何かもうすんごい、すんごかった!
書籍15巻でこんな話なかっただろって。
なんだよ、ウィズ魔道具店ダンジョン支部って、これを書いてたときは深夜テンションだったんだ……頭でも狂ったかってくらいのりと勢いだけだった、懐かしいあの頃。
何も考えずに気の向くままにタイピングしていたあの頃。
なんだかめぐみんたちがダンジョン探索するしさ、爆裂魔法使いが一番来ちゃ駄目だろ!
というか本当にカズマさんが何でダンジョン経営のお手伝いする流れになったんだ?
キャラが脳内で話し出すんです。
本当にこれ書いたやつ頭ばっかだろ!
……おっと、これ作ったの俺でした。
カズマ「なめんな!」
かまってちゃん女神が家出したので追いかけた
『拝啓
すがすがしい初夏の季節となりました。
皆さんいかがお過ごしですか?
ダクネスは、タンスの角に自分の足の小指をぶつける遊びはほどほどに。
めぐみんは、爆裂魔法の使用を少しは控えないとやがて来たる地球温暖化現象の理由の一つに数えられると思います。
カズマは、性欲を持て余しているのはわかりますがいい加減みんなの洗濯物を床に敷いてその上を転がり回るのはやめてください。
さて、何だかんだ書きましたが、最近のみんなは一人遊びの時間が多くて私のことを一切構ってくれません。
これは由々しき事態だと思います。
そう思った私は一つ閃いたのです。
「あ、もしかして私のありがたみに気づいていないから、なおざりにするのね」と。
というわけで私、家出してきます。
行き先はまずはアルカンレティア。
私の信者たちにチヤホヤされてきます。
あまりの居心地の良さに、早く迎えに来ないと住み着いてしまうかもしれません。
もし連れ戻したいと考えるのなら早めの方がよいでしょう。
道中のお金は心配ありません。
というのも敬虔な信徒であるのじゃロリちゃんもついでに付き添ってくれるので、旅の費用や食事は全額持ってくれるそうです。
なんか王都に行ったり魔王城観光ツアーに連れて行ってくれるらしいので毎日が充実しそうです。
最近魔王軍の動きが静からしいので、観光ツアーのついでに強力な魔法をいっぱいお見舞いしてしようと思います。
これから毎日おいしいお料理と一緒にシュワシュワパーティー三昧だって考えるといてもたってもいられません。
やっぱりちょっと私がこの生活に飽きたかなって頃合いに迎えに来てくれると嬉しいです。
追伸。
のじゃロリちゃんが「ふはは! 不倶戴天の敵、勇者カズマよ、見ているな! 汝の女神は連れ去った! 返してほしくば追いかけてくるといい! 返してほしくなくば某の代わりの店番はよろしく頼んだ! 時間が空けば料理しにいく」って虚空に向かって叫んでいました。
何度も訂正して申し訳ないのですがお迎えは早めにお願いします』
「っと。こんな感じでどうじゃ?」
「バッチリよ!」
<カズマ>
「……家出じゃなくね?」
「そうですね」
「そうだな。見たところ友人との長期間旅行にしかみえない」
リビングに置いてあった一通の手紙。
筆跡から見るに、これはアクアじゃないな。
あいつはもっときったねぇ。
それに絶対一カ所や二カ所どころじゃない書き直しをする。
最初の頃ギルドの仲間募集のための張り紙を書いたときも結構何回も書き直して……
結局できあがったのは詐欺臭プンプン漂う子供の落書きみたいなヤツだったな。
そんなことを思っているとめぐみんが。
「ダクネスは何を馬鹿なこと言っているのですか!」
「バ、バカ!? じゃあ何だというのだこの手紙は?」
「ふっふっふ、聞いて驚け、これは邪悪な存在にアクアが連れ去られてしまった……そういうことでしょう!」
「な、ナンダッテー。ソレハタイヘンジャナイカー……」
ダクネスが棒読みで気まずそうに俺の方に助けを求めてくる。
いや、めぐみんの言葉は間違っちゃいないだろう。
ナナシは邪神だし、アクアは帰ろうとしてもナナシ以外に帰る手段がなさそうだし。
こりゃ実質的に誘拐……
「くっ、どうせ連れ去るのなら私のことを連れて行ってくれればいいのに……!」
「それは単純にお前がナナシと一緒にいろいろ楽しみたいだけだろ。暇だったら行ってきていいぞ?」
「おおっ! では行きましょう! みんなでバカンスを楽しんでやろうではないか!」
「そ、そうだな、アルカンレティア……素晴らしい人々が私を待っている!」
「おい、俺抜きで話を進めんなよ。言っておくが! 俺はアルカンレティアなんて行かないぞー。あんな魔王軍幹部も精神疲労マックスになる気の休まらない魔境に誰が行くか」
「「私たちが行くが?」」
何でこの二人はアルカンレティアにいくことにノリノリなんだよ!
いやわかるよ?
めぐみんはアルカンレティアというより温泉と、それからナナシと一緒に魔王城観光ツアーに参加して「ふはははは! エクスプロージョン!」ってしたいだけだろう。
ダクネスは犬猿の仲であるアクシズ教徒にいじめられたい、ぞんざいな扱いを受けたいという己の願望ダダ漏れなただドエムだってこともわかってる。
それはいつものことだからいいが、俺のことは巻き込まないでくれよ。
だって……
「俺はウィズのとこ行かなきゃだから二人で楽しんでこいよ」
「何だカズマ。もしかして旅行に行……じゃなくてアクアを追いかけないのか?」
「そうだよ? というか今本来の目的を忘れて旅行を思いっきり楽しもうとしてたろ」
「し、してにゃい!」
「とにかく、俺はナナシから頼まれたの! 穀潰しの我が家のマスコットが家からいなくなったのは……ちょっと寂しいとも思うが。それでもアルカンレティアは嫌だからいかないぞ」
「こ、この男は! 一応これでも私たち、あなたに好意を寄せている美女なんですよ? その二人が一緒に旅行に行こうと誘っているのに……」
「私も苦楽をともにするのは素晴らしいことだと、仲間としてそう思うのだが……」
「いいか、苦楽をともにするのはいいとして、あそこには苦しかない魔境の。わかる? 俺は楽したいの」
「……ウィズ魔道具店も人外しかいないアクセル随一の魔境だと思うのだが」
「人外だからって差別はよくないぞダクネス。てなわけで俺はしばらくあそこでご厄介になるから、じゃ」
「カズマ? 本気ですか? もしかしてこの前ダンジョンで頬をつねった件でまだ怒っているのですか? そ、その、そんなに痛かったのなら謝ります……ですが、私のことを放置してセレナとかいう女性と一緒に働いていたら、妬いてしま……」
バタン。
めぐみんが何が上目遣いで喋っていたが焼かれるのは勘弁してほしい。
俺の場合レベルが70だろうと100だろうと無限だろうと、灰一つ残らず消滅する。
ワンチャン幸運値のおかげで体の一部は残るかもしれないが、それでもやめてほしい。
部屋を出て、向かう先は職場。
支店から本店へ栄転した俺の新たな生活が始まる!
「へいらっしゃ……何だ本当は旅行に行くのは吝かでもないのに大人の駆け引きだとか言い訳して乙女心をもてあそぶ極悪非道な小僧か。我が輩とお揃いのピンクエプロンだが……」
「極悪非道じゃないし! ウィズとウォルバクさんもそんなうわぁ……みたいな顔するのやめてください! ……ってかナナシから聞いてたのか俺のバイトの件」
「うむ。今日から頼むぞ。しかしながらただいま本店にあるエプロンは在庫切れでな。店主か邪神からスティールで奪うといい。特に勤務態度だけが取り柄の貧乏リッチーのを奪ってもらえるといい」
「よろこんで!」
「ほ、ほえーっ!? 『カースド・クリスタルプリズン』」(無詠唱ver.)
すいません。
ウィズさん勘弁してください。
……普通に下心なくエプロンをとろうとしただけなんです。
あれです、部活動の先輩に後片付けの掃除をやらせないように先輩からモップやらを奪い取るのとおんなじ心境だったんです。
「もーっ、カズマさん! いくら上司の命令だからってしていいことと悪いことがありますよ!」
「……街中というか、店の中で上級魔法を使うのはやめてください。死んでしまいます」
「またまた大げさですよカズマさん。ナナシさんから伺ったお話ではレベルが冒険者時代の私と同等だったと……。そのような方が上級魔法の1発や2発で死ぬわけないじゃないですかー」
「いいか、俺、冒険者、レベルが上がってもステータスあがならい」
「ほえ?」
何こてんと首をかしげてるんだ。
このリッチー、周囲にいる種族が意味分からんほど強い奴らばっかだから感覚麻痺しおった!
普通人間はそんなに堅くありません!
そもそも普通は中級魔法で殺傷能力十分なんだからな?
多分ダクネスは耐えるし、アクアもギリいけそうだが、めぐみんとか俺はきっと即死だと思う。
「あれ? もしかしてカズマさんはダンジョン籠もりしてないので? てっきりナナシさんと一緒にダンジョン支部に行ったと伺ってたので、そのついでにスキルポイント乱獲もしてきたのかと……」
「なんだそのスキルポイント乱獲って」
「えっと、スムーズにレベルアップできるところまでレベルを上げて、上がりにくくなったら私の『不死王の手』でレベルドレインを引き当ててもらって……そうするとスキルポイントやスキルは温存されたままなので」
なんだそのお手軽楽々スキルポイント入手方法は!
ドラ○エ9の転生みたいなもんか……素晴らしい!
これを開発しただろうナナシには感謝だな、俺も暇になったらダンジョン支部に顔出してそれやってみよっと。
ナナシと同じ方法で強化された俺ならワンチャン魔王を討伐できるまであるんじゃないか?
そんなことを思っていると隣からひょっこり顔を出してきたバニルが。
「ちなみに、不死王の手の効果は毒・麻痺・昏睡・魔法封じ・即死・石化・混乱・恐慌・錯乱・弱体化などなどがランダムで発現する。もしも即死を引いてしまった暁には『おお、勇者カズマ、死んでしまうとは情けない』などと聖職者や神に笑われることだろう。故に我が輩はオススメしない」
「……」
「あ、でも安心してください! ナナシさんは100回以上はリセットされてるはずですが、それでも弱体化しか引かなかったので、カズマさんも幸運値高いですし!」
「まさにハイリスクハイリターン、悪魔が好む契約方法であるな。世の中そう甘くはないのだ、およよ」
バニルの泣き真似が妙に腹立たしい。
しかし言うとおり俺はやんないでおこうかな。
だってエリス様とじゃんけんして負けないくらいの幸運がほしいんだろ?
俺レベルでもいけるんだったらいいが、流石にアクアが家出してる状況では試したくないな……
「おーっと、家出女神のことを考えている意外に仲間思いな小僧、ここで朗報が入ってきたので聞くがいい! なんと幸運なことか! ここに余り物のレベルリセットポーションがひとーつ! 入荷の予定なし、在庫もこれしかなし! お一ついかがか?」
「買います」
「ついでに毛根が死滅する代わりに魔力が上がるポーション、それから魔力がすべてなくなるが肉体ステータスがアップするポーションなどなど、不要在庫の詰め合わせは」
「いらな」
「ああ! うちの副店長はいつも在庫が余ったときには気前よく買い取ってくれ、その使い道を工房でいろいろ試し魔改造していたというのに最近の若いのは……」
「……お前、ナナシにそんなことさせてたのかよ」
「おい、あくまで自主的にあやつが行っているだけであるぞ。我が輩のことを鬼畜だのとみるのはやめてもらおうか」
そんなこと言ったって、買わないもんは買わないぞ。
流石に俺は鍛冶スキル持ってるがナナシほど器用じゃないんだ。
もし仮にそのポーションの中に男のたしなみグッズが入っていたら買わなくも……
そう思いかけたとき、バニルが口を歪め、一つの缶を見せつけてきた。
『サキュバスのヤツ』
そう書かれている、いかにもお手製商品に書かれていたのは例のお店のシンボルマーク。
俺はうまい商売をするバニルのことを見直して、その証にその包み紙に入ったポーションセットを手に収めた。
次回予告
妹からの手紙