バニルとウィズという強力な助っ人が仲間にいたため、勝利確定演出のカズマさん。
今日も元気に爆裂爆裂ランランラン♪
かくして、爆裂魔法を食らい、魔王の娘はアフロヘアになって捕らえられたのだった。
<主人公ちゃん>
禍々しい装飾がなされている重厚な扉。
その奥に感じるのは凍てつく殺気。
肌を突き刺さすように放たれるそれは悪の首魁が座る玉座から。
その隣から怪しい笑い。
「くっくっく……きゃつは魔王軍の中でも新米。期待の星だが古きを理解することを放棄した小童が敗北を喫するのは想定内よ」
「貴様、何言ってるんだ? いや、真面目に何言ってるんだ。俺の娘がボコボコにされたんだぞ? ……この恨み、晴らさでおくべきか」
「魔王陛下、お気持ちはご尤も。しかしそれが罠だとは知らず人類は自らを蝕むことになる」
「ほう、それは如何でか」
「無論、魔王陛下の能力を継承せし親族の力たるや、すべてを蹂躙し尽くす天下無類の異能を如何なる場においても十全に振るう畏怖の対象……故に、人間が陣地に足を踏み入るときこそ人類滅亡の一手となり得よう」
「見込んだとおり、お前を我が軍に引き入れたのは間違えではなかったな」
と、いうわけで!
某ことナナシ、イン、魔王城!
悪の親玉とそのナンバー2の会話はいいですねぇ、中二病にはたまらないです!
ちなみに今の時間何をしていたかと申しますと娘ちゃんのモニタリングですね。
魔族としてはまだまだひよっこな彼女にGPSを持たせて旅をさせたので、位置さえわかればテレポートと魔道カメラの応用でいつでもどこでもプライバシーを無視した覗きを行えるって訳です。
それにしても、まさかカズマ君がレベリングを魔道具店店長と副店長代理と一緒にやるのは予測済みでしたが、まさかダンジョンなのにめぐみんやダクネスが一緒についてくるのは意外でした。
私が整備していたダンジョンなので壁の強度は半端なく、爆裂魔法でも決して崩落しないような構造でしたが……
ですが、何という私への信頼感!
まさかそのことを発見して洞窟の内部でポンポン爆裂するだなんて、命知らずにもほどがありますよ……
と、自分のことを棚に上げて弟子の心配をしてみる。
爆裂魔法に人生をかけた頭がぶっ飛んでいる魔法使いより、まずは異常な幸運値によって危機感が喪失している私の心配をした方がいいかもしれません……
そんなことを思っていると、ダンジョンからでてきたカズマ君ご一行。
ダクネスが真っ黒いクルセイダー専用の鎧を着用したうえで、娘ちゃんを米俵を担ぐように持ち運んでいますね。
「おいそこの金髪の女! 俺の娘に何粗末な扱いをしてるんだ! もっと騎士ならばお姫様抱っこで運ぶのが礼儀だろ!」
「ダクネスにお姫様抱っこするように連絡しました」
「さすが我が側近、仕事が恐ろしく早い! そして金髪の女はお姫様抱っこするな! なんだか娘が顔を赤らめてるだろ! 体調が悪いかもだし早く下ろして休憩を取らせろ! 貴族ならそれくらい気を遣ってだな……。ナナシ、連絡を頼む」
……正直に話していいですかね?
この親子、めんどくさいです。
もう相思相愛なのはいいのですが、流石に互いのこととなるとちょっと過剰な節があってですね……
何ですか、勇者たちに「娘をもっと大事に扱え!」って連絡させる魔王って。
勇者と魔王の娘の禁断の恋が始まりそうで面白そうですが、そうなったら魔王さんが覚醒モードに突入して、絶望の限りを地上に振りまくと思うので妄想程度でやめておきましょう。
私はこれ以上ダクネスに変な連絡をしなくても済むように気配を消してそっと部屋を出たのでした。
ドアを閉めるとそこには近衛のマモンさんが。
どこへ行っても人外しかいない魔王城なので、人間の形をした私は舐められないように強者の風格をまといながら額に手をやり……
「今日も精が出るのう近衛隊長殿」
「はっ! 恐縮であります側近殿!」
「うむ。……そろそろいつも通り魔王陛下の発作が現れると思うが、あれはただ親馬鹿をこじらせたヤツの末路だ。通常通り任を成せ」
「はっ、了解であります! この場は私にお任せを! 蟻一匹通しはしません」
ビシッと敬礼をし、マモンさんの脇を通り抜ける。
体格は頭二つ分ほど違えども、かつて側近という役職を宛がわれた際に反抗してきた魔族やらはまとめて赤子を相手にするよりもたやすく切り伏せたという過去があった故に、力至上主義なところがある魔族の皆さんは対等な立場として接してくれるのです。
そう、すべては計画通り。
ウォルバクちゃんに取り入り魔王軍へと加入し、最終的に魔王城の結界維持機構を構築し、その功績より側近まで成り上がるという、我ながらかなりの出世街道を歩んでおります。
まあ、あと数日で側近ごっこも終わってしまうんですけどね。
ちなみに、側近というポジションは魔王さんの次に偉い感じです。
前まで魔王軍幹部という役職もありましたがまともな幹部がいなくなり、幹部自体の数も魔王軍としての仕事をしないウィズと実の娘、それから魔王軍幹部の中でも最弱と名高いセレスディナちゃんしかいない状況でしたので解体するに至ったのです。
故に、私は現在魔王軍のナンバー2!
最近は私の権限で有給休暇制度も開始したのですが、そのおかげで魔王さんが有休を取得していなかった数十年分を消費しきる勢いで悠々自適に生活しています。
今まで抑圧されていた反動が解放されたせいか、それとも私と魔王の娘ちゃんで肩腰を揉みほぐしてあげて心身ともにリフレッシュしているせいか、みるみる若返って魔力があふれ出してるようにも感じますが気のせいでしょう。
でも「ああああああっっ! 愛しの我が娘よ! どうして俺をおいて遊びに行ってしまったんだぁあぁああ! これが反抗期というやつなのかぁああ!??!」なんて定期的に叫びまくる魔王さんは見たくありませんでした。
「ということで現在八坂お嬢様は王家の寝室で恋バナ中です」
「ペ、ペイン……それは本当か?」
「はい、本当にございます魔王様」
「ほ、本当に本当か?」
「はい。理想の相手は父を超える勇者だそうで……」
「グハァ……ッ!!」(吐血)
「ま、魔王様ぁー! ち、違うと思うのです! お嬢様は魔王様と結婚すると言っていたお嬢様のままです! 魔王様を超える物などいない、その裏返しではないかと!」
「俺を……超えるものがいたら……娘は……させん! させんぞ!」
「そうです、そのいきですよ魔王様! お嬢様は魔王様のことを信頼しているのです!」
「うぉおおおおっ! やる気がみなぎってきたぁあっ!」
今日も魔王城は平和です。
娘が恋バナするくらいで落ち込むメンタルくそ雑魚魔王様の機嫌をとるペインさんと顔を合わせたらたいそう疲れたご様子でした。
なんで普段はキリリとしているダンディーな魔物の王なのに、娘のこととなると途端に馬鹿になるのでしょうかこの人。
娘ちゃんがかわいいのは否定しませんが、思春期の子が恋バナしたっていいでしょうに。
……ただ、どうしてアイリスちゃんとめぐみんと一緒に団らんしているのかは私の目を以てしても見抜けなかったのですよ。
「それで、その男とはどこまでいきましたの! ま、まあ私はそこまで知りたいわけではありませんが、そちらの方が気になっていますとおっしゃってますので……」
「はい! 私、気になります! お兄様とはどこまで行ったのですか! 私がいない間にどこまで抜け駆けしたのですか!」
「この前はダンジョンで一夜をともに過ごしましたよ。私が我慢できず激しく求めるとカズマはそれに応えてくれて私の背中に手を入れ、弄るように……」
「おい、頭のおかしい爆裂娘! 俺がいない間に妹に何吹き込んでんだ! お前が爆裂魔法を撃ちたいって、俺がドレインタッチで魔力補充しただけだからな! 何か卑猥に聞こえてならないし……見てみろよ子供連中の反応を!」
「……アイリスは失神。八坂娘も顔を真っ赤っかに染めて……私の勝ちですね」
「くっ……これが恋バナ! まさか勝ち負けがある勝負事だとは……油断していた!」
「いや、恋バナに勝ち負けなんてないですからね? というかめぐみんは気をつけろよ、ナナシさんから『娘を優しく扱え! まだピー歳だぞ!』って魔王から苦情がきてるって脳内直接放送される前に大人しくしろよ」
『カズマ、魔王が距離が近すぎる、10mは離れろとのことだ』
「……もう、着信拒否とかできませんかね」
気持ちはわかる、わかりますよ?
私だってうんざりしてるし、なんなら今度から魔王から直接電話してくれって頼みたいです。
☆魔王軍メンバー紹介のコーナー☆
ペイン:カズマとドレインタッチ談義をしたかったがゴッドブローで消滅したレイス
ノス :仲間を切ったことで激高したが、アクセルの警察署に転送された騎士
ロギア:カズマの声まねで仲間に切られた可哀想な鬼
マモン:山羊頭の魔王城最上階層の魔王様直属の近衛隊長
そのうち全キャラ登場するかもですね。
次回
魔王の娘、王都でもてなされる……かも