だらしのないやつだが、仲間に頼るってのは悪いことじゃない。それに、労働したらその分休む権利だってあるはずだ、心も体も元気になるまでゆっくりしていけよな。どうせ俺は大金はいって働かなくても生きてけるし」

「そうよ、罪人だって人権が認められているの。ならニートにだって人権はあるはずよ! っていたいいたい! どうして私のことを無言で痛めつけるの!? 罰当たりよ!」

 

 

俺のことをニート扱いしてるんだったら自分はニート以上の何かだって宣言してるも同然なのにそのことに気づかないアホ。

そんな可哀想なアホアの頭がちょっとでもよくなるように刺激強めのマッサージを施していると、その様子を見ていたセレナが面白おかしそうに笑う。

 

 

「ふふっ、皆さん仲がとてもよいんですね」

「……『セイクリッド・ハイネスヒール』」

「えっ!? 今とてつもなくとてつもない回復魔法を!?」

「この様子を見て仲がいいとか言ってたから、死ぬほど疲れてるんじゃないかと思って。いいセレナ、この成金ニートは私のことを甘やかしてくれないの。毎日財布からたった3000エリスしかくれないけちんぼなのよ! 銀行ならもっといっぱいくれるのに……」

「うるさいぞこの駄女神がっ! 俺のことを財布かATMかなんかだと思ってるんだったら……って銀行でお金借りてるのか? なあ? 俺の顔を見ろ?」

 

 

アクアが俺から目をそらす。

絶対こいつやってやがる!

借金取りに追われて大変な思いしたのを忘れて同じ過ちを繰り返してやがんなこいつ!

そんなこと思って握りこぶしを作っていると、何がそんなにおかしかったのか「あはははは」と腹を抱えて笑うセレナ。

こんな何でもないことで笑えるなんて、こいつは本当に相当疲れてるのかもしれない。

 

 

「……し、失礼しました。何のしがらみもない賑やかな場所、今までなかったもので。確かにここならゆっくり休めるかもしれません」

「まあ、少なくてもその丁寧語が抜けるまではゆっくりしていけよな。幸いにも4人ですむにはだだっ広い屋敷だ。好きな部屋を使ってくれ」

「あ、ありがとうございます」

 

 

こうして、元魔王軍幹部、現一般人のセレナはしばらくうちで預かることになったのだった。




次回

心身が回復したセレナさん。
カズマと主人公ちゃんには今までのお返しがしたいと張り切ってる様子。
果たしてお返しはできるのか!?
そして、魔王軍幹部……は高望みにしろ、魔王軍のいい感じの地位へ戻ることはできるのか!?
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