ウィズ魔道具店ダンジョン支部店を通過し、王都にやってきたカズマパーティーと魔王の娘。
普通、そんなやつを捕虜にしてきましたーとか言ったら英雄ものの快挙ですが、いきなり王女のところへ。
もちろんそのせいで大混乱……にはならないのがこの主人公ちゃんに浸食された世界。
王女と魔王の娘が和気藹々と恋愛トークを始めたのでした。
<カズマ>
「……というわけでして、私が将来婚約したいと思える男性とは法律的に駄目だと、残酷な現実を突きつけられてしまったのです」
「やっぱりお前もうちの三人娘とおんなじ残念美人だったのな」
「親孝行な娘と言ってください。それに、お父様と血の繋がりはないと……」
「えっ、そうなの!? もしかして異世界でもDNA判定ができるように!?」
「と、信じているだけですが、しかし、私のディーエヌエーにはあの人こそが私の運命の人だと刻まれているのですわ!」
「いや、信じてるだけかよ!」
魔王が一体どんなやつなのかは知らないから何とも言えないが、そもそも魔王さんもきっとかわいい娘の戯れ言くらいにしか思ってないだろ……
なんて思えればよかったんだが。
『えっと、キミ、カズマ君っていったか?』
「はい、カズマです」
『娘に伝えてくれ、お前は紛れもなく俺の娘だ……が、結婚はやぶさかではない』
「……どうしてナナシさんから間接的に連絡来なくなったと思ったら魔王から直々に脳内に直接語りかけられるような事態に陥ってるんでしょうかね!? もしかしなくてもこれは脳内電波ジャックというものじゃ……というかそういうことは娘さんに直接伝えてもらえないですかね!」
「カズマ? 急に窓の外に向かって叫びだしてどうしましたか? もしかして旅の疲れ、度重なるアクシデントに嫌気がさして狂ってしまいましたか?」
「そう思うんだったらもうちょっといたわってくれてもいいと思うんだ爆裂狂いのめぐみんさん。王都に来て早数日。毎日アイリスと魔王の娘を城外に連れ出し、爆裂散歩に付き合わせるな! 誰が頭を下げてるんだろうな? ……俺だよ! 魔王からも国王からも娘のことをむやみに危険な場所に送らないでくれと、激しい怒りに満ちあふれたお言葉を戦闘中なのに飛ばしてくんだよ!」
そう、もう王都に到着してから5日かそこら。
毎日欠かさず爆裂魔法を撃ちに行くうちの狂った魔法使いは一体どこに撃ちに行ってるかと思えば、まさかまさかの魔王とチート持ちとの戦いが激しさを増す決戦の地。
天下分け目の合戦が始まろうと男たちの雄叫びが悲鳴に変わった。
おかげで魔王軍も人類も互いに攻め込もうにも、いつ爆裂するのかわからないせいで攻め入れず。
加えてめぐみんを捕まえようとしてもかなり遠くから放たれる魔法、その後は魔王の娘が使うテレポートで撤退、撤退が間に合わなくても人類最強マイシスターが立ち塞がる。
アイリス曰く「人類も魔族も話し合えることがわかりましたし、別に無駄な犠牲を出す必要はないのでは?」とのこと。
これには魔王の娘も「せっかく恋バナをして今まで失われていた青春時代を取り戻しているというのに、今ここで亡き者にするのは勿体ない」とツンデレ発言。
つまり、この魔王と国王とがかわいいかわいいと手を焼いている娘は親同士の政策に真っ向から反対している現状だ。
もちろん人類とモンスターの戦いはそんな子供の言葉で止まるほどやすいものじゃない。
父親としての二人は今すぐにでも職務を放り出して娘のところに駆けつけるために休戦命令を出したいところだろうが、王として引けず、時間だけが浪費している。
娘の作戦勝ち、といってもいいんじゃないだろうか。
最初はめぐみんが「紅魔族は爆裂魔法を撃たないと死んでしまうんです。さあ、我とともに戦地へ赴こうではありませんか!」と言う一言から始まった日課がまさか王族の娘二人に利用されるとは思ってもみなかっただろう。
「そ、それで、八坂様は一体どうするのですか! 禁断の恋愛はこれから一体どのように発展させればいいのですか!」
「もちろんたかが法律程度の障害……圧倒的力で粉砕することにしましたわ」
「ふ、粉砕!? 具体的にはどのように……」
「まずは魔王に即位するのですわ」
「いきなり!?」
「もちろんそれまでにいろいろと魔王らしいことをしなければなりませんの。だって魔王とは、魔物、魔族の王。頭は十分養えてると思いますが、箱庭で育った私にはまだ力がなく、扱いきれない……そう、王の力を継承するために、毎日の生活の余計な部分をそぎ落としていきましたの」
「な、なるほど! それで魔王を倒して力を手に入れ、その上で『自分に負けたんだ、敗者は勝者の言うことを聞くんだ』と半ば強引に!」
「……あなた、意外とお転婆さんなのね? 確かにそれもいいと思うのだけど、流石に強引すぎて引かれないか心配になりまして……そちらの方法は思いとどまりましたわ。今は普通に王位を継承して新たに誰とでも好きな人と結婚してもよいという制度を設立する方面に……」
この魔王の娘、本気も本気で自分の父親と結婚したいらしい。
見た目俺より年上なのに、一体どうしてこうも拗らせてしまったのだろう。
俺が思うに変態デュラハンのベルディアさんが悪影響を与えた説を推していきたい。
きっとこうだ。
「いいか、我が娘よ。俺以外の男は全員……というのは言い過ぎだが、あのベルディアだけは確実にだめだ! 半径5メートル以内に入ってきたら服従の呪文を使って首をはねさせるんだ」
「魔王様!? そんなご無体な! ……まあ俺、デュラハンなんで首はつながってないですけどねー!」
「よし、お前は魔王城から出禁だ」
「魔王様!? これから私はどうやってウィズにセクハラをしてけばいいのですか! 私の唯一の生きがいを奪わないでいただきたい!」
そういうわけで、男を知らずに育ってきた箱入り娘は父親がくれる無償の愛を恋人に対する愛とまるっきり同じだと考えるようになってしまったのだ。
「……かわいそうに」
「人の顔を見ていきなりそう言うことを言う貴方の方こそかわいそうですわ」
「いや、何でもないんだ、ただこれから世界が平和になったときに、しっかり恋愛をしてほしいなって、ただ、そう思っただけで……」
「ひ、人のことをお子様扱いしないでくださる!? この前習得したライトニングブレアの餌食にして差し上げますわよ!」
ライトニングブレアって、確か似たような名前でアイリスの技にセイクリッド・ライトニングブレアってのがあった気が……
最近ずっと一緒だし、めぐみんと外行くのが息抜きになっているアイリスが暇を持て余したら。
「もしかしてアイリス……」
「わ、私が教えたわけじゃないですよ? 一応指導はしましたけど、最初から使えてましたので、その技の効率化とかを一言二言言わせていただいただけで……」
「でもそのライトニングブレアってのは王家秘伝の固有魔法だろ? 聞いたことないし、ここに来るまでにいろいろなやつから魔法やらスキルを教えてもらったが、そんな名前見たことないし……」
「それは某が伝授したからな。『汝、力を欲するか?』と問うたら頷いてのう」
「へぇ、そういう感じだったんだな……本当にナナシってやつは…………一体いつからそこに?」
驚いて目を向けると、そこには魔王の側近ナナシ。
今日はいつもの着流しではなく、魔王の側近としての装いなのか、執事服でのご登場。
敵軍の幹部が一体どうして平然な顔して紅茶を淹れているのだろうか、外の兵士たちは一体どうなっているのか。
「魔王閣下がかっかと五月蠅くて敵わんからな、つい数分前に抜け出してきた」
「あっそうですか」
「何だ、久しぶりなのにうっすい反応よのう。普通『外の兵士はどうした』とか『姫様お下がりください! 魔王の手のものだ!』とか、勇者らしく対応してくれても……むしろそうしてくれた方が面白いだろうに」
「……じゃあ、あえて聞くが、どうして魔王の側近がここに?」
「もちろん、某の役職は王女の影武者故に」
「うん、知ってたけど」
しかもコイツ、兼隣国の宰相兼魔王の側近兼女神エリス・アクア・ウォルバク・レジーナの友神という……
他にも知り合いの神様や宗教家のお友達がいるとか聞いたことがあるが、もう十分おなかいっぱいだ。
正直、こいつが動けば世界平和に……
「カズマ」
「はい、カズマです」
「身に過ぎたる力をむやみやたらに振るえば、其れ即ち破滅への一途を辿る。決して、新しい道具の開発や力の会得に力を入れすぎたあまりそちらに関して興味が薄いわけではない…………さあ、お嬢様方、最高級の紅茶はいかがかな?」
……このバトルジャンキー、世界平和には関心が薄いようだ。
そんなナナシから紅茶をいただいて絶賛するお姫様。
なにがともあれ、これからはナナシがいるし、俺の脳内通話はなくなって平穏がもたらされそうだ。
次回 アクアはセシリーとミツルギに保護された!?
ようやくカズマと合流できた主人公ちゃん。
しかし残念かな、アクアの姿が見えない!
一体どこに行ったというのだろうか……
というわけで家出娘……というか無断で旅行に出かけたアクア大捜索編。