私の中二心を『エクスプロージョン』ッッ!!   作:桃玉

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前回のあらすじ

ナナシが暴走しだした。
魔王と魔王の娘、それからアイリスが相手取るも互角以上の実力で迎え撃つ主人公ちゃんにどうしようかと頭を悩ませるカズマ。
魔王たちに足止めをしてもらっている間にどうしようか……
そのとき、紅魔の魔女から悪魔のような提案を持ちかけられたのだった。


爆裂魔法の使い手が増えたので不敵に笑ってみた

アイリスたちがナナシを相手に戦っている。

その体は数え切れないほどの傷を作られ、アクアの回復魔法で元の状態に戻されを繰り返していた。

ナナシを止める戦いをダクネスの背中ごしに見ている俺は選択を迫られている。

 

「……カズマも覚えてみては? 爆裂魔法」

「爆裂魔法を覚える……俺が?」

「ええ」

 

 

めぐみんの赤い瞳が俺の方をじっと見つめる。

……上級魔法も覚えてない俺が魔力をしっかり制御して撃てるのか?

そもそも魔力が足りない。

俺に魔力は中級魔法1発撃つのだってマナタイトに魔力を肩代わりしてもらわないといけないレベルだ。

 

 

「バカだな、俺が撃てると思ってるのか? 魔力なくてよくて不発。最悪干からびて死ぬぞ?」

「ええ、撃てますとも。私は信じてます、カズマのことも、爆裂魔法の可能性も、どこまでも」

「……ちょっと待ってろ。その作戦にするかどうかは、ほかの方法一回考えてからだ」

 

 

宝石のような瞳に吸い込まれ、思わず頭を抱える。

これまでの冒険で見てきた、めぐみんの一撃必殺の爆裂魔法。

確かにスキルポイントは十分にあるし、毎日めぐみんと爆裂散歩に行っていたせいもあり、魔法の詠唱も覚えている。

でも、こんな肝心要の局面でそんなリスキーな賭に出ていいのか。

ほかにもっといい方法があるんじゃないかと頭を巡らせるも、どうしてか思い浮かばない。

思い浮かぶのは甚く俺のことを信用しているとじっと見つめているあの赤い瞳。

俺は決心した。

 

 

「はぁ……駄目で元々、人生はギャンブルってか」

「カズマ……? 何かほかにいい方法は浮かびましたか?」

「いいや。今日はどうも調子が悪いらしい。まったく思いつかん。……つーわけだ。準備始めるぞ!」

「……邪神をも討ち滅ぼす、究極の攻撃魔法の指導はいりますか?」

 

 

めぐみんは驚いた表情を浮かべたが、すぐにニヤリと笑った。

そうだ、このギリギリな感じこそいつもの俺たちって感じだもんな。

 

 

「よし、アクア! こっちきてドレインタッチだ! これからとびきりの魔法を正気を失った邪神にいっちょ食らわせてやるからよ!」

「いやよ」

「よし、そうこなくっちゃ! じゃあ背中向いて吸わせ……今なんて?」

「いやよって言ったの。どうして私の神聖な魔力を汚らわしいリッチーのスキルで吸い取らせてあげないといけないのかしら。いや、ウィズのことは嫌いじゃないのよ?でもそれはそれ、これはこれ。アンデッドはやっぱり祓うべきなのよぉおおあああああっっ!!」

「黙って吸われとけ!」

「誰が黙って吸われるもんですか! 抵抗して……ってあれ!? 確かに抵抗してるはずなのにどうして吸われ続けてるの!?」

「毎日本当にだらだらしてるお前と違ってこちとら毎日……いや、週に数回……たまにサボったかもしれないが! それでも魔力操作の練習してたんだよ、むしろそれ以外練習してない! 練度が違うんじゃ練度が!」

 

 

なんとも悔しそうな顔をして魔力を吸われ続けてるアクア。

いくらアクアがステータスカンストの女神だからって、落ちこぼれだって必死に努力すりゃ、エリートを超えることがあるかもよ、てな。

ようやく抵抗するのを諦めてブツブツと「帰ったらきっと世界の危機を救ったって賞金をもらえると思うのだけど、カズマの分は私のですからね。だって私がいないとこの作戦も成り立たないんだからね?」と俺に言ってくるのをはいはいと流す。

 

そしてようやく爆裂魔法分の魔力を流し込んだ。

水を飲み過ぎて穴かがたぷたぷで気持ち悪い感じに似た感覚を覚えながらも皆に指示を飛ばす。

まずはナナシと戦って時間を稼いでくれているアイリスたちだ。

 

 

「アイリス! 無茶言って悪いんだが、魔王たちと協力してナナシの隙を作れるか!」

 

 

俺の声がアイリスの届いたのだろう。

体中に細かい多数の切り傷を作りながらもアクアの支援により持ちこたえている。

そんな俺の妹がこちらに視線を一瞬飛ばし、こくりと頷く。

アイリスは剣を構え、ナナシに向かって突進した。

それをサポートするように魔王の娘が走り出し、魔王は巨大な魔法陣とともに魔法を構築し出す。

俺はその様子を見守りながら、アクアの準備を確認した。

 

 

「アクア、結界を破れるんだよな!」

「もちろんよ! この私を誰だと思ってるの? アクシズ教のご神体その人であり、水を司る女神よ? 武術を司ってるんだか魔術を司ってるんだかはっきりしないような新参女神に負けるもんですか!」

「おう、ほどほどに頑張ってくれ。それと支援は欠かさないようにな。特にブレッシングは。本当に!」

 

 

なんか逆にその自信に満ちあふれてる感じを見ると不安なんだが……

不吉の予兆というか。

とりあえずブレッシングの魔法をかけてもらうように念押ししたが、大丈夫だな?

さすがにナナシの幸運値が馬鹿ほど高いからって、爆裂魔法の発動に失敗したりだとか、激しく戦闘に響く事態にはならないよな?

そのとき、不思議なことが起こった……とか言ってナナシが有利になるのはやめてくれよ!?

なんて心の中でお祈りしながらダクネスに。

 

 

「よし、そうしたらダクネス!」

「ああ、わかっているとも。いつも通りお前たちを守ればいいのだな?」

「そういうことだ! 頼りにしてるぜ!」

「任せられた!」

 

 

なんだかいつもは性癖にまみれた汚いダクネスなのに、今だけはきれいなダクネスに見える。

騎士の鑑のようなダクネスがアイリスたちの戦闘に目を凝らして戦況を見守る。

時々飛んでくる弾丸のようながれきが来たらすぐに弾き飛ばせるようにと準備万全な状態なのだ。

頼もしい仲間の背中に手を当て、潜伏スキルを発動させながら場所を移動する。

ナナシに位置がばれたら作戦の成功率が下がるからな。

そうしたら最後の仕上げだ。

俺はスキルポイントを爆裂魔法に全振りし、習得完了の合図で冒険者カードが光ったのを確認して早速魔力に集中し、詠唱を始める。

 

 

「めぐみん、呪文の詠唱はこれで大丈夫か?」

「ええ。流石カズマ、爆裂ソムリエの称号を与えられただけあります」

「それはお前が勝手に俺に付与した称号だろ……」

「そんなこと言って、まさかともに爆裂道を歩める日が来ようとは思ってもみませんでしたよ。まさか本当に覚えるとは……冗談で言ってみたのですが言ってみるものですね」

「ちょ! そんな軽い気持ちで俺のことを爆裂魔法使いの道に誘ったのかよ! もっと深い考えがあるのかと思ってたのに、ただの自分の同族を増やしたかっただけかい! あとで覚えとけよ!」

 

 

せっかくの緊張が台無しだわ!

めぐみんの「爆裂魔法しか選択しがない」みたいなニュアンスの発言は実は俺に爆裂魔法を習得させたかっただけだったという衝撃の事実が発覚。

確かに俺も考えた感じ爆裂魔法を二人同時に放つくらいしか思いつかなかったけども!

 

と、そこまで考えたときだった。

一瞬、正面からのアイリスの剣がナナシの刀と拮抗し、その隙に背部からは魔王の娘の槍がナナシの心臓を穿とうと迫る。

しかし、ナナシは後ろに目でもついているのか、半身になるように躱し、勢いをそのままにアイリスに槍先をぶつけようと手で槍の軌道をそらせる。

魔王の娘が体ごと空中に投げ、勢いを殺そうとしているところをナナシの魔法が狙う。

ナナシは視線もくれず、正確な位置に火球の魔法を放つも、魔王の氷魔法によって相殺。

氷魔法のついでと炎魔法――インフェルノだろうか――をお見舞いするがそれは刀によって切り刻まれ……

 

なかった。

 

 

「あっつッ! そしていったッ!? 俺のボディーをまさか切り裂くとは驚きだが……俺、超回復機能付きの高性能鎧に生まれ変わったの! つう訳で! 捕えたぁあ!!」

 

 

インフェルノの中から飛び出てきたのはアイギス。

実はアイリスのポケットに潜んでいて、臨時の際には即変身できるらしいが、戦闘の前に「ナナシさんは攻撃が当たれば即死なので視界が妨げられる方が怖いのですみません」とアイリスに振られて落ち込んでいた神器。

魔法相手ならめっぽう強いが、ダクネスを秒で切り刻み、防具の隙間を執拗にせめて相手を戦闘不能に追い込むことだってできるナナシを相手にするには物理防御力が足りなかったのである。

しかし、ここに来てまさか想定外の大活躍。

 

 

「よし! アクア!」

「任せて! セイクリッド・ハイネス・ブレイクスペル!!」

 

 

物理攻撃力はアイリスたちに及ばないものの、超回復・圧倒的防御力・金属の質量を兼ね備えた動ける鎧がナナシの動きを封じ――

アクアはナナシの結界に向かって魔法を放つ。

すると女神の力が覆っていた結界を破壊。

それに合わせてめぐみんは息を吸い、杖を天高く掲げる。

 

 

「我が名はめぐみん! 紅魔族随一の天才にして爆裂魔法を操りし者! そしてナナシの一番弟子です! ……今こそ『恩返し』の時です」

 

 

彼女の声に呼応するように、杖の先端から赤黒い光がほとばしり、その光は次第に巨大な魔法陣の形へと変わり始める。

渦巻くエネルギーは見る者全てを圧倒し、周囲の景色がその圧力に押し潰されていく巨大な魔法陣が完全に形を成した。

その目には、その光が映り込み、全てを焼き尽くす炎のように燃えている。

 

詠唱完了済みの俺らの爆裂魔法。

ナナシが改造した魔王城。

ナナシが作ったものは異様な耐久力があり、爆裂魔法で建物が崩れないことはダンジョンで散々体験させられていた。

だから、俺は全力でナナシに向けて爆裂魔法を解放した。

 

 

「「『エクスプロージョン』ッッ!!」」

 

 

轟音とともに、ナナシに向かって俺たちの魔法がすべてを焼き尽くす炎となってナナシを襲いかかった。

光が一瞬で全てを飲み込み、激しい轟音とともにその場を支配する。

空気が焼ける音、そして地面が震える感覚。

 

耳をつんざく音がやがて遠ざかり、視界が少しずつクリアになると、そこには地面に倒れているナナシと巻き添えを食らったアイギス。

魔法が一切効かないとかいってたしきっと鎧の方は無事だろう。

問題はナナシの方がどうなのかだ。

 

ピクリとも動かない身体を見て思わずやり過ぎたかと顔が青ざめてしまうが、息はあるようで胸が上下しているのが遠目からでもわかる。

思わず額の汗を手で拭っているとアクアが

 

 

「終わった、わよね? やったわ! 流石私、意外となんとかなるもんじゃない! さあ、帰ったらシュワシュワ飲みましょ!」

「オオイィィイ! それ言ったら駄目だろ! それ言ったら復活するのがお約束だろ! お約束が大好きなの? 馬鹿なの? ねえ!」

「そ、そんな、のじゃロリちゃんはあくまで女神よ? 私と体の構造は同じはずだし、それこそ自分に変な改造施してたりしない限りはあんな攻撃受けて無事なはずないわよ! ヒールで治療してあげようと思うんだけど……」

 

 

その瞬間、不思議なことが起こった。

「ああ、実に、実に惜しい。まだ私は終わっていない」

背後から不気味な気配が漂い、俺たちの背筋が凍りつく。

ナナシの声だ。

満身創痍なはずなのに、まるで操り糸につながれた人形のようにカクカクとぎこちなく起き上がり、言葉を続ける。

 

 

「この素晴らしい世界に祝福を授ける者がいる……が、それじゃあ釣り合いがとれないとは思わんかい? 世界のバランスだ。あまりにもこの世は不平等で不条理で不合理が多すぎる。故に私はこう思うのだ。この世界に破壊の限りをもたらし、新世界を形成すべきだと。すべてが平等で道理で合理な作り物の世界を築こうではないか」

 

 

もう何を言っているかさっぱりわからない。

狂気を纏うその言葉は上辺だけで実を伴っていない。

もはやただただ暴れる理由を探して言葉と紡いでいるだけだった。

 

 

「ね、ねえカズマさん……もしかしなくてもこれってヤバい状態よね? 私、先帰ってシュワシュワの準備してるからみんなはゆっくり帰ってきていいわよ?」

「いやいや! おまえが原因の最たるところだろ! あれだ、悠長に喋ってる間に女神なら女神らしく悪しき存在を封印してみろよ! ほら、さん、にぃ、いち!」

「そんな都合のいい能力あるわけないでしょ! 流石にあの存在ごと封印するとなると時間が足りないんですけど! もし死んじゃったら私権限でゾンビアタック戦法も許すから……」

「死んでこいってか! 俺が死んでも代わりはいないんだよ! 俺は綾波じゃない!」

 

 

お約束のフリをしてしまった大罪人。

何とかして本気でおかしくなってるナナシをなんとかできないか頭を絞って考えようとしたそのとき。

ナナシが俺に向かって。

 

 

「何、安心しろ。汝が死んでも、お前は一点の瑕もなき偶像として未来永劫語り継がれるだろう」

「だから安心して逝けってか?」

「いや、ちと言葉が違うな。安心してこの素晴らしい世界から去ね。新たな世界として再構築されるするその日まで」

 

 

静かに重く響く。

先ほどの爆裂魔法を受けたはずの体のすべての傷は消え去り、先ほどと遜色ない……いや、それ以上の禍々しいオーラを放っている。

さっきまでは本気じゃなかった、本気を見せてやろうってか?

ラスボス戦でありがちな第二形態への移行が、まさか実際に見られるだなんて。

感動しすぎて涙出てきたわぁ。

 

 

「……では始めようか、世界の終わりを――」

 

 

遊ぶように、何でもないことのようにそう言ってのけた。

不敵な笑みを浮かべた邪神の目はマジだった。




次回

勇者は逃げだした、しかし回り込まれてしまった。
魔王からは逃げられない。
なら、魔王より強い邪神からも逃げられない。

どっち!

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