久しぶりに主人公ちゃんを書いた気がします。
そんな一時期姿消していた彼女は何をやっていたかといいますと、魔王の側近ごっこで非常に中二病をしていたのでした。
親馬鹿魔王は魔王の娘が心配なご様子です。
最近の魔王の娘ちゃんなんてバニルにぼこされ、捕まり、カズマと一緒に行動してるものですから毎日発狂している魔王様。
もう正常な会話が成り立たないほどご乱心の様子だったのでしかたなく……
<カズマ>
「……えっと、カズマ?」
「はいカズマです」
「……その、お仲間のクルセイダーに抱えられている簀巻きの魔族は、私の目に狂いがなければ魔王のお嬢に見えるんだが……」
「はい、そうですね」
「お嬢、一体何があったらそんな面白状態に……」
「くっ、殺せ!」
俺たち三人と魔族一人は王都へ向かうためにウィズ魔道具店ダンジョン支部への通路を使わせてもらった。
このダンジョンは王都から少し歩いたところにあるからな、アクセスが非常によいことで評判だ。
てなわけで扉をくぐって、王都へ行くついでに、セレスディナ支部店店長へ挨拶をしに行ったのだが。
「いやぁ、俺がレベリングのためにバニルとウィズと一緒にダンジョン潜ったのは知ってるだろ? それで、ダンジョン最下層までいってレベルとスキルポイントを上げてきたんだが、そのときにうちのアークウィザードが八坂さんのお友達? を爆殺しまして……それで復讐しようとしたらしいんだが返り討ちに遭って」
「はい、私がやりました。ですがバニルに言われてやったことですし、爆裂魔法を撃てたので反省も後悔もしていません!」
「……相変わらずお前のところの爆裂魔法使いは頭がおかしいのな」
そうです、うちのパーティーメンバーはおかしなのばっかなんです。
そんなおかしなヤツに負けてしまって魔王の娘は屈辱過ぎたせいかクッコロ多めだ。
うちのド変態クルセイダーはそれを見て羨ましがっていたが、正直一体どこに魅力を感じているのか、俺の方を見て同じようなことをしてほしそうにするのはやめていただきたい。
「お嬢、こんな頭のおかしい奴らに捕まって不本意だとは思うが、悪い奴らじゃないんだ。敵対を解けば無事に解放されると思う。アタシはここで待ってるからよ、いつでも遊びにきな」
「セレス……!」
「お前らもな、冷やかしとか、爆裂魔法をぶっ放したりしない限り……ダンジョンはすべてを歓迎する」
そう言ってセレスディナは俺たちを地上まで転移させた。
ずいぶんダンジョンマスターの拡張機能活用するのうまくなったなぁ……
この前までは罠の設置にも戸惑ってたのに、ずいぶんと格好いいダンジョンマスターになってきたじゃないか。
……ただ、目標の魔王軍幹部へ復帰するという道はどうなったのだろうか。
****
「おにいさまー!」
「アイリース! 会いたかっ」
「貴様! 公衆の面前で我慢していたのはわかるが流石に節度を持て殺されたいのか!」
俺と妹の感動の再会。
ヒシィッと抱き合おうとしたその瞬間クレアが「自分でもそんなことしたことないのに羨ま……けしからんぞ!」と剣を突き立てて俺とアイリスの間に割って入った。
「兄弟の感動の再会を邪魔して! 空気の読めない近衛はさがっとけ!」
「空気を読めないのは貴様の方だろう! 何か、私が浮いているとでも! 否、そのようなことは断じてない! 周りの冒険者、兵士らの顔を、気配を見てもそれを言えるか!」
「残念でした! 俺らがいるのは俺たちしかいない一室で兵士さんとかの顔は見えませーん! アイリスの手紙を読んでレベル1になったのをもう一回70近くまで上げ直してきた兄の姿を見て感動しておけばいいものを! そもそも! 俺にしてくれた仕打ちを忘れたわけじゃないからな!」
「何のことだったか! 私はアイリス様の護衛として何にもくじけない屈強な精神を持っている! そんな脅しごときで屈すると思ったか!」
俺とクレアがガルルルと牙をむき出しにして叫び合っていると、レインとダクネスが仲裁に入る。
俺の元気そうな顔を見てふっと笑ったアイリスの笑顔を見て俺の顔にも笑顔が咲いたが……
一つ、気になることが。
「なあアイリス」
「何でしょうお兄様?」
「……一つだけ確認したいことがあるんだが、いいか?」
「あ、私からも一ついいでしょうか?」
「見間違えじゃなきゃその鎧……聖鎧アイギスじゃ?」
「見間違えでなければその魔族……魔王の娘ですか?」
俺はダクネスに羽交い締めにされながら、アイリスを指さしてそういった。
そんな俺の声とアイリスの声がハモる。
一瞬静かになった部屋の中、真っ先に口を開いたのは……
「そうです、私が聖鎧アイギスです!」
「……アイリス、悪いことはいわない。その鎧を脱いでナナシさんかエリス様、もしくはアクアに封印を施してもらうんだ」
「おや、何を物騒なことを言う者がいると思えば、お前……いや、あなた様はアイリス様のお兄様でしたか!」
なんだこいつ。
めちゃくちゃまともな会話してるのにめちゃくちゃ違和感!
こいつは立てば猥談、座れば卑猥、歩く姿はエロ全開な性なる鎧のアイギスさんだろ!?
なんでこんなことに……
「今、どうして私がこんなにかっこよいんだ! って思いましたね?」
「いや、そこまでは思ってないけど」
「でも残念。私はアイリス様と出会って生まれ変わったのです。なんだかんだ好みを語っていましたが、この子は、何というか、守ってあげたい! そんな私の内なる庇護欲をかき立てるのです」
「わかる」
「私はこの方のために生まれてきたといっても過言ではないはず。この方に着ていただき、守ることができればそれ以上の喜びはない! これは運命! アイギスとアイリスという名前も一文字違い! これの出会いは運命が導いた必然なのだ!」
……正直、アイリスとアイギスの名前のくだりはよくわからなかったが、それでもこの鎧からは邪な気持ちを一切感じることなく、むしろしっかり神器はかくあるべきだという想像そのままだ。
一体こいつに何が起こったんだ!?
まさか我が妹のスーパーキューティーな魅力は人格まで変えてしまう魔道兵器だったのか!
我が妹ながら末恐ろしいと、才能の片鱗を感じていると、アイリスが。
「この鎧さんは先日ダンジョンへめぐみんさんたちと行った際にですね、道ばたで偶然段ボールに入って拾ってくださいと書かれているのを発見しまして。それ以来私になついてしまったのでクレアとレインに頼み込んで飼っているのです」
「ってわけだ。これからよろしくお願いしますね、お義兄さん?」
「お義兄さんやめろ! サブイボたったわ!」
「それで、私の鎧さんの件はわかっていただけたと思うのですが、その、お兄様……ララティーナが抱えているのって」
「魔王の娘だな」
「や、やっぱり!? 手配書で見た顔そっくりだったので……初めまして!」
「アイリス様! どうして敵の首魁の娘にそう簡単に近づくのですか! 離れてください!」
アイリスの声を聞いてクレアが勢いよくアイリスの前へと出る。
これだけ見ると本当にできた護衛だ。
が、正直無力化済みだからそこまで心配しなくても大丈夫だ。
「無力化されてますし、反抗心も感じられませんので大丈夫だと思ったのですが……」
「そうそう、アイリスのいうとおり。今日はお土産でとっ捕まえてきたんだ。なんかダンジョンでばったり出くわして戦闘になったもんでな、めぐみんが爆裂魔法を……」
「ま、待て待て! 魔王の娘を捕まえてきたというのも驚きだが、ダンジョンで爆裂魔法だと!? 崩落しなかっただろうな!」
「大丈夫に決まってるじゃないですか。そもそも王族のエクスプロージョンもどきで易々洞窟に縦穴を作りながら攻略していくあなた方に言われたくはないですよ」
クレアの発言にめぐみんがそう言い返すが、その言葉にレインは何かショックを受けたようでへなりと倒れてしまった。
きっと、自分が目を離した隙になんて危ないことをしていたのかと思って立ちくらみに襲われたのだろう。
「とりあえず、そういうわけで元幹部の娘さんだが、これで人類と敵対する幹部は全滅ってわけだ」
「一つ訂正させてもらうと私が敵対するのはお父様を傷つけようとする不埒な輩ですわよ。家族を狙うものは容赦しませんわ」
「……だそうだ」
「なるほど……つまりはお父様が大好きなのですね! 私と同じです!」
「ほう、まさか人族の娘も……見所がありますわね」
何か遠くから幸せすぎて吐血した音が聞こえた気がするが気のせいだろう。
どういうわけか意気投合しているプリンセス二人組は父の素晴らしさを話し合うという、敵対勢力同士なのに仲よさげな……
なんならダクネスが魔王の娘を放しても、一応魔力を使えなくする魔道具を使用しているとはいえ、一切反抗する気もなく、お茶会を始めていた。
……平和っていいよなぁ。
次回
魔王様がうるさい。
娘のことを愛するがあまり暴走気味な魔王様に代わりナナシが執事として出動。
なんか戦えるバトラー(執事)ってかっこいいよね!
的なのりで展開されるだろう……