王城でアイリスとお茶会を開催する魔王の娘。
カズマとめぐみんはナナシの淹れたお茶に満足。
そんな中、戦いが膠着状態から少数精鋭のミツラギ、ハーレムっ子×2、アクア、+αアクシズ教団体ご一行様が魔王城へ。
八坂娘に散々八坂父(魔王)の良さを散々言われ、別に倒さなくってもいいんじゃと思い始めたそのときのことだったのでアクアたちを止めにナナシといくことになったのだが……
<カズマ>
「さあ勇者ども、かかってこい! まずは私の部下が相手だ!」
「…………はい?」
「さあ、行くのだ闇落ちカズマよ!」
俺は何言ってるんだこいつと言いたいのをグッとこらえて可笑しな事を宣う魔王の側近に視線を向ける。
そもそも誰が闇落ちだよ。
あと、どうして転移先が魔王城の中なんだよ。
いや、薄々感じてはいたけど!
「くっくっく、反逆の勇者。まさかあの程度の輩に怖じ気づいたわけではあるまい」
「どっちかっていうとお前の言動が理解できなくて怖いよ!? そもそも俺、いつお前の部下になったんだよ、全く記憶にございませんが!」
「汝、私の弟子だろうに」
「ほとんど直接の指導してもらったことないんだが!? おかげさまですっかり忘れてたわ!」
「さあ、行くがいい、私が育てた最弱職は少々手強いぞ?」
どうしてアクアを連れ戻すだけのはずだったのに……
このナナシ、どうして俺のことを魔王の手先みたいなポジションで戦わそうとしてるんだ!
どうせ負けたら「クックック、やつは魔王軍の中でも最弱職。だが戦いのウォーミングアップ程度にはなっただろう?」とか抜かすんだ!
「くそっ、サトウカズマ! 女神様の従者なのに一体どうして悪の手先になってしまったんだ! 目を覚ませ!」
「誰が従者だ! 目を覚ますのはおまえの方だよ! 俺はただアクアを連れ返すために来たんだ!」
「なに! つまり命が惜しくば僕の大切な人を、人類の希望を渡せとでも? ふっ、僕を侮ってくれるなよ、僕の大事な人なら誰も彼も守ってみせる! それが、勇者としての責務であり、僕の覚悟だ!」
アクアがミツラギのことを「今、私のことをちゃっかり大切な人って言ったわこの魔剣の人。うっわぁー……キッツ」と言いたげな目で見ている。
……が、当のミツラギはアクアの前に出て俺と対峙してるので知るよしもなく、抜き身の剣を一切の油断なく構える。
「女神様を差し出せば命は取らない? そんな汚い手には乗らないぞサトウカズマ!」
「いや、一言もそんなこといってないし。というか勝手に人のことを魔王軍にしないでもらえるか? 別に俺はカツラギと戦いに来たわけじゃ……」
「ミツルギだ! おのれサトウカズマ! この僕なんて眼中にないとでも言いたいのか!」
「話がややこしくなる、アンタは黙ってろ! というかどうしてもうすでにナナシと俺のことを敵認定してるんだよ! いったん落ち着いて人の話を聞けよ!」
「ふっ、そう言って僕らを油断させ、その隙を突いて攻撃するつもりだろう? ああ、わかっているとも、君はその小賢しい戦法で僕を含め、あらゆる敵を討伐してきたんだ。正真正銘命をかけた真剣での戦いで何をしようと……」
「そうだよ、お前はいっつも人の話を聞かないで一人で突っ走る系だったよ!」
何が「一体どうして悪の手先になってしまったんだ! 目を覚ませ!」だ!
お前こそその曇りきった色眼鏡を外してしっかり世界を見てみろよ。
きっと今までしてきた過ちに気づいて当分家に引きこもりたくなるだろうから。
「さあ、サトウカズマ、剣を抜け! 決闘だ! 女神様がほしかったら僕と倒して手に入れろ!」
「……はぁ」
「なんだそのやる気のない顔は! 馬鹿にしてるのか!」
「何というか……お前を倒せばアクアを連れ帰れるってんなら、まあ、面倒くさいこと抜きにして倒そうかなって。『ティンダー』『ウィンドブレス』……『狙撃』」
もうこいつを説得するのは諦めた。
一回倒して、ミルルギのことはナナシに任せて、俺とアクアはアイリスのところに戻れば一件落着ってな。
俺は魔法を不意打ち気味に繰り出す。
しかし、拮抗することもなくその魔法は神器である魔剣に切断された。
「サトウカズマ……その、強力な力……サトウカズマならざる好戦的な思考……本当に魔王の手のものになってしまったのか」
「ふふっ……ああ、そうだとも。勇者カズマは、魔王から力を与えられ、私と同じように名を失ったのだ! さあ、血湧き肉躍る戦いを見せつけるのだカズマ改め、戦闘員六号!」
いつの間にか名前を剥奪されてた件。
湯婆婆でも「荻野千尋と言うのかい、贅沢な名だねえ。今日からお前の名前は千だ」って言って名前の一部は残してくれたじゃないか。
魔王はよっぽど俺の名前が気に入らなかったらしい。
……というか魔王が力を授けたじゃないから、自力だから!
「……一体何が貴様をそこまで追い詰めたんだ」
「いや、別に何も追い詰められてはいないんだが」
「話せ! 話してくれ! 僕と君は大層な仲じゃなかったが、それでも相談してくれたってよかったじゃないか!」
「め、面倒くせぇ! 何なんだこの話を聞かないコミュニケーションバーサーカーは! おいアクア! おまえが転生させた勇者面倒くさいぞ、何とか説得してくれ!」
「ごめん。カズマさん、ごめん……」
あ、アクア?
どうして急に謝って……
まさか、お前もミレレギみたいに人の話を聞く能力を失ってしまったのか!
すでに可愛げのあるアホの範疇から逸脱していたお前の残念さにさらに磨きがかかったとでもいうのか!
「ごめん。私じゃむりだわ」
「頑張れ! アクア頑張れ! お前は女神だろ! さっき難なく魔王城の結界を破った女神だろ! お前ならできるあとはやる気だけだ!」
「……ねえカズマさん。私、いつの間に魔王城の中にいたの? …………つまりそういうことよ」
ああ、そうか。
アクアは基本的に真面目な俺とは違って家でのんべんだらりすることに命をかけてる穀潰し。
そんな駄女神が魔王討伐なんて、しようと思っても途中でお腹が痛くなってきたとかもっと仲間を集めた方がいいとか言って、最終的に何もなさずに借金だけ増やして帰ってくるはずなんだ。
それがあの魔剣の勇者殿に無理矢理……
「女神様はきみじゃなくて僕をとってくれたみたいだね」
「違うと思うよ?」
「女神様の想いに応えるためにも、僕は君を倒してみせる! かくg……!」
「『フラッシュ』ッ!」
「あああぁあっ! 目がああああぁあっ!」
「う゛がああ゛ああぁあ! 目がぁああああ↑」
俺の魔法による範囲攻撃。
勇者と女神は目に深刻なダメージを負って藻掻き苦しみその場から動けない。
再び俺のターン!
めぐみんの義母さん直伝の技を食らえ!
「『スリープ』!」
「……呆気ない。実に呆気ない決着よ。命をとるにすら値せん、この程度の搦め手に嵌る軟弱者が魔王の御前に立とうなど100年早いわ! ……そこの唯一耐え抜いた者を除いてな」
「えっ、えっ、私? ねえのじゃロリちゃん、それって私のこと言ってるの?」
「ああ、そうだとも女神アクア。さあ、試練に耐え抜いた猛者よ。魔王の元へ……」
「行かせねぇよ!? まず俺が戦ったんだから俺が言うべき台詞ですよねナナシさん! 何で締めの言葉取っちゃうんですか!」
「だって言いたかったんだもん」
「子供か! そんな見た目で騙されると思ったかこののじゃロリ!」
「いいか小僧。久遠の時を生きるのに必要なこと、それは童心を忘れぬことだ。川の流れが石が削り、閑かに蝕むが如く、悠久の時の流れは意思を削り、暇が精神を蝕む」
とかなんとか言ってるがアクアの方に視線を送るとぽかーんとしてるだけだった。
まあ、アクアはバカだもんな。
そんな小難しい表現されても何を言ってるかわからないもんな。
アクアが話を理解できなかったのか、それとも理解してるが「何言ってるんだこいつ」と口をあんぐり開けているだけか、その真偽はともかくとして。
「つまり年甲斐もなくはしゃいだことは認めるんだな?」
「……そうだ、この魔剣の勇者の処理、もとい、国王閣下が率いる軍へお届けするのは某がやっておこう。カズマはアクア様を連れてさっきの転移の魔法陣から帰還するといい。ではの!」シュタッ
「あっ、逃げた! ミロロギ連れて逃げたぞ卑怯者!」
アクアとともに魔王城へ。
一度来ただけで入り組んでいる魔王城の道を覚えられるわけないじゃまいか!
そもそもこの城、某なんちゃらポッターが在学してた魔術学校並に変則的に通路が変わるんだ、わかるわけない!
しょうがないから警備の人にでもここがどのあたりで、ナナシさんのロッカーがどこにあるか聞こう……なんてできるか!
次回 ヘブンズ・ドアー自分の幸運値を信じて デュエルスタンバイ!