私の中二心を『エクスプロージョン』ッッ!!   作:桃玉

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前回のあらすじ

ダンジョンマスターになったセレナさん。その補佐に任命されたカズマさん。
1週間でかなりの人気店へと変貌させたカズマのセールストーク……
やはり幸運値が高いカズマさんは商人に向いていたらしい。
そんなことはさておき、1週間経過したということは副店長である主人公ちゃんが訪問に来るということ。
はてさて、一体どうなることやら……


視察に来るので本気で対応してみた

<カズマ>

 

スゥー……研修を半ば強制的にやらされてレベルが70台になってしまったパーティー随一高レベルなカズマです。

でも身体能力の伸びしろがなさ過ぎて20レベル以上からはちっとも自分の成長を実感で来てない悲しみよ。

 

そんな俺はなぜかわからんがダンジョンアドバイザーとかいう謎役職と給料を与えられた。

逃げようにもセレナを一人にすることと給金でてるのに仕事を放り出すことに責任を感じ平日3日労働を強いられてる社会人。

そして今日は本店よりナナシ副店長が視察に来るとのことだったので支部店長も俺も張り切ってます。

 

……嘘です、本当はリモートワークしたいです働きたくないです。

だって副店長怖いんだもん!

「ダンジョンの入り口から店内の様子を自分の目で確認したいのでな、迎えは不要だ」とかもはや脅しだろ、新人社員としては緊張で心臓が飛び出るどころの騒ぎじゃないわ!

そんなことを思っていると支部店長が俺の方にぽんと手を置き……

 

 

「アドバイザー、おめぇの考えてることはアタシにもわかる。『ダンジョンでの自衛手段確保のため、ラストダンジョン級のモンスターとの戦闘研修』、『モンスターの暴走、スタンピード発生時など異常事態時に備えた緊急避難経路使用研修』……おかげでアタシのレベルも上がった。お前のレベルも底上げされた……何も恐れることはない! あれだけの苦行を耐え抜いたお前なら大丈夫だ」

「セ、セレナさん……」

「挫けそうになってもアタシがなんとかしてやんよ、これでも本店での営業成績は上から数えて3番目だったんだ。……これから来るやつの業務を引き受けてたアタシに任せな」

 

 

タバコを一本口にくわえ、煙を噴かしながら俺の顔も見ずにそんな頼もしいことを……

イヤん男前、惚れちゃいそう……!!

俺、一生ついて行きますセレナ支部店長!

 

そんなことをしているとダンジョンの入り口を映し出すモニターに映る金髪碧眼。

ついに来たことを知り俺はゴクリと生唾を飲み込みかけ……

その後ろについているクリス、めぐみん、ゆんゆんを見て察した。

あ、これナナシじゃない、アイリスだ。

 

 

『皆様、今日はお集まりいただきありがとうございます』

『あはは、そうだねぇ、王女様の頼みなら喜んで……なんてね! ダンジョン探索の専門家、盗賊職のアタシを頼ってくれたからには任せてよ!』

『そ、そうですよ王女様のためなら……と、というかお友達のためなら私は牢獄の中灼熱地獄の中永久凍土の中どこへでも!』

『重い、重いですよゆんゆん! それに副団長が簡単にへりくだっては盗賊団の威厳に関わります、もっと私みたいに堂々としていてください! 今日は師匠に扮してお出かけ中なのですからそう言うへりくだった態度はよりNGですよ? わかってますか?』

 

 

なるほど、つまりアイリスは近衛兵の目を掻い潜ってお忍びでいつもの盗賊団ごっこ遊びの真っ最中って訳だ。

いや、だとしてなんでダンジョン探索!?

いっちばんめぐみんのこと連れてきちゃ駄目だろ!

そんなことを思っているとセレナさんが。

 

 

「……ちっ、そういうことかよお姉様」

「な、なんだよいきなり舌打ちして……一応言っておくとあそこにいるのはナナシじゃないからな?」

「いや、あの後ろよーく見ろ? ナナシお姉様がひっそり着いてきてる。恐ろしく薄い気配……ダンジョンマスターじゃなきゃ見逃してたね」

「い、言われてみれば……?」

「こっちに和やかに微笑みながら手ぇ振ってやがる……そっちからは何も見えないはずなのにバケモンだろ」

 

 

俺には全く見えないがダンジョンマスターはダンジョン内のことを手に取るようにわかるっていうし、質量か魔力か何かを感じたのだろう。

確かに言われてみればうっすら何かが写っていなくもないが、気配を消しただけでここまで薄くなるもんかね……

 

 

「というか修学旅行の生徒と引率の先生的なあれか? 問題児(めぐみん)しっかり見張っててくれよナナシさん! ……まさかそれの対処もこっちでやんなきゃなのか? 爆裂魔法使われても大丈夫なんだろうな……!?」

「あの紅魔族……街中でも頭のおかしいだのと言われてたがなるほど、爆裂魔法ねぇ。……まあ安心しろよカズマ。このダンジョンの開発者はあのナナシ。なんとか爆裂魔法数発食らっても落ちねぇようにできる。魔力障壁はコスト削減のためにも抑えたいから常時張っているわけじゃないがいざってなったらアタシに言え、絶対この店は守ってみせる!」

 

 

もうこの店長頼もしすぎる!

彼女の期待に応えるためにも爆裂魔法の気配を感じたら教えないとな。

めぐみん、器用に無詠唱で爆裂できるし神経とがらせておかないと……

 

 

『ところで今日は何階層まで行く予定なのですか? クレアからは15階層まで半日で行くとか言っていましたが流石に嘘ですよね? 師匠並の機動力、探索能力などなど、万能を極めた先に生まれるスピードだと思うのですが……』

『ああ、それは私がお父様にダンジョンの地図みせてほしいなってお願いしたら喰い気味に許可されまして。探索能力なしで、貫通できる地面を破壊しながら進むとあっという間に15階層です。まあ地面を砕くのにとてつもない魔力を要するのでちょっと体が疲れてしまいますが』

『な、何という力業!? それでよくダンジョンが潰れませんでしたね……』

『何故かわからないですがこのダンジョンはとても堅いのです。一度最終層まで行ったこともあるナナシさんがそうおっしゃっていたので間違いないでしょう』

『あっ……』

 

 

めぐみんは何かを察した。

ナナシさんが最終階層まで潜ったら……まあそれは攻略したってことで。

攻略したのにダンジョンが存続してるってことは誰かがダンジョンマスター継いでるってことだ。

じゃあ誰が、と言えばナナシだろう。

 

 

『もう、私の師匠は流石です……』

『何か言ったかしらめぐみんさん?』

『なんでもありませんよクリス。ただ、この脳筋娘に一体どうやってダンジョン探索の手ほどきをすべきかと思い悩みまして……プロとして何かないですか?』

『プ、プロ……そっか、プロねぇ。ふふん、プロである私から言わせてもらうとそのダンジョン探索の方法は風情にかけるというヤツだね。まあ今までお忍びでしか来なかったっていうんだったら時間も限られるだろうし、しょうがないとは思うけど……今回は古来からの伝統的な方法で行ってみない?』

『所謂王道というやつですね! お話では聞いたことがあります。探索職の方が罠やお宝を見つけ、パーティーで協力してそれに対して挑むというアレですね! 実際のものを見たことがなかったので私、気になります!』

『そ、そうかい? アタシの活躍をそんなにみたいのかい? えへへ……しょ、しょうがない王女様だなぁ!』

 

 

子供に頼られて口では何か言いつつもめっちゃうれしそうに体をくねらせているクリス。

いつにも気合いましでダンジョン探索を始めている。

5階層までは初心者用だから難なくこれると思うが、流石にこの宿屋まで来れるか?

めぐみんというお荷物もいるし、初めてのダンジョン内連携はうまくいかなければ余計な疲労をためる。

 

 

「くっっくっく、ダンジョンアドバイザーとしての俺が設置した嫌らしい罠の数々……果たしてどう切り抜けるかな?」

「……おめぇ、アタシより悪者の顔してんぞ。あんなウザい罠を仕掛けやがって、本当にお前も魔王軍に来ないか?」

「いーやーだーねぇ! 俺は今の生活に満足してんだ、本当ならこの仕事だっていやなんだからな? というかお前、もう魔王軍でも何でもないのにまだそんなくだらないこと考えてんのかよ。ナナシに任せておけって」

「くだらなくはないだろ、あそこが俺の居場所だったんだ。というかナナシお姉様に任せておいたらどうなるか…………ホワイトな職場環境、最新技術をそろえて追いつけない旧世代、相も変わらず実力主義で……考えただけでも鳥肌が」

「は、ははは……」

 

 

「いや、今聞いた感じ結構いい職場じゃんか」などとは言えず、俺は乾いた笑いで返す。

だってもうそうなってる気しかしないんだから。

すでに魔王軍は労働基準法など諸々を定めて快適な職場環境になっているに違いない。

あの人、仕事早すぎるからな。

 

そんなことを思っている間にもアイリスご一行の進撃は止まらない。

気配を消したり擬態したりするモンスターを仕掛けてもゆんゆんのエネミーサーチやとクリスの敵感知スキルで瞬時に気づかれ、アイリスの一撃で沈められる。

単純に肉体ステータスが人類最高峰なアイリス、知力が高く魔力お化けな紅魔族(+荷物持ち)、とてつもなく幸運値が高い探索担当クリス、最後にはもはや説明不要なナナシ。

 

 

『ねぇめぐみんさん?』

『どうしましたかプロのクリスさん』

『もうそのプロとか呼ぶのやめてほしいかなって……。ちょっとのプロの意地もプライドも崩れてさ』

『まあ、気持ちはわかりますよ? 高火力連発お化けの二人にどうしてそんなめんどくさいことするんですかとか、全てを蹂躙すればいいじゃないでしょうかなどと言われて、実際に実行されるとそういう気持ちになるのはわかります』

『ありがとうめぐみんさん……! 普通のダンジョンなら私の技術が役に立つんだろうけど、お宝を見つける以外にアタシの役目ってないし、崩落の心配のないダンジョンだから上級魔法とか激しい物理攻撃とかしないでって言えないし……どうしてこんなに堅いんだよコノォ!』

『八つ当たりで壁を蹴っても痛いだけですよ? まあ仕方ないのです、このダンジョンのマスターはきっと……』

『あ、やっぱり? 最近いろいろなダンジョン攻略したとかいってたし、何ならさっきのアトラクションとか見て薄々ナナシさん事案だとは思ってた』

『多分ですが、今回の目的である宝箱の中に眠る料理も師匠が気まぐれクックした物が入ってるのかと』

『なーるほどねぇ。あっ宝箱……クンクン……なんだ、料理はいってないじゃん外れじゃん、しけてんねぇ』

『クンクン…確かに料理の気配がしませんね。ちなみに料理がよく出現するのは15階層だそうです。後もう一踏ん張りですか』

「いやいや、俺が調教したミミック! 何で調べるまでもなく外れってわかるんだよ!」

 

 

頭の後ろで手を組みながら散歩でもするかのように歩くめぐみんとクリスに思わず突っ込む。

俺が仕掛けた罠の数々……

例えばフェンリルに地面に氷を張ってもらい、強風を吹かせる風の大精霊を配置したり。

例えばスライムやトード系、触手系のモンスターハウスを作って女性冒険者のみ引っかけるようにモンスターたちに教え込み、男性陣の攻撃の手を止める罠だったり、

例えば魔力を注ぐと開くドアに『仲良くなれる魔道具』(効果:互いの恥ずかしい過去をさらし合うことで仲を深める)を併設したり……

 

モンスターも、俺の罠も、すべて力技で強引に突破する。

罠やモンスターを回避するまでもなく、上級魔法を撃ちながら、斬撃を飛ばしながら、さながらデストロイヤーや巨人が行う地ならしのようにすべてを蹂躙していった。

うん、無理ゲーだ。

 

 

「セレナ、俺は大人しく料理作ってくるから、それまでの時間稼ぎは任せた」

「えっ、ちょっとまってくれよ!?」

「ありがとう、んじゃ行ってくる!」

「何も許可してねーよ! えっ、マジでアタシが持ちこたえないとだめなのか!?」

 

 

クリスが敵感知スキル、罠発見スキル、罠解除スキルで先行し、敵が現れたらゆんゆんかアイリスが中級魔法や上級魔法、王族の剣技でワンパンして進んでいく状況……

まってろよ!

とりあえずOKONOMIYAKIとTAKOYAKI、それからYAKISOBA作ってくるから!

その匂いを嗅げば大体の空腹キッズたちはイチコロよ!

 

 

 

 

 

<めぐみん>

 

「くんくん……あ、こっちこっち! こっちから食べ物の香り、じゃなくてお宝感知スキルがビンビン反応してるよ!」

「た、確かにいい匂いがしますね! 私、おなかがグーペコです!」

「ねえアイリスちゃん? そんな言葉どこで覚えたの? またカズマさんが?」

「いえ、ナナシさんが持ってきてくれたMANGAの中の登場人物がそのようなことをおっしゃってて……」

「せんせぇ!? 何やってるんですか!?」

 

 

騒がしいゆんゆんが、だそうですよ師匠。

ダンジョンマスターなら見えてますよね?

そんなことを思いながら私たちは10階層をぐるぐると徘徊する。

アイリスが言うには15階層で匂いをたどるのが一番手っ取り早いとのことでしたが、今はクリスがいるのでもっと効率的に見つかることでしょう……なんて思っていたのに。

死ぬほど食欲を刺激する匂いが。

もしかして飢えた獣である私たちの判断力を鈍らせる新手のトラップでしょうか。

 

 

「こ、これはいつかのお祭りの時に見たヤキソバというやつでは!?」

「アイリスちゃん、実はソースを使ったお料理はヤキソバだけじゃないの。私は一人で屋台を全部回ったから知ってるわ、これはタコヤキとオコノミヤキの香りも混じってるわ! 上に乗った削り節の香りがあるしきっとそうだと思うの」

「……どうして私でもわからないお宝の中身知ってるのかな? もしかして伝説の勇者が持ってた解析スキルでも持ってたりする?」

 

 

多分師匠のことですから人数分用意してるに違いありません。

つまりこれが意味するところはもう一品ソースを使った料理があるということです。

……そう言えばオコノミヤキは二つの流儀に派生するという話がありましたが、もしかするとそれが拝めるのかもしれませんね、楽しみです!

って、私まで判断力を鈍らせてしまってどうするのですか!

気をしっかり持つのですよめぐみん!

クリスが宝感知に反応があると言っているとはいえ、もしかすると手前の宝箱はダンジョンもどきで奥に本物の宝箱がある可能性だってあるのです!

……じゅるり。

 

そんなことを思って匂いをたどっていると、そこには建物が。

『ウィズ魔道具店ダンジョン支部』……?

 

 

「へいらっしゃい! ようこそ王女様とその影武者ご一行様! 快適なダンジョンライフをサポートする魔道具店、ウィズ魔道具店ダンジョン支部へようこそ!」

「お、お兄様!?」

「よう、アイリス。驚いただろ」

「はい驚きました……まさかこんなにも精巧なお兄様の偽物がいるだなんて」

「ちょっ!? お兄様を偽物扱いか! あれか、お兄様はニートの引きこもりだから働かないってか!? 残念だったなアイリス! 俺は超絶ホワイト企業にスカウトされてアドバイザーとして活躍させてもらってる! もう引きニートだなんて呼ばせないんだからな!」

「いえ、そこは特に気にしてなかったのですが……。その、何というか、お兄様の実力でここまで来るのは……」

「ふっふっふ、この数週間でまたしても魔王軍幹部を人知れず無力化した俺をなめるなよ? ダンジョンでレベリングして今や70を超えたんだ、そこらの敵に負けるわイダダダダダッ!?」

 

 

私はカズマ(仮)の頬をつねった。

もちろん私はこのカズマが覆面をかぶった偽物だとは思っていませんでしたよ?

ただ、幻術の可能性などもありましたので触れるかどうか確認したのと……

後は、最近私との爆裂散歩(デート)の予定を無理といって断る甲斐性なしがどこをほっつき歩いていたのかわからず心配だったので、思わず言葉より行動に表れてしまいました。

 

 

「アイリス、一応本物みたいですよ」

「おい、なんで俺の頬をつねった。普通現実じゃないって思ったら自分のつねれよ」

「別に、私は現実だと知っていましたよ? ただカズマスクを被ってる偽物の可能性もありましたので。ただ、この程度の痛みで涙目になるのは確実にカズマです」

「……仕事終わったら覚えとけよ」

 

 

涙を浮かべて情けない顔で私の方をにらみつける自称レベル70超え。

仕方ないので帰ったら誘惑ついでに上目遣いで謝ってやりましょう。

そんなことを思っていると、ふとカズマの言葉を思い出す。

……まさか、師匠とアイリスがいつの間にか入れ替わっていたとかそんな訳ないとは思いつつもアイリスの方を見ると。

 

 

「……引率ご苦労様でした、とでも言えばいいのか? ようこそナナシさん。お店の裏に支部長がいるので」

「あいわかった。アドバイザー殿、貴殿の働き、なかなか面白い趣向だったと思う。これからも励んでくれ」

「いや、そろそろ俺はやめたいんだが。家に貯蓄あるし、本来は働く理由なんてないんだからな?」

「まあまあ。今度おいしい話がある。一つ噛まないか?」

「……話を聞いてからな。とりあえず俺は接客、というかダンジョン飯を提供して、お客さんに満足してかえってもらう使命があるんでしつれいしますね?」

「うむ、ではな」

 

 

……カズマと師匠の話を、目と口をまん丸くしていた三人が眺めていた。

まあ気づいてはいました、ダンジョンのどこかにこの人がいることは。

ただ、まさかこの私たちのすぐそばにいるだなんてまさかのまさかです。

 

 

「とりあえず、飯にしようぜ! 今日はダンジョンに配置する予定だった焼きそばとお好み焼き、たこ焼きパーティーだ! たーんとお食べ!」

「…………いろいろ聞きたいことはありますが(いおいおひひはいこほははいあふが)いただきましょう(いははひまひょお)

「食いながらしゃべんなよ……」




次回予告

セレスディナちゃんがお姉様とのお話をしている中、アクセルの街へめぐみんたちと直帰したカズマ。
たぶん15巻の話がもう終わると思われる中、一体どう話が進んでいくのか全く考えていないのでほとんど予告が書けない作者は次回を書けるのか!?
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